介護付き有料老人ホームの人員基準「3:1」の仕組みを解説

介護付き有料老人ホームの人員基準「3:1」の仕組みを解説

更新日 2024/03/25

介護付き有料老人ホームへの入居を検討した際に、「職員は何人くらい配置されているの?」「夜間にも職員は配置されてるの?」と疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、介護付き有料老人ホームの人員基準について詳しく説明します。また、ほかの施設の人員基準も紹介しますので、あわせて参考にしてください。

介護付き有料老人ホームの人員基準は?

介護付き有料老人ホームには、以下の職員の配置が義務づけられています。

  • 施設長などの管理者
  • 生活相談員
  • 介護職員
  • 看護職員
  • 機能訓練指導員
  • ケアマネジャー

それぞれの職員の詳しい配置人数と仕事内容を見てみましょう。

施設長などの管理者

施設長などの管理者は施設ごとに必ず1人配置され、施設経営の責任者として施設の運営を担います。

施設長など管理者の主な業務は、運営やマネジメントなどの管理業務が挙げられます。高齢者介護の知識や経験があることが管理者になる条件です。

生活相談員

生活相談員とは、入居者や家族から施設での生活の相談に対応する職員です。

生活相談員の人員基準は「常勤で1人以上の配置」と義務づけられています。施設に入居する要介護者が100人以上の場合、生活相談員は入居者100人に対して1人以上配置されています。

生活相談員は生活の相談に乗るほか、地域や外部関係者との窓口になって行政的な手続きもおこないます。

介護職員

介護職員とは、入居者の身の回りのお世話や、食事、入浴、排泄などの身体介護、食事や入浴の準備など、入居者が安心して生活を送れるようにサポートする職員です。

介護職員の人員基準は、看護職員との合計で配置する人数が義務づけられています。介護職員・看護職員の人員基準の最低人数は、施設入居者の要介護者3人に対して1人、要支援者は10人に対して1人です。

看護職員

看護職員は、医療従事者である看護職員にしかできない医療行為をおこなう職員です。

看護職員の人員基準は、介護職員との合計で配置する人数が義務づけられており、施設入居者の要介護者3人に対して1人、要支援者は10人に対して1人です。

このうち看護職員の配置は、施設の入居者が30人以下の場合、原則、日中は1人以上と義務づけられています。さらに入居者が50人増えるごとにプラス1人の看護職員の配置が必要です。

看護職員は、入居者の健康や薬の管理、医師の指導に基づく医療行為、通院や入退院、診察のサポートなどをおこないます。入居者の健康状態はさまざまなので、入居者の病状に応じた医療行為は、医師の指示に基づき看護職員が対応します。

人員基準の「3:1」とは?

施設の人員基準に「3:1」という数字があります。「3:1」というのは、施設の入居者に対し配置される職員の人数です。施設の人員配置の項目が「3:1」とあれば、入居者3人に対し、介護職員または看護職員が1人配置されているという意味です。

職員の人員配置が「2.5:1」「2:1」「1.5:1」のように、「3:1」の3よりも数字が小さくなると、1人の職員が対応する入居者の人数が少ないということです。1人の職員が対応する入居者の人数が少なければ、その分、目が届きやすくなるので、ケアが手厚くなります。

機能訓練指導員

機能訓練指導員は、入居者ごとの身体機能に合わせたリハビリプランを作成し、実施する職員です。

機能訓練指導員は、施設ごとに1人以上の配置が義務づけられています。

機能訓練指導員は以下のいずれかの資格を取得しています。

  • 看護師
  • 准看護師職員
  • 理学療法士
  • 作業療法士
  • 言語聴覚士
  • 柔道整復師
  • あん摩マッサージ指圧師
  • 鍼灸師(はり師・きゅう師)

