年金の受給が国民年金だけの場合、「介護費用を月5万円くらいでやりくりしたい…」と頭を悩ませている人もいるかもしれません。
そこで今回は、国民年金の平均受給額である月5万円程度で入居できる老人ホームを紹介。さらに、老人ホームの費用だけでなく、介護に関係する費用を軽減する制度についても解説します。
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老後の主な収入源となる年金。その受給額は厚生年金と国民年金で大きく異なります。厚生労働省によると、2021年の厚生年金の平均受給額は月14万5665円、国民年金は月5万6479円でした。
国民年金の平均受給額で入居できる施設は、数が少ないものの、存在します。ただ、収入や資産状況などの条件が厳しいうえに、低価格の老人ホームは人気があるため、入居までに時間がかかる傾向にあります。
次項から、国民年金の平均受給額である5万円程度で入居できる老人ホームについて解説します。
ひとくちに「老人ホーム」と言っても、さまざまな種類の施設があります。それぞれの施設の費用相場は以下のとおりです。
施設の種類 | 公的/民間 | 入居一時金 | 月額利用料 |
---|---|---|---|
介護付き 有料老人ホーム | 民間 | 0~数千万円 | 15~30万円 |
住宅型 有料老人ホーム | 民間 | 0~数千万円 | 11~25万円 |
サービス付き 高齢者向け住宅 | 民間 | 0~数十万円 | 11~25万円 |
グループホーム | 民間 | 0~数十万円 | 10~15万円 |
ケアハウス | 公的 | 0円~数十万円 | 6~17万円 |
特別養護 老人ホーム | 公的 | 0円 | 8~14万円 |
介護老人 保健施設 | 公的 | 0円 | 8~14万円 |
介護医療院 | 公的 | 0円 | 10~20万円 |
ホスピス | 民間 | 施設や入院期間 により異なる | 施設や入院期間 により異なる |
▶老人ホームの種類に関してはこちらのページをご覧ください
老人ホームには「民間施設」と「公的施設」の2種類があります。自治体や社会福祉法人などが運営している公的施設の方が費用が安い傾向があり、月5万円で入れる場合があるのは公的施設です。
「特定入所者介護サービス費」とは、入居する方の収入や資産などが基準以下だったときに食費と居住費が軽減される制度。この制度が適用される施設は以下の3つの公的施設です。
また、食費と居住費は所得に応じて、以下の5段階に分けて定められています。所得が少ないほど支払い額が抑えられる仕組みなので、入居する方がどの段階に当てはまるのか確認しておきましょう。
出典:「特定入所者介護サービス費」(厚生労働省)
特養は、費用が安いうえに介護度が重度の方や看取りも対応していることから「終の棲家」として人気のある施設です。
居室のタイプが複数あり、居室タイプによって金額が異なります。なかでも、多床室は費用を抑えた設定になっています。
居室タイプや所得の段階ごとの費用は以下のとおりです。
負担限度額(日額) | |||||
---|---|---|---|---|---|
第1段階 | 第2段階 | 第3段階① | 第3段階② | ||
食費 | 300円 | 390円 | 650円 | 1360円 | |
居住費 | 多床室 | 0円 | 370円 | 370円 | 370円 |
従来型個室 | 320円 | 420円 | 820円 | 820円 | |
ユニット型個室的多床室 | 490円 | 490円 | 1310円 | 1310円 | |
ユニット型個室 | 820円 | 820円 | 1310円 | 1310円 |
老健は、医療ケアやリハビリが充実している施設です。リハビリなどによって在宅復帰を目的とした施設のため、入居期間は原則として3~6ヵ月と定められています。
長期間の入院から在宅復帰をする際に利用されることが多い施設です。
居室タイプや所得の段階ごとの費用は以下のとおりです。
負担限度額(日額) | |||||
---|---|---|---|---|---|
第1段階 | 第2段階 | 第3段階① | 第3段階② | ||
食費 | 300円 | 390円 | 650円 | 1360円 | |
居住費 | 多床室 | 0円 | 370円 | 370円 | 370円 |
従来型個室 | 490円 | 490円 | 1310円 | 1310円 | |
ユニット型個室的多床室 | 490円 | 490円 | 1310円 | 1310円 | |
ユニット型個室 | 820円 | 820円 | 1310円 | 1310円 |
介護医療院は、充実した医療ケア体制と介護体制が特徴の施設です。医師が常駐しており、たんの吸引や経管栄養などの常に医療ケアが必要な方も受け入れています。
ただし、入居は要介護1以上の医療ケアが必要な方のみと定められています。
居室タイプや所得の段階ごとの費用は以下のとおりです。
負担限度額(日額) | |||||
---|---|---|---|---|---|
第1段階 | 第2段階 | 第3段階① | 第3段階② | ||
