長い闘病の末に、延命治療をおこなわずに穏やかな終末を迎えたいと望む人もいるでしょう。そのような人が入院する施設に「ホスピス・緩和ケア病棟」があります。
ホスピス・緩和ケア病棟に入院できるのは「末期がん」または「エイズ」の患者です。また、本人が入院を希望している必要があります。
この記事では、ホスピス・緩和ケア病棟の入居条件を解説します。ほかにも、ホスピス・緩和ケア病棟へ入院するタイミングや、施設の探し方、入院までの手順も紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
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ホスピス・緩和ケア病棟の入院条件は主に以下が挙げられます。
それぞれ詳しく見てみましょう。
ホスピス・緩和ケア病棟への入院条件のひとつに、「末期の悪性腫瘍患者(がん)、またはエイズ(後天性免疫不全症候群)を患っていること」が挙げられます(※)。
ホスピス・緩和ケア病棟の施設によっては入居条件を「末期がんの方のみ」または「エイズの方のみ」としている場合があります。ホスピス・緩和ケア病棟への入院を検討する際には、施設の受け入れ体制や入院条件を確認しましょう。
原則として末期がんまたはエイズ以外の病気でホスピス・緩和ケア病棟の利用はできません。難病などの病気については、専門病棟を設置している施設もあるので、病院のソーシャルワーカーや都道府県の保健所などの相談窓口で聞いてみましょう。
※参考:「基本診療料の施設基準等の一部を改正する件」(厚生労働省)
ホスピス・緩和ケア病棟に入院できるかどうかは医師の判断も必要です。
ホスピス・緩和ケア病棟では、病気を治すための医療ケアや、延命のための治療はしていません。しかし、病気で受ける痛みやそのほかの苦痛な症状を和らげるための治療は可能です。
今後の治療を、延命行為か痛みの緩和か、どちらにシフトするかの判断は難しいものです。医師の判断と本人の意向を持ち寄ってしっかり話し合い、処置の方針を決めます。
ホスピス・緩和ケア病棟への入院を希望する場合は医師や看護師に相談してみましょう。
ホスピス・緩和ケア病棟への入院には本人の意思がとても重要です。家族がホスピス・緩和ケア病棟への入院を希望していても、本人の意思が明確に確認できなければ、一般的にはホスピス・緩和ケア病棟側から入院を断られます。
ホスピス・緩和ケア病棟では本人の意思を尊重したケアをおこないます。そのため、本人の希望なしでは入院を受け入れられないのです。
ホスピス・緩和ケア病棟への入院は、人生においてとても大切な選択となるでしょう。本人と家族がよく話し合い、無理強いしないことが大切です。
ホスピス・緩和ケア病棟に入居する条件として、「本人が死が近いという状況について告知を受けている」としている施設が多いです。一般的には、本人が病気について把握したうえでケアにあたる方が望ましいとされているためです。
ホスピス・緩和ケア病棟では、スタッフが入院中の患者から病状について尋ねられた場合、原則として、患者の状態を見ながら事実に基づいた話をすることが多いです。本人が病気の状態を知らないまま入居すると、適切なケアや治療はおこなえないためです。
本人と家族の気持ちが同じであることは、ホスピス・緩和ケア病棟に入居するうえでとても重要です。
ホスピス・緩和ケア病棟に入院できない可能性がある場合は主に以下です。
それぞれ詳しく見てみましょう。
末期がんやエイズなどの苦痛が緩和されていて、在宅での療養が可能と医師から判断された場合にはホスピス・緩和ケア病棟へ入院できません。
ホスピス・緩和ケア病棟は病気の治療による痛みや苦しみを可能な限り取り除き、穏やかな最期を過ごすための施設です。病気の治療による痛みや苦しみがない場合は、ホスピス・緩和ケア病棟への入院は必要ないと判断される場合があります。
また、ホスピス・緩和ケア病棟は入院期間が定められていることが多いため、がんなどの症状が緩和されていて長期間に渡って入院することが予想される場合はホスピス・緩和ケア病棟へ入院できません。
末期がんやエイズ以外の病気を患っており、その治療を優先すべきと医師に判断された場合、ホスピス・緩和ケア病棟の入院はできません。
そもそも、ホスピス・緩和ケア病棟では治療内容が限られています。入院対象の病気は末期がんやエイズであり、その病気による苦痛を取り除く医療行為は受けられますが、それ以外の病気を治すための治療の体制を整えていない施設が多いのです。そのため、本人にホスピス・緩和ケア病棟への入院の意思があっても、末期がんやエイズ以外の治療が優先される場合は入院できません。
ホスピス・緩和ケア病棟に入院している他の患者や医師、看護師に迷惑をかけると予想される場合も、入院は認められません。
なぜなら、ホスピス・緩和ケア病棟はレクリエーションやイベントなどが盛んで、他の患者と交流する機会もあるからです。そのため、他の患者に攻撃したり嫌がらせをしたりするなどの迷惑行為が見られる場合は入院を断られたり、転院を促される可能性があります。
例えば、本人が認知症の場合、認知症の方はせん妄や被害妄想によって迷惑行為を引き起こす可能性があるので、ホスピス・緩和ケア病棟側も慎重に入院を検討します。
ホスピス・緩和ケア病棟への入院は本人が希望したタイミングがベストとされています。本人が、がんなどの治療を受ける中で、「最期は自分の好きなように過ごしたい」「苦痛から解放されて家族と心ゆくままに過ごしたい」と思った際に、ホスピス・緩和ケア病棟への入居を検討してみましょう。
