気管切開すると安定した呼吸が確保できる一方で、日常的な医療ケアが必要になります。家族の介護により自宅で生活することも可能ですが、介護施設への入居を検討する際は、医療体制の手厚い施設を選びましょう。
この記事では施設選びのポイントのほか、気管切開のメリットデメリット、気管切開の方に必要なたん吸入の手順などについても解説しています。
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気管切開の方を受け入れ可能なのは、看護師が24時間体制で常駐していたり医療機関を併設しているなどの、看護・医療体制の整った一部の施設に限られています。このため、胃ろうやインスリン注射などのほかの医療行為と比べると入居可能な施設の数は多くありません。
気管カニューレは使っているうちに汚れてくるため、2週間に1度程度の交換が不可欠です。交換するときは医師や看護師による医療処置が必要です。
また、気管切開している方は呼吸器に持病がある場合が多く、症状が急変した際に医療体制の整った施設でないと対応することができません。
上記の理由により気管切開している方を受け入れできる施設は少ないため、お住まいの地域周辺で探しても見つからない場合があります。施設への入居を希望する場合は、範囲を広げて探してみましょう。また、広範囲の施設を探す場合はインターネットを利用した情報収取が便利です。
気管切開は、のどから気管までを切開する気道確保方法です。一般的には切開した穴がふさがらないよう気管カニューレを挿入し、必要に応じて人工呼吸器を装着することもあります。
気管切開すると呼吸が楽になる一方で、日常的な医療ケアが必要になることも留意しておきましょう。
気管切開には、次の3つの役割があります。
このため、気道が狭くなって呼吸がしにくい方のほか、がんでのどの一部を切除した方や脳梗塞などの病気で長期間、人工呼吸器を必要する方などにも気管切開はおこなわれます。
手術後、傷口や全身の状態が安定して必要な栄養がとれれば、自宅で過ごすことが可能です。また、リハビリによって口からの食事が可能になったり、呼吸の症状が回復すれば気管切開の穴をふさぐこともあります。
気管切開はほかの手術と同様にメリットとデメリットがあります。気管切開について十分理解することが術前・術後の不安解消につながるため、手術を受ける際は本人や家族が手術の内容やメリット・デメリットをしっかり把握しておきましょう。
気管切開には、次のメリットがあります。
一方、気管切開は次のデメリットを伴います。
気管切開すると、日常的に医療ケアが必要になります。どのようなことをおこなうのか見ていきましょう。
気管カニューレには、気管側の先端近くに「カフ」と呼ばれる風船が付いているタイプがあります。カフを膨らませることで気管とカニューレの隙間をなくし、唾液が気管に流れ込むのを防ぎます。
カフの空気は自然に抜けてしまうため、定期的に空気を注入します。ただし空気の入れすぎは気管粘膜の血流を阻害してしまうので、適切な空気量の調整が必要です。
気管カニューレはバンドを使って固定します。カニューレ周辺が汚れていると皮膚トラブルの原因になるため、1日に1度はバンドを外して清潔にするとともに皮膚の状態を確認します。
また、バンドの汚れも確認し、必要に応じて交換することも皮膚トラブルの防止に役立ちます。
口の中が汚れていると細菌が繁殖して肺炎の原因になるため、気管切開していないときと同様に口腔ケアは重要です。口から食事をしていない方も、1日1回は歯を磨いたりガーゼを濡らして口の中を拭くなどの方法で口の中を清潔に保ちます。
乾燥した空気が直接気管に入らないよう、気管カニューレには「人工鼻」という加湿フィルターを装着します。人工鼻は48時間ごとまたは汚染または破損のある場合に交換が必要です。
気管切開をすると自力でたんを出せなくなることが多いため、1日に数回たんの吸引をおこなう必要があります。このため、気管切開した方が自宅で生活する場合は、家族による介護が欠かせません。
手術後に自宅に帰る場合、家族は看護師からたん吸引について次のようなレクチャーを受けます。
たん吸引をおこなう前に、まずは次のものを準備します。
たん吸引はカテーテルを入れる場所により、次の3つの方法があります。
