「職場でハラスメントを受けていてつらい」「介護の仕事に興味があるけど、ハラスメントが多いと聞くから不安」と悩んでいる方もいるはずです。
そこで今回は、介護現場で起こるハラスメントの実態と原因を説明しながら、ハラスメントの予防策や起きてしまったときの対処方法をご紹介します。
より良い介護をおこなうためにも、本記事をきっかけにハラスメント対策を考えてみましょう。
「ハラスメント」とは、相手が嫌がる行動や発言などをして、不快感や苦痛を与えたり、脅威に感じさせたりすることです。ハラスメントにはさまざまな種類がありますが、当事者にはハラスメントをおこなっている自覚や悪気がないことが多々あります。
また、ハラスメントを受けている側も、周囲に打ち明けにくいという点も問題です。
介護現場におけるハラスメントとして主に、身体的暴力、精神的暴力及びセクシャルハラスメントなどが挙げられます。
介護の現場では、たたかれたり、蹴られたり、またはものを投げつけられる、唾を吐かれるなど、身体的な力を使って危害を及ぼす行為だけでなく、大声で怒鳴るなど威圧的な態度で文句を言ったり、無視をするなど、言葉や態度によって個人の尊厳や人格を傷つける行為が少なからず発生しています。
残念ながら、不快を与える性的な言動や不必要なボディタッチ、抱きしめるなどの性的いやがらせを繰り返すハラスメント行為もまた、存在しています。
介護現場でハラスメントが起きてしまう原因はひとつではありません。では、このようなハラスメントが起きてしまう原因はどのようなものがあるのでしょうか?
ここでは「環境」「利用者・家族」「介護事業者」の3つの観点から詳しく説明していきます。
介護がおこなわれる現場や環境が、ハラスメントの要因となってしまうことがあります。
利用者と介護者が1対1になる状況や他の職員が近くにいない場所、助けを求める声が周囲に届きにくい場所など、職員の安全が確認できない環境は、ハラスメントを起こしやすくなります。
また、コップを投げつけられるなど、介護サービスの身近にあるものが身体的暴力につながったり、訪問介護先のペットの管理がされておらず、職員の安全が確保されない状況もリスク要因となり得ます。
利用者や家族の状態や生活もまた、ハラスメントを引き起こす原因になることがあります。
利用者やその家族の過去に、暴力行為や違法行為があったり、家族や人間関係でトラブルを抱えている方やアルコール依存症や薬の副作用の症状がある方はハラスメント行為を起こしやすい傾向にあります。
また、介護による心理的ストレスによって自身の言動に配慮する余裕のなさや、介護サービスに対する期待が過剰すぎる家族の不満が、職員へのハラスメント行為に発展することがあります。
利用者側だけでなく、施設や事業者などのサービス提供者側もハラスメントの要因となり得ます。
介護施設が、利用者や家族に対して、提供するサービスの目的や範囲を充分に説明できていないことで過度な期待をさせてしまったり、ルールを徹底できないこと、また、コミュニケーション不足によって、利用者・家族のニーズをうまく汲み取れないこともハラスメントを引き起こす要因となります。
サービスを提供する職員への不十分な指導や教育もまた、ハラスメントにつながる可能性があります。時間通りにサービスを提供できていない、利用者や家族からの苦情や要望への対応や、事故などの問題が発生したときの対応が不適切だったなど、さまざまな要因が考えられます。
あらゆるケースを想定し、ハラスメントを受けないための対策を講じておくことが大切です。ここでは、介護サービスを提供する側ができる以下の3つのハラスメント予防策を紹介するとともに、くわしく説明していきます。
まずは、利用者とおこなうコミュニケーションやケアの方法を見直すことが大切です。相手の自尊心を傷つけてしまうような発言や行動は、ハラスメント行為を引き起こすきっかけになってしまいます。
利用者の意欲を削ぐような発言をしていないか、正しいケアや対応ができているかなど、自分の行動を振り返ってみると良いでしょう。
最も重要なのは、介護職員がハラスメントを我慢しないということです。介護施設からすると利用者は「お客様」です。しかし、だからといってハラスメントを我慢してしまえば、表面化せずに長びかせてしまう可能性があります。
ハラスメントを受けた場合は決して我慢せず、「嫌です」「やめてください」などの自分の意思をはっきり伝えるようにしましょう。
介護施設側から利用者や家族に対し、理解を求めておきたいことや、協力を仰ぎたい事項について周知しておくこともハラスメント予防につながります。
円滑な介護と職員の安全を守るために、どのような行為がハラスメントにあたるのか、ハラスメント行為が発生した場合の対応方法などについてあらかじめ適切に、わかりやすく伝えておくことが必要です。
では、実際に介護現場でハラスメント行為が起きてしまったらどのような対応をしたらよいのでしょうか? これからは、ハラスメントが発生した際の対応について、以下の2つの方法を詳しく説明していきます。
ハラスメントが発生した場合は我慢せず、施設の上司や管理者に相談しましょう。ハラスメント対策用対応マニュアルを作成している施設は、多く存在しています。
マニュアルに基づいてハラスメントの状況を確認し、場合によっては、ケアマネージャーや行政、警察などに通報することはもちろん、メンタル的な支援をしてもらえる可能性があります。
上司や管理者に相談できないときや、相談しても解決しない場合は、以下のような、介護現場でのハラスメントや労働基準監督署の相談窓口を利用することをおすすめします。
「介護現場における利用者やご家族等からのハラスメント相談窓口」は、東京都や区市町村で働く介護職員が匿名で相談できる窓口です。ハラスメントについて相談できるのはもちろん、不快な行為がハラスメントにあたるかを確認することもできます。
厚生労働省がおこなう「総合労働相談コーナー」では、さまざまな労働現場で起こる不当な対応やいじめ、ハラスメント行為などについて、「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」に基づき、助言や指導、あっせんをおこなってくれます。
介護の現場では、利用者や家族による行動や発言などによって、職員が不快感や苦痛を感じることがあります。
そのような介護現場で起こるハラスメント行為として、叩く、蹴る、唾を吐くなどの「身体的暴力」、言葉や行動によって個人の尊厳や人格を傷つけたり、おとしめたりする「精神的暴力」、好意的な態度を要求したり、不用意に体を触ったり抱きつくなどの性的な嫌がらせ行為をおこなう「セクシャルハラスメント」の3つが挙げられます。
介護の現場では、1対1もしくは1対多数になりやすい状況や他の人の目が行き届かない密室など、職員の安全を守れない「環境」が原因となるハラスメントが発生します。
また、利用者や家族がアルコール依存症や薬の副作用、もしくは介護によるストレスによって言動を配慮できないなど「利用者・家族」に関するリスク要因も考えられます。さらには、「介護施設による不十分な対応」も、ハラスメントを引き起こす可能性があります。
介護現場でハラスメントが発生した場合は、決してひとりで我慢することなく、ただちに施設の上司や管理者に相談しましょう。
ハラスメント行為に対して対応マニュアルを作成している介護施設も多くあり、マニュアルに基づいた対応や支援を受けられる可能性があります。
上司や管理者に相談できない場合や相談しても解決できない場合は、介護現場でのハラスメントや労働基準監督署の相談窓口を利用することをおすすめします。
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