介護サービス費の負担が重なってくると、「補助や助成を受けられる制度はないかな?」と疑問を持つことがあるのではないでしょうか。
介護費用を抑えられる補助金制度は複数あり、活用できれば経済的負担が軽減できます。そこで本記事では、介護費用の軽減に利用できる補助金や助成制度を7つ紹介します。
支給金額や条件、申請方法も詳しく解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
介護休業給付とは、怪我や病気によって常時介護が必要な家族のために休業する際、給料の67%が支給される制度です。介護を必要とする方が同一家族の場合、93日を限度に3回までは分割して支給を受けられます。
休業期間を終えると職場への復帰が保証されている制度でもあり、仕事と介護の両立を支援する制度といえるでしょう。
休業開始時賃金日数とは、介護休業開始前6ヵ月間の総支給額を180で割った金額を指します。
ただし、給付額には上限があり、介護休業期間中に会社から賃金が支払われると給付額が減額される場合もあるので、注意が必要です。
具体的な支給条件は、以下の通りです。
なお、会社から休業手当が支給されている場合などは、給付が受けられない可能性もあります。休業中の給与支払いについては、あらかじめ会社の経理担当者に確認しておきましょう。
介護休業給付の申請は、原則として勤務先を経由してハローワークでおこないます。必要書類は以下の通りです。
なお、申請期限は「介護休業終了日翌日から2ヵ月後の月の末日」と定められています。期限を過ぎると書類を受理してもらえないので、速やかに申請しましょう。
家族介護慰労金とは、介護保険サービスを利用せずに要介護4〜5の方を介護している家族に対して、自治体が支給する給付金のこと。家族による介護への労いと、経済的負担の軽減を図る目的で設けられています。
ただし、自治体によっては実施していなかったり、支給要件が細かく決まっていたりするため、確認が必要です。
家族介護慰労金は、自治体より年額約10万円が支給されます。自治体によって金額が異なる場合があるので、申請時に確認しましょう。
ただし、介護保険料などの滞納がある場合は、支給されないケースがあります。
それでは次に家族介護慰労金の支給条件について説明します。誰でももらえるというわけではなく、各自治体により条件が異なるので、詳細はお住まいの地域の役所にお問合せください。
家族介護慰労金の支給を受けるには、住んでいる自治体への申請が必要です。各自治体によって申請方法や申請先が異なりますが、基本的な申請の流れは同じです。
同居家族が介護認定度4~5と認定された要介護者を1年以上介護している場合、家族介護慰労金の支給申請が可能です。
随時申請できるので、支給条件に当てはまった時に同居の家族の方が申請してください。
介護保険を利用して福祉用具を購入した場合には、一部助成を受けられます。
具体的には、以下の「特定福祉用具」の購入が対象です。
これらの特定福祉用具を購入する際は、事前の申請で助成対象となります。
福祉用具購入費の助成を受けられるのは、以下をすべて満たす要支援1~2、要介護1〜5の方です。
福祉用具の購入費用が助成されるのは、自宅で使用する場合に限ります。入院中や施設への入所中は対象外となるので、注意しましょう。
福祉用具購入費の支給金額は、1年間(4月〜翌年3月末)で10万円まで。対象の特定福祉用具を購入する際に、いったん全額を支払い、その後自治体に申請して一部償還払いとなります。
償還払いとなる金額は、介護保険の1〜3割の負担割合によって異なります。例えば1割負担の人であれば最大9万円、2割負担の人であれば最大8万円が払い戻される仕組みです。
ただし、自治体に申請しなければ払い戻しされないので、忘れずに申請しましょう。
福祉用具購入費の助成を受けるには、自治体の窓口へ申請が必要です。
申請から還付までの流れは、以下の通りです。
助成の対象となるためには、特定福祉用具販売事業所で福祉用具を購入する必要があります。どこで購入したらいいかわからない場合は、担当のケアマネジャーに相談してみましょう。
居宅介護住宅改修費とは、要介護者が住宅に必要な手すりをつけたり、危険箇所を取り除いたりなどの改修を一部助成する制度です。
以下の改修をおこなった場合、居宅介護住宅改修費が支給されます。
なお、新築工事の場合は居宅介護住宅改修費の利用ができません。
新築工事が完了した後に、手すりやスロープなどを設置する工事をおこなえば、居宅介護住宅改修費の対象となります。
住宅改修費の支給限度額は、要介護や要支援の認定区分に関わらず20万円が上限です。ただし、助成される費用は、介護保険の1〜3割の負担割合によって異なります。
例えば20万円の改修工事をした場合、1割負担の人であれば2万円、2割負担の人であれば4万円で住宅改修が可能です。
住宅改修費の支給は原則1回ですが、要介護認定区分が3段階上がった場合や、別の住宅に転居した場合は、再度申請できます。
住宅改修費の支給を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。
福祉用具購入費と同様に、自宅で生活する方のみ対象となります。
住宅改修費の申請の流れは、以下の通りです。
介護保険で住宅改修をするためには、工事前に自治体に申請する必要があります。
許可を得ずに改修をすすめると、介護保険給付の対象外となってしまうので、自治体からの許可が下りたら工事をすすめましょう。
高額介護サービス費とは、1ヵ月に支払った介護サービス費の合計が自己負担限度額を超えたときに払い戻しを受けられる制度です。
世帯全体で支払った介護サービス費の合計額が、所得に応じた自己負担限度額を超過していれば、原則払い戻しの対象となります。
ただし、福祉用具購入費や住宅改修費、施設入所中の食費などは対象外。居住費や日常生活費など介護サービスに直接関係しない費用も対象とならないので、注意しましょう。
高額介護サービス費の自己負担限度額は、世帯所得と介護サービスを利用する本人所得によって決まります。