ここでは、すべての方法で共通する以下の基本の手順について解説します。
せっけんなどを使用し、指の間や手の甲、爪もしっかり洗います。
たんの吸引はまず本人の意思を確認し、次に環境や体位を整えます。口や鼻から吸引するときは、仰向けであごを少し上げるとチューブが入りやすくなります。
またこのとき、鼻の周辺や口の周り、口の中を観察し、出血や腫れ、乾燥などがないかチェックすることも大切です。
吸引用カテーテルを取り出して、吸引器本体のチューブにつなぎます。カテーテルを取り出すときは先端が家具などに触れたりしないよう衛生に気をつけます。
また、吸引器本体のチューブにつなぐ際は、外れないよう奥までしっかり差し込みます。
吸引器の電源を入れて、まずはコップに入れた水できちんと吸えるか確認します。水を吸うことでカテーテル内の滑りを良くするとともに、消毒液内で保管していたカテーテル内部の液を洗い流す役割もあります。
カテーテルの水を切り、アルコール綿でカテーテルの根元から先端までを消毒して吸引圧を合わせます。吸引圧は100〜150mgHgが一般的ですが、必ず医師や看護師に確認して指示に従います。
カテーテルを持つ方の手は親指・人差し指・中指を使い、先端から10㎝あたりをペンを握るように持ちます。反対の手は親指でカテーテルの根元を押し曲げるようにし、吸引圧をかけない状態でゆっくりと挿入します。挿入する前に「入れますよ」と声をかけることも大切です。
カテーテルの根元を押さえていた親指を少しずつ放し、左右にゆっくり回転させながらたんを吸引します。吸引時間は10~15秒以内を目安におこないます。吸引しながらたんの色や量、粘度も観察します。
カテーテルを左右にゆっくり動かしながら引き抜きます。このとき呼吸が苦しくないか、爪や唇の色に異常がないか確認します。
たんが残っているようであれば、呼吸が整ってから再度吸引します。
アルコール綿でカテーテルの外側についたたんを拭き取ったら、コップに入れた水を吸ってカテーテルの内側を洗い流します。カテーテル内にたんが残っていないことを確認したら、吸引器の電源を切ってカテーテルをチューブから外します。
口や鼻からの吸引に使用するカテーテルは、衛生的に保管することで複数回使うことができます。保管方法は以下の2種類があります。
気管カニューレ内の吸引に使用するカテーテルは、1回ごとの使い捨てが推奨されています。しかし、経済的な理由などで使い捨てるのが難しい場合は、衛生的に保管したうえで24時間程度まで繰り返し使うこともあります。
再使用する場合は、口や鼻からの吸引に使うカニューレとは分けて別の消毒液入り容器内で保管します。ただし、たんなどが付着していると細菌が繁殖することがあるため、汚れが落ちないときやくすんできたときは新しいものに交換しましょう。
たんの吸引中は呼吸ができず、息を止めている状態です。酸素が不足しがちになるので、吸引中や吸引直後は顔や爪の色に異常がないかチェックしましょう。また、たんが多いときは複数回に分けるなど、1回の吸引が長くならないように気をつけます。
さらに、医師から指示された吸引圧やカテーテルを挿入する深さを守り、気管を傷つけないようにすることも大切です。
気管切開は、のどから気管までを切開する気道確保方法です。呼吸が上手くいかない場合や、痰や分泌物を上手く吐き出せず苦しいケースに用いられます。気管切開することで空気を行き渡りやすくし、痰の吸引をスムーズにおこえるようにします。
看護師が24時間常駐していたり、医療機関を併設しているなどの施設であれば入居することができます。ただし、胃ろうやインスリン注射などの医療行為と比べると入居可能な施設は少ないので、施設への入居を希望する際は広範囲で探しましょう。
気管切開している人は呼吸器に持病がある場合が多く、症状が急変した際に医療体制の整った施設でないと対応することができません。よって看護師が24時間常駐しているなど、医療特化型の施設を選択する必要があります。
また職員体制についても、緊急時に医師はすぐに来てくれるのか、看護師は日中、夜間で何名いるのかを確認する必要があります。
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