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#認知症について

【医師監修】改訂長谷川式認知症スケールとは|点数配分や検査の注意点

認知症には早期発見が重要です。検査の一つに改訂長谷川式認知症スケールがあります。簡易検査なので自宅で行うことができるので、認知症の早期発見に役立ちます。 この記事では、改訂長谷川式認知症スケールとは何か?を中心に、検査方法や注意点などを詳しく解説していきます。 改訂長谷川式認知症スケール(HDS-R) 神経心理学的検査で行われる認知機能テストのひとつに長谷川式スケールがあります。1974年に精神科医の長谷川氏が開発し全国的にも普及させました。1991年に改訂されたため、現在では「改訂 長谷川式認知症スケール(HDS-R)」と呼ばれています。 所要時間は10~15分ほどの口頭形式。名前や生年月日、年齢、場所、人間関係、簡単な計算などの設問に患者が答えていき、30点満点中20点以下だと認知症の可能性が高いとされます。 身近な質問もあるため検査もスムーズに進んでいきますが、その日の体調や状態によって正答率が下がることもあり、テスト結果だけで認知症と診断がつくわけではありません。 設問は口頭が多いため、難聴の方は医師の質問の聞き取りが難しく不正解となる場合もあるため注意が必要です。 改訂長谷川式認知症スケール(HDS-R)の9つの設問 改訂長谷川式認知症スケールの検査項目は9つの設問から構成されています。日付や時刻、場所、人の名前など自身の状況を理解する見当識という能力を問う設問。あとは注意力、記憶力などを確認する設問です。検査時間はおよそ10~15分で、口頭形式になります。 問題点数年齢はいくつですか?1点今日は何年何月何日何曜日ですか?(日時の見当識)年月日、曜日でそれぞれ1点私たちが今いる場所はどこですか?(場所の見当)自発的に出れば2点5秒置いて「家ですか?病院ですか?施設ですか?」に答えられれば1点桜・猫・電車という言葉を言ってみてください。後で聞くので、覚えておいてください。(言葉の記銘)それぞれ1点100引く7はいくつですか?そこからさらに7を引いてみてください(計算)2回正解で2点1回正解で1点これから言う数字を逆から言ってみてください(逆唱)2回正解で2点1回正解で1点先程伝えた言葉をもう一度教えて下さい(遅延再生)自発的に出れば2点ヒントで出れば1点これから5つの品物を見せるので、隠したあとに何があったか教えて下さい(物品記銘)正解した品物分の点数(5つ正解で5点など)知っている野菜の名前をできるだけ教えて下さい(言葉の流暢性)10個で5点9個で4点8個で3点7個で2点6個で1点 改訂 長谷川式認知症スケール(HDS-R)は医療保険が適用される 2018年度の診療報酬改定後から、改定長谷川式認知症スケールは医療保険の対象になりました。物忘れ外来などの専門外来がある医療機関を受診しましょう。 いきなり受診することに抵抗がある場合は、かかりつけ医に相談して専門医がいる医療機関を紹介してもらう流れが一番スムーズです。 検査の費用 前述したように改定長谷川式認知症スケールは医療保険を利用しての検査が可能です。保険の負担割合によって自己負担額は1~3割と変わりますが、改定長谷川式認知症スケールは認知症検査の中でも比較的安い費用で受けることができます。 自宅で改訂 長谷川式認知症スケールをおこなう 自宅で家族が改訂長谷川式認知症スケールで検査する場合の注意点やチェックポイントを紹介します。 家族が評価をする際の注意点 認知症の早期発見、早期治療は重要ですが、家族が簡易認知症検査を行う場合は細心の注意が必要です。本人が嫌がっているのに、無理に行うことは避けましょう。 検査の点数で判断するより、日常生活の中での違和感や兆候を見つけることが重要です。家族が認知症検査をする場合、最終的な診断は必ず専門医に実施してもらうようにしてください。 当日の体調や精神が安定していない場合、結果が低く出ることもあります。自宅で検査して点数が20点未満だった場合は自己判断で断定せず、早急に専門医の診察を受けて正確な診断を待ちましょう。 自宅でチェックする場合の5つのポイント 病院で受診する前に自宅の認知症検査でスクリーニングをしたいと考えている人も多いでしょう。長谷川式認知症スケールは10~15分で自宅で簡単に行うことができます。その際の5つのポイントを紹介します。 環境が整っているか耳の聞こえが悪くないか?精神症状への配慮学習効果への配慮検査を強制しない 1.環境が整っているか 検査をする際、家族が検査に集中できる環境を整えてください。テレビなどの騒音があったり人がいると気が散って正しく測定ができません。本人がリラックスしている状態であることも必要です。静かな落ち着ける場所で検査を受けることをおすすめします。 2.耳の聞こえが悪くないか? 質問が速かったり声が小さかったりすると耳の具合が悪い場合は聞き取りにくく、正確な認知症の判断ができないかもしれません。耳が遠かったり難聴が疑われる場合は大きな声でゆっくりはっきり質問を伝えるようにしてください。 3.精神症状への配慮 精神状況によっても正しく測定できない場合があるので配慮が必要です。うつ状態など精神症状による認知機能の低下が見られる場合は、医療機関に相談することをおすすめします。 4.