介護保険制度はいつから始まった?創設された背景と最新の改正内容

介護保険制度はいつから始まった?創設された背景と最新の改正内容

更新日 2024/04/09

介護保険制度は、高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みとして創設されました。

「介護保険制度ができた理由を知りたい」「どのように改正されてきたの?」と思う人も少なくないでしょう。

この記事では、介護保険制度について、創設された背景やこれまでの改正内容について説明していきます。

介護保険制度は2000年4月にスタート 

介護保険制度は、高齢者の介護を社会全体で支え合うことを目的に、2000年4月に始まりました(介護保険法の成立は1997年)。

介護保険法が制定される以前は、行政が利用者が使うサービスや介護施設を選択する「措置」がおこなわれていたため、利用者は自由にサービスや施設を選べませんでした。また、福祉サービスの基盤整備も不十分であったため、高齢者の社会的入院や医療費の膨張が問題視されていたのです。

このような問題を解決するための新しい社会保険として、介護保険は成立しました。

介護保険制度が作られた背景

介護保険制度が作られた背景には、以下の3つの要因があります。

  1. 介護を必要とする高齢者の増加
  2. 核家族化の進行
  3. 医療技術が進み、寿命が伸びた
  4. 介護による離職が増加

以下で詳しく見ていきましょう。

介護を必要とする高齢者の増加

介護保険制度が作られた背景として、高齢者人口の増加や介護期間の長期化によって、介護を必要とする高齢者が増えたことが挙げられます。

日本の総人口に占める高齢者の割合(高齢化率)は、1950年(4.9%)以降、上昇が続き1994年には14%になりました。団塊の世代がすべて75歳となる2025年には30%を超え、65歳以上の人口を15~64歳の2人で1人を支えることになると見込まれています。

このように少子高齢化の進展に伴う、要介護高齢者の増加や介護期間の長期化による介護ニーズの増大が介護保険制度を導入した背景のひとつとしてあります。

核家族化の進行

高齢者を支えてきた家族をめぐる状況が変化したことも要因です。

核家族化(夫婦と未婚の子どもからなる家族など)の進行によって、家族で高齢者を介護することが少なくなりました。

一人暮らしの高齢者や、高齢者が高齢の家族を介護する「老老介護」や、認知症の人が認知症の家族を介護する「認認介護」が増えています。

こうした状況に、これまでの福祉制度の枠組みでは対応できなくなったため、介護保険制度が導入されたのです。

医療技術が進み寿命が伸びた

医療技術の発展も介護保険制度が作られた背景として挙げられます。

医療技術の進歩によって、これまで治らなかった病気が治るようになり、救えなかった命が救えるようになりました。

一方で、長生きが可能となり、全体的に寿命が延びたことで、介護期間が長期化するという問題が生じました。

介護による離職が増加

家族の介護のために、仕事を辞めてしまう人が増加したことも要因です。

仕事を辞めたことで生活に困窮する人が出てきたり、生活困窮から家庭内での介護虐待につながったりするケースが増えて社会問題化しました。

介護保険制度は、こうした問題に対応するため福祉サービスの基盤を作り、介護を社会全体で支えることを目指して創設されました。

これまでの介護保険制度の改正内容

介護保険制度は、開始当初より不完全であり「走りながら考える」制度と言われています。増え続ける要介護者と介護を取り巻く環境の変化に柔軟に対応するため、介護保険制度の法改正は繰り返されています。

