老後に生活していくのに必要な資金が尽きてしまい、破産状態に陥ってしまう「老後破産」。最悪の事態を防ぐには、今から準備しておく必要があります。
この記事では老後破産に陥ってしまう原因と、今からできる7つの対策を解説します。
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老後破産とは、老後に年金や貯蓄だけでは生活資金が足らず、破産してしまうことです。具体的に「老後」が何歳以上であるかは定められていませんが、定年退職後、年金や貯金などを切り崩して生活する時期と考えるのが一般的です。
老後破産は、貯蓄の少ない人や退職金の出なかった人が陥ってしまうイメージがあります。しかし、収入があるときと同じ水準で生活したり、想定外の医療費や介護費が発生すれば、誰にでも起こる可能性があります。
困窮した状態に陥らないためにも、老後破産の原因を把握し、しっかりと対策しましょう。
老後破産に陥る原因はさまざまです。一体どのようなことが原因になるのでしょうか。以下では詳細に関して見ていきましょう。
給与のピークは40代・50代が多く、退職後の年金生活では一気に収入が激減してしまいます。収入が減ったにも関わらず、定年前と同じような生活をしていれば、当然家計が回らなくなります。
実際に年金収入だけでは生活ができず、現役時代の貯金や退職金を切り崩しながら老後を過ごす人もいます。しかし介護や入院など、予想外の支出も考えられるため、ある程度余裕を持った生活が必要です。
老後は収入に合わせて、生活水準を見直しましょう。
老後破産に陥る理由として「定年後も住宅ローンの支払いが残っていること」が挙げられます。住宅ローンが残っている場合、貯金や退職金などの老後資金や、生活費となる年金を返済に充てざるを得なくなります。
また、すでに住宅ローンを完済していたとしても固定資産税や修繕費、マンションであれば管理費や修繕積立金などの費用が発生します。こういった住宅に関する費用が払いきれず、老後破産に追い込まれてしまう人もいます。
定年後の負担とならないよう、しっかりと支払いのシミュレーションをおこない、返済していきましょう。
近年では、晩婚化や高齢出産が増加しているため、子どもが高校生や大学生の内に定年を迎えることも増えています。そうなれば教育費がかかり、老後の生活が苦しくなる可能性もあります。
さらに子どもが自立していても、教育費が原因で貯蓄が不十分になり、老後破産に陥るケースもあります。
また、子どもが自立していない場合にも、子どもへの費用がかかるでしょう。無職や、非正規雇用・低い給料などが理由で生活が安定しないと、貯蓄や年金から援助することになるからです。
さらに、離婚などの理由で子どもが孫を連れて帰ってくることも、費用が大きくなる要因です。そうすれば子どもだけでなく、孫の生活費や教育費を負担し、老後破産となる可能性も考えられます。
高齢になると、予期せぬ怪我や病気のリスクが高まります。負担額が少ないとはいえ、治療やリハビリは継続が必要なため、かかる費用はどうしても家計を逼迫してしまいます。
また、介護が必要になれば、さらに負担が増えることに。介護度や生活状況に合わせ、訪問型や通所型サービス、居住サービスなどがあり、費用もさまざまです。とくに老人ホームなどは高額で、長期間の入居が多いため、老後破産に陥りやすくなります。
年金や貯蓄で賄うのは難しいため、きちんと費用を準備しておく必要があります。
退職金をもらっても投資や資産運用に使ってしまい、老後破産になる可能性もあります。例えば、知識がないまま株に手を出してしまい、損をするなどのケースが考えられます。
ほかにも、賃貸物件やビルを購入する不動産投資もありますが、実際に運用していくのは難しいものです。物件の維持やリフォームに費用がかかったり、空室でなかなか家賃を回収できなかったりと、さまざまなリスクを伴います。
しかし、老後破産を避けるために資産運用をおこなうこと自体は悪いことではありません。老後費用と投資に使うお金をわけて資産を運用したり、リスクの低い少額投資から始めたりと、しっかりと知識をつけて対策しながら運用しましょう。