学習効果への配慮 短期間で同じ質問を繰り返ししていると、質問内容自体を覚えてしまい答えがワンパターン化され、その結果正しい結果が出なくなる可能性があります。 5.検査を強制しない 認知症検査を受けることは本人にとって大きな精神的ストレスがかかります。認知症の早期発見は大切ですが、本人の自尊心を尊重し、検査を強制しないようにしましょう。 検査にあたっての心づもり 認知症の検査をするというと、ショックを受けたり、診断されたくないと検査を拒否する人もいるでしょう。 しかし、認知症には早期発見、早期治療に越したことはありません。本人にしっかりと理解してもらい、協力をとりつけることが大切です。認知症状が進んでいて本人の理解が難しい場合は、認知症検査ということは言わずに、普通の健康診断として受診することも良いかもしれません。 また、認知症検査の結果については、本人だけではなく家族も一緒に確認するようにして、今後の対応についても話し合えるようにしておきましょう。 認知症と診断がでたら 認知症について知る 認知症には3大認知症といわれる「アルツハイマー型認知症」、「レビー小体型認知症」、「脳血管性認知症」があり、発症の仕組みによって分類されています。 アルツハイマー型認知症 認知症で最も多いのが「アルツハイマー型認知症」で、アミロイドβやタウタンパクというたんぱく質が脳にたまることで神経細胞が減少し、脳全体が委縮することで起こります。 もの忘れや時間の見当識障害、料理がうまくできなくなるなどの実行機能障害実行機能障害が見られ、これらの症状からうつや無気力、幻覚、や妄想、暴言や暴力などの二次的な行動・心理症状が生じることがあります。 適切な支援や環境が整えば、二次的な症状を防げる場合があります。 レビー小体型認知症 「レビー小体型認知症」は、レビー小体というたんぱく質のかたまりが脳にたまり脳の神経細胞の数が徐々に減少することで起きる認知症です。 「レビー小体型認知症」では、認知機能の低下よりも先に、手足が震える、筋肉が硬くなるといったパーキンソン症状があらわれます。幻視やレム睡眠行動障害といった特有の症状が見られるのが特徴です。 「アルツハイマー型認知症」と「レビー小体型認知症」には根本的な治療法はなく、薬によって症状の進行を遅らせることはできます。 脳血管性認知症 「脳血管性認知症」は脳の血管に出血やつまりが生じ、脳細胞が死滅することによって引き起こされる認知症です。アルツハイマー型認知症に比べて男性の割合が高く、女性の2倍近い報告があります。 「脳血管性認知症」ではもの忘れなどに加え、できることとできないことの差が大きかったり、1日のうちでも症状の変動が大きかったり、感情をコントロールしにくいなど特有の症状が見られます。 症状に波があり、障がいを受けていない機能は保たれているので症状の発見が遅れる傾向があるので注意が必要です。 いずれの認知症でも、発症された方自身ができないことにいらだちを覚えたり、自尊心を傷つけるような方法を取ってしまうと、認知症以外の二次症状を起こしかねません。 本人の認知症の特性を理解し、適した対応を取ることで症状の安定へと繋がります。 介護サービスを検討する 認知症を発症しても、初期の段階ではご家族と一緒にこれまでと同じようにご自分の家で日常生活を送っても問題ありません。 しかし、症状の進行にともない、身体的な介護負担が増えていくと介護する方の精神的な負担も大きくなります。 認知症を発症したらまずは介護認定を受け、ケアマネジャーに依頼して必要な介護サービスの利用を検討しましょう。 介護サービスにはホームヘルパーが自宅を訪れ身体介護や生活支援をおこなってくれる「訪問介護」や、自宅に専用の浴槽を持ち込みスタッフが入浴介助をおこなってくれる「訪問入浴介護」、食事や入浴などの生活支援やレクを介護施設で日帰りでおこなう「デイサービス」、介護施設などに宿泊する「ショートステイ」などがあります。 介護の形は家庭によってそれぞれ違います。介護する方の負担を減らし、介護疲れを防ぐことも大切な介護支援と考えられていますので、積極的に利用しましょう。 自分も大切にする 愛する家族が認知症を発症することは、とてもショックなことです。家族が変わっていく姿を見ることは辛いですし、ストレスを感じてしまいます。 介護をするときに重要なのは、必要以上に頑張りすぎたりせずに、自分自身の健康や時間も大切にすることです。 溜め込まない 認知症の家族を介護する中で、不満や悲しみは生まれてきます。その気持ちをずっと自分だけでしまっておくと、いつか爆発してしまいます。 負の感情は溜め込まないことが一番です。時々は友人に愚痴をいったり、家族につらいと本音をこぼしたり、カラオケで発散させたり。気持ちを切り替えながらやっていきましょう。 まわりにも頼る 介護をしているときは大変すぎて、自分一人に抱えてしまいがちです。しかし、介護を一人でするのは不可能です。周りの人や外部のサービスを上手に利用して、まわりに頼りながらやっていきましょう。 認知症チェックリスト 「自分は認知症なのかな?」「家族が認知症かも」と不安になったら、下記のチェックリストで、まずは認知症の可能性がありそうかをチェックしてみるのも良いでしょう。 チェックリストのダウンロードはこちら 簡単な質問に答えていくだけでチェックできますが、医学的診断に代わるものではありません。 チェック結果が合計20点以上の場合は、認知機能の低下や社会生活に支障が出ているなど認知症の可能性が疑われます。