親の将来を考えたとき、老人ホームへの入居を検討する方もいらっしゃるでしょう。
親に老人ホームへの入居を提案した際に、納得してくれるとは限りません。「嫌だ、入りたくない」と突っぱねられることもあるかもしれません。
親が老人ホームを嫌がるのには、「家族に介護をしてもらいたい」「今の生活を変えたくない」など、さまざまな理由があります。
この記事では、親が老人ホームに入居するのを嫌がるとき、どうすれば良いのかを解説します。また、親がなぜ入居を嫌がっているのか、納得して入居してもらうにはどうすれば良いのかも解説しますので、あわせて参考にしてください。
Contents
親が老人ホームを嫌がる理由として主に以下が挙げられます。
それぞれ詳しく見てみましょう。
老人ホームを嫌がる理由のひとつに「家族に介護をしてもらいたい」と思っていることが挙げられます。
内閣府が発表した「令和3年版高齢社会白書」によると、55歳以上の男性の半数以上が「配偶者」に介護を依頼したいと回答。女性は「介護サービスの人」が39.5%で1位ですが、2位の「子」が31.7%と、あまり差がありません。また、3位の「配偶者」と合わせると、女性も半数以上の人が家族に介護をしてもらいたいと考えていることがわかります。
家族以外の人にトイレやお風呂を手伝ってもらうことが恥ずかしいと思う人もいます。親が老人ホームを嫌がる場合には、家族以外の誰かに介護されることに抵抗を感じているのかもしれません。
老人ホームを嫌がるのには「家族に見捨てられるかも」と寂しさや不安を感じている可能性もあります。
老人ホームへの入居をすすめられると「家族に愛されていない」「見捨てられる」と考える人も居ます。また、家族が介護をすべきと考えている人は「家族の義務を放棄された」とも感じるかもしれません。
老人ホームを嫌がる理由に「これからもこのままで暮らしたい」と考えている可能性も挙げられます。
内閣府が発表した「世論調査」では、自宅で介護を受けたい理由に「住み慣れた自宅で生活を続けたい」という回答が85.6%で圧倒的に多いです。
住み慣れた我が家・自分のよく知った地域で生活を続けたいと思うのは自然なことです。住み慣れた家や家族のもとを離れて、新しい人間関係や生活環境を始めることに不安を抱く人は多く居ます。
特に認知症を患っていると、新しい環境やいつもと違う状況に置かれることで、強い不安を感じる場合があります。
未知の生活への不安を考えると、「現在の生活が不便で危険が多くても、このままの環境で暮らしたい」と思う人も居るでしょう。
老人ホームを嫌がるのは「老人ホームに悪い印象」を持っているのかもしれません。
例えば、老人ホームに対して以下のような印象を持っている人もいます。
過去に、親を介護した当時の老人ホームの印象が良くなく、当時のままの印象を持ち続けている場合もあります。
老人ホームに対して悪い印象があると「老人ホームは嫌だ」と思ってしまうでしょう。
老人ホームへの入居について、親と話し合う際に大事なポイントがあります。主には以下の4点です。
それぞれ詳しく見てみましょう。
親との話し合いの際には「親の気持ちに寄り添う」ことが大切です。
老人ホームへの入居が親の安全や命を守るのに必要であっても、親の気持ちを尊重せずに話を進めると、親を傷つけたり、不信感を抱かせてしまいます。まずは「なぜ老人ホームは嫌なのか」その理由をよく聞いてみましょう。
大切なのは「なぜ入りたくないのか」その理由をすべて話してもらうことです。老人ホームを嫌がるのにはさまざまな理由があります。それは例え些細な理由に思えても、本人とっては大切で大きな理由です。老人ホームに入りたくない理由をすべて話してもらえたら、その理由をひとつずつ解決していきましょう。
老人ホームの入居について話を切り出してみると、「入りたくない」のひと言で終わってしまうかもしれません。焦って無理に説得をすると事態が悪くなる可能性が高いです。お互い感情的にならないよう、親の話をしっかりと聞くと良いでしょう。
