長い闘病の末に、延命治療をおこなわずに穏やかな最期を迎えるための施設に「ホスピス」があります。
ホスピスでは、「ホスピスケア」と呼ばれる、やすらかな最期を迎えてもらうための治療やケアをおこないます。
ホスピスケアを提供している施設は、病院でも介護施設でも「ホスピス」と呼びます。また、ホスピスケアは自宅でも受けられます。つまり、ホスピスは、病院、介護施設、自宅(在宅ホスピス)の3種類あるのです。
この記事では、3種類のホスピスについて解説します。ほかにも、各ホスピスのメリット・デメリットも紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
ホスピスには3種類あります。
そもそもホスピスとは、末期がんなどで死期が近い患者に対してホスピスケアをおこなう施設のこと。ホスピスケアとは、やすらかな最期を迎えてもらうための治療やケアのことです。
ホスピスケアをおこなう施設は、病院でも介護施設でも、どちらも「ホスピス」と呼びます。また、病院内に併設されたホスピスのことを「緩和ケア病棟」、自宅でホスピスケアをおこなう場合には、「在宅ホスピス」と呼ばれます。
病院内のホスピスである緩和ケア病棟(病院)・介護施設のホスピス・自宅(在宅ホスピス)を、それぞれ見てみましょう。
緩和ケア病棟とは病院内に併設されたホスピスのことです。がんなどの病気の治療を受けている病院の緩和ケア病棟に移った場合、患者の病状や治療法などについての情報伝達がスムーズで、家族も新たにホスピスを探す必要がなく、負担が少ないといえます。
緩和ケア病棟は、がんによる心身の苦痛を和らげることを目的とした病棟です。そのため、キッチン設備が整えられていたり、季節のイベントが開催されたりなど、できる限り日常に近い生活を送れるよう工夫されています。また、家族や友人などを招き、一緒に病棟内のイベントを楽しむこともできます。
緩和ケア病棟でのケアを通じて心身の苦痛が和らいだら、患者の希望に応じて退院し、帰宅も可能です。
緩和ケア病棟(病院)に入院する際の注意点には以下の2点があります。
緩和ケア病棟(病院)では、原則として「末期がん」または「エイズ」の人しか入院できません。施設によっては入院条件を「末期がんの人のみ」または「エイズの人のみ」としている場合があるので、入院を検討する際には病名の指定があるのかを確認しましょう。
また、緩和ケア病棟(病院)では、入院が30日を超えると退院を促される場合があります。
現在、緩和ケア病棟(病院)は数が少なく、入院したくてもできない人が多くいます。緩和ケア病棟(病院)は1人でも多くの人を受け入れるため、長期入院を避けている現状があるのです。退院した後には、自宅や通院でホスピスケアを受けられます。
ホスピスケアを提供している介護施設もあります。最近では、ホスピスケアを提供する特別養護老人ホームや有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅などが少しずつ増えています。
滞在期間に定めのある緩和ケア病棟と違い、滞在期間に定めがないことが介護施設に入居するメリットのひとつ。生活の中で必要となる排泄介助などの身体介助に介護保険を利用するので、介護認定を持つ方が入居対象となる施設が多いです。
ホスピス(介護施設)では末期がんまたはエイズ以外の病気でも入れる場合があります。しかし、どんな病状でも入居できるわけではなく、施設によって対応している病状は異なります。
ホスピス(介護施設)では、入居条件に「末期がん、または難病」としている施設が多いです。難病などの病気の場合には、病院のソーシャルワーカーや都道府県の保健所などの相談窓口で聞いてみましょう。
ホスピスケアを自宅で受けることを「在宅ホスピス」と呼びます。
在宅ホスピスでは、患者が自宅でホスピスケアを受けながら生活できます。住み慣れた自宅で家族と一緒に残された時間を過ごせることは、患者にとって一番の幸せかもしれません。
在宅ホスピスでは、定期的に医師と看護師が訪問して、ケアや診察をおこないます。自宅で家族のサポートを受けながら、緊急の時には医師や看護師に対応してもらえます。
もし、自宅で具合が悪くなった場合は病院に入院することも可能です。加えて、自宅で介護をする家族が身体的・精神的負担を感じ、十分な介護ができなくなると判断した場合は、レスパイト入院(一時的な入院)もできます。
各ホスピスのメリット・デメリットを解説します。緩和ケア病棟(病院)と介護施設はメリット・デメリットが同じなので、「ホスピス(病院・介護施設)」と「在宅ホスピス(自宅)」に分けて紹介します。
病院・介護施設のホスピスのメリットは以下です。
詳しく見てみましょう。
病院や介護施設のホスピスでは医師や介護スタッフが近くにいるので、何かあったときにすぐに駆けつけられるというメリットがあります。
ホスピス(病院・介護施設)では、医師や看護師が常に患者の体調を把握してそばについています。そのため、体調が急変しても速やかに適切な対応をしてもらえます。
病院や介護施設のホスピスでは、「家族の負担を減らせる」というメリットもあります。