かかりつけ医や医療機関の受診や地域包括支援センターへ相談しましょう。 改訂長谷川式認知症スケールに関するよくある質問 長谷川式認知症スケールとは何ですか? 長谷川式認知症スケールは、簡易的な認知症テストです。多くの医療機関でも実施されており、信頼性が高い評価法でもあります。 また現在では、改訂長谷川式認知症スケールと呼ばれており、所要時間は10~15分程です。また言語性知能検査であるため、難聴や失語症の人は検査が困難になる場合があるので注意が必要です。 改訂長谷川式認知症スケールの内容はどんなものですか? 改訂長谷川式認知症スケールは10~15分ほどの口頭形式が一般的です。主に名前や生年月日、年齢、場所、人間関係、簡単な計算などの設問に点数が振りわけられており、30点満点中20点以下の場合だと認知症の可能性が高いとされます。 改訂長谷川式認知症スケールではどのような設問が出ますか? 改訂長谷川式認知症スケールの検査項目は9つの設問で構成されています。 例として、「年齢はいくつですか?」「今日は何年何月何日何曜日ですか?」「私たちが今いる場所はどこですか?」などといった設問が出されます。自身の状況を理解する能力、注意力、記憶力などを主に確認しています。 { "@context": "https://schema.org", "@type": "FAQPage", "mainEntity": [{ "@type": "Question", "name": "長谷川式認知症スケールとは何ですか?", "acceptedAnswer": { "@type": "Answer", ...

2022/01/11

【司法書士監修】任意後見制度とは|手続きの流れや費用、成年後見制度との違い

認知症など認知障害により判断能力が不十分になる前に、将来の備えや介護施設に入居するための準備として、任意後見制度の利用を検討する方が増えています。 そこでこの記事では、任意後見制度とはどのような制度なのか?その特徴と必要な手続きの流れを解説していきます。 任意後見制度とは? 任意後見制度とは、本人に充分な判断能力があるうちに、将来、認知症などで判断能力が低下したときに、本人に代わって事務手続きなどおこなう人を定めておく制度のことをいいます。 本人が判断能力を有するうちに、将来の財産管理、介護サービス締結や療養看護に関する手続きなどを、信頼できる方にあらかじめお願いし、引き受けてもらう契約を結びます。 この契約は任意後見契約を呼ばれ、公正証書によって締結されます。任意後見契約においては、依頼人(本人)は委任者、引き受ける方は任意後見受任者(後に、任意後見人)と呼ばれています。 成年後見制度との違い 任意後見制度では、本人に判断能力があるうちであれば、あらかじめ本人が自分で選んだ後見人と本人の意思に基づき契約を結ぶことができます。自分の後見人となって欲しい方を選べるのはもちろんのこと、その方に自分が認知症になった際にどのような生活を送りたいかを、あらかじめ伝えておくことができます。一方、耳にする機会の多い「成年後見制度」とは、本人の判断能力が不十分になった後に、周囲の方などが家庭裁判所に後見人の選任を申し立てをおこない、選任された後見人が支援をおこなう法定後見制度のこと。本人が自分で後見人を選ぶことはできません。これらの任意後見制度と法定後見制度をまとめて、「成年後見制度」と呼ぶこともあります。成年後見制度について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。 手続きの流れ 4つのステップ 任意後見制度を利用する際の手続きの流れを見ていきましょう。 任意後見人受任者を決める内容を決め契約を結ぶ申し立てをする任意後見人が選任される 1.任意後見受任者を決める まず、後に任意後見人となってもらう任意後見受任者を決定します。 任意後見人になるためには、特別な資格は必要ありません。家族や親族はもちろん、信頼できる友人、または弁護士や司法書士などの第三者や法人と契約を結ぶこともできます。 また、業務を確かに遂行するために、任意後見人を複数定めることもできます。ただし、以下の項目に該当する人は任意後見人にはなれないので注意してください。 未成年者破産者行方不明者被後見人に訴訟を起こした人とその配偶者過去に後見人を含む法定代理人を解任されたことがある人その他不正な行為をおこなうなど任意後見人に適さない経歴がある人 2.内容を決め契約を結ぶ 任意後見受任者が決定し、支援してもらう契約内容も定まったら、本人と任意後見受任者の間で任意後見契約を結びます。 必ず本人と任意後見人がともに公証役場に訪れ、公正証書を作成し、契約を締結しなければなりません。この公正証書によって締結されていない契約内容はすべて無効になるため、証書作成の際は最善の注意が必要です。 また、公証役場は予約が必要となり、突然、訪問しても任意後見契約を締結することができません。任意後見契約の内容も公証役場に事前に伝えておく必要があります。契約内容の策定や公証役場とのやりとりについては、司法書士や行政書士のサポートを受けながらおこなうことも良いでしょう。 契約にあたり必要になるもの 任意後見契約をおこなう際に必要となるものには下記のものがあります。必ずすべての書類を揃え、確認してから公証役場に向かいましょう。 