2005年〜2020年の改正内容は以下の通りです。

2005年改正(2006年4月施行)
  • 新たなサービス体系の確立
  • サービスの質の確保・向上
  • 予防重視型システムへの転換
  • 施設給付の見直し
  • 負担の在り方・制度運営の見直し
2008年改正(2009年5月施行)
  • 業務管理の体制整備
  • 本部への立入検査など
  • 処分逃れ対策
  • 指定・更新の欠格事由の見直し
  • サービス確保対策の充実
2011年改正(2012年4月施行)
  • 医療と介護の連携の強化
  • 介護人材の確保とサービスの質の向上
  • 高齢者の住まいの整備
  • 認知症対策の推進
  • 保険者による主体的な取り組みの推進
  • 保険料の上昇の緩和
2014年改正(2015年4月施行)
  • 新たな基金の創設と医療・介護の連携強化(地域介護施設整備促進法等関係)
  • 地域における効率的かつ効果的な医療提供体制の確保(医療法関係)
  • 地域包括ケアシステムの構築と費用負担の公平化(介護保険法関係)
2017年改正(2018年4月施行)
  • 自立支援・重度化防止に向けた保険者機能の強化等の取り組みの推進(介護保険法)
  • 医療・介護の連携の推進等(介護保険法、医療法)
  • 地域共生社会の実現に向けた取り組みの推進等(社会福祉法、介護保険法、障害者総合支援法、児童福祉法)
  • 2割負担者のうち特に所得の高い層の負担割合を3割とする(介護保険法)
  • 介護納付金への総報酬割の導入(介護保険法)
2020年改正(2021年4月施行)
  • 地域住民の複雑化・複合化した支援ニーズに対応する市町村の包括的な支援体制の構築の支援
  • 地域の特性に応じた認知症施策や介護サービス提供体制の整備等の推進
  • 医療・介護のデータ基盤の整備の推進
  • 介護の人材確保及び業務効率化の取り組みの強化
  • 社会福祉連携推進法人制度の創設

以下で詳しく解説します。

2005年に1回目の改正

2005年に大きく改正されたのは、要介護認定区分です。予防重視型システムへの転換として、要介護認定区分を「要支援、要介護1〜5」の6段階から現在の「要支援1・2、要介護1〜5」の7段階に変更。それに合わせて要支援者の予防給付サービスと地域支援事業が新設されました。

また、高齢者が住み慣れた地域で最後まで住み続けられるように、地域密着型サービス地域包括支援センターが創設されたことも2005年の改正内容です。

施設給付も見直され、居住費用と食費を保険給付の対象外に。これによって、施設入所にかかる居住費用と食費は、利用者の全額自己負担となりました。しかし、低所得者に対する補足給付が設けられたので、結果的に低所得者の費用負担は抑えられました。

2008年に2回目の改正

2008年改正では、主に介護事業者に対する法令遵守などの業務管理体制や、指定・更新時の欠格事由の見直しなど、コンプライアンス面を強化する改正がおこなわれました。

介護事業者による組織的な不正が社会問題になったことを受けて、介護事業者本部への立入検査が可能になるなど、不正を起こさせない対策も強化されています。

2011年に3回目の改正

2011年改正のポイントは、地域包括ケアシステムの取り組みがスタートしたことです。

介護が必要になっても、住み慣れた地域で、なじみの人が回りにいる環境の中、できる限り長く生活し続けるためには「医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスが切れ間なく、有機的かつ一体的に提供されることが重要である」という方向性が打ち出されたのです。

医療と介護の連携を強化して地域包括ケアシステムを推進するために、「24時間随時サービスの定期巡回・随時対応型訪問介護看護」、小規模多機能型居宅介護訪問看護を組み合わせた複合型サービス「看護小規模多機能型居宅介護」の導入がおこなわれています。

そのほかに、介護予防・日常生活支援総合事業が自治体の判断で実施可能となりました。

2014年に4回目の改正

2014年は、前年に社会保障制度改革推進法が成立したことを受けて、効率的で質の高い医療提供体制の構築や、地域包括ケアシステムの構築が考えられ始めたことがポイントです。

その結果、予防給付の「介護予防訪問介護」と「介護予防通所介護」が地域支援事業に移行することになりました。また、サービス利用者の自己負担割合が、一律の1割負担から1〜2割へ引き上げられました。さらに、特別養護老人ホームの新規入所が要介護3以上と見直されたのも2014年の改正内容です。