そもそもの受給される年金額では不十分で、生活ができなくなるという問題もあります。
金融庁から報告された「老後2000万円問題」では、定年を迎えた高齢夫婦の平均収入額から平均支出を引くと、30年間で2,000万円ほど不足すると言われています。
これは毎月5.5万円赤字になる計算で、もはや年金だけで老後生活していくのは厳しいと考えられるでしょう。
さらに、自営業などで国民年金のみに加入していた場合、厚生年金に加入していた人よりも、給付額は下がってしまいます。年金の受給金額は今後も下がることが予想されます。年金だけを頼りにせず、自分で老後の資金を増やすことが大切です。
老後破産に陥る悲しいケースには「悪徳商法やオレオレ詐欺の被害に遭うこと」もあります。
健康に関する商品や怪しい儲け話など、高齢者の不安につけこむ商法に騙されてしまうのです。ほかには、娘や息子を名乗り金銭を要求され、つい振り込んだり渡してしまうこともあります。
こういった詐欺被害では数百万円~数千万円の被害に遭うこともあり、損失が大きい分、老後破産に陥りやすくなります。
誰にでも起こる可能性のある老後破産ですが「老後破産しやすい人」の特徴もあります。ここでは、その行動の傾向を見ていきましょう。
50代2人以上の世帯の貯金額の平均は1,704万円です。しかし、貯金がないと老後破産のリスクは高まります。
貯金がないだけであれば、年金収入で暮らしていくこともできないわけではありません。ただし、年金保険料を通算10年以上滞納していれば、老齢年金を受け取ること自体が難しくなります。
また、10年以内の滞納であっても、納付期間が短いと受け取れる年金の額が減ってしまいます。
年金保険料の支払いは重要で、支払っていない場合は、障害年金や遺族年金を受け取れない原因にもなります(保険料の支払いを免除されたケースを除く)。
さらに老後破産を回避するために、生命保険や医療保険に加入しておくこともおすすめです。病気や怪我など、いざというときにお金が必要なとき、強い味方となってくれます。
自分の資産や家計状況を把握できていないことも、老後破産しやすい人の特徴です。老後の資金がどれくらい必要かを計算し、家計状況の見直しや計画的な資産形成をおこないましょう。
また銀行口座を複数持ち、貯蓄を分散している人は総額の把握が大切です。貯蓄だけでなく、NISAやiDeCoなどの積立投資、株式投資などをおこなっている人は、その資産残高も確認する必要があります。
大きな怪我や病気になってしまった場合、多額の医療費を必要とします。さらに継続的な治療やリハビリが必要になれば、負担はより大きくなります。
想定外の怪我や病気が起こると、老後資金をしっかり準備していても、破産してしまうケースがあります。
経済的に余裕がなければ治療やケアに専念できないため、結果的に治療期間が延びてしまうことも。治療期間が長ければ長いほど、老後破産のリスクも高まります。
常日頃から健康的に過ごすことを心がけ、体調管理をすることが大切です。
熟年離婚をしてしまうと、老後破産につながる可能性もあります。とくに専業主婦・主夫やパートであった人は、受け取れる月々の公的年金が少ないため、よりその危険が伴います。
年金分割制度はありますが、あくまで婚姻期間中の厚生年金のみの分割です。さらに、自営業などで国民年金しかなければ制度は適用されません。
また、家賃や食費・公共料金などを考えると、一人よりも2人暮らしの方がコストを抑えることができます。
反対に、1人であれば生活が苦しく、家計が回らなくなってしまう可能性も。離婚をする場合は貯蓄をしておいたり、私的年金を利用したりと、計画的におこなうことが大切です。
親族など周囲からの援助が難しい場合、生活保護などの社会保障制度を利用することができます。
しかし、こういった制度を利用することを恥ずかしいと感じ、国からの援助を拒否してしまう人が多くいます。生活保護の不正受給問題などが報じられ、生活保護に対してネガティブな印象を受けるようになっていることが要因です。
