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11月28日、介護保険制度の見直しを検討する社会保障審議会の介護保険部会が開かれました。 介護保険制度は2024年に新たに改正される見込みで、特に介護の利用者負担の今後について注目が集まっています。 介護保険における現在の状況 現在、介護の利用者負担は所得に応じて1~3割負担となっています。 2割負担は年収280万円以上と一定の所得がある人が対象で、3割負担は年収340万円以上と現役世代並みの所得がある人が対象。しかし2、3割負担に該当する人は少なく、2割負担の人は全体の4.6%、3割負担の人全体の3.6%にとどまっています。残りの90%以上の人は1割負担です。 今回の制度改正では、2割負担の対象者を拡大するか否かが焦点となっています。具体的には、「年収280万円以上」という基準を引き下げるかどうかがポイントです。 2割負担の対象者を拡大しようとしている背景には、少子高齢化があります。介護保険料を払う現役世代の人口が減り続けているのに対し、高齢者の数は年々増加しているのが問題なのです。 つまり、現役世代の負担がこれ以上重くならないようにこういった議論がおこなわれています。 議論の内容 議論は「利用者負担を見直すべきだ」という意見と、「見直すべきではない」という意見に二分し、平行線をたどっています。 「能力に応じてみんなが支え合うためには、負担能力がある人に対し適切な負担を求めていくのが重要だ」と見直しに積極的な意見がある一方、「利用者負担が増えれば、必要であってもサービスを受けられない人が増えてしまう」と利用者負担の見直しに否定的な意見も目立ちました。 また、「『負担する能力がある人は負担をすべき』という考えに異論はないが、本当に負担する能力があるのか、高齢者の生活状況をよく調べる必要がある」と慎重姿勢を見せる人もいました。 この議論は最終的には政府の判断に委ねられる予定です。今後の展開にも目が離せませんね。
2022/12/01
11月7日、財務省は国の財政を話し合う財政制度分科会の中で、「介護老人保健施設(通称「老健」)や介護医療院、介護療養病床における多床室の室料を2024年度からすべて利用者負担にすべき」との考えを示しました。 少子高齢化で介護にかかる費用はますます増大しており、それを抑えるねらいです。 財務省の主張 現在、個室の場合は水道光熱費と室料を利用者が負担していますが、1つの大部屋に大人数のベッドが配置されている多床室の場合は、水道光熱費のみ利用者負担となっています。これは、個室と多床室で生活環境に違いがあり、それを考慮した結果です。 しかし特別養護老人ホーム(通称「特養」)では、2015年からすでに多床室の室料も利用者負担となっています。特養は「終の棲家」としてだけではなく、事実上、生活の場として利用者から選ばれており、在宅を選んだ人との負担を均等にするため、特養では多床室の室料も利用者が負担することになったのです。 しかしその結果、老健や介護医療院などの多床室を利用している人と特養の多床室を利用している人で、負担額に差が生じました。 このことを踏まえ財務省は、どんな施設であっても、「同じように居住費を求め公正性を担保するために、老健や介護医療院の多床室においても室料を請求するべきだ」と主張しました。 介護保険部会であがった意見 この「老健や介護医療院の室料を利用者負担にするか」というテーマは、介護保険改正案を話し合う社会保障審議会の介護保険部会でも重要な論点になっています。 今回の介護保険部会では、財務省の案に賛否両論の意見が出されました。 肯定派からは「施設間の負担の公平性から見直しを図るべきだ」と財務省の案を後押しする意見が出ています。 一方、「老健や介護医療院は、住まいではなく『医療を提供する施設』と位置づけられているため、居住費を利用者に求めるのは適切ではない」と否定的な意見も多く聞かれました。 また、「利用者の負担を検討するならば、低所得者層が利用できなくなったということがないように、負担できるかどうかをしっかり調査する必要がある」と慎重な意見も見られます。 必要な人に、必要なサービスを届けるためにも、支払い能力に応じた対策をしてほしいところですね。
2022/11/11
厚生労働省の諮問機関である社会保障審議会は、2024年度の介護保険制度改正に向けた議論を進めています。 特にフォーカスされているのが、介護保険の給付と負担に関する議論です。少子高齢化が進行し、給付費はますます財政を圧迫。2020年度の状況報告によると、利用者負担をのぞいた給付費が初めて10兆円を突破したことも明らかになりました。 今後、介護保険制度を持続させるためにも、財政基盤の強化は急務となっています。 介護保険制度の今後を決める3つの議題 9月26日に開かれた社会保障審議会の介護保険部会では、政府側がこれから推し進めていきたい議題を列挙しました。挙がった議題の多くは、これまでも議論してきたけどなかなか実現できなかったものです。 挙がった主な議題は次の3つです。 要介護1と2に認定されている人の一部介護サービスを、市町村がおこなう総合事業へ移管すること ケアマネジメントの有料化 40歳以上としている被保険者の年齢引き下げ この議題の中でも、介護サービスの一部を市町村が実施する生活支援事業である、総合事業に移管するのは、時期尚早だとする意見が多く出されています。 現在、総合事業は生活がほぼ自立している要支援の人を対象に実施されています。しかし、これから加えようとしている要介護1や2の人は認知症の人も多く、これらの人を受け入れる自治体の体制がまだ整っていないのです。 また、利用者を適切な介護サービスにつなげるケアマネジメントはこれまで無料でしたが、財政圧迫のため、有料化しようとする動きも。