親との話し合いの際には、親への思いを言葉にして伝えましょう。気持ちは言葉にするとストレートに響きます。入居する親本人の気持ちに寄り添い、共感をもって話し合うのが大切です。
例えば、「親を心配していること」「いつまでも元気に長生きしてほしいこと」「親本人の状態に手厚いケアが必要であること」「入居後もできる限り会いに行くこと」など、家族が親のことを大切に思っていることを伝えましょう。
親との話し合いの際には「老人ホームがどんな場所なのか」も伝えましょう。
そもそも老人ホームがどんなところなのか、「実はよく知らない」という人もいます。また、「老人ホームは歳をとって体が動けなくなった人が入る場所」という印象を持っている人もいるでしょう。
最近の有料老人ホームでは、ジムのようなトレーニング用の部屋やカラオケが併設されていたり、園芸、囲碁、将棋、麻雀などのレクリエーションが充実していることもあります。また入居者と友人になれば、話し相手に困ったり、寂しい思いもしないでしょう。
老人ホームの共同生活は大部屋に一緒に住むわけではなく、個室があり、自分の時間やプライベートな空間がきちんと確保されています。
まずは老人ホームのパンフレットを見せたり、パソコンやタブレットで老人ホームの様子を見てもらいましょう。老人ホームへの印象が良くなれば、入居を前向きに考えてもらえるかもしれません。
家族だけで話を進めようとしても上手くいかないときは、第三者に協力してもらいましょう。第三者が入ることで客観的に状況を整理できるので、話が良い方向へ進む可能性があります。また、親本人も家族以外の人からの話なら素直に聞く場合があります。
家族が説得をしても耳を貸さない場合には、以下の人たちに相談してみましょう。
もし周囲に老人ホームに入居している知り合いが居る場合には、その知り合いに協力を仰ぎましょう。知り合いの老人ホームへ親と一緒に面会に行って、知り合いが入居を決めた理由や、老人ホームでどんな生活をしているのか、話を聞いてみるのが良いです。
親本人のことをよく知っている、在宅介護などの介護スタッフやケアマネジャーがいる場合は、介護スタッフ・ケアマネジャーに親の話を聞いてもらいましょう。家族の前だと言えないことも、介護スタッフ・ケアマネジャーになら素直に打ち明けてくれるかもしれません。
入居を検討している老人ホームが決まっているならば、老人ホームに直接相談してみるのも良いでしょう。老人ホームでは「親が入りたくないと言われて困っている」という相談はよくあるため、どのように話をしたら良いか、さまざまなノウハウをもっている可能性があります。老人ホームからアドバイスを貰ったり、親と直接話をしてもらいましょう。
親が誰の話も素直に聞いてくれない場合、医師の言うことであれば素直に聞き入れる方も多いです。医師は毎日多くの患者さんと接しているので、高齢者の事情もよくわかっています。また、健康の専門家ということもあり、さまざまなアドバイスをしてくれます。かかりつけの医師のアドバイスはとても重宝する方が多いので、病院から帰ってすぐに老人ホームへ入居した人もいるくらいです。
老人ホームの入居に対して親が前向きになってきたら、入居の準備をしましょう。すぐに入居へ踏み切るのではなく、親と一緒に少しずつ準備を進めていくことが大切です。
例えば、以下のようなことをしていくのが良いです。
それぞれ詳しく見てみましょう。
入居する老人ホームは親と一緒に探しましょう。
思い出のある住み慣れた家を離れるのは、本人にとって、とても大きな決断です。焦らず本人の気持ちを聞きながら、老人ホームを探すのがおすすめです。
例えば、「ペットと離れたくない場合」にはペットと一緒に入れる老人ホーム、「行きつけのお店がある場合」には外出がしやすく住所が離れていない老人ホームなど、本人が家を離れたくない理由をひとつずつ解決できる場所を探して提案してみましょう。
