超高齢社会の日本では、介護を必要としている人に必要な介護サービスが行き届かないという状況はめずらしいことではありません。このような人たちは「介護難民」といわれ、現代日本の深刻な社会問題になっています。
この記事では介護難民の現状やそうならないための対策についてまとめています。将来、自分が介護難民にならないためにもぜひ参考にしてください。
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介護難民とは、介護が必要な高齢者や障害者が、家庭や病院、施設のどこにおいても適切な介護サービスを受けられない人のことを指し、高齢社会である日本が抱えている問題のひとつです。
あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、その数は年々増加。首都圏では2025年に約13万人が介護難民になると推測されています。
介護難民の数を減らすためには介護職を増加させる必要がありますが、仕事内容の面でも給与の面でも厳しい現状があり、人手不足が続いています。
介護難民の現状についてさらに詳しく紹介していきます。
介護難民が増え続けている要因は日本の超高齢社会にあります。そして、さらに拍車をかけるように2025年には団塊の世代にあたる約800万人が75歳以上の後期高齢者になるのです。
この超高齢社会を迎えることにより生じるさまざまな問題を2025年問題といい、介護難民もより一層増加していくことが予想されているのです。
高齢者の数が増え続けるのに比例して、介護難民も毎年、増加傾向にあります。
厚生労働省によると、2019年4月末時点で介護保険の第1号被保険者数は約3,528万人、要支援または要介護認定を受けている人の数は約659万人。介護を必要としている人がいかに多いかがわかります。
なかでも、比較的費用が安く、入居期間に定めのない特別養護老人ホームへの入居待機者は2019年には29万人を突破。この待機者の中には十分な介護サービスを受けられず将来の介護の見通しも立たない人もいるようです。
介護難民がここまで増えている理由にはいくつかありますが、主だったものは以下の通りです。
介護難民が増えている原因として、先ほどご紹介した2025年問題などの社会問題があります。団塊の世代が後期高齢者になるにつれ徐々に介護を必要する人の数も増加していくのです。
また、高齢者の数が増えれば要介護や要支援認定を受ける人の数も増加します。実際に要介護認定を受けている人の数は、2000年には218万人だったのに対し、2017年には622万人と約3倍にまで増えました。今後も介護を必要とする人が増えていくことが予想されます。
介護を必要とする高齢者が増加すれば、当然、介護サービスや介護施設の需要は高まります。それに伴い介護施設も増加してきていますが、介護施設利用者率が高く、依然として介護施設は不足している状況にあります。
今後さらに高齢化が進み、施設利用者が増加するため、介護施設不足はより一層顕著になるだろうと言われています。
介護施設の不足だけではなく、介護施設で働く人材が不足しています。その現状は、介護労働安定センターの調査によると、約60%の事業所が「従業員が不足している」という回答を寄せるほどです。
介護の仕事は想像よりも過酷な上に、給与面でもそれに応じた金額を支払うことが難しい場合が多くなっています。介護の現場で必要な人材を確保できないことが、介護難民問題にも大きな影響を与えています。
介護難民の原因には家族形態の変化もあります。昔は親と子、孫の三世代で同じ家に暮らしている家庭が中心でした。
しかし、家庭の核家族化や、夫婦共働きが当たり前になりつつある社会状況などから、両親の介護をすることが難しくなっているのです。
高齢になると一般的に収入は少なくなります。
仕事を退職して年金だけで生活をしている方の場合、経済的な面で受けられるサービスに限度があります。人によっては、介護サービスを受けたくても金銭的に難しかったり、費用の安い公的な介護施設を利用するしかない場合では長く入居待ちをしなければいけないケースもあります。
ここからは、「将来、介護難民にならないために今できること」にポイントを絞ってみます。主な対策を挙げてみましょう。
介護難民になってしまうひとつの原因として金銭の問題が挙げられます。
介護に利用できる資金が少ないと、選択肢となる介護サービスや施設も限られてきます。また、安価なサービスに頼ろうとしても求める人が多くて利用できないのが現実です。
介護サービスや介護施設を利用するにはある程度の費用がかかることを理解し、将来に向けて介護資金はしっかりと貯めておくようにしましょう。
早めに準備をしておくことで、特別養護老人ホームのような費用の安い公的施設だけではなく、費用はかかりますが、サービスが豊富な民間施設も利用検討できるようになります。
将来のためにしっかりと費用を貯めておくことも大切ですが、介護が必要な人が自宅で過ごせるよう、家族内で介護ができるような環境を整えておくことも大切です。
例えばデイサービスや訪問介護を利用しながら、家族でサポートをしながら生活を送れるような環境作りができれば入居施設がなくても安心です。
とはいえ、在宅介護は想像よりも負担がかかるのも事実。サポートをする側の家族のうち、だれか一人に介護をまかせきりにするといった環境を生み出さないように介護を分担して行うなど工夫をするようにしましょう。
いつまでも健康的に過ごすことができれば、必然的に介護を必要とすることもなくなります。そのためには、体を動かすことを意識したり、できる家事は率先して行ったりするなど。日常生活の中で身体機能維持につながることは積極的に取り入れると良いでしょう。
また、デイサービスやデイケアといった通所サービスを介護予防のために利用することもできます。
家に引きこもりがちになることで社会との繋がりが薄れ、認知症が進行してしまうこともあります。人との関わりを持ち続け、おしゃべりを通して新しい情報を獲得するなど脳細胞が活発に活動できるような時間を設けることも大切です。
東京などの都市圏では、高齢人口が多いのはもちろんのこと介護施設を作る土地も十分ではありません。そのため、すぐに介護施設を拡充して、すべての高齢者に必要なサービスを提供することは難しいのが現状です。
