「親が生活保護を受給しているけど介護保険サービスは受けられないの?」「生活保護で介護保険サービスを利用したいときはどうすれば良いの?」と疑問を持たれている方も多いでしょう。
本記事では、生活保護の介護扶助の申請方法や、生活保護受給者でも入居できる老人ホームに関して解説しています。
「生活保護を受給しているけど介護保険サービスを利用したい」と考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
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生活が困窮している方に対して最低限の生活を保証する生活保護。この受給者は介護保険サービスを利用できるのでしょうか。
以下の項目から、生活保護受給者が介護保険を利用できる条件について見ていきましょう。
65歳以上の方は生活保護を受給していても「第1号被保険者」として介護保険サービスを利用できます。
被保険者になることで、生活保護受給者も保険料を支払うことになりますが、この費用は生活保護費により賄われます。
また、介護保険料分の金額は生活扶助に加算されるため、実質的な金銭負担はありません。
介護保険制度は社会全体で高齢者を支えることを目的とした制度であるため、生活保護受給者であっても、同じように介護保険サービスを受けられます。
介護保険の「第2号被保険者」は、40歳以上65 歳未満の医療保険加入者で、老化に起因する疾病(16の特定疾病)によって、要介護(要支援)状態である場合に認定されます。
しかし、生活保護を受ける場合は医療保険から退会しなければならず、「無保険」の状態なので「第2号被保険者」にはなれません。
そのため、生活保護受給者は「第2号被保険者」ではなく「みなし2号」という扱いになります。「みなし2号」は「第2号被保険者」と同じく、16種の特定疾病である場合にのみ要介護(要支援)の認定を受けられ、介護保険サービスが利用できるようになります。
「第2号被保険者」「みなし2号」が介護保険サービスを利用する場合は、以下の16種の特定疾患に罹患していることが条件です。
「介護扶助」を受ける場合は、生活保護受給者が居住地の福祉事務所や社会福祉課へ申請します。
生活保護は世帯収入が最低生活費以下である場合に不足分をおぎなうものです。働ける人はなるべく働いて収入を得て、所有資産があれば売却して生活費にあてます。それでも生活費が足りない場合のみ生活保護を受給できるのです。
介護扶助は、生活保護受給者が自己負担なく介護サービスの提供が受けられる制度のことです。居宅介護サービスや施設介護サービス、福祉用具の貸与、バリアフリー目的の住宅改修、移送などの費用が含まれます。
「介護扶助」の申請には、要介護認定の結果とケアマネジャーが作成した利用者のアセスメントやケアプラン、サービス利用票、介護保険証のコピーなどが必要になります。これらを福祉事務所が審査し、保護が決定すると介護券が送付されます。
必要書類は各市区町村で異なりますが、沖縄市の場合は以下の通りです。
沖縄市の例
参考:「介護券発行に必要な書類一覧」(沖縄市)
「介護券」とは、生活保護受給者が介護扶助を受けていることを証明するものです。
介護保険では被保険者証が交付されますが、介護扶助には保険証のようなものがないため、福祉事務所などから毎月、介護券が発行されます。
介護券には、介護扶助を受ける人の名前、公費の負担割合、本人支払額、有効期限などが記載されています。
介護保険制度では「介護保険料」と「介護サービス費」の納付義務がありますが、生活保護受給者の場合どうなるのでしょうか。次項から解説していきます。
前に述べた通り、生活保護受給者であっても65歳以上の人は介護保険の「第1号被保険者」なので、毎月、介護保険料を納めなければなりません。しかし、介護保険料は生活保護の「生活扶助」に上乗せとなるので費用負担はありません。
また、介護サービス費の本人負担分は「介護扶助」で負担されます。
したがって、介護保険料と介護サービス利用料にかかる費用はどちらも生活保護費用でまかなわれるので、自己負担する必要はありません。
介護保険料の支払いは「代理納付」で徴収されます。代理納付とは、福祉事務所が市区町村に直接、保険料を支払うことです。
この際、福祉事務所が生活保護の「生活扶助」に上乗せされた介護保険料を天引きするので、特別な手続きは必要はありません。
介護サービス費の支払いは、自己負担分1割が生活保護費の「介護扶助」でまかなわれます。介護保険の給付範囲内であれば、自己負担なしで介護サービスを受けられます。
生活保護を受ける場合は国民健康保険から抜ける必要があります。介護保険料を支払っていないので、40〜64歳の生活保護受給者のほとんどは介護保険の被保険者ではありません。
そのため、介護サービスを利用した際の負担額は全額負担になりますが、生活保護費の「介護扶助」によって全額まかなわれるので、本人が費用負担する必要はありません。
介護サービス費は、指定介護機関が福祉保健センターで交付された介護券の情報をもとに国保連(国民健康保険団体連合会)に請求するので、支払いのための手続きは不要です。
生活保護を受けていても老人ホームに入居できます。以下の4つの施設について詳しく解説します。