ケアマネジャー

ケアマネジャーは、介護保険を使ったサービスを利用するための利用計画書「ケアプラン」の作成や、プラン通り実施されているかのチェックを担当します。

施設ごとに1人以上の配置義務がありますが、小規模の施設では管理者や介護職員などと兼務していることも多いです。

そのほかの職員

ほかにも、人員配置の義務のない職員もいます。例えば、入居相談員や事務員、食事に力を入れている施設であれば栄養士や調理員がいる場合もあります。

介護付き有料老人ホームは施設によってサービスや設備がさまざまなので、その施設独自のサービスに合わせた職員がいることもあります。

介護付き有料老人ホームの夜間の人員基準

これまでに解説した介護付き有料老人ホームの人員基準は日中に限られ、夜間は介護職員または看護職員が1人以上いれば良いとされています。

介護付き有料老人ホームで夜間に配置されている職員は平均3.1人です。夜間はほとんどの入居者が寝ているため、見守りや急病への対応、トイレの誘導など、職員による入居者へのケアの人手が日中ほど必要ないと考えられ、日中より少ない人員でも良いのです。

出典:「高齢者向け住まいの実態調査 報告書」(厚生労働省)

また、介護付き有料老人ホームの夜間に配置されている職員は介護職員のみであることが多いです。ちなみに、夜間に看護職員が配置されている介護付き有料老人ホームは全体の約2割ほど。施設に看護職員がいない時間帯は、訪問看護ステーションなどの医療機関と連携体制を取っている施設もあります。

出典:「高齢者向け住まいの実態調査 報告書」(厚生労働省)

夜間に看護職員が配置されていない施設では、夜間の医療行為ができません。人工呼吸器や在宅酸素を常時使用しているなど、夜間にも医療行為が必要な場合は、夜間にも看護職員が配置されている施設に入居を検討する必要があります。

介護付き有料老人ホームの人員基準の注意点

介護付き有料老人ホームの人員基準について注意点が3点あります。

  • 介護職員が常勤ではない場合がある
  • 基準の「3:1」を超えない場合もある
  • 上乗せ介護費用がかかることもある

それぞれ詳しく見てみましょう。

介護職員が常勤ではない場合がある

介護付き有料老人ホームの介護職員・看護職員合わせての人員基準は入居者3人に対して1人以上のため、職員1人あたり最低でも入居者2~3人を対応します。

しかし、職員が全員常勤である必要はなく、1人以上の常勤職員がいればパートやアルバイトなどの臨時職員でも良い、ということになっています。このため、特に食事や入浴など人手が多く必要な時間帯では、非常勤職員が担当となる場合も多いです。

基準の「3:1」を超えない場合もある

施設の入居者3人に対して、介護職員・看護職員あわせて1人という比率は、実際に介護現場で働いている職員数ではなく、労働時間をもとに計算します。つまり、人手が多く必要な時間帯を手厚くした分、それ以外の時間帯の職員数を抑えていることもあります。このように実際に働く職員数は人員基準をもとに調節されるため、時間帯によっては既定の「3:1」を満たしていないこともあります。

上乗せ介護費用がかかることもある

介護保険法により定められている介護付き有料老人ホームでの介護職員・看護職員の人員基準の最低人数は「3:1」です。施設の職員の人員配置が「2.5:1」「2:1」「1.5:1」など基準より高い比率の場合には、「上乗せ介護費」が加算され、その分の費用を入居者が払う必要が生じます。

この上乗せ介護費は介護保険の適用外です。そのため、入居者は全額を自己負担することになります。

ほかの施設の人員基準は?

介護施設の人員基準とは、入居者に対して配置すべき職員の人数を定めたものです。介護付き有料老人ホームに限らず、ほかの介護施設にも人員基準が設けられています。

ほかの施設の人員基準はどれくらいか見てみましょう。

「サービス付き高齢者向け住宅」の人員基準

サービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)には「一般型」と「介護型」があります。

一般型のサ高住の人員基準は、介護職員または看護職員が少なくとも日中1人以上常駐することが義務づけられています。一般型のサ高住には「3:1」などの配置義務はないので、施設ごとに職員の人数が違います。また、一般型のサ高住には夜間の職員の人員配置の義務はありません。

