60歳以降を老後と考えた場合、60歳時の平均余命は、男性で23.84年、女性で29.04年。いわゆる「老後」と呼ばれる期間はことのほか長く、これだけの期間にゆとりある老後生活を送るためには、定年退職後から支給される公的年金だけでは、不足することが予想されています。
快適で充実した老後を送るためにも、老後資金は不可欠です。そこでこのページでは、老後までに準備したほうが良い金額とはどれくらいなのか、考えてみたいと思います。
定年退職以降の期間が長くなっている現在、大多数の人が公的年金や老後の生活に不安を感じていることが厚生労働省などの調査からわかっています。公的年金に対する不安を解消するためには、何らかの自助努力が必要になります。
総務省統計局の家計調査より、高齢者夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)の実収入と消費支出の実態を見てみると、毎月約4万1,000円不足するという試算が出ています。つまり、平均的な高齢夫婦世帯の月額家計収支は「マイナス」なのです。
この状態でたとえば20年間生活すると、不足する生活費の合計は以下の計算の通り。
これはあくまでも平均的な家計であり、ここから旅行や趣味などを楽しめるような「ゆとりのある老後生活」を送りたいとなると、さらに多くのお金が必要になってきます。
老後資金の中で最も割合を占めるのは、もちろん「生活資金」です。
食費や生活費などの日常生活にかかる費用はもちろんのこと、80歳以上になると要介護状態になる率が急激に上がり、それまでの日常生活費との構成比が変わってきます。
また、生活資金は日常生活に伴う費用だけではありません。たとえば、子どもがいる人の場合は、子どもの結婚や孫の誕生、新居購入など子どもが迎えるライフイベントに伴い、親として援助などの出費が必要になる場合があります。
それ以外に必要となる資金としては、「入院・手術費用」と「介護費用」があります。さらに「がん治療費用」や「先進医療技術料」も備えておきたいところ。
さらには、葬儀代や入院費用の清算、墓を新規購入する場合の費用など、自身が亡くなった後に相続人が負担する費用「死後清算費用」も必要になってきます。
前述の「介護費用」の多くを占めるのが、老人ホーム(介護施設)の費用。時代背景としても、核家族化が進んでいること、長寿化によって介護期間が延びていることにより、家族の介護負担が増えている現状があるため、在宅介護ではなく、有料老人ホームで暮らしたいと思う人が近年増加しています。
また、昔に比べ、高齢者の生き方の価値観も多様化しており、「ひとりで生活するのは大変だから」「誰にも迷惑をかけたくないから」と、積極的に施設入居を希望している人も増加傾向にあります。
ただ、老人ホームに入居するにあたって、気がかりなのがお金の問題です。
有料老人ホームをはじめとする介護施設の多くは、月々の基本的な費用のほかに、家賃などの前払い金となる入居一時金が必要です。金額は施設によって異なり、何千万円という単位で入居一時金を設定しているケースもあります。
このように、介護施設に入るためにお金の不安を抱えている方もいるのではないでしょうか。
この入居費用を捻出するための土台となるのが年金ですが、「年金頼り」では介護施設への入居は難しいのが現状です。預貯金などの金融資産に加えて、持ち家などの不動産を活用することも考えていきましょう。
介護保険制度の中で利用できる公的な介護施設(特別養護老人ホームなど)は、非常に人気があります。金銭的な負担が少ないので、入居待機者が数多くいる状態です。
公的な介護施設に入居するためにかかる平均的な費用は、入居一時金=0円、月額利用料=約7.5~14万円とされています(利用する居室の広さやタイプによって料金が変わります)。
比較的低料金で利用できる公的な介護施設の場合、介護サービス費自己負担額と施設の月額利用料(家賃、管理費、食費)を合計した目安金額で毎月5~15万円くらいなので、いわば自宅で過ごしているときと大きな差はありません。この点はやはり魅力的といえるでしょう。
ただ、費用面での安心感はありますが、やはり入居への“倍率”も鑑みると、あらかじめ有料老人ホームも視野に入れておくと良いでしょう。
民間事業者が運営する施設に入居するためにかかる平均的な費用は、入居一時金が数十万円から数千万円、月額利用料=12~30万円とされています。
民間運営のため、公的施設より入居一時金の幅が大きいことや月額利用料は高くなりますが、公的施設と比べると入居の順番待ちがほとんどなかったり、金額が高い分、手厚いサービスやケア体制で介護が受けられるなど、プラスアルファが期待できます。
入居一時金と月々の費用、そしてサービス面などを考慮し、5年間や10年間など長期スパンで全体のバランスを比較検討してみましょう。
子どもには子どもの人生があり、住宅ローンの支払いや教育費などに日々預貯金を費やしています。そのためのお金を親の介護費用に使ってしまうことは、子どもたちの今の生活をも圧迫することにつながるため、できれば避けたいところです。
また、親が80代になると、子どももおおよそ50~60代になっているので、そうなってくると次は自分自身の老後費用や介護費用に充てなければなりません。
もし親の介護が想定よりも長期に渡れば、後になって大きな後悔を招くことにもなります。
親としても、自分のせいで子どもの将来設計や日常生活を経済的に圧迫させることには気が引けるでしょうから、「介護は自分たちのお金で」と思っている人は多いでしょう。
子ども側としても、親を介護するというとき「介護費用は親のお金を充てる」という基本方針を明確にしておきましょう。
世帯収入が公的年金だけの場合、不足分を貯蓄などで補う必要があります。仮に、毎月5万円を30年間貯蓄などから補った場合、合計で1800万円が必要です。また自営業などで国民年金の場合は、さらに上乗せが必要なので資金計画は早めにおこないましょう。
今からできることとして、「支出を抑える」「収入を増やす」「資産を増やす」が挙げられます。また困ったときは、国の支援制度を利用することを検討しましょう。
老後とは何歳頃からなのかについては、人によって捉え方がさまざまです。公益財団法人生命保険文化センターの調べによると、老後資金を使い始める平均年齢は65.9歳というデータがあり、年齢の分布は65歳が最も多く、次いで70歳、60歳という順に続きます。
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