認知症の方の介護は大変です。「そろそろ施設への入居を検討しよう」と思っても、認知症の症状があると、入居を断られてしまうのではと心配もあるでしょう。
介護施設で代表的な「介護付き有料老人ホーム」では、認知症の症状があっても受け入れてもらえるのでしょうか。
こちらの記事では、「認知症でも介護付き有料老人ホームに入居できるのか」を解説します。また、介護付き有料老人ホームに認知症の方が入居する際の注意点や、認知症の方向けの施設「グループホーム」との違いについても解説します。参考にしてください。
Contents
介護付き有料老人ホームには、認知症の方も入居できます。
介護付き有料老人ホームは24時間介護スタッフが常駐し、介護や生活支援などが施設のスタッフにより提供される施設です。そのため、認知症で日常的に介護が必要な方でも十分にサポートしてもらえます。
また、介護付き有料老人ホームには、原則、日中1名以上の看護師が常駐しているため、介護サービスのほか、一部の医療行為を受けることもできます。
介護付き有料老人ホームについては下記ページで説明しているので、そちらも参考にしてください。
認知症の症状がある方が介護施設の入居を考える際、認知症ケアに特化した「グループホーム」も候補に挙がるでしょう。
では、「介護付き有料老人ホーム」と「グループホーム」では、どちらの施設が認知症の方に向いているのでしょうか。違いを見てみましょう。
グループホームとは、認知症高齢者のための介護施設です。グループホームでは、認知症の専門知識と技術を持ったスタッフの援助を受けながら、要支援2以上の認知症高齢者が共同生活を送ります。
グループホームでは、「ユニット」と言われる少人数のグループで生活し、入居者はそれぞれ家事などの役割を分担をします。調理や食事の支度、掃除や洗濯など入居者の能力に合った家事をすることで認知症の症状の進行を防ぎ、能力をできるだけ維持するのです。
グループホームについては下記ページで説明しているので、そちらも参考にしてください。
介護付き有料老人ホームとグループホームには主に以下のような特徴があります。
介護付き有料老人ホーム
グループホーム
介護付き有料老人ホームとグループホームの違いはいくつかありますが、特に大きな違いは「医療ケアの手厚さ」と「認知症のケアの手厚さ」の違いです。
介護付き有料老人ホームでは、介護サービスの他に医療ケアも受けられます。施設には少なくとも日中1名以上の看護師が常駐し、検温、血圧や脈拍のチェック、服薬管理などの毎日の健康管理サービスが受けられます。また、胃ろうやインスリン注射などの一部の医療行為も看護師から受けられます。
認知症が進行し、医療ケアが必要になった場合に対応できるのが介護付き有料老人ホームの強みでしょう。
グループホームでは、認知症の専門知識と技術を持ったスタッフの支援を受けながら、入居者の能力に合った家事を役割分担して自分自身でおこないます。ほかの利用者やスタッフと協力して生活に必要な家事をおこなうことで認知症の症状の進行を防ぎ、“できる能力”の維持につなげます。
グループホームの大きな特徴は、認知症ケアに長けた専門スタッフの介助を受けながら日常生活を送れることです。
ただ、グループホームには医師、看護師の配置義務はありません。そのため、グループホームの入居条件として「身体症状が安定し集団生活を送ることに支障のない方」と定義している施設が多くあります。持病があるなど医療のサポートが必要な場合は、医療ケアを受けられる施設を選ぶことが必要です。
介護付き有料老人ホームでは認知症の方を受け入れている施設が多くあります。しかし、施設によって認知症のケアの内容はさまざまなので、入居する前に認知症への対応内容を確認することが重要です。
認知症の方が介護付き有料老人ホームに入居する前に、施設に確認するおすすめのポイントは以下の5点です。
それぞれのポイントの内容を、こまかく見てみましょう。
入居を検討している介護付き有料老人ホームに、「認知症のケアに関する資格を持っているスタッフはいるのか」「何人いるのか」を事前に確認しましょう。
認知症の方への対応は高度なスキルや経験が必要です。認知症ケア指導管理士や認知症ケア専門士など、認知症に対する知識や理解が深いスタッフが常駐している施設なら、安心した生活を送れるでしょう。
また、認知症ケアに手厚い介護付き有料老人ホームでは、認知症介護に関する研修を受講した介護スタッフが勤務。介護スタッフに対して定期的な研修をおこなっているため、より専門的なケアを受けられます。
入居を検討している介護付き有料老人ホームで、「どういった認知症の症状に対応してもらえるのか」を事前に確認しておくと安心です。
