特別養護老人ホームは入所待ちができるほど人気の高い介護施設です。その理由のひとつは、入居時費用がかからず、費用を抑えることができるからです。
この記事では気になる特別養護老人ホームの費用について紹介します。
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特別養護老人ホームは、在宅での生活が困難な高齢者に対し介護を提供する施設で、略して「特養」とも呼ばれます。公的な介護施設のひとつで、3つの特徴があります。
特別養護老人ホームでは、入浴や排泄・食事といった介護のほか、日常生活の介助・機能訓練・健康管理なども受けられます。終身での利用ができるため、「終の棲家(ついのすみか)」として選ぶ方の多い施設です。
特別養護老人ホーム(以下特養)は、初期費用や入所一時金が不要で利用者の経済的負担が少ない点が魅力の一つです。入所時に支払うのは介護サービス費、生活費など月々に発生する月額利用料のみです。
特養の月額費用は実にさまざまで居室の賃料、食費、介護保険の負担額によって決まります。なお、特養には居室タイプが4種類あるので、それぞれの費用相場を見ていきましょう。
1室1名の完全個室を指し、プライバシーの確保が可能です。費用の相場は9.6~10.4万円です。
参考:「介護報酬の算定構造」(厚生労働省)
古くからあるスタイルで1室に2名から4名のベッドを設置しています。費用の相場は8.6~9.4万円です。
要介護度 | 合計 | 内訳 | ||
---|---|---|---|---|
介護保険 自己負担額 |
賃料 | 食費 | ||
要介護1 | 86,670円 | 17,670円 | 25,650円 | 43,350円 |
要介護2 | 88,770円 | 19,770円 | ||
要介護3 | 90,960円 | 21,960円 | ||
要介護4 | 93,060円 | 24,060円 | ||
要介護5 | 95,130円 | 26,130円 |
出典:「介護報酬の算定構造」(厚生労働省)
介護手法としてユニットケアを取り入れています。個室を1名で利用しダイニング、キッチン、浴室、トイレなどを共同利用します。費用相場は12.3~13.1万円です。
要介護度 | 合計 | 内訳 | ||
---|---|---|---|---|
介護保険 自己負担額 |
賃料 | 食費 | ||
要介護1 | 123,630円 | 20,100円 | 60,180円 | 43,350円 |
要介護2 | 125,730円 | 22,200円 | ||
要介護3 | 127,980円 | 24,450円 | ||
要介護4 | 130,110円 | 26,580円 | ||
要介護5 | 132,180円 | 28,650円 |
参考:「介護報酬の算定構造」(厚生労働省)
以前は多床室だった居室を改装し簡易的な壁で個室にしています。費用相場は11.3~12.1万円です。
要介護度 | 合計 | 内訳 | ||
---|---|---|---|---|
介護保険 自己負担額 |
賃料 | 食費 | ||
要介護1 | 112,650円 | 20,100円 | 49,200円 | 43,350円 |
要介護2 | 114,750円 | 22,200円 | ||
要介護3 | 117,000円 | 24,450円 | ||
要介護4 | 119,130円 | 26,580円 | ||
要介護5 | 121,200円 | 28,650円 |
参考:「介護報酬の算定構造」(厚生労働省)
特養の月々の費用には賃料、食費、施設介護サービス費、日常生活費、介護サービス加算などがあります。
「賃料」は通常の賃貸物件の家賃にあたり、施設に入所するために毎月必要な費用です。
特別養護老人ホームの賃料は厚生労働省の定める「基準費用額」に基づいて設定されており、ユニット型個室や従来型個室など、居室のタイプにより金額が異なります。
「食費」も賃料と同じく基準費用額に基づいて決められています。1日3食分で計算されるため、外出などで1食抜いたとしても1日分で請求されます。
ただし、入院や外泊で数日不在になる場合は食事を停止することができ、その間の食費は請求されません。
「施設介護サービス費」は、介護サービスを受けるために必要な費用です。
要介護度が上がるほど高額になるほか、居室のタイプによっても異なります。介護付き有料老人ホームなどとは異なり、おむつ代も施設介護サービス費に含まれます。
「日常生活費」は、理美容代や日用品代・お菓子など、日常生活で発生するさまざまな費用です。また、施設内のレクリエーションで利用する材料費なども日常生活費に含まれます。