一方で都心部から少し離れた地域でならば介護職員、介護施設ともに余裕があり、受けたい介護サービスの費用も安い場合があります。
そのため一刻も早く施設への入居などを検討している場合は東京から地方へ移住するのも有効な方法と言えるでしょう。
介護難民という社会問題について、国もさまざまな対策を打ち出しています。その中でも「地方包括ケアシステム」という地域全体で高齢者をサポートし、自宅にいながら安心して介護支援を受けることができる環境づくりを目指す取組みがあります。
地域包括支援センターでは、高齢者についての課題を解決するためのサポートをしてくれます。まずは一度、相談に行ってみると良いでしょう。
介護が必要になってから、「どのようなサービスがあるか」「費用はいくらかかるのか」「利用するにはどうしたら良いのか」などと調べていると、サービスの利用開始が遅くなってしまいます。
そのため、健康であるうちから、住んでいる地域にはどういった介護施設があるのか、どのような介護サービスを提供している事業所があるのかといった情報を収集しておくようにしましょう。
費用が安く、多くの人が入居を希望する公的施設。入居待ちを回避する方法はあるのでしょうか。以下で説明します。
スムーズに入居したいのであれば、これから新設される施設への入居を狙うのもおすすめです。
新設される施設には当然のことながら既存の入居者はいません。入居者を募集した段階で応募すれば、待機者の多い施設よりも審査が通りやすい状況にあります。
新規に開設される公的施設の情報は各市区町村のホームページや役所の担当窓口で尋ねることができます。
公的施設の中でも最も人気が高いのが特別養護老人ホームです。
特別養護老人ホームのほとんどは社会福祉法人や医療法人が運営しています。そのため同じ経営母体の病院や介護サービスを利用していると、その特別養護老人ホームに入りやすいという面もあります。
系列の病院や施設からその人の身体状況や家庭状況が共有されていると、入居審査において酌量されるといったことも期待できます。
一刻も早い入居を希望しているのであれば、そのように現状を伝えてもらえるような手段を作るというのもひとつの方法です。
特別養護老人ホームのような費用の安い公的施設は入居待ちの方が多くいるため、利用できるまでに時間が長くかかってしまうのが現状です。一方で、民間施設であれば入居待ちをすることはほとんどなく、必要な介護サービスを受けることができます。
公的施設と比べると費用が高いと言われる民間施設ですが、現在では公的施設と同じくらいの費用感で質の高い介護サービスを提供している施設もあります。民間施設は高いと思い込まずに、まずは資料などを集めてみるのも良いでしょう。
適切な介護サービスや介護施設を利用することができない人がいるという介護難民問題について、国は以下のような対策を進めています。
介護職員が不足しているという現状を踏まえ、介護未経験者に対する入門研修を創設しています。研修が終了したあとには実際に働く施設を探す施設までを紹介したり、介護について理解を深めるための体験型イベントを実施したりしています。
また、介護職員の労働環境改善対策として介護職員処遇改善加算が創設され、給与への反映が期待されています。
国は介護業界の人手不足を受け、平成29年9月より介護福祉士の資格を在留資格とし、就労ビザとして正式に認定しました。それにあわせて介護福祉士の資格取得を目指す外国人労働者の支援や、実際に外国人が施設で働くことができるような環境を作るための支援も行われています。
また近年では介護ロボットの導入も積極的に進めており、専用ロボットの開発に力を注いでいます。
介護ロボットは移乗支援や移動支援、排せつ支援、見守り、入浴支援などの対応が可能です。慢性的な人手不足や介護に対する身体的・精神的負担の軽減に役立つことに加え、要介護者の心のケアができるロボットも登場。ロボットは介護現場において、今最も注目を浴びている存在と言えます。
しかしながら日本でも多くの介護ロボットが開発、発売されているものの、介護施設への普及スピードが遅く、あまり多く利用されていないのが現状です。今後は介護ロボットをどのように現場に普及させて活用していくかが課題になっています。
介護難民が多い都心部では高齢者が希望する地域への移住サポートや、移住した地域で自立した生活ができるよう財政面、人材面で支援する制度作りに取り組んでいます。
中には魅力的な特典や手厚いサポートを用意して都会からの移住者を積極的に受け入れている自治体もあるようです。こうした体制を整え、都市部からの移住を受け入れることを通して、その地域の活性化を図っています。
現在の日本において介護難民の問題は決して人ごとではありません。今後さらに高齢化が進み介護難民が増えていくことを考えると、政府や自治体だけではなくひとりひとりが将来についてきちんと考え、向き合っていかなくてはいけない問題だと言えます。
自分が介護難民にならないためにはどういった行動を取っておくべきなのか、知っておかなくてはいけないことは何があるのか。ぜひ今回の記事を参考に介護難民を身近な問題だと捉え、今できることについて考えてみてください。
現状は依然として増加傾向にあると言えるでしょう。首都圏では2025年に介護難民が約13万人と予想されており社会問題として深刻化しています。
また、2025年には団塊の世代にあたる約800万人が75歳以上の後期高齢者になるのに対し、介護施設の不足や人員不足が未だ解決できずにいるのが現状です。
介護労働安定センターの調査によると、約60%の事業所が介護スタッフが不足しているという回答をしています。
介護の仕事は業務が過酷なのにも関わらず、それに見合った給与が支払われていないのが現状です。介護スタッフが不足していることは介護難民問題にも大きな影響を与えているので、国が何らかの施策を打ち出し、早急に人材確保をすることが求められます。
「新設される施設への入居を狙う」「民間施設の入居も検討する」といったことが挙げられます。
公的施設に入居待ちしている人は、民間施設も同時に検討しているケースが多いです。民間施設の中には、公的施設と同等の費用で介護サービスを提供している施設も増えてきており、公的施設の入居まで民間施設で生活していくという手段も珍しくはありません。
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