認知症といっても、種類や重度など症状はさまざまです。認知症の症状によっては、入居を検討している施設に受け入れ体制が整っておらず、入居を断られるケースがあります。
入居を検討している介護付き有料老人ホームでどういった認知症の症状に対応してもらえるのかを確認する際に、同時に「どんな認知症の症状を持った人を実際に受け入れたか」も確認しましょう。
認知症にはいくつかの種類や重度があるため、施設が「認知症でも入居を受け入れている」というだけでは、認知症の入居者へどんな対応をおこなったかわかりません。入居を検討している介護付き有料老人ホームで、認知症の本人の症状と同じ症状の方を受け入れた実績があれば、より安心して生活できるでしょう。
入居を検討している介護付き有料老人ホームで、「認知症の専門医と連携しているか」「認知症の方への訪問診療の有無」など、医療機関との連携が充分であるか確認しましょう。
介護付き有料老人ホームは、医療機関と協力契約を結ぶことが定められています。また、少なくとも日中は看護師が常駐しているため、医療ケアが充実しています。しかし、精神科や心療内科など、認知症の治療に特化した医療ケアを受けられるかは施設によって異なります。
認知症の専門医と協力しているのかどうか、認知症の専門医が訪問診療などを定期的におこなっているかなどを確認しておくと良いでしょう。
入居を検討している介護付き有料老人ホームで、「過去に認知症の症状により退去を命じられたケースがないか」を確認しておきましょう。
認知症の症状には、「ものを取られたかもしれない」という被害妄想や「怒りっぽくなる」などがあります。被害妄想や怒りっぽい症状などが原因で、他の入居者に迷惑をかけてしまうケースがあるかもしれません。
認知症による症状が原因で他の入居者に迷惑をかけてしまい、退去を命じられたケースが実際にあるのかを確認しておくと、万が一退去勧告を受けてしまった場合の準備をしておけます。退去条件など、施設のスタッフに聞いたり契約書で確認をしましょう。
介護付き有料老人ホームの費用は、入居時にかかる費用(入居一時金)と入居後に毎月かかる月額費用に分けられます。入居時費用は、0~数千万円。月額費用は、15~35万円です。
入居時費用は賃料の前払いにあたります。金額は立地や設備などにより決められるため、施設ごとに大きな差があります。
入居費用は施設によってさまざまです。豪華設備や充実した医療体制を備えた施設では数千万円以上かかることも。一方で、入居時費用が0円の介護付き有料老人ホームもあり、その場合は家賃の前払いをしないことになるため月額利用料が高くなります。
また、施設ごとにサービスや配置人員も異なるため、月額費用にも大きな開きがあります。15万円程度に抑えられる施設がある一方で、豪華な食事や手厚い医療体制などを提供する施設では35万円程度かかることもあります。
介護付き有料老人ホームの費用については下記ページで説明しているので、そちらも参考にしてください。
認知症の方の介護施設への入居は「早め」の時期に検討するのがおすすめです。
認知症はある日いきなり進行するものではなく、徐々に症状が進んでいくことがほとんどです。状況によっては、半年から1年ほどで認知症が進行してしまうケースも。認知症の症状が見られるようになったら、早いうちから施設探しを始めておきましょう。
早めに施設を探し始めるとどんなメリットがあるのか、3点解説します。参考にしてください。
認知症は毎日進行していきます。認知症の発症が早い段階から入居する施設選びを始めれば意思疎通が充分に可能なので、本人の希望を聞くことができるでしょう。そのため、本人の希望に沿った施設選びができます。
本人の認知症が進行して判断力が下がってしまい、本人の希望を聞くことができなかった場合、家族の意見のみで入居する施設を判断することになるでしょう。家族の意見のみで施設を決めた場合、家族は「本当に本人の希望と合っていたのか」「この判断は間違っていたかもしれない」などと悩んでしまったり、後悔したりするかもしれません。家族、本人ともに後悔のない施設選びをするためには、早めの段階での準備が大切です。
認知症の発症が早い段階から入居する施設選びを始めると、家族の負担が少なく済みます。
長期にわたり介護を続けていると介護している家族に疲れが溜まってしまいます。加えて、入居する施設を選ぶことにも大きな負担と時間がかかります。介護の疲れが溜まった状態では、施設を選ぶ労力が心身ともにつらくなります。余力があるうちに、施設選びに取りかかりましょう。
認知症の症状が進行すると、新しい生活に慣れるのにも時間がかかります。認知症の症状が軽いうちに施設へ入居すれば、本人の適応力も見込めて、施設での生活に早めに慣れることができます。