介護型のサ高住の人員基準は介護付き有料老人ホームと同じです。介護職員または看護職員は「3:1」、つまり入居者3人に対して、介護職員または看護職員が1人と義務づけられています。また、夜間は介護職員または看護職員が1人以上配置、とされています。

サ高住の詳細は下記ページで説明しているので、そちらも参考にしてください。

「認知症グループホーム」の人員基準

グループホームは以下の人員基準が義務づけられています。

  • 管理者:1ユニットに対して1人以上
  • 計画作成担当者:1ユニットに対して1人以上
  • 介護職員:入居者3人に対して1人

グループホームの入居者は5~9人の「ユニット」といわれるグループで生活します。ユニットには管理者が1人配置されています。管理者は認知症の介護従事の経験が3年以上あり、厚生労働省の管理者研修を受けている必要があります。

計画作成担当者は、入居者一人ひとりに合わせたケアプランを作成する職員です。計画作成担当者は実務者研修基礎課程、または認知症介護実践者研修の修了が必須です。また、計画作成担当者が施設に複数いる場合、最低1人は介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格が必要です。

グループホームの入居者の見守りは深夜も必要なため、介護職員は24時間体制で常駐します。

グループホームの人員基準の詳細は下記ページで説明しているので、そちらも参考にしてください。

「特別養護老人ホーム(特養)」の人員基準

特別養護老人ホーム(以下特養)は以下の人員基準が義務づけられています。

  • 医師:入居者の健康管理および療養上の指導に必要な人数
  • 介護職員・看護職員:入居者3人に対して1人
  • 機能訓練指導員:入居者100人に対して1人
  • 栄養士:1人以上
  • ケアマネジャー:入居者100人に対して1人
  • 生活相談員:1人以上

機能訓練指導員は、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士のいずれか資格が必要です。

特養の詳細は下記ページでも説明しているので、そちらも参考にしてください。

「介護老人保健施設(老健)」の人員基準

介護老人保健施設(以下老健)は以下の人員基準が義務づけられています。

  • 医師:常勤1人
  • 看護職員:9人
  • 介護職員:25人
  • 機能訓練指導員:入居者100人に対して1人
  • 栄養士:入居者100人に対して1人
  • ケアマネジャー:入居者100人に対して1人
  • ソーシャルワーカー:入居者100人に対して1人

老健では介護職員と看護職員の割合を7:2以上にする、という基準があります。そのため、老健は他の施設に比べて看護職員の配置が多いのが特徴です。また、看護職員の夜勤も多いです。

機能訓練指導員は、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士のいずれか資格が必要です。

老健には事務や調理員も必ず配置する必要があります。事務や調理員は、人数に関する人員基準はありません。

老健の詳細は下記ページでも説明しているので、そちらも参考にしてください。

よくある質問

介護付き有料老人ホームの人員基準はどうなっていますか?

介護付き有料老人ホームの人員基準は、施設長などの管理者が1人、生活相談員が入居者100人に対して1人、介護職員・看護職員は、施設の入居者の要介護者3人に対して1人、要支援者は10に対して1人、機能訓練指導員とケアマネジャーは施設ごとに1人以上と義務づけられています。また、施設によっては入居相談員や事務員、栄養士や調理員など、人員配置の義務がない職員もいます。

介護付き有料老人ホームには夜間にも職員がいますか?

介護付き有料老人ホームの夜間の人員基準は、日中の人員基準の「3:1」より少なくても良いとされていて夜間の人員配置は平均3.1人です。夜間に配置されている職員は介護職員であることが多く、看護職員を配置するケースは全体の約2割です。

介護付き有料老人ホーム以外の施設も人員基準は同じですか?

多くの施設は入居者3人に対して介護職員(もしくは看護職員)1人の配置が義務づけられています。しかし施設によって人員基準はさまざま。サ高住など、介護の必要のない元気な方向けの施設では人員が少なく設定されており、特養や老健など入居者へのサポートが手厚い施設は人員が多く設定されています。

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