親の介護が必要になった場合に、家族間でトラブルになることはよくあることです。親の介護をしたくても、金銭的、身体的、精神的などの負担も多いため、子どもの間で揉めたりすることもあります。
この記事では、よくあるトラブルの内容やその回避法について説明していきます。
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子どもには親の介護の義務があるのでしょうか?その答えは「ある」です。ただし、子どもにもさまざまな事情があるので、義務ではあっても強制ではありません。
ここで言う義務というのは、身の周りの世話をしたりする身体的な介護の義務を指してはいません。介護の義務というのは、介護に必要な医療費や介護費などの金銭面の支援を指しています。
例えば、直接介護のサポートなどをしていなくても、介護施設や訪問介護などにおいて金銭面で支援をしていれば、介護の義務を果たしていることになります。
また、介護の義務は、あくまでも義務であり強制ではありません。介護が必要な親の子どもも、状況によっては自分の家族の生活だけで精一杯で、金銭面でも義務を果たすことが難しい場合もあります。
このような状況において、親の面倒を看なければいけないということはありません。介護のための金銭面の余裕があるかないかは、家庭裁判所が判断します。
また、この目安となる基準に厚生労働省が定める「生活保護基準額」というものがあります。
出典:「2019年 国民生活基礎調査の概況」(厚生労働省)
厚生労働省の調査によると、介護が必要な家庭のうち半数以上で、「同居の家族」が介護を担っているのが現状です。中でも最も多いのが配偶者ではありますが、次いで子、子の配偶者となっています。
当然のように感じるかもしれませんが、介護の主体として「子」が選択されています。では、この「子」は誰を指すのでしょう?長男・長女でしょうか。それとも次男・次女でしょうか。
今までは仲が良かった兄弟姉妹が、親の介護が必要になったタイミングで、その関係が悪化したりトラブルが発生してしまったという話はよく聞きます。ここからは、具体的にどんなトラブルが起きやすいかを説明していきます。
シンプルに最もトラブルになりやすいのが、兄弟姉妹のうち「誰が親の介護をするのか」という問題です。今まで仲がよかった間柄でも、いざ介護が必要になった場合に、それぞれの事情によって介護に消極的になるケースも出てきます。
場合によっては介護の押し付け合いが起きて、関係が悪化してしまうこともよくある話です。また、「誰が介護を担うか」が決まった後に、それ以外の人がその人に任せっぱなしで、全く協力的ではないなどでトラブルに発展することもよくあるようです。
介護に必要な金銭面に関わるトラブルもどうしても発生しがちです。
介護をするには金銭面の負担も大きく、例えば介護をしている人が他の兄弟に援助やサポートを頼むケースなども出てきますが、それぞれ家族の事情などによってそれを拒むことで、トラブルに発展してしまうこともあります。
また、介護をしていない人が介護をしている人に対して、親が亡くなった後の相続において有利になるのではないかという懐疑心を持ち始めることで、兄弟姉妹間の関係性が悪化する場合もあります。
実際に介護をしている人は、さまざまな負荷がかかって大変な思いをすることも多いでしょう。
そんな状況の中で、例えば介護をしていない別の兄弟姉妹から、介護の方法などで口を出されたり文句を言われたりすると良い気はしません。このように、協力的でないにも関わらず口出しだけするような兄弟がいると、不平不満が募りトラブルにつながることが多いです。
ここからは介護が必要になったときに、トラブルが発生しないように今からしておくべきことを説明していきます。
親の介護は、突然必要になることも多いものです。その際、介護の主役は親になるので、親が望む介護ができる状況にしてあげることが理想的で、そのためにも、親が元気なうちから、どんな介護を望んでいるかを聞いておくのは大切なことです。
また、その希望をもとに、家族間で早い段階から話し合っておくことで、トラブルの発生を未然に防ぐことができます。「誰に介護をしてもらいたいか」「どこで介護を受けたいか」などの意向を事前に確認しておきましょう。