2017年に5回目の改正

5回目の改正となる2017年は、地域包括ケアシステムの構築に向けて、高齢者の自立支援、要介護状態の重度化防止、地域共生社会の実現を図ることが重要視されました。

市町村が高齢者の自立支援や重度化防止に向けた取り組みをおこなった場合、国から「保険者機能強化推進交付金」が与えられることになりました。

また、医療と介護の連携推進を図るため、新たな介護保険施設として、医療と介護の2つの機能を兼ね備えた「介護医療院」を創設することになりました。

地域共生社会の実現を図るため、介護保険と障害福祉制度に共生型サービスを位置付けたほか、現役並みの所得がある高齢者の自己負担割合が3割に引き上げられました。

2020年の最新の改正内容

2020年の改正では、どのような点が変わったのか詳しく見ていきましょう。

地域包括支援センターの役割強化

地域包括支援センターは、高齢者を介護・医療・保険・福祉などさまざまな側面から支える「総合相談窓口」です。

改正では地域住民の課題をさらに幅広く解決するため、高齢者だけでなく障害、子ども、貧困、参加支援の相談窓口としての役割も加えることになりました。また、このための財政支援などの規定や、関係する法律も整備されました。

認知症や介護サービスに関する施策の整備

認知症の方も地域社会の一員として参加できるよう、支援体制の強化や認知症予防の研究を進めることになりました。また、PDCAサイクルに沿って介護データベースを活用し、効果的かつ効率的な地域支援をおこないます。

さらに、人口構造の変化の調査や有料老人ホームサービス付き高齢者向け住宅設置状況の把握、加えて市町村間の情報連携の強化によって、高齢者1人1人が適切な介護サービスを受けられるよう介護基盤を整備します。

医療・介護データの整備・強化

地域に合った質の高いサービスを提供するためには、地域の医療や介護の状況を正しく把握するとともに、調査分析・研究が必要です。

このため、データ化した情報を活用できるよう、要介護認定や介護レセプトの情報に加え、地域支援サービス利用者の基本情報やデイサービス・訪問介護の利用情報、健康状態や介護ケアについての情報も開示請求できるようになりました。

介護の人材確保及び業務効率化の取り組みの強化

深刻な介護分野の人材不足を緩和するためには、人材確保や業務効率化のための体制強化が必要です。このため、介護福祉士養成施設卒業者の国家試験義務付けの経過措置が延長されました。

従来、介護福祉士養成施設を卒業した人は国家試験を受験せずに介護福祉士資格を取得できましたが、平成28年以降に卒業した人は国家試験の受験が必要になりました。

国家試験の必須化は令和5年までの経過措置が設けられていましたが、今回の改正により令和8年度まで延長されることになりました。

社会福祉連携推進法人制度の創設

人口バランスが変動し福祉ニーズが多様化する中で、地域共生社会を実現するために「社会福祉連携推進法人制度」が新設されました。

社会福祉連携推進法人とは、社会福祉法人やNPO法人を社員とする非営利法人で、福祉サービス事業者間の連携・協働をおこないます。

よくある質問

介護保険料はいつから徴収されますか?

介護保険に加入できるのは、40〜64歳の医療保険加入者の方(第2号被保険者)と、65歳以上の方(第1号被保険者)です。40歳になると自動的に資格取得となり、誕生月から保険料の徴収が始まります。

第2号被保険者は、加入する医療保険の保険料と一体的に徴収され、第1号被保険者は、原則として年金からの天引きとなります。

介護保険が適用されるサービスにはどんなものがありますか?

訪問介護や訪問入浴など家に来てもらう訪問系サービス、デイサービスなどの通所系サービス、ショートステイなどの宿泊系サービスがあります。福祉用具のレンタルや購入、住宅改修などにも介護保険が適用されます。

施設では、特別養護老人ホームなどの介護保険施設のほか、介護付き有料老人ホームなども介護保険の対象です。

介護保険サービスを利用するための条件はなんですか?

第1号被保険者となる65歳以上の方は、要介護認定または、要支援認定を受けたときに、原因を問わずに介護保険サービスを利用することができます。

40~64歳の第2号被保険者は、加齢に起因する特定疾病が原因で要介護(要支援)認定を受けられれば、介護保険サービスが利用可能です。

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