「介護サービス加算」は、手厚い人員体制や入所者の状態に応じたサービスの提供など対し、施設介護サービス費に上乗せして支払う費用です。
ここでは、主な加算を一部紹介します。
「夜間職員配置加算」は、夜間に基準よりも多くの介護・看護スタッフを配置することに対して加算されます。この加算の対象施設は夜間の見守り体制が手厚いだけでなく、24時間褥瘡(床ずれ)のケアなどにも対応してもらえます。
「経口維持加算」は、嚥下機能や認知機能の低下などにより普通の食事が困難になった入所者への、口から食べる楽しみを得るための支援に対して加算されます。
具体的には、口から食べるための「経口維持計画書」を入所者ごとに作成し、医師または歯科医師の指示のもと、管理栄養士または栄養士が栄養管理をおこなうなどの要件があります。
かつての特養では、食事、入浴などの生活支援に比重を置いていたため、医療面のケアはそれほど充実していませんでした。
しかし、昨今の高齢化により医療ケアのニーズが高まり、特養でも医療・介護面を強化する動きが不可欠になっています。そのため、積極的な医療ケアや介護サービスを提供していくための専門スタッフの確保が必須です。
特養では専門スタッフの配備や医療・介護サービスを提供するにはサービス加算が発生します。施設によって加算内容は異なりますが、加算が多いほど手厚い人員配備や医療・介護サービスを行っているといえます。
特養は介護保険施設にあたるので、食費、必要な日用品代、理美容費、医療費、レクリエーション費などは自己負担ですが、おむつ代は施設負担となり請求されません。
なお、特養以外の民間の有料老人ホームではおむつ代は実費請求です。
おむつなどの介護用品の実費請求が積み重なると経済的負担は大きくなり、この点からも特養は他の民間有料老人ホームよりも経済的な負担が少なく安心です。
特養は介護保険制度と老人福祉法の観点から高齢者保護の機能があります。そのため特養の費用を軽減できる制度があります。
前述の月額利用料は、所得に応じて支払い額が決まる仕組みになっています。簡単に言うと、所得が少ない人ほど支払いの負担が軽くなる、ということです。
この分類は5段階に分かれているので、以下で入居者本人がどれに当てはまるのか確認しておきましょう。
出典:「特定入所者介護サービス費」(厚生労働省)
生活保護受給者、老齢福祉年金受給者で本人及び世帯全体が市民税非課税
居住費の負担限度額 | 食費の負担限度額 | |
---|---|---|
多床室 | 0円 | 9000円 |
従来型個室 | 9600円 | |
ユニット型個室的多床室 | 1万4700円 | |
ユニット型個室 | 2万4600円 |
出典:「特定入所者介護サービス費」(厚生労働省)
本人及び世帯全体が市民税非課税で合計所得金額+課税年金収入額が80万円以下の方
居住費の負担限度額 | 食費の負担限度額 | |
---|---|---|
多床室 | 1万1100円 | 1万1700円 |
従来型個室 | 1万2600円 | |
ユニット型個室的多床室 | 1万4700円 | |
ユニット型個室 | 2万4600円 |
出典:「特定入所者介護サービス費」(厚生労働省)
世帯全員が住民税非課税で、本人の合計所得金額と課税年金収入額と非課税年金収入額の合計が年額80万円を超え120万円以下の人
居住費の負担限度額 | 食費の負担限度額 | |
---|---|---|
多床室 | 1万1100円 | 1万9500円 |
従来型個室 | 2万4600円 | |
ユニット型個室的多床室 | 3万9300円 | |
ユニット型個室 | 3万9300円 |
出典:「特定入所者介護サービス費」(厚生労働省)
世帯全員が住民税非課税で、本人の合計所得金額と課税年金収入額と非課税年金収入額の合計が年額120万円を超える人
居住費の負担限度額 | 食費の負担限度額 | |
---|---|---|
多床室 | 1万1100円 | 4万800円 |
従来型個室 | 2万4600円 | |
ユニット型個室的多床室 | 3万9300円 | |
ユニット型個室 | 3万9300円 |
出典:「特定入所者介護サービス費」(厚生労働省)
上記以外の人
居住費の負担限度額 | 食費の負担限度額 | |
---|---|---|
多床室 | 2万5200円 | 4万3350円 |
従来型個室 | 3万4500円 | |
ユニット型個室的多床室 | 4万9200円 | |
ユニット型個室 | 5万9100円 |
出典:「特定入所者介護サービス費」(厚生労働省)
