「特別養護老人ホームに入居したいけど、少しでも費用の負担を減らせる制度はないかな」と不安を抱えている方もいるかもしれません。
そこで、この記事では特別養護老人ホームの費用を減免する5つの制度を紹介。対象となる条件や申請方法も解説しています。特別養護老人ホームの費用に頭を悩ませている方はぜひ参考にしてください。
Contents
特別養護老人ホームでは、次の制度の活用により費用を抑えられます。それぞれの制度について詳しく見ていきましょう。
制度名 | 減免される費用項目 | 申し込み方法 |
---|---|---|
特定入所者介護サービス費 | 居住費・食費 | お住いの自治体にて申し込み |
高額介護サービス費 | 介護サービス費の自己負担額 | お住いの自治体にて申し込み |
高額医療・高額介護合算療養費制度 | 医療保険と介護保険の自己負担額 | お住いの自治体にて申し込み |
社会福祉法人などの利用者負担軽減制度 | 介護サービスの自己負担額、居住費および食費 | お住いの自治体にて申し込み |
医療費控除 | 介護サービスの自己負担額・居住費・食費 | 所轄税務署に確定申告書を提出 |
特別養護老人ホームの食費や居住費は、原則、全額自己負担です。しかし、所得や預貯金などが一定以下の人については負担限度額が設けられており、これを超えた分は「特定入所者介護サービス費」として介護保険から給付されます。
負担限度額は所得や預貯金などの額に応じて4段階に区分され、所得が低い人ほど負担限度額も低く設定されています。
次の表に該当する人は、特定入所者介護サービス費の対象です。基本的に住民税非課税世帯の方が対象ですが、一定以上の預貯金などがあると対象外になります。なお、所得や預貯金などの基準となる金額は夫婦と単身で異なります。
段階 | 対象者 | 預貯金の基準(夫婦の場合) | ||
---|---|---|---|---|
第1段階 | 生活保護を受給している方など | 要件なし | ||
世帯全員が市町村民税非課税で、老齢福祉年金受給者 | 1,000万円(2,000万円) | |||
第2段階 | 世帯全員が住民税非課税かつ本人の合計所得金額+課税年金収入額+非課税年金収入額が80万円以下 | 650万円(1,650万円) | ||
第3段階 | ① | 世帯全員が市町村民税非課税で、本人の公的年金年収入額(※)+その他の合計所得金額が80万円超~120万円以下 | 550万円(1,550万円) | |
② | 世帯全員が住民税非課税で、本人の合計所得金額と課税年金収入額と非課税年金収入額の合計が年額120万円を超える方 | 500万円(1,500万円) |
※世帯とは、住民基本台帳上の世帯員で、介護サービスを利用した方全員の負担の合計の上限額を指し、個人とは、介護サービスを利用したご本人の負担の上限額を指します。
預貯金などに含まれる資産は、普通預金や定期預金などの預貯金のほか、有価証券(株式、債権など)、投資信託、金銀(口座残高で時価評価額が容易に把握できる貴金属)、手許現金(タンス預金など)です。ローンなどの負債がある場合は、合計金額から差し引きます。
それぞれの金額は通帳や口座残高の写しのほか、インターネットで取引している場合は明細のページをプリントアウトしたもので確認します。なお、タンス預金などの現金は自己申告です。
段階ごとの特定入所者介護サービス費の負担限度額は、次の表の通り決められています。
例えば第1段階の方が多床室を利用する場合、1日あたりの負担限度額は居住費が0円、食費が300円なので、1ヵ月(30日)の自己負担額は9000円になります。
段階 | 居住費(日) | 食費 | |||
---|---|---|---|---|---|
ユニット型個室 | ユニット型個室的多床室 | 従来型個室 | 多床室 | ||
第1段階 | 820円 | 490円 | 320円 | 0円 | 300円 |
第2段階 | 820円 | 490円 | 420円 | 370円 | 390円 |