ホスピス・緩和ケア病棟に入るタイミングは、法律などで明確に規定されているものではありません。そのため、ホスピス・緩和ケア病棟に入院するタイミングは人それぞれです。
もちろん、ホスピス・緩和ケア病棟に入院した後も本人の希望があり、医師からも認められれば退院できます。また、日々の身体状況を見て、在宅ケアや通院で問題ないと判断された場合は退院するという基準を設けている施設もあります。
病院で病気の治療をしている際に、担当の医師からホスピス・緩和ケア病棟を勧められることもあります。自分からホスピス・緩和ケア病棟への入院を希望する場合には、まずは医師に相談してみましょう。
具体的に施設を探す場合の相談先は、以下があります。
地域包括支援センターは、総合相談窓口で医療や介護など幅広く対応する機関です。がんを患っている方はがん相談支援センターで相談するという方法もあります。どちらも全国に設置されており、ケアマネジャー、社会福祉士、保健師などの専門家が相談窓口を担当しているため安心して相談できます。
すでに担当のケアマネジャーがいる場合には、ケアマネジャーに相談するのも良いでしょう。
また、最近では、ホスピスケアを提供する特別養護老人ホームや有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅などが少しずつ増えています。ホスピスケアを提供する介護施設を探す場合には、介護施設の紹介サイトを利用するのも良いです。紹介サイトでは、ホスピスケアを提供している施設を絞って検索することができる場合があります。また、紹介サイトの相談員に相談すると、いくつかの希望に合った施設を紹介してくれることもあります。
病院のホスピスに限らず、視野を広げてホスピスケアのある介護施設も検討するのがおすすめです。
具体的に入りたい施設の候補が出たら、主に以下のような手順を踏みます。
それぞれ詳しく見てみましょう。
本人の希望や予算に合ったホスピス・緩和ケア病棟を見つけたら、まずは施設へ電話をして入院の希望を伝え、面談を申し込みます。面談の予約は、家族が直接、担当窓口に電話します。ほとんどの施設は、医療従事者などが代理で手続きをすることを受け付けていません。
面談の予約をしても、面談できるのは数週間~1ヵ月先になることも多いです。人気のある施設では3~6ヵ月待ちということもあります。すぐ面談できる施設が見つかる場合もあるので、本人の体調など身体状況に合わせて待機できる期間で面談をできるホスピス・緩和ケア病棟を選びましょう。
面談までの待機期間も他のホスピス・緩和ケア病棟を探せます。同時進行で、2~3ヵ所の施設に面談を予約するのがおすすめです。
ホスピス・緩和ケア病棟へ面談の予約が取れたら、現在のかかりつけの医師に各施設の面談日を伝えて、それぞれの施設宛の紹介状など必要書類を作成してもらいましょう。面談を予約しているホスピス・緩和ケア病棟に、かかりつけの医師からの紹介状や検査データなど必要書類を提出するためです。
施設との面談では、本人の身体状況、がんなどの病気を治すことを目標とした治療を希望しないことなど、施設ごとの入院基準に合っているか確認されます。同時に、本人の意向に沿った入院生活を過ごせるよう、希望を聞いてくれます。
面談後は1週間以内に受け入れの可否が出ることが多いです。施設で入院の検討がおこなわれ、入院が決定すると、本人の病状なども考慮したうえで、おおよその入院の時期が決まります。
ホスピス・緩和ケア病棟から入院の受け入れ可能と判断を貰ったからといって、すぐに入院できるとは限りません。ベッドが埋まっている場合は、ベッドが空いて入院できるようになるまで待つこともあります。
ホスピス・緩和ケア病棟から入院の受け入れ可能の通知があり、ベッドが空いて予定の入院日が来たらいよいよ入院です。
施設への入院のための持ち物や準備など、詳しい説明は事前に受けられるので、入院日までに揃えておきましょう。
ホスピス・緩和ケア病棟へ入院できるのは「末期の悪性腫瘍患者(がん)」または「後天性免疫不全症候群(エイズ)」を患っている方です。また、医師がホスピス・緩和ケア病棟への入院を許可しており、本人が入院を希望している必要があります。ホスピス・緩和ケア病棟では本人の意思を尊重したケアをおこなうため、本人の希望なしでは入院を受け入れられません。
すでに末期がんやエイズなどの苦痛が緩和している場合、ホスピス・緩和ケア病棟への入院を断られる可能性があります。ホスピス・緩和ケア病棟は入院期間が定められていることが多く、病状による苦痛が緩和している場合は長期間に渡って入院することが予想されるためです。また、末期がんやエイズ以外の病気を患っており、その治療を優先すべきと医師に判断された場合や、認知症などで他の患者に迷惑をかける可能性がある場合も入院も断られる可能性があります。
ホスピス・緩和ケア病棟への入院は、本人が、がんなどの治療をメインにするのではなく、苦痛を和らげることをための治療を優先したいと思ったときが良いタイミングと言えます。ホスピス・緩和ケア病棟に入るタイミングは法律などで明確に規定されているものではありません。そのため、ホスピス・緩和ケア病棟に入院するタイミングは人それぞれです。
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