医療が必要な人が入居できる施設を探すときに「介護医療院」の名前も見かけるでしょう。
介護医療院は高齢者に対する「医療」と「介護」のニーズに応えるための生活施設。特別養護老人ホーム(特養)・介護老人保健施設(老健)と並ぶ公的な介護施設のひとつで、医療的ケアや介護サービスの提供はもちろん、看取り・ターミナルケアまでを担う施設です。
この記事では、介護医療院はどんな施設なのか、施設基準や入居条件などを解説。また、介護医療院のメリット・デメリットや介護医療院の探し方も紹介するので参考にしてください。
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介護医療院とは、入所者に対して「医療」「介護」だけでなく「生活の場」を提供する施設のこと。医療を提供する施設には介護療養型医療施設(以下、療養病床)がありましたが、療養病床は2023年度に廃止される予定であるため、医療を提供する新たな施設として介護医療院ができました。
療養病床と介護医療院の大きな違いは、療養病床は病院としての性格を大きくもっていたことに対し、介護医療院は医療と介護だけでなく「生活の場」を提供する施設であるという点です。
介護医療院では基本的な介護ケアはもちろん、医師が常駐しているため、たんの吸引や経管栄養といった医療的処置も受けられます。さらには看取りの役割も担っています。
また、介護医療院は、施設によっては地域住民との交流や入居者向けのイベント・レクリエーションが充実している場合もあります。高齢化が進む中、地域社会との関わりを強く意識した施設という点で、注目度の高い公的介護施設です。
参考:「介護療養病床・介護医療院のこれまでの経緯」(厚生労働省)
介護医療院と同じ公的施設には以下があります。
それぞれ詳しく見てみましょう。
療養病床は、医療の必要な要介護者のための長期療養施設。療養病床は病院または診療所であり、入院している人に必要な医療、介護、機能訓練などを提供しています。
介護医療院は介護保険が適用されるのに対し、療養院は医療保険が適用されます。
介護老人保健施設(以下、老健)は、基本的に在宅復帰・在宅支援を目指しリハビリを提供する施設です。
老健は最終的に自宅へ戻ることを目的としているため、リハビリにより回復や改善が見られた場合に退去する必要があります。
特別養護老人ホーム(以下、特養)は、在宅での生活が困難な高齢者に対し介護を提供する施設。要介護3以上の人が入居できます。
特養では、入浴や排泄・食事といった介護のほか、日常生活の介助・機能訓練・健康管理・療養上のお世話などが提供されます。終身での利用ができるため、「終の棲家(ついのすみか)」として選ぶ人の多い施設です。
施設によっては医療的ケアも提供されますが、設備や人員配置の都合上、限定的です。
介護医療院は、原則として以下の設置が定められています。
また、介護医療院は以下の条件が定められています。
介護医療院の設備基準に談話室やレクリエーションルームの設置も定められていることから、生活施設としての機能を併せ持っていることがわかります。
参考:「介護医療院開設に向けたハンドブック」(厚生労働省)
介護医療院には「Ⅰ型」「Ⅱ型」という2つの形態があります。
Ⅰ型は比較的重度の要介護者を対象にしており、医療ケアを提供する療養病床と同等の扱いとされています。
Ⅱ型は入居者の家庭復帰をリハビリなどを通してサポートする老健と同等の扱いとなっており、Ⅰ型よりも比較的容態が安定した患者が対象です。
介護医療院の人員配置基準はⅠ型とⅡ型で異なります。それぞれ詳しく見てみましょう。
医師は入居者の診察や薬の処方・健康管理・検査の指示などをおこないます。
医師の必要な人数はそれぞれ以下です。
看護師は喀痰吸引や経管栄養などの医療的ケアのほか、血圧・体温測定などの日常的な健康管理や食事量の確認などをおこないます。
看護師の必要な人数は、Ⅰ型・Ⅱ型ともに入居者6人に対して1人です。
介護スタッフは食事や入浴・排泄などの介助のほか、日常生活全般を支援します。