本人の必要書類 印鑑証明 戸籍謄本 住民票 任意後見受任者の必要書類 印鑑証明書 住民票 ※いずれも発行から3カ月以内のもの 3.申し立てをする 任意後見契約を結んだ後、本人の判断能力が低下し始めたタイミングで、本人の住所地を管轄する家庭裁判所に「任意後見監督人の選任」の申立てをおこないます。 任意後見監督人の選任がなければこの契約は開始できないため、ただちに申立てをおこなう必要があります。申立てができる人は、本人、または任意後見受任者、本人の配偶者と四親等内の親族ですが、本人以外が申立てをおこなう場合は、原則として本人の同意が必要となります。 ただし、本人が意思表示できる場合は同意は不要です。 申し立てに必要なもの 申立てには、下記の書類が必要となります。すべての書類を揃えてから、家庭裁判所に申立てをおこないましょう。 家庭裁判所によって必要書類や書式が異なることもあるので、詳しい内容は、申立てをおこなう家庭裁判所のWEBサイトなどで確認することをおすすめします。 申立書申し立て事情説明書本人の財産目録及び資料本人の収支状況報告書及びその資料任意後見受任者事情説明書親族関係図戸籍謄本住民票後見登記事項証明書任意後見契約公正証書の写し成年後見用の診断書 4.任意後見監督人が選任される 任意後見監督人の選任の申立てにより、家庭裁判所が、本人の状態と任意後見受任者の事情を考慮した上で審理をおこない任意後見監督人を選定します。 結果は、家庭裁判所から任意後見人に郵送で通知され、その後に法務局が、家庭裁判所の依頼に基づき、任意後見監督人に関する情報と任意後見が開始した事実を登記します。 任意後見監督人が選定された時点で、任意後見受任者は任意後見人となり、契約内容に記載された支援をスタートすることができます。 任意後見制度の利用にかかる費用は? 任意後見制度を利用するには、準備段階として下記にかかる費用を事前に用意しておかなければなりません。 公正証書を作成する手数料任意後見監督人選任の申し立て費用任意後見人への報酬 ここでは、具体的にはそれぞれどのくらいの費用がかかるのかを詳しくみていきます。 公正証書を作成する手数料 公正証書の作成手数料とは、公証人に任意後見契約書を作成してもらうために必要な費用のことをいいます。 実際にかかる費用として「基本手数料」に1万1,000円、「登記嘱託手数料」に1,400円、登記所に納付することになる「印紙代」として2,600円などが必要となります。 任意後見監督人選任の申し立て費用 家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申し立てをする際にも、費用がかかります。 具体的には「申し立て手数料としての収入印紙代」に800円、「登記手数料としての収入印紙代」として1,400円、連絡用の「切手代」に3,000~5,000円程度がかかります。また、成年被後見人の精神鑑定が必要な場合には、さらに5~10万円程度が必要になることがあります。 任意後見人への報酬 任意後見契約が実行され、任意後見人の業務と任意後見監督人による監視と事務がスタートしたら、必要に応じてそれぞれに対して報酬を支払うことになります。 任意後見人の場合、家族や親族がそれを担う時など、契約時に報酬についての取り決めがなければ、法律上は無報酬になるということも多くあります。ただし、一般的に第三者の弁護士、司法書士などの専門家に任意後見人をお願いする場合は、報酬を支払う必要があります。 その金額や支払い方法、支払い時期などについては、事前に本人と後見受任者の間で自由に取り決めることができます。本人が持つ財産が多ければ、管理業務や負担も増えるため、支払う報酬金額も上がることが多くなるようです。 報酬の目安 任意後見人が第三者であった場合、本人の財産状況にもよりますが、月々1~3万円の報酬が支払われることが多いようです。 また、任意後見監督人に対しては、報酬を支払う決まりとなっており、家庭裁判所によって、本人の財産の中から相当な報酬金額が決められます。その額は月々1~3万円程度のようです。 任意後見の契約は3種類ある 任意後見の契約は、開始時期によって以下の3つの種類に区別されます。 即効型 将来型 移行型 それでは、それぞれの内容を詳しくみていきましょう。 即効型 任意後見契約のうち、契約の締結後すぐに任意後見の支援を開始する契約を「即効型」といいます。 「即効型」は、本人の判断能力がすでに低下してきているが、本人自身で契約締結の判断ができる場合のみ利用できます。契約後は、速やかに任意後見を開始するために、直ちに家庭裁判所に対して任意後見監督人の申し立てをおこないます。 「即効型」の任意後見契約を締結する場合は焦っていることも多く、契約内容の理解や確認が本人だけでは不十分になってしまい、後になって後悔…というケースも見受けられます。契約を締結するときは、本人だけでなく、ご家族や親族の方に確認してもらえるようお願いすると良いでしょう。 将来型 任意後見契約の「将来型」とは、本人の判断能力がある時点で、事前に締結しておく任意後見契約のことをいいます。本人の判断能力が低下したタイミングで家庭裁判所に対して任意後見監督人の申し立てをおこなうことで、任意後見契約が開始されます。 一般的に契約締結から任意後見までの期間が長く空いてしまうことが多く、いつ任意後見を開始させたら良いのかの判断が難しくなり、場合によっては開始せずに本人が亡くなってしまうケースもあります。 