また、認知症の症状が早い段階で施設へ入居すると、施設側もその方への対応に早めに慣れることができます。それはまだ意思疎通がしやすい状態のため、入居した方の性格や行動の傾向などを把握しやすいからです。早い段階で本人に合った対応をしてもらえるのは、大きなメリットといえるでしょう。
認知症の方の施設への入居は、「早め」に検討するのが良いと解説をしました。具体的にはどんなタイミングで施設選びを始めると良いのでしょうか。
3つの視点から解説します。
介護施設への入居を検討するおすすめのタイミングは、「認知症の進行が見え始めたとき」です。
認知症の典型的な症状は、「過去に体験した出来事など、あったことそのものを忘れてしまう」「物事を順序立てて考えられなくなる」「時間や場所、人物がわからなくなる」などがあります。
また、うつ状態や妄想がひどくなったり、怒りっぽくなる、徘徊するなど、精神や行動にも症状が出ます。
中でも暴力や暴言、徘徊などは、介護している家族にもとても負担がかかります。無理に自宅で認知症の介護を続けると、認知症の本人や介護をする家族ともに大きなストレスとなってしまいます。本人にも家族にも大きなストレスがかかる前に、施設への入居を考えましょう。
認知症の症状については下記ページで説明しているので、そちらも参考にしてください。
「介護度が上がったとき」も介護施設への入居を検討するタイミングとしておすすめです。介護度が上がることは、介護の体制を見直すためのわかりやすい目安になります。
介護度が上がると、認知症を患った本人が認知機能や身体的な能力に衰えを感じ、自宅での生活に不安を抱くこともあります。常に見守れる家族がいない、自宅の設備では過ごしにくいなど、不安になる理由は人によってさまざまです。
また、認知症が進行すると正常な判断ができず、危険な目に遭う機会が出てくることがあります。夜中に家を出て行ってしまい、帰り方がわからなくなってしまったり、火の扱い方がわからなくなって火事を起こしてしまう可能性もあります。
常に家族がそばで見守っていないと危険なほどに認知症が進行してしまうと、家族への負担も増してしまいます。介護度が上がったときには、施設への入居を検討するタイミングにするのが良いでしょう。
「『介護が負担』と感じたとき」も施設への入居を検討するタイミングとして、とても重要です。
認知症に限らず、高齢者の介護は家族にとって負担が大きいもの。必要な介護の内容によっては、仕事やプライベートの時間もなくなり、人生設計にも大きく影響します。
また、介護をするには体力的な負担もあります。介護を受ける本人の足腰が弱っている場合には、排せつ・入浴の介助で体を持ち上げるために、力が必要なときもあります。無理な介護を続けていくうちに介護をしている家族の腰を痛めたり、疲労がたまってしまいます。
介護がつらいと感じ始めたら、まずは家族自身の体調を大切に、今後のケアを考え直すのが大切です。認知症でも入れる施設を探し、入居のタイミングを検討してみましょう。
施設への入居を決断できなくても、施設のスタッフや施設探しの窓口に相談してみるだけで気持ちが軽くなることもありますよ。
介護付き有料老人ホームには認知症の方も入居できます。介護付き有料老人ホームは24時間介護スタッフが常駐し、介護や生活支援などが提供されます。そのため、認知症で日常的に介護が必要な方でも安心して過ごせます。介護付き有料老人ホームのサービス内容や料金は施設ごとに異なり、認知症専門のフロアを設けているなど認知症のケアに手厚い施設もあるので本人に合う施設を探しましょう。
「介護付き有料老人ホーム」と「グループホーム」の大きな違いは「医療ケアの手厚さ」と「認知症のケアの手厚さ」です。介護付き有料老人ホームは、日中1名以上の看護師が常駐し、一部の医療行為が受けられます。グループホームには認知症ケアの専門スタッフがおり、認知症のケアが充実しています。グループホームには看護師の配置義務はありません。持病があるなど、医療のサポートが必要な場合は医療ケアを受けられる施設を選ぶことが必要です。
認知症の症状が見られるようになったら、早いうちから施設探しを始めましょう。認知症の発症が早い段階から入居する施設選びを始めれば意思疎通が充分可能なので、本人の希望を聞くことができます。本人の希望が聞けないと家族で施設を決めることになり、後悔するかもしれません。具体的には「認知症の進行が見え始めたとき」「介護度が上がったとき」「家族が『介護が負担』と感じたとき」が施設への入居を検討するタイミングです。
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