介護スタッフの必要な人数はそれぞれ以下です。
リハビリ専門員は、身体機能維持のためのリハビリプランの作成や実施を担当します。リハビリ専門院は、理学療法士や作業療法士・言語聴覚士などの国家資格を持っている必要があります。
リハビリ専門員はⅠ型・Ⅱ型ともに具体的な人数の指定はなく、適当数と定められています。
薬剤師は医師の指示のもと薬を処方するほか、薬がしっかり飲めているかなどの投薬管理もおこないます。
薬剤師の必要な人数はそれぞれ以下です。
栄養士は入所者の健康状態に合わせた献立を作成し、調理員に指示します。Ⅰ型・Ⅱ型ともに入居者が100人以上の施設では1人の配置が必要です。
ケアマネジャーは、介護保険を使ったサービスを利用するための利用計画書「ケアプラン」の作成や、プラン通り実施されているかのチェックを担当します。Ⅰ型・Ⅱ型ともに入居者100人に対して1人配置されます。
介護医療院では、大きく分けて「医療面のサービス」と「介護面のサービス」が提供されます。主な内容は以下です。
介護医療院は生活の場でもあるため、施設によっては地域住民との交流やボランティアの人たちと一緒にレクリエーションをするなど、地域社会との関わりを意識しているイベントもあります。
介護医療院の入所には、要介護1以上の認定が必要です。また、「伝染病などにかかっていないこと」や、「病気での長期入院が必要ないこと」など、施設ごとに条件が決められています。
介護認定を受けていない場合は、まずケアマネジャーや地域包括支援センターに相談し、介護認定を申請しましょう。市区町村からの認定が要介護1~5であれば、介護医療院が利用できます。
なお、介護認定は基本的に65歳以上が対象ですが、特定疾患がある場合は65歳未満でも申請可能です。
介護医療院は、介護保険を利用して入居する施設です。そのため、民間が運営する有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などと比較すると安く入居できます。また、公的な介護施設のため入居時の費用は必要ありません。
介護医療院を利用する場合の費用は、施設サービス費や居住費、食費、日常生活費などを毎月支払います。施設サービス費は入居する本人の要介護度、施設の形態、居室の種類、職員の人数などで異なります。
施設サービス費はⅠ型とⅡ型で異なります。また、部屋の形態によってもそれぞれ値段が異なります。詳しく見てみましょう。
Ⅰ型の介護サービス費は要介護度が高くなると金額も上がり、1日あたり700~1300円ほどの金額設定です。介護サービス費は所得や施設の形態、居室の種類、職員の配置などによって変動します。
従来的個室 | 多床室 | ユニット型個室 ユニット型個室的多床室 | |
---|---|---|---|
要介護1 | 721円 | 833円 | 850円 |
要介護2 | 832円 | 943円 | 960円 |
要介護3 | 1070円 | 1182円 | 1199円 |
要介護4 | 1172円 | 1283円 | 1300円 |
要介護5 | 1263円 | 1375円 | 1392円 |
参考:「介護報酬の算定構造」(厚生労働省)
Ⅱ型はⅠ型に比べて比較的容態が安定した高齢者が対象。Ⅰ型と比べると金額は安めの設定です。金額は1日あたり600~1300円ほどになります。
従来的個室 | 多床室 | ユニット型個室 ユニット型個室的多床室 |
|
---|---|---|---|
要介護1 | 675円 | 786円 | 850円 |
要介護2 | 771円 | 883円 | 960円 |
要介護3 | 981円 | 1092円 | 1199円 |
要介護4 | 1069円 | 1181円 | 1300円 |
要介護5 | 1149円 | 1261円 | 1392円 |
参考:「介護報酬の算定構造」(厚生労働省)
居住費の基準費用額は以下の通りです。※居住費は施設タイプによって異なります。