制度を利用するには本人または代理人のお住まいの各市区町村の窓口へ申請します。申請時に必要な書類や不明な点を事前に各自治体へ確認して準備しましょう。
「高額介護サービス費制度」は、1カ月の介護保険サービス自己負担額が限度額を越えた場合、越えた分の金額が戻ってくる制度です。支給対象の方には自治体から「支給申請書」が送られくるので、忘れずに申請しましょう。
高額介護サービス費の支給を受ける際は、各自治体の窓口に申請しましょう。以下、申請時に必要な主な書類をまとめました。
「高額医療・高額介護合算制度」は、同一世帯で支払った介護保険サービスと医療費の自己負担額の合計が基準を越えた場合、越えた分の金額が戻ってくる制度です。合算期間は8月1日から翌年の7月31日で、利用するには自治体の国民健康保険窓口で申請します。
ただし、同一世帯内でも「夫が75歳以上で後期高齢者医療保険、妻が75歳未満で国民健康保険」など、加入する保険が異なる場合は合算することができません。さらに、基準を500円以上越えない場合は適用外です。
高額医療・高額介護合算制度を利用する際は、各自治体の窓口に申請しましょう。以下、主に必要な書類をまとめました。
特養は、公的な介護保険施設にあたるため民間の有料老人ホームと比べ、入所一時金などの初期費用もかからず、月額利用料も施設負担の部分もあり安価に設定されています。
月額利用料は所得や減額制度の利用により異なりますが、一般的に年金で十分まかなうことは可能であると言われています。特養の最大のメリットは低料金であること。年金収入で生活したい要介護3以上(特例の要介護1・2)の方にはおすすめです。
特養は低コストでの介護施設を検討している方におすすめです。他の施設と比較しても高額な初期費用の心配もなく、原則終身にわたり入所でき、24時間介護が受けられ、公的施設なので倒産のリスクもありません。
非常に魅力的な施設な分、人気が高く、申請してから入居までの待ちできるまでの期間が長いのがデメリットです。ただ昨今では、待機人数が減少し、比較的入居しやすくなってきています。
出典:「特別養護老人ホームの入所申込者の状況」(厚生労働省)
介護保険施設は特養のほかに介護老人保健施設、介護療養型医療施設、介護医療院の4種類あります。特養は介護ケアと長期入居ができるので特に人気です。
特養の入所までに相当の時間を要することも珍しくありません。最近では初期費用のない有料老人ホームに入居しながら待機する方も増えています。
特養に申請をしたものの、待機期間が発生した場合どのように過ごせば良いでしょうか。
家族での介護が難しい場合、入所待ちの期間別の施設を検討する必要があります。最近では初期費用がない有料老人ホームも増えています。入居一時金がないけれど3ヵ月ごとに入退去審査がある介護老人保健施設で待つ方もいます。
なお、有料老人ホームでは自分で用意するベッドや寝具、家具は、特養では備品になりますので、レンタルすることをおすすめします。
特養への入所待ちの期間に在宅サービスを利用する選択肢もあります。入所までの期間が短い場合に選択しやすい方法です。自宅で介護保険の範囲内でサービスを受けることができますし、高齢化に伴い利便性の高いサービスが増えることが期待できます。
介護者の用事や体調不良で自宅での介護が難しいこともあるでしょう。その場合は在宅介護者が一時的に入所し介護を受けるサービス(ショートステイ)を利用することも可能です。
施設を利用してみることで不明な点が解消できますし、ならし期間として馴染めるメリットと、介護者の介護疲れを回復させる効果もあります。
特別養護老人ホームは、入居一時金が不要で支払うのは毎月の利用料のみです。月額利用料の目安は居室タイプによりますが、約9~13万円です。入居者の要介護度によって変動があるので、しっかり確認しましょう。
特別養護老人ホームは月額利用料が安価ということで待機人数も多く、入居までに1年以上かかることも珍しくありません。少しでも早く入居するためには、「同時に2カ所以上申し込む」「人気の低い居室タイプに申し込む」「探す地域を拡げてみる」といった手段が挙げられます。
また経済的に少し余裕があるのであれば、有料老人ホームへ一旦入居し、そこで特別養護老人ホームの空きを持つというのもひとつの手です。
特別養護老人ホームは、国からの助成金や税金面で優遇されているため安価で運営できています。入居者にとって初期費用がかからないことはメリットで、介護度が上がっても終身的に生活できるのは魅力的です。
その反面、安価ということもありどの施設も満室の傾向が強いというのが現状です。
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