老人ホームに関心を持ってもらえれば、「老人ホームへの入居も悪くないかも」と、さらに前向きに捉えてくれるかもしれません。
老人ホームへの入居に対して、少しでも前向きになってもらえたら、事前見学や体験入居に行ってみましょう。
ほとんどの老人ホームでは、事前見学や体験入居を実施しています。入居前に老人ホームの雰囲気や食事、介護サービスを体験してもらうのがおすすめです。
また、入居を検討している老人ホームがショートステイ(短期入居生活介護)を実施している場合、ショートステイから徐々に慣れてもらうのも良いでしょう。
ショートステイとは、急な用事などで家族が家を空けなくてはならない際に一時的に高齢者が宿泊できるサービスです。何度かショートステイを利用すれば、本人も徐々に老人ホームに慣れていけます。
老人ホームへの入居になかなか納得してもらえないからといって、親を無理に入居させることにはリスクがあります。
まず、お互いの信頼関係にひびが入ることが挙げられます。無理に入居させられた不満や怒りから介護スタッフに抵抗したり、勝手に帰宅しようとするなど、トラブルが起きる可能性もあります。
また、一時的な落ち込みや、うつ状態など精神面での影響はもちろん、認知症の方は症状が悪化してしまう場合もあるので注意が必要です。
親を無理やり老人ホームへ入居させるのは最終手段にしておいて、じっくり話し合いをして、入居に納得してもらうことが大切です。
親がどうしても老人ホームへの入居に納得をしてもらえない場合、以下の対応をする必要があります。
それぞれ詳しく見てみましょう。
入居前にどれだけ話し合いをして老人ホームの説明をしても、親に入居を納得してもらえない場合は、リスクを覚悟して多少無理にでも入居してもらうという手段があります。
老人ホームに入居する人は、新生活に対して戸惑いや不安を感じている人が多いです。そのため老人ホームでは、戸惑いや不安を少しでも軽くするように配慮してくれます。実際に入居をしてしまえば、老人ホーム側の配慮によって楽しく入居生活を送る人も少なくありません。
親がどうしても老人ホームへの入居に納得してもらえない場合は、一旦、老人ホームへの入居を見送るのも手です。
無理やり老人ホームに入居しても、本人にとって本当に幸せかどうかはわかりません。親が住み慣れた家で暮らしたいと考えているのであれば、その気持ちを尊重することも大切です。
しかし、無理に在宅介護を続けて共倒れになってしまっては、元も子もありません。訪問介護など在宅で受けられる介護サービスや、栄養バランスのとれた食事を届けてくれる配食サービス、セキュリティ会社などが提供する見守りサービスなど可能な限りのサービスを利用しましょう。
要介護度が上がったり、身体的な病気で入院をした場合など、生活の状況が変われば親も老人ホームへの入居に納得してくれるかもしれません。老人ホームへの入居を見送った後、再び入居が必要な状態だと感じたら、改めて老人ホームを検討しましょう。
親が老人ホームを嫌がる理由として主に「家族に介護をしてもらいたい」と思っている、「見捨てられるかも」という不安がある、「これからもこのままで暮らしたい」と考えている、「老人ホームに対して悪い印象がある」、という理由が考えられます。
老人ホームへの入居について、親との話し合いの際には「親の気持ちに寄り添う」ことが大切です。まずは「なぜ老人ホームは嫌なのか」、その理由をよく聞いてみましょう。また、親への思いを言葉にして伝えるのも大切です。入居する親本人の気持ちに寄り添い、共感をもって話し合いましょう。
親がどうしても老人ホームへの入居に納得をしてもらえない場合、「リスクを覚悟して多少無理にでも入居してもらう」か、「老人ホームの入居をしばらく見送る」かの選択をする必要があります。
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