特に、親が在宅介護を希望しているのか、老人ホームを希望しているのかは、本人の生活していく環境が大きく違いますし、介護をする人にとっても精神的、身体的、金銭的な負担もだいぶ変わってきます。
できる限り早い段階で、どこで介護を受けたいかを確認をして、家族間で現状に適した介護の方針を相談しておくと良いでしょう。
また、どこで介護を受けたいか同様、「誰に介護してもらいたいか」により、家族の対応も大きく変わってくるため、事前にその意向の確認をすることが大切です。
内閣府の「平成29年の高齢者の健康に関する調査」によると、男性の回答は「配偶者」が1位、女性の回答は「ヘルパーなど介護サービスの人」が1位となっており、希望は男女でも全く変わってきています。
実際、親の金銭的な状況を把握できてない人も多いのではないでしょうか。
いざ介護で費用が発生することがわかったときに、親の経済状況を把握できていると、介護に関する家族間のトラブルを軽減できる場合があります。
事前に親の貯金や年金、保険などがどれくらいあるかを可能な限り確認しておきましょう。
介護が始まる前に、「介護にはどんなサービスがあるのか」「どんな施設があるのか」「それぞれ費用はどれくらいかかるのか」を調べて知識として持っておくことも重要です。
それによって、介護が始まることを想定して、家族間で話し合いや事前の準備などもしておくことができます。繰り返しになりますが、介護は急に必要になることも多いため、可能な限りの知識と準備は、その後の家族間のトラブルの防止につながります。
兄弟姉妹の関係性も家族によってさまざまな形があります。それぞれの状況も、「子供の進学で余裕がなかったり」「別の家族の介護が必要だったり」「金銭面で苦労している」など、事情もいろいろあります。
そんな中でも大切なことは、それぞれの介護に対する考えや状況を本音で話し合うことです。それにより、意見が食い違いトラブルが発生する可能性はありますが、コミュニケーションがない状態の方が問題が大きくなる可能性が高いです。
一度だけではなく、可能な限り何度も話し合いの場を設けることが重要です。
話し合いの際には、介護に対してそれぞれ何がどれくらいできるかを明確に話し合うことが大切です。
例えば、「金銭面でどのくらい負担ができるか」「実際に身体的な介護のサポートにどれくらい時間が使えるのか」など、より具体的にお互いの状況を把握することで、介護が発生した際の家族間のトラブルの軽減につながります。
親の介護をするにあたり、家族間で役割を明確にしておくこともトラブルを回避するためには重要です。ここからは役割分担について説明していきます。
親にとって一番頼りにできるのは自分の子どもです。子どもは親の介護をする義務があり、兄弟姉妹がいる場合はその義務は平等にあります。
金銭面や身体的なサポートも含めて、兄弟姉妹間でどのように介護を分担するべきかをしっかりと話し合いをしましょう。負担が誰かに偏ることのないよう平等に分担するのが理想です。
自分の親の介護を、嫁など配偶者に手伝ってもらうことも考えてみましょう。
ただし、配偶者には、親の介護をする義務はありません。夫や妻にすべてを丸投げされてしまって、不満やストレスを抱えているというケースもよくある話です。
依頼する場合は、しっかりコミュニケーションをとり、可能な限り納得してもらうことが大切です。また、相続時には、介護で貢献した配偶者に「特別寄与料」が支払われることもあります。
親の孫にあたる自分の子どもにも親の介護をする義務があります。自分に兄弟が少ない場合や、介護を頼める人がいない場合には、自分の子どもに介護の一部を手伝ってもらうことも考えても良いでしょう。
ただし、子どもが学生の場合は、手伝ってもらいたい内容をよく検討しましょう。
兄弟や頼れる家族や親戚などがいない場合には、自分一人で介護しなければならなくなることもあります。一人で介護をすべてやろうとすることで不安やストレスを抱えてしまうこともよくあります。
介護は長期にわたることも考えられるので、一人で抱え込まずに、自治体などの公的機関に相談することも検討しましょう。