また、長い期間が空いてしまうことによって、任意後見受任者が契約忘れてしまう恐れもあるので「見守り契約」も併せて締結しておくことをおすすめします。 移行型 「移行型」の任意後見契約では、例えば、任意後見契約と同時に財産管理、見守りなどの委任契約を結び、その支援の一部を任意後見よりも先に開始します。のちに、本人の判断能力が低下してきた段階で、本格的に任意後見に移行します。 「移行型」の契約は、「将来型」のように線が途切れる心配がないこともあり、最も多くの方に利用されているようです。 「移行型」の委任契約で扱われる契約として下記のものが挙げられます。 本⼈の健康状態を把握するための⾒守りを⾏う「⾒守り契約」財産管理や身上監護における委任契約である「財産管理等委任契約」死亡後の葬儀やお墓に関する委任契約である「死後事務委任契約」 任意後見制度ではカバーされない死後についても、事前に「死後事務委任契約」を締結しておくことで本人が死亡し任意後見が終了しても、支援の継続が約束されるので、本人の大きな安心につながるでしょう。 任意後見人の基本的な役割は? 任意後見人にはどのような役割があるのでしょうか?その内容を見ていきましょう。 財産の管理 任意後見人の大きな仕事のひとつに「財産の管理」があります。本人に代わり、預貯金や年金を管理して出し入れや振込みをおこない、自宅など不動産の管理、税金や公共料金の支払いなどもおこないます。 介護や生活面の手配 「介護や生活面の手配」も任意後見人の大切な仕事となります。 具体的には、必要に応じて要介護認定の申請をおこなったり、介護サービスの利用や介護施設に入居するための手配や申込みと支払い、医療機関を利用する際や入院の際の手続きと支払いをおこないます。 また、生活費を届けたり送金したりするなどもおこない、生活全般の手配や療養看護などの事務手続きを代行します。 任意後見制度のメリット 任意後見制度を利用することで、どのようなメリットがあるのでしょうか?具体的には以下のようなメリットがあります。 希望を具体的に反映できる任意後見人を自分で選ぶことができる任意後見人の仕事ぶりを確認してもらえる介護施設への入居の備えにできる 希望を具体的に反映できる 任意後見制度では、契約内容に現時点の本人の意思や要望を具体的に反映できることが、最大のメリットだといえます。 その内容は多岐に渡り、将来的に利用する介護施設や病院の選定や治療・介護サービスの内容、財産管理や保護に関すること、後継人への報酬などご自身の希望に沿った内容で契約することができます。 一方、法定後見制度は、本人の判断能力が失われた後に裁判所によって後見人が選任され、支援を開始する制度のため、財産管理の方法や利用する病院、介護サービスなどの選定についてのほとんどを後見人が決定することが多く、それは本人やご家族の意思とは異なることもあるかもしれません。 任意後見人を自分で選ぶことができる 任意後見制度では、本人が前もって、信頼できる人を後見人として選んでおけることもメリットのひとつであるといえます。 後見人として選ばれる人には特別な資格もいらないので、親族はもちろん信頼できる第三者に、自分の将来を託すことができます。 しかし、法定後見制度での後見人の選任は、家庭裁判所によっておこなわれます。そのため、後見人として望ましい人が親族にいたとしても、その人が家庭裁判所によって選ばれるとは限らないのです。 任意後見人の仕事ぶりを確認してもらえる 任意後見制度では、家庭裁判所によって任意後見監督人が選出され、第三者の面から後見人の仕事ぶりを監視、確認してもらうことができます。 介護施設への入居の備えにできる 介護施設への入居の備えとして、身寄りのない方や親族に身元引受人等を頼めない方が任意後見制度を活用することも可能です。 民間の介護施設では、入居契約の際、身元引受人・保証人を立てる必要があり、これらを立てられない場合は身元保証会社と契約するか、任意後見人を定めることが条件になることが多くあるためです。 任意後見人制度のデメリット 一方、任意後見人制度を利用するにあたってのデメリットには、以下のようなものが挙げられます。 判断能力の有無で決まる死後の処理は委任できない法定後見制度とは違い取消権がない 判断能力の有無で決まる 任意後見制度のデメリットとしては、本人の判断能力が下がってしまってからでは、制度を利用することができないという点が挙げられます。 任意後見契約は、本人の明確な意思のもとに締結されるものであって、本人に認知症などの認知障害がみられる場合には、この制度を利用することはできません。 死後の処理は委任できない 任意後見人の権限は、委任者(本人)の死亡によって終了してしまいます。 葬儀やお墓の管理、自宅の片づけや相続手続きなど、ご自身の死後はどうなるのかについて不安を感じることがある場合でも、死後の事務処理や財産管理を、任意後見人に依頼することはできません。そのため、任意後見契約とは別に「死後事務委任契約」を結ばなければなりません。 また本人の死後は、自分が信頼して選任した任意後見人であっても裏切られることもあり、本人の意思通りにことが進められる確実な保証はなくなるケースもあるようです。 法定後見制度とは違い取消権がない 認知症の方の周りでは、詐欺行為や悪徳な業者による不当な契約を迫られる事態が多く見受けられます。 