老人ホームで過ごすにあたって、通帳など金銭や貴重品の管理に不安を持つ方もいるでしょう。
老人ホームでの通帳などの管理は、基本的に入居者本人がおこないます。もし、老人ホームから「通帳などを預かります」と言われても、預ける義務はありません。
しかし、入居者本人が「老人ホームに通帳を管理して欲しい」と希望したり、入居者の金銭の管理能力に不安がある場合は、老人ホームが管理することもあります。
この記事では、老人ホームに通帳を預けることについて解説します。また、金銭管理に関わる制度やサービス、トラブルなども紹介しますので、あわせて参考にしてください。
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入居者の通帳は基本的に入居者本人が管理する決まりになっているので、老人ホームに預けなくて良いです。
厚生労働省が定める「有料老人ホームの設置運営標準指導指針について」によると、「入居者の金銭、預金等の管理は入居者自身が行うことを原則とすること。」とあります。つまり、入居者やその家族に対して老人ホームから、通帳やキャッシュカード、印鑑などの提出を求められても、預ける義務はありません。
しかし、下記の場合には老人ホームに通帳を預けることがあります。
老人ホームに通帳を預ける場合には、老人ホーム側が通帳を預かるための手続きをする必要があります。詳しく見てみましょう。
老人ホームが入居者の通帳を預かる場合、老人ホームは以下の内容を契約書や依頼書のような書類に残し、保管しなければなりません。
例えば、老人ホームは「預り金管理規定」のような規約を作成したり、金庫や鍵付きのロッカーのような安全に保管できる設備を整える必要があります。
老人ホームに通帳を預けたい場合には、まずは実際の金銭管理の対応をスタッフに確認してみましょう。
認知症などで入居者本人に通帳などの金銭を管理する能力がない場合、老人ホームに通帳を預けることがあります。認知症の本人にお金を渡したままだと、思いもよらないものにお金を使いすぎてしまったり、詐欺などに引っかかってしまうことがあるからです。
しかし、施設に通帳を預けるためには、基本的に入居者本人の「老人ホームに通帳を預けたい」という意思が必要です。重度の認知症などにより本人の判断能力が失われている場合は、通帳などの金銭管理を老人ホームに依頼することはできません。
老人ホームに通帳などを預けたい場合は、入居者本人の判断能力があるうちに手続きをおこなう必要があるので注意が必要です。
本人や家族の希望があっても、老人ホーム側から通帳などの預かりを拒否される場合もあります。その場合には外部サービスを利用する手もあります。
主な外部サービスは以下です。
それぞれ詳しく見てみましょう。
厚生労働省の支援事業に「日常生活自立支援事業」というものがあります。日常生活自立支援事業とは、一人での日常生活に不安のある高齢者や障害者が地域で安心して自立した生活が送れるよう、福祉サービスの利用援助などをおこなうものです。
日常生活自立支援事業の援助の内容には、日常生活に必要な金銭の管理も含まれます。例えば、以下のようなものが挙げられます。
日常生活自立支援事業を利用するには申請が必要です。利用したい方は厚生労働省のHPを見てみましょう。
参考:「日常生活自立支援事業」(厚生労働省)
老人ホームに通帳を預けられない場合には、弁護士や司法書士など、外部の専門家に頼るという手段もあります。
弁護士や司法書士に通帳などの管理をお願いする場合、「財産管理委任契約」を結ぶ必要があります。財産管理委任契約によって法律的に正当な権限を持つ第三者が財産管理をできるようになります。
しかし、弁護士や司法書士などと接点がある方は多くないでしょう。接点がない場合、まずは入居する老人ホームの相談窓口に問い合わせ、適切な専門家を紹介してもらいましょう。
通帳や金銭など、財産の管理を依頼できる「成年後見制度」というものがあります。
詳しく見てみましょう。
成年後見制度とは、認知症をはじめ知的障害や精神障害などの理由で物事を判断することが難しく、法律行為をおこなえない状態にある方に、後見人が代わって必要な契約を結んだり、財産を管理したりして本人の保護を図る制度です。
成年後見制度において支援をしてもらう人を「被後見人」、支援をする人を「成年後見人」と呼びます。
成年後見制度には大きく分けて「法定後見制度」と「任意後見制度」という2つの制度があります。
法定後見制度は、すでに判断能力が不十分である場合に本人に代わって権利を守り、法的に支援する制度です。
家庭裁判所へ申し立てをすることで、家庭裁判所から成年後見人が選ばれます。
法定後見とは、本人の利益を考えながら本人に代わって契約を結ぶなどの法律行為をしたり、本人に代わって財産を管理したりするなどして、本人を支援、保護することを指します。
任意後見制度は、将来、本人の判断能力が不十分になった場合に備えておくための制度です。
本人に判断能力があるうちに、あらかじめ公正証書で任意後見契約を結んでおきます。判断能力が不十分になったときには、その契約をもとに任意後見人が本人を支援します。
任意後見契約を結んでおけば、認知症などで本人の判断能力が不十分になってしまった場合、法律上代理人として本人の財産管理などの法律行為を委任できます。