食費 | 300円 | 390円 | 650円 | 1360円 | |
居住費 | 多床室 | 0円 | 370円 | 370円 | 370円 |
従来型個室 | 490円 | 490円 | 1310円 | 1310円 | |
ユニット型個室的多床室 | 490円 | 490円 | 1310円 | 1310円 | |
ユニット型個室 | 820円 | 820円 | 1310円 | 1310円 |
月5万円でやりくりするためには、価格の安い老人ホームを選ぶのとあわせて、介護費用の減免制度も活用することも大切です。
介護費用を軽減できる制度には、以下があります。
高額介護サービス費とは、月々の介護サービス費に所得に応じた上限額を設け、利用者の経済的負担を軽減する制度です。自己負担額が上限を超えた場合、超過分が払い戻されます。
高額介護サービス費の負担限度額は、世帯や利用者本人の所得によって、以下のように定められています。
区分 | 負担の上限(月額) |
---|---|
生活保護を受給している方など | 15,000円(個人) |
前年の「公的年金等収入額」と「その他の合計所得金額」の合計が年間80万円以下 | 24,600円(世帯) 15,000円(個人※1) |
世帯の全員が市区町村民税を課税されていない方 | 24,600円(世帯) |
市区町村税課税~課税所得380万円(年収約770万円)未満 | 44,400円(世帯) |
課税所得380万円(年収約770万円)~課税所得690万円(年収約1160万円)未満 | 93,000円(世帯) |
課税所得690万円(年収約1160万円)以上 | 140,100円(世帯) |
「高額介護合算療養費」とは、1年間の医療保険と介護保険の自己負担額の合計額が、所得に応じた限度額を超えたときに、超過分が「高額介護合算療養費」として支給される制度です。
「高額介護サービス費」は上限額を超えたときに自治体から通知が送られるのに対して、「高額介護合算療養費」は通知の送付がない自治体もあるため、注意が必要です。
高額介護合算療養費の負担限度額は、世帯や利用者本人の所得によって、以下のように定められています。
70歳以上 | 70歳未満 | |
---|---|---|
年収約1160万円以上 | 212万円 | 212万円 |
年収770万~1160万円 | 141万円 | 141万円 |
年収370万~770万円 | 67万円 | 67万円 |
年収156万~370万円 | 56万円 | 60万円 |
市町村民税世帯非課税 | 31万円 | 34万円 |
市町村民税世帯非課税 (所得が一定以下) | 19万円 | 34万円 |
特定の条件を満たしている場合、介護保険料の支払いが免除もしくは減額される制度があります。自治体により条件が異なるため、市区町村の窓口に確認が必要です。
例えば、以下のような場合に介護保険料が減免されることがあります。
月5万円の国民年金の収入だけで入居できる老人ホームが見つからない場合、解決策として検討したいのが生活保護の受給です。
生活保護を受給すると、老人ホームの費用が生活保護費でまかなわれます。また、生活保護の方を対象とした料金プランを設定している民間の老人ホームもあります。
公益財団法人全国有料老人ホーム協会によると、生活保護受給者を受け入れているのは、介護付き有料老人ホームで11.3%、住宅型有料老人ホームで49%、サービス付き高齢者向け住宅で32.1%にのぼります。
施設が独自に生活保護受給者の受け入れ人数を制限する場合が多いですが、生活保護を受給することで公的施設とあわせて民間施設も検討できるようになり、選択の幅が広がることは確かです。
参考:「有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅に関する実態調査研究事業報告書」(厚生労働省)
月額5万円で入居できる老人ホームには、「特別養護老人ホーム」「介護老人保健施設(老健)」「介護医療院」があります。ただ、月5万円でまかなうためには特定入所者介護サービス費制度を利用する必要があります。
特定入所者介護サービス費制度を利用するためには、所得や資産などに条件があります。また、お住まいの市区町村の窓口での申請が必要です。
介護に関する費用を抑えられる制度には、「高額介護サービス費」「高額介護合算療養費制度」「介護保険料の免除・軽減制度」があります。
これらの制度は、利用者やその世帯の所得に応じて自己負担額の上限を定め、それを超えた場合に払い戻されたり、特定の状況で支払いが難しい場合に、介護保険料を減免する制度です。
所得の基準額や特別な条件がありますので、お住まいの市区町村の窓口に確認してください。
現在の収入だけでは老人ホームの支払いができない場合、生活保護の受給も解決策のひとつです。
生活保護を受給すると、老人ホームの費用が生活保護費でまかなわれます。ただし、すべての老人ホームで生活保護の方を受け入れているわけではないので、施設探しのときに注意が必要です。
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