法定後見制度では、不利益な契約であると判明した場合には、あとからでも契約を解消できる取消権が認められています。 しかし、任意後見制度では取消権は認められていないため、判断能力が低下した本人が契約した内容によっては、不利益が発生してしまうことがあります。 任意後見契約が終了するのはいつ? 任意後見契約では、終了事由があった場合や委任者である本人が亡くなった時に、契約が終了します。 終了事由として、本人の破産、任意後見人が認知症などになり判断不十分になった場合が挙げられます。 また、任意後見人による不正行為や著しい不正行跡が発見されたとき、その他の後見人として任務に適さない事由があるときも、家庭裁判所によって任意後見人を解任することができます。その解任請求ができるのは、本人または親族、任意後見監督人や検察官となります。 任意後見は将来に備えた準備 任意後見制度は、元気なうちに、認知症などによって判断能力が低下してしまうことを見据えた将来の備えとして利用され始めています。 ご本人自身で、残りの人生をどう生きるのかを考慮して契約内容を決められることは、大きな安心に繋がります。その安心のためにも、任意後見人には、ご本人のために最善を尽くしてくれる、信頼できる方を選ぶことが重要になります。 任意後見人には、ご本人の意思を尊重し、心身の状態や生活状況を配慮しながら業務を遂行する義務があるからです。また、介護施設の入居にも、任意後見制度が利用できることは、将来の不安を和らげてくれる大きなポイントになります。 以上の点を踏まえたうえで、任意後見制度の利用を選択肢のひとつとして、検討することをおすすめします。 任意後見制度に関するよくある質問 任意後見制度とは何ですか? 任意後見制度は、本人に充分な判断能力があるうちに、将来、認知症などで判断能力が低下したときに、本人に代わって事務手続きなどおこなう人を定めておく制度のことを言います。 本人に充分な判断能力があるので、希望を具体的に反映できたり、任意後見人を自分で選ぶことも可能なのが任意後見制度のメリットと言えます。 任意後見人は誰でもなれますか? 任意後見人になるためには、特別な資格は必要なく、家族や親族はもちろん、信頼できる友人に依頼することも可能です。ただし、未成年者、破産者、行方不明者などの任意後見人の任務に適しない事由のある人は任意後見人にはなれないので注意が必要です。 任意後見人の役割は何ですか? 任意後見人の大きな仕事のひとつとして財産の管理が挙げられます。主に預貯金や年金を管理して出し入れや振込み、自宅など不動産の管理、税金や公共料金の支払いもおこないます。 また、介護や生活面の手配も仕事のひとつとして挙げられます。具体的に介護サービスの利用や介護施設に入居するための手配や申込みや支払い、医療機関を利用する際や入院の手続きと支払いなどもおこないます。 { "@context": "https://schema.org", "@type": "FAQPage", "mainEntity": [{ "@type": "Question", "name": "任意後見制度とは何ですか?", "acceptedAnswer": { "@type": "Answer", ...

2021/12/29

認知症治療・リハビリのひとつ「回想法」は、過去の思い出を他者に話すことで脳に刺激を与える

【医師監修】認知症治療の回想法とは|目的とリハビリの効果

「回想法」とは認知症における非薬物療法のこと。脳が活性化することで認知症の進行を緩やかにしたり、認知症の予防法としても効果が期待されています。 回想の方法や注意点などのポイントをおさえておけば、自宅で手軽にはじめることもできますよ。 回想法とは 「回想法」とは認知症における非薬物療法のひとつで、リハビリテーションとして用いられている手法です。 過去の出来事や思い出を他者に話すことで脳が刺激されるので、認知症の進行を緩やかにすることが期待されています。 認知症の治療だけでなく予防法にも 1960年代のアメリカで誕生した回想法は、日本では高齢者のうつ病の治療法として取り入れることになり、現在では認知症の治療や予防として病院や施設で活用されています。 回想法において最も期待されているのが、脳への刺激です。昔の出来事や記憶を思い出すだけでなく、それを他人に話すという行為が脳に刺激を与え、脳の活性化につながります。 また、特別な準備が必要なく始められるのも回想法が広く普及したポイント。認知症を発症した方が持っている写真や使い慣れた小物、本人たちに親しみのある音楽や食べ物など、過去を思い出すきっかけになるものがあれば、すぐにでも始められます。 もちろん、過去の記憶を頼りに話してもらうだけでも一定の効果が期待されています。 回想法の始まり 回想法は1960年代のアメリカで誕生、影響力の高かった老年学者・ロバート・バトラー氏によって提唱されました。1960年代当時の精神医学では、年齢を重ねた人が同じ話を何度も話題にしたり話したりすることは、ある種の病的状態であるとネガティヴに捉えられていました。ここに目をつけたバトラー氏は考え方を転換します。バトラー氏は高齢者が回想をおこない、自分の人生を振り返ることで自らの自尊心を得られることや、同じ世代で話し合うことで悩みを共有できること、結果としてストレスの軽減や安心感を得られるなど、さまざまメリットを挙げて、回想法を積極的に推奨しました。 