通帳に限らず、金銭や貴金属類などは、入居者本人が管理するのが基本です。
老人ホームに入居後、売店や自動販売機で買い物をしたり、外出して買い物したりすることは自由です。そのため、いくらかの金銭を手元に置いておく方もいるでしょう。また、腕時計や結婚指輪など、大切な貴金属類も一緒に持ち込む方もいます。
老人ホームによっては、多額の現金や貴重品の持ち込みを断られる場合があるので、持ち込む前に確認しましょう。
また、入居者本人が金銭を管理するのではなく、「預かり金」や「立て替え払い」のシステムを利用している老人ホームもあります。詳しく見てみましょう。
「預かり金」とは、老人ホームへ事前に預ける金銭のことです。入居者が買い物などでお金が必要になったら、預り金の中からお金を受け取ります。また、老人ホームのスタッフが買い物代行などをした場合にも、預り金の中から支払われます。
預り金は、現金を老人ホームが管理する場合と、預り金専用の口座を用意する場合があります。どちらの管理方法になるかは老人ホームによって異なります。
現金と口座、どちらの管理方法でも預り金は厳重に管理されます。例えば、以下のような対応です。
入居先の老人ホームが預り金の体制である場合、どういった管理体制なのか確認しましょう。
買い物や通院した際の医療費など、入居者に関する支払いがあったとき、老人ホームが立て替えて支払い、後日請求する体制の老人ホームもあります。多くの老人ホームでは、その都度の請求ではなく、1ヵ月分をまとめて毎月決まった日に請求されます。
入居先の老人ホームが立て替えの制度の場合、老人ホームの月額費用と合わせて請求されるのか、振り込みか引き落としかなど、老人ホームによって対応が違うので、事前に確認しましょう。
老人ホームで金銭紛失によるトラブルが起きることがあります。老人ホームでは危険防止の目的で部屋に鍵をかけていない場合があるためです。
よくあるトラブルは以下の2点が挙げられます。
それぞれ詳しく見てみましょう。
金銭の持ち主である入居者本人の勘違いから起こる金銭紛失トラブルです。
入居者が「ここにあったお金がなくなった」「あの人が盗った」と勘違いしたり思い込んだりしてしまうことがあります。原因は軽い認知症や物忘れなどである場合がほとんどで、お金や物に執着してしまう高齢者に多く見受けられます。
特に、認知症の方が自分の財布からお金がなくなっている状態に気づくと、まずはいつも自分のすぐそばにいる人を疑います。
認知症の方の勘違いから起こる金銭紛失トラブルを避けるために、家族が本人に金銭を持たせるのをやめようと考えることもあるでしょう。しかし、手元にお金がないことによって認知症の方がさらに強いストレスや不安を感じて感情の起伏が激しくなることもあり得ます。
それによって認知症が悪化してしまうリスクもあるので、認知症の方のお金の管理には老人ホームのスタッフと家族でよく話し合う必要があります。
認知症の症状により、他人の金銭を「自分のものだ」と思い込み、無断で盗ってしまうケースもあります。
盗った本人が自分のものだと思い込んでいると、老人ホームのスタッフが説得してもなかなか受け入れてくれないことが多いです。その際には、心を許している家族が間に入って説得することで早期解決に繋がる場合があります。
老人ホームで金銭トラブルに合わないために、以下の点に気をつけましょう。
それぞれ詳しく解説しますので参考にしてみてください。
金銭の管理方法について、入居者と家族とでよく話し合いをしておきましょう。
入居者の判断能力や金銭の管理能力は急に低下することもあるため、いざというときのために早めに方針を決めておくのがおすすめです。金銭管理の方針が決まったら、老人ホームとも共有しましょう。
老人ホームの自室にロッカーや金庫などの金銭管理をしやすい環境を整えることも、トラブル回避には有効です。ロッカーや金庫などを設置したい場合には、事前に老人ホームに相談しましょう。
入居者自身が金銭管理する場合でも、老人ホームに金銭管理をしてもらう場合でも、老人ホームに対応を任せきりにするのではなく、家族も気にかけることが大切です。
老人ホームへ訪問した際に、入居者の日常生活の様子やお金の使い方を老人ホームのスタッフに確認しましょう。
入居者がどんな物を欲しがっているのか、入居者は手元に現金を持っておきたいかどうかなどを考え、入居者が自分らしい生活を送れるように、ホームと家族が互いに協力し合うことが望ましいです。
基本的に入居者の通帳を老人ホームに預けなくても良いです。入居者の通帳などの管理は入居者本人がおこなうことが基本です。そのため、入居者やその家族が老人ホームから、通帳やキャッシュカード、印鑑などの提出を求められたとしても、預ける義務はありません。
通帳に限らず、金銭や貴金属類などは、入居者本人が管理するのが基本です。しかし、老人ホームによっては「預り金」や「立て替え払い」などでスタッフが管理している場合もあります。
老人ホームで金銭紛失によるトラブルが起きることがあります。よくあるトラブルとして、金銭が「盗まれた」と誤解してしまう場合、入居者が物を盗んでしまう場合が挙げられます。どちらも認知症が原因であることがほとんどです。
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