末期がん患者でも老人ホームに入居できますか?余命宣告を受けた父が入れる介護施設を探しています。

末期がん患者でも老人ホームに入居できますか?余命宣告を受けた父が入れる介護施設を探しています。

更新日 2023/04/21
父は末期がんで余命半年と言われています。これ以上の治療ができないため退院をしなくてはいけませんが、在宅介護は難しいので老人ホームの入居を考えています。

医療用麻薬での痛みの管理が必要な状態なのですが、老人ホームで対応してもらえるでしょうか?

(中田さん・自営業・57歳)

医療体制が整っている介護施設であれば、対応可能です!疼痛管理が必要な状態でしたら、訪問看護ステーションが介護施設に併設していたり、看護師が24時間常駐している施設が安心して生活できるでしょう。

最近では、穏やかな最期を支援するホスピスケア」の対応ができる介護施設が増えています。そういった施設では最期までご本人らしく過ごせるようなサポートを受けられますよ。

末期がんでも入居できる老人ホームはある?

先日、父が末期がんで余命半年と言い渡されました。これ以上、治療のしようがないので退院しないといけません。でも、高齢の母が1人で介護をすることになってしまうので、在宅介護は難しい状況です。

なので、老人ホームに入居させたいと思っているのですが、末期がんの父を受け入れてくれるところはあるでしょうか?

はい。医療体制が整っている介護施設であれば、ご入居いただけるところはありますよ。

ちなみに、お父様は痛み止めの使用をしていらっしゃいますか?

しています。医療用麻薬と言うんでしょうか、痛み止めの注射をしています。

なるほど…。となると、夜間も看護師が常駐していたり、訪問看護サービスで24時間医療サポートが受けられるような手厚い医療体制が整っている施設が良いでしょう。

よかった、介護施設でも24時間医療サポートが受けられるところがあるんですね!緩和ケア病棟の申し込みをしていますが、空きがなくてすぐには入れそうにないので助かります。

具体的には、どんな施設だと父を受け入れてもらえるんでしょうか?

施設ごとに医療体制が異なるのですべての施設が受け入れ可能ではありませんが、末期がんの人を受け入れられる介護施設には、主に以下のようなものがあります。

まず有料老人ホームは、「介護付き有料老人ホーム」と「住宅型有料老人ホーム」の2種類に分けられるんです。

名前は似ていますが介護サービスの提供方法に違いがあるので、この2種類の違いを理解しておくと施設選びの失敗が少なくなりますよ。

サービスの提供方法ですか?何が違うんでしょう?

はじめに、「介護付き」は介護サービスがすべて施設内で完結しており、介護保険自己負担額に介護サービス費用が含まれています。この自己負担額は要介護度で決められる定額制で、サービスの量が増えても金額が変わらないのが魅力なんです。

対して、「住宅型」では介護サービスの利用には、別途、外部の介護サービス事業者との契約が必要です。それが手間に感じるかもしれませんが、訪問看護や訪問介護などを好きなように組み合わせられます。さらに、介護サービス費が利用した分だけかかる形式なので、あまり介護サービスを使わない場合には、費用が抑えられるんです。

医療費なんかもかかりますから、費用が抑えられるのは助かります。

それと「サービス付き高齢者向け住宅」というのは、バリアフリー設計などご高齢者が暮らしやすいように工夫された住宅のこと。住宅型有料老人ホームと同様に、契約をすれば介護サービスを利用できます。

その施設にもよりますが、有料老人ホームと比較すると要介護度が低い人が入居している傾向があります。

それぞれで特徴があるんですね。どの施設にするか迷うな…。

正直なところ、介護施設は一つひとつまったく異なります。お伝えした特徴を頭に入れておきつつ、実際の施設を見学してみてお父様に合うかどうか判断してくださいね。

老人ホームでのがん治療は?

父が入居できる介護施設がありそうでよかったです。

最近では、「ホスピスケア」ができる介護施設が増えており、ホスピスケアを提供する施設のことを「ホスピス」と呼ぶこともあります。

ホスピスが増加したことで末期がんや難病の人を施設で受け入れるケースも増えているんです。

ホスピスケアとは

ホスピスケアというのは、どんなケアですか?