老後破産に陥っても、国や制度に頼らなければ状況はますます悪化してしまいます。生活が困窮してしまったら、できるだけ早く利用しましょう。
これまで老後破産に陥りやすい人の特徴や原因を解説してきました。では、老後破産を未然に防ぐにはどのような対策が必要なのでしょうか。
現在、高年齢者雇用安定法の改正により、70歳まで就業する機会を作ることが企業の努力義務となりました。さらに長く働くことによって、運動不足の解消や社会との交流にも役立ち、健康にもつながります。
結果として、怪我や病気を防ぎ、医療費などの負担を減らすことにもつながります。
また、労働で得られる収入で生活できれば、年金の繰り下げ受給も可能です。そうなれば毎月の年金受給額が増えるため、生活にも余裕が生まれます。
このように1日でも長く働くことには、老後破産の防止につながるメリットでもあります。
しかし、持病や健康に不安のある人が無理して働くことは、かえって老後破産を迎えてしまうことにもつながります。自分の体と相談しつつ働くことが大切です。
老後を見据えて貯蓄額を増やしておくことは、老後破産を防ぐために非常に重要です。
まずは老後の支出がどのくらい必要かをシミュレーションし、目標額を設定するのがおすすめです。その上で、月々の貯金額を決定しましょう。
また貯蓄が苦手な人は、給与から天引で貯蓄ができる財形貯蓄制度や、銀行の積立式定期預金の利用も検討しましょう。
貯蓄をするために、ときには家計を見直し生活費を抑えることも必要です。
月々1万円を節約し貯蓄していけば、10年後には120万円になります。30年あれば360万円になるため、その差はかなり大きいものになります。
貯蓄はコツコツと貯めていくことがポイント。貯蓄に回すために生活費を抑えることは大切ですが、決して無理はせず、計画的におこないましょう。
定年退職後も住宅ローンが残っていると、家計が逼迫し、生活が苦しくなってしまいます。そのため、退職前に住宅ローンを完済できるよう計画を立てましょう。
住宅ローンは借入期間35年間で組むことが多いので、30歳以降に住宅ローンを組む人や65歳前に退職を希望する人はとくに注意が必要です。繰り上げ返済などを視野に入れて、住宅ローンを払っていくことをおすすめします。
しかし、無理してローンを払うことで、貯蓄を疎かにすることもハイリスクと言えます。家計の見直しや節約と合わせて、無理のない範囲でおこないましょう。
老後破産を防ぐため、そして何より、快適な老後を送るために健康でいることが大切です。運動や食事などの生活習慣に気をつけ、ストレスを溜めないように無理のない生活を送りましょう。
長く健康でいることが医療費や介護費を抑え、老後破産のリスクを引き下げます。また健康寿命を伸ばすことで「働く」という選択肢も増やすことができます。
老後破産防止には、資産運用をおこなって資産を増やすことも有効です。ただし、貯蓄するためのお金を資産活用に回すのではなく、資産運用のための資金を準備しましょう。
資産運用を始める人は、積立NISAやiDeCoなどリスクの低いものからがおすすめ。資産運用に回せる額の多い人や、投資についてしっかりと知識のある人は、リスクがあってもリターンを見込んで運用するのも良いでしょう。
いざというときのために、お金について相談できる場所を確認しておけば慌てずに対処ができます。この項目では、誰でも相談できる5つのサービスを紹介します。
地域包括支援センターは、自治体が全国に5000カ所以上設置している、高齢者の暮らしをサポートするための機関です。住まいや医療、介護、生活支援などのサービスを包括して提供しています。
病気になったときや、介護による費用で生活が苦しくなった際に相談するのがおすすめです。
商品・サービスなどに関する、消費生活全般の問い合わせや相談ができる消費生活センター。