第3段階① | 1310円 | 1310円 | 820円 | 370円 | 650円 |
第3段階② | 1310円 | 1310円 | 820円 | 370円 | 1360円 |
特定入所者介護サービス費の給付を受けるには、住民票のある市区町村に申請して「負担限度額認定」を受ける必要があります。申請は、介護保険負担限度額認定申請書に必要事項を記入し、自治体の担当窓口で手続きします。
申請には次の書類等が必要です。
自治体によって必要な書類が異なる場合もあるため、あらかじめ確認したうえで申請しましょう。なお、申請が承認されると「介護保険負担限度額認定証」が交付され、入居する特別養護老人ホームに提出することで食費や居住費が軽減されます。
高額介護サービス費を利用すると、1ヵ月間に支払った介護サービス費の自己負担額が負担限度額を超えた場合に超過分が払い戻されます。
高額介護サービス費は所得に応じた6段階で負担上限額が設定されており、上限を超えると対象になります。
例えば、生活保護を受給している方は1万5000円を超えると対象となり、1ヵ月あたりの介護サービスの自己負担額が2万5000円だった場合は1万円が払い戻されます。
所得ごとの負担上限額は次の表をご覧ください。
設定区分 | 対象者 | 負担上限額(月額) |
---|---|---|
第1段階 | 生活保護を受給している方など | 1万5000円 (個人) |
第2段階 | 市町村民税世帯非課税で公的年金等収入金額+その他の合計所得金額の合計が80万円以下 | 2万4600円 (世帯) 1万5000円 (個人) |
第3段階 | 市町村民税世帯非課税で第2段階及び第2段階に該当しない方 | 2万4600円 (世帯) |
第4段階 | ①市区町村民税課税世帯~課税所得380万円(年収約770万円)未満 ②課税所得380万円(年収約770万円)~690万円(年収約1160万円)未満 ③課税所得690万円(年収約1160万円)以上 | ①4万4400円 (世帯) ②9万3000円 (世帯) ③14万100円 (世帯) |
サービス利用料の自己負担額が負担上限額を超えると、市区町村から「高額介護サービス費支給申請書」が送られてきます。申請書を受け取ったら必要事項を記入・捺印し、市区町村の窓口に持参または郵送します。
申請には次の書類等が必要です。
申請が受理されると「支給決定通知書」が届き、指定した口座に負担上限額を超えた金額が振り込まれます。また、その後も上限を超えた月は初回に指定した口座に自動的に還付されます。
「高額医療・高額介護合算療養費制度」とは、医療サービスと介護保険サービスの両方を利用し、自己負担額の合計が負担上限額を超えたときに超過分が支給される制度です。
負担上限額は所得に応じて設定されており、合算期間は1年間です。同じ医療保険制度に加入している家族の分も合算できますが、高額介護サービス費として支給された金額は差し引いて計算します。
高額医療・高額介護合算療養費制度の対象となるのは次の場合です。
高額医療・高額介護合算療養費制度の負担上限額は、所得のほか70歳未満の人がいる世帯と70歳以上の人がいる世帯で区分されます。国民健康保険と後期高齢者医療など家族で加入する医療保険制度が異なると、合算できないため注意が必要です。
各区分の負担上限額は次の表でご確認ください。
75歳以上 | 70~74歳 | 70歳未満 | ||
---|---|---|---|---|
介護保険+後期高齢者医療 | 介護保険+被用者保険または国民健康保険 | |||
年収約1160万円~ | 212万円 | |||
年収約770~約1160万円 | 141万円 | |||
年収約370~約770万円 | 67万円 | |||
~年収約370万円 | 56万円 | 60万円 | ||
市町村民税世帯非課税など | 31万円 | 34万円 | ||
市町村民税世帯非課税 かつ年金収入80万円以下等 | 本人のみ | 19万円 | ||
介護利用者が複数 | 31万円 |