回想法は認知症の特性を活かした治療法 回想法は、記憶時間の短い“短期記憶”ではなく、長期間にわたって記憶されている“長期記憶”を思い出すのが特徴です。回想法は長期記憶である昔の出来事や感情を思い出す行為なので、短期記憶が失われやすい認知症に向いている治療と言えるでしょう。 そもそも認知症はさまざまな要因によって脳の認知機能が低下し、日常生活に障害が起きている状態のこと。損傷部位や人によって症状はさまざまですが、ごはんを食べたことを忘れてしまう短期記憶の喪失や、現在の時間や自分がいる場所が分からなくなる“見当識障害”は、認知症でよく見られる症状です。 自分がどこにいるかわからなくなる、今までできていたことができなくなることは、認知症を発症した本人にとって、非常につらい状況です。 過去の自分を思い出し、そして話をじっくり聞いてくれる人がいることを確認することで、精神的にリラックスできるのも回想法の大きなメリット。精神的な安定は認知症の症状緩和にも大きく役立ちます。 回想法は2種類ある 回想法には個人回想法とグループ回想法の2種類があります。個人回想法は語り手と聞き手がマンツーマンでおこなうのに対し、グループ回想法は6〜8人の語り手でおこないます。前者は在宅で、後者は病院や施設で多用されています。 個人回想法とは 個人回想法とは、語り手(認知症を発症した本人、あるいは認知症予防をしたい人)と聞き手(家族、介護者)の2人で回想する方法です。聞き手が語り手の話にじっくりと耳を傾けることができるので、より丁寧な回想をおこなうことができます。 また、少ない人数で行えるのが個人回想法のメリット。治療だと肩肘張らずに、談話中や在宅介護の合間などに取りいれることができます。 グループ回想法とは グループ回想法とは、6〜8人の語り手(認知症を発症した本人、あるいは認知症予防をしたい人)に対して、2〜4人の聞き手(家族、介護者)で回想する方法。全体で10名前後のグループになって回想します。 語り手が複数いることで個人の回想が深まり、さらに脳が刺激されます。また、同年代の人と回想することで、当時の環境や悩み、想いを共感できるのもメリット。自分の感情を誰かと共有できることで、精神的な安定につながります。 回想法の効果 回想法にはさまざまなメリットが期待されています。ここでは精神的なメリット3点、脳機能的メリット1点をご紹介します。 自信を取り戻す 認知症はすべてのことが一度にわからなくなるわけではありません。認知症の症状によって出来事や経験を忘れることがあっても、今までできていたことができなくなった不安や、周囲の環境や人が分からなくなる苦しみは、認知症を発症した本人が最も感じています。 回想法で過去の記憶を思い出すことは、自分がどんな人間でどんな人生を歩んできたかを再認識できる場でもあります。自分が成し得たことや楽しい記憶を思い出すこすことで、本人の自信につながっていきます。 不安や孤独感を和らげる 回想法は他者がいなければ成り立ちません。自分の話に耳を傾けてくれる人がいるという安心感や、共通の話題を語り合う楽しさを実感することで、認知症による不安や孤独感が緩和されやすくなります。 脳の活性化 回想法にもっとも期待されているのが、脳の活性化です。 認知症はさまざま要因によって脳機能が低下している状態なので、脳が活性化することで認知症の進行が緩やかになると考えられています。回想法は過去の記憶を思い出し、そして誰かに話すという2つの行為で脳を刺激するのです。 実際に国立長寿医療センターが行った研究によると、回想法を導入したグループは記憶検査で改善がみられたという結果が発表されています。 また、回想法は特別な訓練や準備物は必要ありません。過去を思い出せるきっかけがあればおこなえる治療法なので、認知症が進行した場合にも取り入れることができます。 コミュニケーションを深める 認知症の非薬物治療として活用されている回想法は、認知症を発症した本人と家族や介護者とのコミュニケーションツールとしても使えます。 認知症を発症した方は日々、不安や孤独を少なからず抱えている状態です。精神的に負担がかかると、認知症の周辺症状(BPSD)の悪化にもつながることも。 他者とのコミュニケーションで気持ちがくつろいだり、信頼関係を築くことができれば、精神的な安定につながります。その結果、認知症を前向きに捉えることができるようになるでしょう。 回想法をおこなう準備 回想法に特別な訓練やアイテムは必要ありませんが、事前準備をしっかりとおこなっておくことは大切です。 まずは回想法をおこなう前に、語り手(認知症を発症した本人、あるいは認知症予防をしたい人)がどのような状態かをチェックしましょう。認知症がどの程度進んでいるのか、コミュニケーションをとることができるかを確認します。 回想が可能な状態であれば、語り手の性格や心身の状態によって、個人でおこなうのか、グループでおこなうのかを決めましょう。 準備する物や情報 回想法をおこなう際、特にグループでおこなう時は、事前にテーマや避けるべき話題を決めておくのがポイントです。話す内容をある程度絞っておくことで、聞き手(家族、介護者)が当時の様子や情報を収集したり、思い出の品やアイテムを準備することができます。 下記のテーマを幼い頃から時系列順に語ってもらうのも良いでしょう。 