親の介護をしたくても、さまざまな理由で介護をする余裕がないケースもあります。ここからは、その際の対処法について説明していきます。
自分に介護をする余裕がない場合、家族間で介護の役割分担について話し合いをする場などで、自分の状況をしっかり伝えて状況を理解してもらうことが大切です。
当然、自分もほかの人の状況を理解する姿勢を持つことも重要です。お互いに伝え合った結果、どうしても折り合いがつかず揉めてしまった場合は、家庭裁判所に判断を託すことになります。
家族や親族の間で、介護に必要な費用の捻出が難しい場合は、親に生活保護を受給してもらい、その費用で介護サービスを受けるという方法もあります。
ただし、生活保護を受給するためには以下のような条件を満たしている必要があります。
親に金銭的な余裕があれば、親自身のお金で老人ホームに入居してもらうことで、自分や兄弟姉妹にかかる負担を大きく軽減することができます。
そのためにも、事前に親の経済状況を確認しておくことが重要です。老人ホームに入居した場合でも、施設やケアマネジャーとの連絡などは家族が対応する必要があります。
介護が必要な人を、置き去りにしたり保護をしなかった場合には、罪になることもあります。どのようなケースが該当するかを説明していきます。
例えば、介護が必要な人を自宅に放置したまま、そのまま衰弱死してしまった場合、死亡させる意図がなかったとしても保護責任者遺棄致死罪という犯罪になります。保護責任者遺棄致死罪の罰則は、3年以上20年以下の懲役です。
また、介護をするべき人が、被介護者の身の安全や生命に危険があると知りながら放置して怪我をさせてしまった場合は、保護責任者遺棄致傷罪という罪に問われます。この場合、3カ月以上15年以下の懲役となることがあります。
介護に関係する家族間のトラブルの中で、最もよく発生する問題のひとつは金銭面の揉め事です。どのような対策が考えられるでしょうか。
介護にかかる費用がどれくらいなのかを把握するために、「介護家計簿」の作成をおすすめします。介護をする人が、介護のために使った全てのお金の用途と金額を日付とともに記載していきます。
これにより、介護をしていない人もどれくらいの費用が発生しているかを知ることができ、情報がよりオープンになり、家族や兄弟姉妹間の問題も起こりづらくなるのではないでしょうか。
ここまで、親の介護にあたっての家族間でのトラブルや対策などについて説明してきました。自分の介護が原因で家族が揉めてしまうのは、被介護者にとっても辛いことです。
そうならないために、本人の意向や経済状況などの確認、それぞれの役割分担決めなどの事前の準備、家族間でそれぞれの状況を把握しあうなど、できることは早めに進めておくことでトラブルを軽減することができます。
介護施設や介護サービス、自治体などの相談窓口の活用も検討しましょう。家族間では、自分のことばかりを優先するのではなく、お互いのことを尊重し合い、最善の対応方法を考えていきましょう。
基本的に親の介護は子供に義務があります。しかし、あくまで義務であって強制ではありません。
介護の義務というのは、介護に必要な医療費や介護費などの金銭面の支援を指しており、直接的な介護をしなくとも金銭的な面でサポートをしていれば介護の義務を果たしています。
親の介護については、家族間でトラブルにならないように前もって話し合いを設けることが重要です。
親の介護費用は親のお金で支払うのが基本です。子供は子供の生活があるので、大半の家庭では経済的な支援をおこなうのは難しいと言えます。介護が必要になる前に、親の貯金や年金、保険などがどれくらいあるかを可能な限り確認しておくことが重要です。
親の介護を勝手に放棄することは保護責任者遺棄罪に該当し、介護が必要な人を自宅に放置したまま、そのまま衰弱死してしまった場合は保護責任者遺棄致死罪で3年以上20年以下の懲役です。
また怪我をさせてしまった場合は、保護責任者遺棄致傷罪が適用され3カ月以上15年以下の懲役となる可能性が高いです。
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