高額医療・高額介護合算療養費制度の申請先は、加入する公的医療保険によって異なります。国民健康保険または後期高齢者医療保険の方はお住いの市区町村の窓口で、協会けんぽや健康保険組合などの被用者保険は職場を通して申請します。
申請には次の書類等が必要です。
なお、被用者保険に加入している方は「自己負担額証明書」も必要です。市区町村の窓口で「高額介護合算療養費等支給申請書兼自己負担額証明書交付申請書」を提出し、交付された証明書を添えて職場で手続きをおこないます。
「社会福祉法人などの利用者負担減免制度」は、生活保護を受けている方や所得が低く生計が困難な方が介護保険サービスを利用しやすくするための制度です。自治体が特別養護老人ホームなどの介護事業者に補助金を出すことで、利用者の費用負担を軽減します。
社会福祉法人などの利用者負担軽減制度は、住民税非課税世帯の方が対象です。さらに、以下の5点の要件を満たす必要があります。
特別養護老人ホーム利用料のうち制度の対象となるのは、介護保険サービスの自己負担額、居住費、食費。利用者負担の1/4が減免されます。さらに老齢福祉年金の受給者は1/2が減免されるため、費用を抑えて特別養護老人ホームに入居できます。
社会福祉法人などの利用者負担減免制度は、市区町村の窓口または郵送で申請します。
申請には主に次の書類が必要です。
ほかにも自治体ごとに必要な書類があるため、確認したうえで手続きしましょう。
制度の対象になると「社会福祉法人による利用者負担減免確認証」が交付され、特別養護老人ホームに提出することで費用の減免を受けられます。
出典:「医療費を支払ったとき」(国税庁)
医療費控除とは、その年に自分または自分と生計を共にする配偶者や親族のために医療費を支払った場合に、確定申告時に負担した医療費の一部を所得から控除することを言います。
介護保険サービスを利用した際に医療費控除の対象となるのは、自分と同じ生計で暮らしている配偶者や子ども、もしくは親族などのために費用を払った場合です。
その人が自分と同居していない場合でも、自分がその人の生活費をほぼ負担している場合には、同じ生計で暮らしているという扱いで医療費控除の対象になります。
特別養護老人ホーム利用料のうち、介護サービス費、食費、住居費として支払った自己負担額の1/2が医療費控除の対象となります。理美容代など日常生活でも通常必要となる費用は控除の対象外となるので注意が必要です。
1月1日~12月31日までの1年間の医療費は、翌年2月16日~3月15日の間に確定申告することで控除を受けられます。確定申告は管轄の税務署や確定申告会場のほか、e-Taxでもおこなえます。
申告には次の書類が必要です。
医療費控除の領収書を添付することで領収書の原本は提出不要です。ただし、後日、税務署から提出を求められることがあるため、5年間は保管が必要です。
なお、医療費控除は過去5年間さかのぼって申告することが可能。期限内に申告できなかった場合は翌年に申告すれば医療費控除が受けられます。
収入状況が変わって特別養護老人ホームの費用が払えなくなっても、通常2~3ヵ月の猶予があるためすぐに退去を求められることはありません。まずは施設のケアマネジャーなどに相談し、減免制度の利用などの対策をおこないます。
対策をおこなっても費用が払えない場合は、猶予期間内に料金の安い施設に転居します。また、費用に困窮する場合には生活保護受給の検討も必要です。
特別養護老人ホームで利用できる減免制度には、特定入所者介護サービス費・高額介護サービス費・高額医療・高額介護合算療養費制度・社会福祉法人などの利用者負担軽減制度・医療費控除の5つがあります。それぞれ対象となる要件が異なるため、どれが利用できるかわからない方は施設の担当者に確認しましょう。
申請窓口や必要な書類は制度ごとに異なります。まずは施設に詳細を確認し、必要な書類を揃えたうえで申請をおこないましょう。
特別養護老人ホームの費用は、要介護度や居室タイプ、提供されるサービスにより異なります。目安となる月額費用は9~13万円程度です。
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