ホスピス(病院・介護施設)では寝たきりになった際の床ずれ(褥瘡)防止や日常生活のサポートなど、介護面のケアも介護や看護の専門家から受けられます。着替え、排泄、廊下や階段の移動など自宅では苦労しそうなことも、専門家にサポートをしてもらえば患者本人がストレスを感じることなく過ごせます。
また、ホスピス(病院・介護施設)のスタッフに介護ケアをしてもらえれば、家族が慣れない介護で体力的・精神的に追い詰められる心配もありません。そのため、家族は患者本人と向き合うことに集中できます。
ホスピス(病院・介護施設)に入った際のデメリットは主に以下です。
それぞれ詳しく見てみましょう。
病院や介護施設のホスピスでは、費用が高額になる場合があります。
病院のホスピスでは、入院費、食費に加えて差額ベッド代やおむつ代などが追加でかかります。
病院でかかる費用のうち、差額ベッド代やおむつ代などは健康保険の対象外となります。特に1人部屋などの場合にかかる差額ベッド代は、病院によってはとても高額になるケースがあるので注意が必要です。
また、介護施設のホスピスでは、施設の費用のほかに看取りをするための費用がかかる場合があります。
病院や介護施設のホスピスでは、家族が常にそばに居られない可能性もあります。
ホスピス(病院・介護施設)では面会時間が限られており、面会時間以外は家族は患者のそばにいられません。家族がそばにいない間は、患者本人や家族の不安が膨らんでしまうこともあります。
患者の容体が急変したときや最期が近いときなどは面会時間に限りがなく、ホスピス(病院・介護施設)に宿泊できることもあるので、事前に確認しましょう。
自宅でホスピスケアをおこなう際のメリットは「住み慣れた我が家で、家族と一緒に最期を迎えられる」という点です。
住み慣れた自宅ならリラックスできるので患者本人の精神面の負担が少なくなります。家族にとっても、「病院(施設)で1人にさせて寂しくないか」「今頃苦しんでいるのではないか」と心配せずに済みます。
自宅でホスピスケアをおこなう際のデメリットは主に以下です。
それぞれ詳しく見てみましょう。
在宅ホスピス(自宅)では医師や介護スタッフが近くにいないので、緊急時に必要なケアを受けられない可能性があります。
医師と看護師は定期的に訪問してケアや診察をおこないますが、24時間体制でのケアはできません。いつ急変するかわからない不安は、患者本人や家族にとって負担になります。
在宅ホスピス(自宅)では介護スタッフがそばにいないので、家族に介護の負担がかかります。
ホスピスケアを受ける頃には寝たきりになっている可能性があり、床ずれ(褥瘡)のケアや食事、トイレなど、さまざまなシーンで介護が必要になります。
そのため、自宅にはいつも患者の面倒を見る人がいなくてはいけません。場合によっては家族が仕事を辞めたり、引っ越したり、家族のその後の人生を大きく変える決断をしなければいけないこともあります。
介護をしながらの生活は大変です。体力的な負担はもちろん、患者が快適に過ごせる環境づくりや気づかいなど、精神的な負担もかかります。家族が負担を抱え込むと、患者と家族の関係に悪影響が出る可能性もあります。
在宅ホスピス(自宅)の場合には、ケアマネジャーや訪問介護などのサービスを利用して、家族の負担を軽減しましょう。
病院や介護施設のホスピスへ入るのか、自宅でホスピスケアを受けるのか、どちらを選ぶかは本人の希望を大切にしましょう。そのうえで、家族の希望や状況を考え、担当の医師、看護師、介護スタッフ、ケアマネジャーなどの身近な専門家とも相談して決めましょう。
病院や介護施設のホスピスへ入るタイミングは、本人が希望したタイミングがベストとされています。本人が、がんなどの治療を受ける中で、「最期は自分の好きなように過ごしたい」「苦痛から解放されて家族と心ゆくままに過ごしたい」と思った際に、ホスピス(病院・介護施設)への入居を検討すると良いでしょう。
また緩和ケア病棟(病院)では、本人の希望と医師の許可があれば退院することも可能です。退院後に再び状態が変化した場合、再入院することもできます。
患者本人や家族が介護施設や自宅で最期を迎えることを希望していても、実際は病院で最期を迎えることが多いです。
最期を迎える場所について、患者本人や家族が病院以外を希望していても、患者の状態をみて医師が「治療が必要」と判断した場合は、医療機関へ搬送されることもあるのです。どの場所で準備をしていても、病院で最期を迎える場合があるということを覚えておきましょう。
ホスピスケアは、病院も介護施設もあります。また、自宅で最期を迎える場合には、在宅ホスピスもあります。
病院・介護施設のホスピスのメリットは「医者や介護スタッフなどの専門家がすぐに駆けつけられる」「家族の介護の負担を減らせる」という点です。ホスピス(病院・介護施設)のデメリットは「費用が高額になる場合がある」「家族が常にそばに居られない可能性がある」の2点があります。
自宅でのホスピスケアのメリットは「住み慣れた我が家で、家族と一緒に最期を迎えられる」という点です。デメリットには「医者や介護スタッフなどの専門家が近くにいない」「家族に負担がかかる」の2点があります。
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