介護医療院は「多床室タイプ」が多いです。多床室タイプは室料はかからず、光熱費相当を支払うことになります。また、所得に応じた軽減措置があります。
費用基準額は1日300~1380円ほどで、所得に応じて変動し、軽減措置があります。
食費は1日単位ごとの請求で、食事をしない日(入院や外泊など)は請求されません。また、費用には食事提供と食事介護が含まれています。
日常生活費は、理美容や新聞、電話、クリーニングといった費用が対象です。オムツ代は日常生活費に含めず介護サービス費に含まれるために注意が必要です。
介護医療院のメリットは主に以下です。
介護医療院は専門的な医療的ケアが受けられます。喀痰吸引や経管栄養が必要な場合、ほかの施設では対応できないと入居を断られることもありますが、介護医療院では医師の配置や医療設備などが充実しているので安心して入居できます。
また、介護医療院は病院に併設されていることが多く、容体の悪化により施設内で対応できない場合でも、関連病院のスムーズな受け入れが可能です。
さらに、理学療法士や作業療法士などのリハビリ専門員によるリハビリも受けることができ、生活機能の維持や向上に役立ちます。
介護医療院のデメリットは主に以下です。
介護医療院では、介護保険サービスの利用者負担金に加えて食費や居住費がかかります。そのため、ほかの介護施設と比べると費用がやや高額です。
また、入居期間が長期化するとトータルの金額がかさむため余裕を持った資金計画が必要です。入居後に支払いが難しくなった場合は、生活相談員に早めに相談しましょう。
介護医療院は、施設によっては居室が完全な個室でなくパーティションや家具などで仕切られているだけの場合もあります。パーテーションなどで仕切られているだけの部屋では、隣の音が気になったり、プライバシーが確保できないことも。場合によっては不眠になることもあるため、物音にデリケートな人は特に注意が必要です。
介護医療院の探し方は複数あります。現在入院中の場合は入院先のソーシャルワーカーに相談するのがおすすめです。それ以外の場合は厚生労働省の「介護サービス情報公表システム」などを使って介護医療院を探し、施設に直接相談しましょう。
介護医療院はまだ数が少ないため、住んでいる地域にない場合もあります。探す際は隣接する地域まで検索範囲を広げたり、場合によっては自治体の福祉課などに問い合わせてみましょう。
介護医療院の利用手続きは、おおよそ以下のステップで進めます。
介護医療院は介護保険を利用して入居する施設です。そのため、要介護認定を受けていない人は入れません。要介護度のない人は、まず、要介護認定を受ける必要があります。
希望する介護医療院が見つかったら、施設に入居申し込みの書類を提出します。施設に入居するために必要な書類は施設によって異なります。健康診断書や診療情報提供書の提出を求められることもあるため、あらかじめ用意しておくと良いでしょう。
その後面談を経て、施設による入居判定がおこなわれ、入居が決まったら家族や本人・担当ケアマネジャーなどから介護医療院の入居担当者に連絡し、日程を調整して入居日が決定します。
介護医療院は、入居者に対して「医療」「介護」だけでなく「生活の場」を提供する施設のこと。基本的な介護ケアはもちろんのこと、主に医療的ケアに重きを置いており医師も常駐しているため痰の吸引や経管栄養といった対応も可能です。
介護医療院には「Ⅰ型」「Ⅱ型」があります。Ⅰ型は比較的重度の要介護者を対象にしており、医療ケアを提供する療養病床と同等の扱いとされています。Ⅱ型は入居者の家庭復帰をリハビリなどを通してサポートする老健と同等の扱いとなっており、Ⅰ型よりも比較的幼体が安定した患者が対象です。
介護医療院の入居には要介護1以上の認定が必要です。また、「伝染病などにかかっていないこと」や、「病気での長期入院が必要ないこと」など、施設ごとに条件が決められています。
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