老後破産とは関連性がないように見えますが、消費生活センターは多重債務などの相談窓口にもなっています。借金の問題を抱えている人は、相談してみると良いでしょう。
また一般の相談員だけでなく、弁護士や司法書士に相談することもできます。
借金に関する相談であれば、弁護士に相談するのもおすすめです。
借金の返済が難しい場合に、借金の支払い義務を免除してもらう方法を提案してくれます。具体的には、任意整理、個人再生、過払金の返還請求などがあり、相談者にあった方法を教えてくれます。
プロが法律に基づいた方法で解決策を考えてくれるため、不安も軽減するでしょう。
老後破産にならないように、早めに対応しておくのであれば、ファイナンシャルプランナーに相談しましょう。
ファイナンシャルプランナーは住まい・教育・老後など、理想のライフプランに合わせて、資金計画やアドバイスをおこなってくれます。
現役時代の収支から、老後の収入や支出を予想するキャッシュフロー表を作成、家計の問題点や解決法などを示してくれます。さらに、老後に受け取れるお金を増やしたいということであれば、資産の運用方法なども相談できます。
各都道府県や市区町村に生活困窮者の自立を支援する「自立相談窓口」が設置されています。
専門の相談員が、家計の立て直しのため、各機関と連携しながら解決策を提案してくれます。
老後破産に向かっている場合、どうするべきなのでしょうか。生活が困窮したときに、視野に入れるべき手段に関して詳しく解説していきます。
老後破産を迎えた場合、最終的に生活保護を受給することになります。しかし、自宅を所持していたり、貯蓄があると生活保護は認められません。
そのため、自宅の売却やリバースモーゲージを済ませておく必要があります。
まずは自宅を売却し、その資金で生活します。資金が尽き、生活が成り立たなくなったら、改めて生活保護を申請しましょう。
リバースモーゲージという言葉をはじめて聞く人も多いのではないでしょうか。
リバースモーゲージとは、自宅を担保にお金を借入れてそのまま住み続け、借入人が死亡したときに相続人がその家を売却し、返済する仕組みです。
金融機関が取り扱うリバースモーゲージでは、借入人が生存している間、毎月利息のみの返済をします。毎月の支出を減らすことができるため、その分負担も少なくなるというメリットがあります。
生活に困窮し、老後破産したときは生活保護を受給するのも選択肢のひとつです。
生活保護はネガティブなイメージから、どうしてもためらってしまう人が多いですが、立派な国の制度です。さらに、国民として健康で文化的な最低限の生活を送る権利があります。
お金を理由に生活が続けられない場合は、迷わずに申請しましょう。
老後破産の原因や、老後破産になりやすい人の特徴について解説しました。
将来的に十分な年金を受け取れない可能性のある現役世代は、誰でも老後破産に陥るリスクがあります。
定年退職後に困ることがないよう、今できることから始めてみましょう。
老後破産は、老後に年金や貯蓄だけでは生活資金が足らず、破産してしまうことを指します。老後破産をしてしまうと、病院にも行けず、介護施設への入居も困難です。万が一破産してしまったら、親類の世話になるか、生活保護を受給する必要があります。
世帯収入が公的年金だけの場合、不足分を貯蓄などで補う必要があります。仮に、毎月5万円を30年間貯蓄などから補った場合、合計で1800万円が必要です。また自営業などで国民年金の場合は、さらに上乗せが必要なので資金計画は早めにおこないましょう。
「貯金や老後に使える貯蓄がない」「自分の資産や家計状況を把握していない」「大きな病気をしてしまう」「熟年離婚をしてしまう」「国や制度に頼ることを恥ずかしいと感じる」などが挙げられます。
特に、高齢になればなるほど病気のリスクが高まり、大きな怪我や病気になってしまった場合、多額の医療費が必要です。想定外の大きな怪我や病気にならないために、日頃から健康管理をすることが大切です。
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