介護食とは、噛む力や飲み込む力が弱くなった人が安全に食べられるように調理方法を工夫した食事形態を指します。
「老人ホームではどんな介護食が出るの?」「それぞれどんな特徴があるの?」などと老人ホームに入居する本人や家族にとって、食事の内容は気になる点のひとつですよね。
この記事では、老人ホームで提供される介護食の種類や特徴、提供方法に関して解説しています。
「老人ホームで安全に食事が楽しめるのかな?」「原型を留めていない食事が出てきたらどうしよう」などと不安を感じている方は、是非、参考にしてみてください。
噛む力・飲み込む力は人によってさまざまで、食べやすいものも異なります。以下では、食事形態の指標の一例を見ていきましょう。
区分 | 区分1 容易にかめる | 区分2 歯ぐきでつぶせる | 区分3 舌でつぶせる | 区分4 かまなくてよい | |
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噛む力 の目安 | 固いものや大きいものはやや食べづらい | 固いものや 大きいものは 食べづらい | 細かくて やわらかければ食べられる | 固形物は 小さくても 食べづらい | |
飲み込む力 の目安 | 普通に 飲み込める | ものによっては 飲み込みづらいことがある | 水やお茶が 飲み込みづらいことがある | 水やお茶が 飲み込みづらい | |
固さの目安 | ごはん | ごはん~ やわらかごはん | やわらかごはん ~全がゆ | 全がゆ | ペーストがゆ |
さかな | 焼き魚 | 煮魚 | 魚のほぐし煮 (とろみあんかけ) | 白身魚の うらごし | |
たまご | 厚焼き卵 | だし巻き卵 | スクランブル エッグ | やわらかい 茶わん蒸し (具なし) |
出典:「ユニバーサルデザインフードとは」(日本介護食品協議会)
介護食と呼ばれるものには、いくつかの種類があります。
食べる人の身体状況、能力によってさまざまな食事形態が存在します。基本的にはどの老人ホームでも上記のような種類であれば対応可能ですが、老人ホームの設備、人員によっては対応できないケースもあります。そのため、老人ホームを検討する際は提供される介護食に関して念入りに確認しましょう。
きざみ食は、食材を細かく刻んで食べやすくしたものです。飲み込む力はあるが噛む力が弱くなった方に適した食事形態と言えます。きざむ大きさは老人ホームによって異なり、1~2cmのものもあれば、みじん切りほどに細かい場合もあります。
細かくきざむことで噛む作業を省くことができるのが、きざみ食の大きな特徴と言えるでしょう。食べやすいように細かく刻んであるだけなので、視覚的に食事の楽しみを得やすいのもメリットです。
ただし、細かく刻んであるために口の中でまとめにくく、誤嚥につながる可能性もあると指摘されています。
ソフト食は、食材を自力で噛み砕くことが難しい人向けに柔らかく調理された食事形態です。主に、食材を煮込んだり茹でたりする工程を長めにおこない、舌や歯茎で押すだけで潰れる程度のものを指します。
また、肉や魚など加熱だけでは柔らかくなりにくい食材をミキサーにかけて「つなぎ」などを加えて再形成したものや、ムース状にまとめたものをソフト食と呼ぶ施設もあります。
ソフト食もきざみ食と同様に見た目が通常食に近いため、食欲が湧きやすいことが特徴と言えます。また、食材が柔らかいため飲み込みやすい点もメリットと言えるでしょう。
ミキサー食は、噛む力や飲み込む力が低下した人向けに、食材をミキサーにかけてペースト状にした食事形態です。元々硬い食材でもミキサーにかけることでペースト状にできるため、きざみ食やミキサー食と比べ、食べられる食材の幅は広がります。
ミキサー食は、ペースト状になっていることが大きな特徴として挙げられ、スプーンを使うことで簡単に食べることができます。
ただし、食材をすべてミキサーにかけてしまうので、見た目や食感が通常食よりも悪くなり、食欲が湧きにくくなる可能性があります。
とろみ食は、ミキサー食と同様に噛む力や飲み込む力が低下した人向けにとろみ剤を使用して、より飲み込みやすくした食事形態を指します。
また、とろみ剤はお茶や味噌汁にも使用することができ、誤嚥を防ぐことに役立ちます。
ミキサーにかけペースト状にした食材に対してとろみをつけることで、極端に飲み込む力が弱い人や嚥下障害の人でも簡単に飲み込めることが大きな特徴と言えます。
ただし、ミキサー食と同様に食材の原型が残らないため、食欲が湧きづらい点がデメリットです。
介護食の提供方法に関しては、各老人ホームで異なります。
大きく分けて2つの提供方法があり、それぞれメリット・デメリットが存在します。
以下では、老人ホームにおける介護食の提供方法に関してまとめています。
老人ホーム内で調理しているところでは、当然ながら出来立ての状態で提供されるので、温かいものは温かく、冷たいものは冷たく食べられるメリットがあります。
一方で、料理をつくるための人件費や材料費がかかってくるため、食事代が高くなるケースがデメリットとして挙げられます。
老人ホーム内に厨房がない場合や、入居者の費用負担を抑えている場合は、外部の業者につくってもらう配食サービスを利用している施設もあります。外部の業者に委託することで、入居者の費用負担が減るというのは大きなメリットと言えるでしょう。
ただし配食サービスの場合、冷凍のものが多く、味のクオリティや盛り付けが老人ホーム内で調理したものより劣ってしまうのがデメリットとして挙げられます。
何故、介護食が重要なのか、その理由を理解しておくことが大切です。以下では、介護食が重要とされている理由に関してまとめています。
高齢になると身体機能の衰えから食欲が低下する傾向にあり、食べる量が減少し、十分な栄養を摂取できないということも珍しくありません。
そんなときにスムーズに必要な栄養素を確保できるのが介護食です。介護食は、噛む力や飲み込む力が衰えた人でも食べやすく、栄養バランスが充実していて低栄養状態を回避することにもつながります。
身体機能が衰えた高齢者にとって介護食は、必要なエネルギーを確保するとともに免疫力を向上させるための重要な食事形態と言えるでしょう。
食事をするということは、健康的な生活を送る上で重要なものですが、食事を楽しむということも大切です。食事の楽しみを得ることは身体的な健康だけでなく、精神的な健康にもつながります。
「噛めないから…」「飲み込めないから…」といった理由で食事に対して楽しみを得られないケースもあるでしょう。そんな気持ちにさせないために食べやすい、飲み込みやすい介護食は存在し、高齢者の介護に欠かせないものであると言えます。
試食ができるかは見学する老人ホームによって異なります。また、試食ができたとしても介護食に関してはひと手間加えなければいけないので、予約の際に事前の確認が必要です。
ほとんどの老人ホームでは、ひと月単位で提供する食事のメニューが決まっているものです。献立表も用意されており、館内に掲示されている場合が多いです。見学時に可能であればその献立表をもらうと良いでしょう。
イベント食に関しても、ペースト状にしたりとろみ剤を使用したりすることで、どの入居者の方でも食べられるようにしている老人ホームがほとんどです。
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