高齢者が自宅から通う「デイサービス」。そこでは「機能訓練」がおこなわれているって聞いたけど、「リハビリテーション」とはどこが違うんだろう?どんなことをやっているのかな?
百聞は一見に如かず。実際のデイサービスへ行って、機能訓練の現場を見てみました!
「デイサービス」とは、介護保険を利用したサービスで、主に要介護1~5の方を対象にした通所の介護施設。デイサービスの目的は、他の人との交流や身体機能の維持、また介護する家族の負担の軽減などで、送迎、食事、入浴などの生活支援とともに「機能訓練」がおこなわれます。
機能訓練とは、高齢者が日常生活に必要な動作をできるだけ長く維持し、いつまでも住み慣れた自宅で暮らせるよう、生活の質の維持・向上を目的としておこなうもの。一人ひとりの身体の状態に合ったプログラムを作成し、歩行訓練等の運動に加え、認知機能の低下を防ぐことを目的とした脳トレや、口の健康を保つ口腔体操など、さまざまな訓練をおこないます。
機能訓練とリハビリテーションは似ているように思えますが、厳密には違うものです。ただし、施設によっては機能訓練のことを「リハビリ」と呼んでいるところもあります。
それでは機能訓練とリハビリはどこが違うのでしょうか。
リハビリと機能訓練のもっとも大きな違いは、「医師の指示があるか・ないか」という点です。
リハビリは医師の診断・指示に基づき、理学療法士などの専門職がおこなう機能回復・維持訓練。身体機能の回復による日常生活の回復、自立を目標としています。
一方、機能訓練は医師の指示ではなく資格を満たした機能訓練指導員の評価をもとにおこなわれます。自宅での生活をなるべく続けられるように、日常生活の中の動作の訓練、脳トレーニングなどを実施します。
リハビリは運動療法などをおこなう、機能訓練より専門性の高い医療行為のひとつです。そのため、デイサービスでの機能訓練について怪我の回復期に病院などでおこなうマンツーマン指導のリハビリのような内容をイメージしていると、実際に受けてみたときに期待外れになるかもしれません。
なお「機能訓練指導員」という資格はなく、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、柔道整復師の他、看護師や准看護師などの有資格者が、機能訓練指導員として働くことができます。
機能訓練には、体操や脳トレなどを利用者全員でおこなうケースが多くありますが、デイサービスのなかには、利用者それぞれの身体機能の状態や本人・家族の希望などに合わせて、個別の訓練計画を作成して実施している施設もあります。
こうした機能訓練を強化しているデイサービスは、利用者に「個別機能訓練加算」を請求している点に注目しましょう。
加算とは、専門的なサービスや手厚い人員配置を実施している事業所に対して、基本報酬に追加して請求できる項目のこと。そのひとつに機能訓練の体制に関連する「個別機能訓練加算」があります。
つまり、この個別機能訓練加算を取得しているデイサービスは、機能訓練に注力していると言えるのです。
ちなみに「個別機能訓練」は、機能訓練指導員1人が利用者5人までに対応する訓練を指します。
実際にデイサービスではどんな機能訓練をやっているのかさっそく調査!
今回向かったのは、東京都三鷹市の閑静な住宅地にあるデイサービス「ツクイ三鷹新川」。果たしてどんな機能訓練をおこなっているのでしょうか?
「ツクイ三鷹新川」は定員が50人。毎日40人くらいが通っています。
うかがった時は、ちょうどみんながラジオ体操をしているタイミング。大画面のテレビモニターの映像を見ながら、スタッフの掛け声に合わせてみんな思い思いに体を動かしています。
その次に始まったのが口腔体操。「パ」「タ」「カ」「ラ」という4文字を、ビデオに合わせて発音します。早口や連続で発音するのですが、これが一緒にやってみるとけっこう難しい!
ほかにも、有名な曲の歌詞の一部を伏せたカラオケ映像を見ながら歌う「歌詞体操」、脳トレにもなる「数字体操」など、一口に機能訓練といっても、いろいろなゲームや運動をおこなっているようです。
そうした集団でおこなう体操とは別に、数人のお客さまが個別に機能訓練指導員と運動をしています。ゴムチューブを両太ももに巻いて足を開閉したり、ゴムボールをヒザで挟んだりと、それぞれ違う筋トレをしていました。
マネジャーの川上知江さんによると、「その方の状態を見ながらトレーニングメニューを作成します。今持っている機能を最大限生かして、それをどう維持していくか、常に考えながら実施しています」とのことでした。
また別のスペースでは、機能訓練指導員とお客さまがマンツーマンでパズルのようなものをしていました。手や足だけでなく、指先や頭のトレーニングをおこなうのも機能訓練のひとつだそうです。
大勢の利用者が、自分のできることをできる範囲でやっているそうです。調査していて、みなさんの和気あいあいとした雰囲気が感じられました。
楽しくて飽きがこない工夫をする、それがデイサービスの特徴なんですね。
デイサービスのなかには、特に機能訓練を重点的におこなっている、通称「リハビリ特化型デイサービス」と呼ばれる施設があります。一般のデイサービスとの違いは以下になります。
デイサービスとよく似た名称で、同じく介護保険による通所サービスに「デイケア」があります。
デイサービスとデイケア、この2つはどこが違うのでしょうか?
デイサービスは、食事や入浴などともに生活支援の一環として機能訓練を実施しています。そうした生活介助によって、利用者の自立した日常生活の支援がデイサービスの目的です。
一方、デイケアは要支援、要介護の人を対象に、医師の指示の下に医療的なケアやリハビリをおこないます。「通所リハビリテーション」とも呼ばれています。この目的は身体の機能回復・維持に重点が置かれ、それによって利用者の生活支援を目指します。
なお、デイケアはリハビリ特化型デイサービスと違い、食事や入浴などのサービスもあり、1日中サービスを受けられます。
デイサービスでは介護士をはじめ、機能訓練指導員、看護師、生活指導員がスタッフとして働いています。
一方、デイケアでは医療ケアがおこなわれるため、介護士や看護師に加えて常勤の医師が必ず1人以上配置されます。またリハビリ専門職として理学療法士、作業療法士、言語聴覚士といった専門性の高いスタッフが在籍しています。
生活支援を実施しているデイサービスと、医療的なケアが中心のデイケア。目的の違う2つのサービスですが、両者の併用は可能です。
ただし、その対象者は要介護1~5の人のみ。要支援の人は併用できません。
デイサービスにもリハビリ特化型など、いろいろなタイプがあるんだね。
身体の状態や目的に合わせ、どのデイサービスを選ぶのか、またデイケアとの併用など選択肢もいろいろ。自分に一番合った施設を見つけよう!
今回、調査にご協力いただいたのはデイサービス「ツクイ三鷹新川」です。2019年4月に開所して以来、365日年中無休でサービスを提供。管理栄養士が献立を監修している食事も評判です。
介護施設への入居について、地域に特化した専門相談員が電話・WEB・対面などさまざまな方法でアドバイス。東証プライム上場の鎌倉新書の100%子会社である株式会社エイジプラスが運営する信頼のサービスです。