ホスピスケアは、安らかな最期を迎えてもらうためのサポートをすることです。具体的には、以下のようなケアがおこなわれます。

  • 身体的ケア
  • 精神ケア
  • 社会的ケア

「身体的ケア」は、入浴、食事、排泄などといった身体的な介助のこと。加えて、痛みをコントロールするための治療も含みます。

その次の「精神的ケア」は、病気による苦しみや恐怖心を和らげることです。医師や看護師だけでなく、カウンセラーなどとも連携して精神的にもサポートをおこなっています。

そうなんですね…。父も余命宣告を受けてショックを受けているので、精神的なサポートをしてもらえるのは助かります。

最後の「社会的ケア」は、財産の整理や相続対策などを代行してくれるサービスです。ホスピスを利用する人やそのご家族は、社会的な申請や手続きなどをおこなう余裕がないことが多いので、それを代行して負担を減らす配慮がされているんです。

そうか…そういう手続きも必要なんですよね。父のことで頭がいっぱいで、手続きについてまで気が回っていませんでした。代行サービスがあるなら利用したいなぁ。

ホスピスでおこなわれる3つの大切なケア

先ほどお話しした「身体的ケア」「精神ケア」「社会的ケア」とは別に、ホスピスではご入居者の苦しみや痛みの負担を軽くするために以下のような基本的なケアを提供しています。

  • 緩和ケア
  • ターミナルケア
  • 看取りケア

「緩和ケア」はわかります。病院でもおこなっていましたから。がんの痛みをコントロールすることですよね?

おっしゃる通り、鎮痛剤などを使って病気の痛みを軽減するケアのことです。

この緩和ケアで使用される医療用麻薬は看護師でないと扱えません。そのため、痛みが出たときにすぐに対応できるように、看護師が24時間対応できる体制を持つ介護施設が末期がんの人の受け入れをしています。

それではその次の「ターミナルケア」はどんな内容ですか?

ターミナルケアは、残りの人生を豊かにするためのケアです。緩和ケアも並行しておこない、ご入居者の生活の質を保つことを目的としています。

最後の「看取りケア」は、死の間際の人に日常的な介護を通して苦痛を緩和するケアのこと。ターミナルケアと異なるのは、看取りケアでは鎮痛剤などを使った治療や看護はおこなわず、日々の介護を通して苦しみを和らげる点です。

病院と老人ホームのケアの違い

老人ホームの対応内容についてもよくわかりました。ただ、病院でのケアとは何が違うんでしょうか?父が病院で受けていたケアとは違うんですか?

基本的に、病院は病気を治療するのを目的としていますが、老人ホームでは異なります。痛みを緩和するための医療サポートはおこなうものの、病気の改善ではなく苦痛の緩和を目的としたものです。

あぁ、なるほど…。父も医師から「もう状態が良くなる見込みがない」と言われています。

そうだったんですね…。

もうひとつ、病院と異なる点は、ご家族もケアに参加できる点です。病院では面会時間や人数に制限がかかっていることが多いです。一方で、ホスピスケアを提供している施設では、ご家族と一緒に食事ができたり宿泊もできる場合もあり、比較的融通が効きます。

なので、「家族との時間を大切にしたい」という希望も老人ホームなら叶えられるでしょう。

そうなんですね!施設に入居するとなると、父がさびしい思いをしてしまうんじゃないかと心配でしたが、宿泊できるのはうれしいですね。

加えて、イベントやレクリエーションをおこなっている施設も多いです。それに、病院とは異なり、お酒やタバコを禁止していない施設もあります。最期の時間をなるべく豊かにできるように、暮らしの楽しみが多くあるんです。

へぇ!父は、がんが発見されるまでお酒を毎日飲むような人でしたから、飲酒できるのはとても喜びそうです。

ホスピスケアを提供する介護施設では、末期がんなどの病気の人が穏やかに最期を迎えられるような体制が整っています。病院とは異なって自由度も高いので、お父様らしい生活ができると思いますよ。

  • 末期がんの人にホスピスケアを提供できる老人ホームが増えている
  • 老人ホームでは「緩和ケア」「ターミナルケア」「看取りケア」を提供している
  • 老人ホームでは、病気の改善ではなく最期を穏やかに過ごすためのケアがおこなわれる

▶「いい介護」でがんでも入居相談可能な老人ホームを探してみる

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