特別養護老人ホーム(特養)とは、地方自治体の助成を受けている公的な介護保険施設のこと。所得に応じた負担軽減もあるため生活保護受給者も安心して入所でき、最近では個室タイプの特養も入所可能になりました。
特養の入所条件は65歳以上、要介護度3以上。寝たきりの方も多く、手厚い介護サービスが良心的な金額で終身で受けられます。
そのため人気が高く、ベッドに空きがない施設がほとんど。要介護度が高めの生活保護受給者が入所希望を出しても、待機時間が長く数ヵ月から何年も待つこともあります。
生活保護受給者の入居を希望する場合は、担当のケースワーカーに相談しましょう。
有料老人ホームとは民間が運営する介護施設のことです。入居の際、要介護度の条件がない施設が多いため、日常生活を自立して送れる高齢者も暮らしています。
施設の設備や雰囲気も多種多様で、費用体系もさまざまです。民間運営の介護施設ではありますが、中にはリーズナブルな金額設定をしている有料老人ホームもあるため、生活保護受給者でも入居できる可能性はあります。
とはいえ、すべての有料老人ホームが生活保護受給者の受け入れをしているわけではなく、人数を絞っているケースもあります。
生活保護受給者でも入居可能か、費用はどのくらいかなどケースワーカーや入居希望の施設にまず確認すると良いでしょう。
グループホームとは、認知症高齢者が少人数で共同生活を送る介護施設です。認知症の専門知識とケア技術を持ったスタッフのサポートを受けながら、入居者同士が協力して生活します。
グループホームでも、生活保護受給者の受け入れが可能です。生活保護受給者がグループホームに入居する際は「生活保護法による指定を受けたグループホームなのか?」「生活保護対応の居室はどのぐらいあるのか?」「グループホームと同じ所在地に自分の住民票があるか?」という点を確認しましょう。
サービス付き高齢者向け住宅は、主に要介護度が高くない高齢者を対象にしたバリアフリー賃貸住宅。一般の住宅のように自由に過ごせるうえ、安否確認や生活相談などのサービスが受けられます。
バリアフリーが施されているので、自宅では住みにくくなってしまった方や病院の近くに住みたい方などに選ばれています。
しかし、施設によっては生活保護受給者の受け入れ人数制限があったり、そもそも受け入れていない場合があります。
長期入居することは難しくても、ショートステイなどの短期入居サービスなら利用できる場合もあるので、ケースワーカーと相談しながら施設探しをおこないましょう。
生活保護を受けていない人でも介護保険料が払えなくなることがあります。支払いを滞納すると起こることや、支払いが難しい場合の対処法を解説します。
介護保険料の納付期限は2年と決まっており、滞納期間に応じてペナルティが発生。ペナルティは1年以上滞納すると課されます。
1年以上滞納すると、支払いの際にいったん全額自己負担をしなければなりません。その後、申請することでかかった費用の9割を戻してもらうことができますが、返金されるまでに2ヵ月以上かかります。
1年6ヵ月以上滞納すると、申請して戻ってくるお金から滞納分の保険料が差し引かれるため、戻ってくる金額が減ってしまいます。
そして、納付期限の2年以上滞納すると、自己負担割合が引き上げられてしまいます。介護保険サービスが高額になった場合に利用できる、高額介護サービス費制度の払い戻しも受けられなくなります。
生活保護を受ける基準には達していないものの、生活が苦しく介護保険料の支払いがままならない場合は、「境界層措置」で自己負担を軽くできます。
境界層措置は、保険料などが安くなれば生活保護を受けなくても良い経済状況の人の保険料を軽減する制度です。
手続きは市区町村の役所でおこない、「境界層該当措置証明書」を発行してもらいます。証明書があれば介護保険料の滞納をしてもペナルティがなくなり、介護保険料や介護施設の居住費・食費の減額をしてもらえるようになります。
生活保護受給者をはじめ、被災者や低所得者を対象に介護保険料の減額や減免をおこなっている市区町村もあります。ケアマネジャーなど知識が豊富な人に相談しながら、利用できる制度がないか調べておきましょう。
介護扶助とは、介護または支援が必要な生活保護受給者に対して、介護保険の給付対象となる介護サービスと同等のサービスを受けるための扶助です。
生活保護法で指定された介護機関での介護サービスや用具の貸与などが受けられます。介護サービスや物によって現物支給をするので、生活保護受給者が支払いに関わることはありません。
生活保護を受けている「要介護」認定の人は、居宅介護、施設介護、福祉用具、住宅改修、移送のサービスが受けられます。 「要支援」認定の人は、介護予防・日常生活支援、介護予防福祉用具、介護予防住宅改修、移送のサービスが受けられます。
「移送」は、施設への入退所や居宅療養管理指導に係る交通費、保険給付がおこなわれない居宅介護サービス等利用に伴う交通費が該当します。
年金や手当などを合わせても最低生活費に満たないと判断された場合は、生活保護を受給できます。受け取れる生活保護費は「国が定める最低生活費」から「収入(年金を含む)」を差し引いた額です。
働いて得た収入や、家族・親戚からの仕送り、不動産などの資産、預貯金、保険の返戻金などの合算が最低生活費を上回る場合は生活保護の対象外となります。
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