しかし、有料化することで低所得者層の利用控えが生まれ、適切なサービスにつなげられなくなるおそれが懸念されています。 さらに、現在の第2号被保険者は40歳以上からですが、その年齢を引き下げる案も出ています。しかし、40歳以下はちょうど子育て世代に当たり、彼らのさらなる負担を課すとして反発もあります。 65歳以上の保険料引き上げも視野に 10月31日に開かれた介護保険部会では、一定以上の所得がある65歳以上の人に対する介護保険料を引き上げる案が出されました。所得が高い人にも介護保険料を負担をしてもらうことで、若い世代の負担を減らす狙いです。 一方、低所得者層の介護保険料は引き下げ、支払い能力に応じた仕組みを作ろうとしています。 政府は2024年度の実施を目指し、議論を深めています。誰もが納得できる制度にするのは難しいですが、少しでもお互いが歩み寄ってより良い介護保険制度になれば良いですね。
2022/11/10
居宅介護支援とは、利用者が可能な限り自宅で自分らしい生活を送れるようにケアマネジャーがケアプランを作成し、関連機関と連携を取るように調整していく介護サービスです。 この居宅介護支援サービスは万人が公平に受けられるようにするため、制度発足から継続して利用者負担はなく、その費用はすべて介護保険財源で賄っていました。 しかし、少子高齢化で介護保険の対象になる人が増え、財源が圧迫されてきています。 そこで、国は増大する介護保険の費用を抑えるために、居宅介護支援費の一部を利用者にも負担を求めました。 それを受けて10月28日、ケアマネジャーが集う日本介護支援専門員協会は、居宅介護支援において現在おこなっている全額給付を今後も継続してほしいと国に要望書を提出したのです。 要望書の中身 要望書は、日本介護支援専門員協会や日本介護福祉士会など福祉系10団体の連名で提出されました。 中身は、居宅介護支援費を利用者が一部負担することに断固反対し、全額給付を維持するように要求するというもの。特に、全額給付が実現しているからこそ、居宅サービスが多種多様な利用者の状況に応じて効率的に提供されているという点を強調して訴えています。 全額給付の意義 居宅介護支援費の全額給付は、制度発足から今まで継続してきました。 この全額給付は、利用者それぞれが解決すべき課題や置かれている環境に応じて、医療・介護などのサービスが効率よく、誰に対しても総合的に提供されるようにするためにあります。 今回の要望書の中で、そうした意義は「今日の利用者に対しても薄らぐことはない」と強く訴えています。 もし居宅介護支援を利用者が一部負担することになれば、低所得者層は利用を控えることもあり得るでしょう。 しかし、居宅介護支援サービスは介護保険サービスを利用するための入口。有料化した結果、低所得者層にセーフティーネットとしての介護保険制度の手が届かなくなるおそれもあるのです。 居宅介護支援費の有料化は、2024年度の介護保健制度改正をめぐる大きな論点のひとつとなっています。今後の動向に注目ですね。
2022/11/08
介護費は過去最高に 高齢化が加速する日本で社会保障費、中でも介護費の増加が特に大きくなっていることが浮き彫りになりました。 厚生労働省が8月31日に発表した2020年度の介護保険事業状況報告によると、2020年度の介護保険の費用額は11兆542億円。前年度と比較して2730億円、率にして2.5%もの増加となっています。 介護保険費用額から高齢者の自己負担分(1〜3割)を除いた給付費は10兆2311億円で、こちらも前年度と比較して2690億円、率にして2.7%の増加となりました。 介護保険費用額、給付費ともに過去最高を更新し、費用額においては初めて11兆円を、給付費は10兆円をそれぞれ超えています。介護費は介護保険制度の創設から増加し続けており、制度の始まった2000年度から比べると約3.2倍にもなっています。 なお、65歳以上の1人当たりの給付費は28万6000円で、前年度より6000円の増加です。 要支援・要介護の認定者数も過去最高 今回の報告では2020年度末時点の要支援・要介護の認定者数は682万人。前年度同月から13万人(2.0%)の増加となっており、過去最多となる数字です。要支援・要介護認定者が高齢者全体に占める割合は18.7%(0.3ポイント増)で、こちらも同様に過去最高を記録しています。 このうち、最も重い要介護5の割合は8.6%、要介護4は12.5%、要介護3は13.3%。一方で軽度となる要支援1~要介護度2の人が65.6%を占める結果となっています。 介護費は今後さらに増加する見通し 介護費の増加は、高齢化の進展による介護サービス需要の拡大が最大の要因です。 今後は1947年〜1949年に生まれた、いわゆる「団塊の世代」が、75歳以上の後期高齢者となり、2025年度には全員が75歳以上に。高齢化は今後も続いていくことが予想されます。 以上のような観点から、介護費増加の傾向は変わらないでしょう。 早急に求められる介護費対策 出生・死亡などの集計によれば、2040年度にかけて高齢者の増加ペースはゆるやかになっていく一方で、「支え手」となる現役世代の人口は急速に減少していくと考えられています。少ない支え手で多くの高齢者を支えなければならないため、介護保険の財政基盤は更にあやういものになっていくでしょう。 介護保険外サービスや、介護保険サービスと介護保険外サービスの両方を利用する混合介護の充実をはかる、医療と介護の連携を強化するなど、さまざまな対策を検討していくことが今後求められています。
2022/09/06
介護施設への入居について、地域に特化した専門相談員が電話・WEB・対面などさまざまな方法でアドバイス。東証プライム上場の鎌倉新書の100%子会社である株式会社エイジプラスが運営する信頼のサービスです。