所得額に応じて6段階の区分に分かれており、決められた自己負担上限額を上回れば、超過分が払い戻されます。
例えば、世帯の自己負担上限額が44,000円の世帯で、1ヵ月の介護サービス費が6万円だった場合は16,000円が払い戻される仕組みです。
区分 | 負担の上限(月額) |
---|---|
課税所得690万円(年収約1160万円以上) | 140,100円(世帯) |
課税所得380万円(年収約770万円)~ 課税所得690万円(年収約1160万円)未満 | 93,000円(世帯) |
市町村民税課税~ 課税所得380万円(年収約770万円)未満 | 44,000円(世帯) |
世帯の全員が市町村民税非課税 | 26,400円(世帯) |
前年の公的年金等収入金額+ その他の合計所得金額の合計が80万円以下の方等 | 24,600円(世帯) 15,000円(個人) |
生活保護を受給している方等 | 15,000円(世帯) |
出典:厚生労働省
高額介護サービス費は、要支援・要介護認定を受けている方が対象です。
対象である居宅サービス、介護施設サービス、地域密着型サービスを利用し、1ヵ月の自己負担上限額を超えた場合に支給されます。
ただし、介護保険料を滞納して給付制限を受けている方は支給されません。
高額介護サービス費は、以下の書類を自治体に持参して申請します。
一度申し込みをすると、自己負担上限額を超えるたび自動的に払い戻しされるので、二度目以降の申請は不要です。
ただし、サービス利用月の翌日1日から2年以内に申請しなければ、払い戻しを受けられなくなるため、速やかに手続きをしましょう。
高額介護合算療養費制度は、医療保険と介護保険の対象費用が高額となる場合に、自己負担を軽減する制度です。
年間に支払った自己負担額の合計が基準額を超過した場合に、申請すると超過分が支給されます。
高額介護サービス費は月ごとの自己負担額を抑える制度ですが、高額介護合算療養費制度は年間の自己負担額を軽減できる制度です。
支給金額は、高額サービス費と同様に世帯収入によって決められます。
例えば70歳未満の非課税世帯の方が、医療費に20万円/年、介護費に20万円/年の合計40万円/年を世帯で支払った場合には、基準額の34万円を超えているため、6万円が支給される仕組みです。
75歳以上 | 70~74歳 | 70歳未満 | |
---|---|---|---|
介護保険+後期高齢者医療 | 介護保険+被用者保険または国民健康保険 | ||
年収約1,160万円以上 | 212万円 | 212万円 | 212万円 |
年収770万~1,160万円 | 141万円 | 141万円 | 141万円 |
年収370万~770万円 | 67万円 | 67万円 | 67万円 |
年収156万~370万円 | 56万円 | 56万円 | 60万円 |
市町村民税世帯非課税 | 31万円 | 31万円 | 34万円 |
市町村民税世帯非課税 (所得が一定以下) |
19万円(注) | 19万円(注) | 34万円 |
(注)介護サービス利用者が世帯内に複数いる場合は31万円。
参照元:高額介護合算療養費制度 概要
高額介護合算療養費制度の対象者は、以下の通りです。
医療保険における世帯とは、加入する医療保険制度が同一かを指します。
例えば、国民健康保険加入者と後期高齢者医療保険制度の加入者は医療保険制度が異なり、同一世帯とはみなされないので、注意が必要です。
高額介護合算療養費制度の申請先は、自治体と医療保険者です。
申請の流れは、以下の通りです。
申請に必要な書類は、自治体や加入している医療保険者によって異なるので、確認してから手続きをしましょう。
なお、自治体から還付されるのは「高額医療合算介護サービス費」、医療保険者から還付されるのは「高額介護合算療養費」となります。
高額療養費制度や高額介護サービス費で還付された金額は、差し引いて計算されるので、注意しましょう。
医療費控除は、1年間で支払った医療費の合計が一定額を超えた場合に受けられる控除のことです。
介護保険サービスでは、以下の医療系のサービスが対象となります。
居宅サービス
施設サービス
その年の1月〜12月に支払った医療費が以下の金額を超えた場合、医療費控除が受けられます。
いずれも医療費控除の上限額は、年間200万円です。
また、医療費は申告者本人の分だけでなく家族のために支払った分も合算できます。年間の医療費を計算するためにも、領収書はなくさずに保管しておきましょう。
医療費控除の適用金額を超えて支払っていた場合、申告ができます。
介護保険サービスの医療系サービスを利用している方で適用金額を超過している場合は、一部還付を受けられます。
ただし、医療費控除は医療費の支払いの翌年から5年以内に申告しなければなりません。医療費控除の適用を受けられる場合は、速やかに申告手続きをしましょう。
医療費控除の申請は、医療費を支払った翌年2月16日〜3月15日の期間内に確定申告をしなければいけません。
申請時には、確定申告書と医療費控除の明細書が必要です。
医療費控除の明細書は税務署で作成できるほか、国税庁のホームページからダウンロードもできるので、活用してみましょう。
介護費用を抑えるための制度は「介護休業給付」「家族介護慰労金」「福祉用具購入費」「居宅介護住宅改修費」「高額介護サービス費」「高額介護合算療養費制度」「医療費控除」の7種類があります。
各制度の概要や支給条件などを確認して、自身が利用できるか確認してみましょう。
介護のために仕事を休むときには「介護休業給付」を利用できます。介護休業給付とは、常時介護が必要な家族のために休業する際、給料の一部が支給される制度です。
原則として勤務先を経由してハローワークに申請すると「休業開始時賃金日数×支給日数×67 %」の金額が支給されます。
休業期間後の職場復帰が保証された「仕事と介護を両立するための制度」といえるでしょう。
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