本人の出生地や、家族構成、学歴や職歴、結婚の思い出本人の頼りにしている人、子ども時代の思い出病歴や怪我、生活パターン、最近の様子趣味、特技、好きなこと、嫌いなこと嬉しかったこと、ショックだったこと、気になっていること また、回想の際に準備しておくものは、語り手が思い出を語るきっかけになるものであれば何でも構いません。昔の写真やよく聴いていた音楽、よく食べていたお菓子、使い慣れた小物など、五感に訴えるものは記憶を呼び覚ましやすいので、積極的に取りいれてみましょう。 個人でおこなうときのポイント 個人回想法は手軽におこなえるので、在宅介護や談話中の途中でに何気なく始めることができます。自宅で回想法をする際は、会話に集中しやすい環境を整えましょう。 あらかじめ決めたテーマについて語ってもらう面談方式のほかに、語り手が気になったことを自由に語るフリースタイルで回想できるのも、個人回想法のメリット。アルバム写真など過去の出来事を時系列順に確認できるアイテムがあると、語り手が回想しやすくなります。 グループでおこなうときのポイント グループで回想法をおこなう際は、参加人数と参加者のバランスに配慮します。語り手は6〜8人、聞き手はリーダー1人とサブリーダー1人の最低でも2人。さらに1〜2人のスタッフが付き添えると安心です。 次に回想法の実施回数やテーマを設定します。“認知症の治療”としてしまうと本人が参加しづらくなる場合もあるので、最初は話しやすいテーマを設定してみましょう。 またグループでおこなう際は、回想の場を居心地の良い空間にすることも大切。気軽に語りあえるイベント名にしたり、お茶やお菓子を用意してティータイムのような雰囲気するなど、語り手がリラックスした状態で回想法をおこなえるようにしましょう。 回想法の基本的な注意点 回想法は手軽に始められる治療ですが、だからこそ以下のような注意すべきポイントをしっかりと確認しておくことが大切です。 プライバシーを守る 無理強いはしない 訂正や否定をしない 終え方を心地良く プライバシーを守る 回想法は過去の記憶や思い出を語る場なので、時としてプライベートに深く関わることがあります。本人の秘密や死の話題、性的な話など、プライベートに関わることは他言禁止。秘密保持を徹底しましょう。 無理強いしない 回想を行っていると、過去のつらい経験や嫌な思い出など、本人にとって話したくない話題に触れることがあります。そんなときは無理に聞き出すのは禁物です。 さらに、認知症を発症している方は脳が疲れやすい傾向にあります。辛そうな表情や過度な興奮、疲れたそぶりが見受けられたら、回想法を早めに終わらせましょう。 訂正や否定をしない 回想法は過去の出来事や記憶を正確に思い出すのが目的ではありません。長期記憶は忘れにくいとはいっても、間違って記憶していたり、以前の話と内容が違うこともあります。そんな時は指摘せずに、語り手の話をじっくりと聞いてあげましょう。 回想法は思い出を人に話すことで脳を活性化したり、安心感を得るのが目的なので、話を続けてもらうことが大切です。間違いの指摘や否定は避けて、語り手のペースに任せて話をしてもらいましょう。 終え方を心地良く 回想法に限らず、心理療法では治療の終え方=クロージングが重要です。つらい過去や苦しかった思い出は気持ちまで落ちこみ、そのままクロージングしてしまうと、ネガティヴな感情を日常生活にまで引きずってしまいます。 日常生活に気持ち良く戻れるように、語り手が好きな話題を最後のテーマにしたり、お茶やお菓子で場を和ませるなど、ポジティブな気持ちでクロージングできるよう工夫しましょう。 自宅でおこなう場合の注意点 自宅で回想法をおこなう場合の注意は2つ。 1つは、語り手が話す内容を否定・指摘しないことです。家族や親族だと語り手が話す内容に間違いがあると思わず指摘してしまいそうになりますが、そこは我慢。話を遮らずに耳を傾けましょう。 2つ目は、回想に集中できる環境を整えることです。テレビの音が聞こえたり、小物が多いと、話があちこちに飛んでしまうことがあります。テレビの音は消す、回想法に使うアイテム以外は片付けるなど、回想のための環境を整えましょう。 介護施設でおこなう場合の注意点 病院や介護施設などでグループ回想をおこなう場合の注意は、2つあります。 1つ目は、プライバシーを守ること。グループ回想に限らず、語り手のプライベートに関わることは他言禁止です。グループ回想では特に語り手も聞き手も人数が多いので、個人情報の秘密保持を徹底しましょう。 2つ目は、語り手同士の関係性です。複数の人が集まれば、考え方や解釈の違うが生まれるのは自然なこと。ささいな違いで語り手の関係が悪化することのないよう、聞き手が配慮することが大切です。 回想法に関するよくある質問 回想法とは何ですか? 回想法は、過去の出来事や思い出を他者に話す非薬物療法のひとつです。何かを思い出すといった行動が脳に刺激を与え、認知症の進行を緩やかにすることが期待できます。 回想法にはどんな種類がありますか? 回想法は「個人回想法」「グループ回想法」の2種類があります。 個人回想法は語り手と聞き手がマンツーマンで回想をおこなうことを指し、グループ回想法は6〜8人の語り手、2〜4人の聞き手で回想をおこなうことを指します。 個人回想法は少ない人数で丁寧な回想をおこなえるのがメリットとして挙げられ、グループ回想法は、同年代の人と回想することで想いを共感することもでき、精神的な安定につながることがメリットです。 回想法にはどんな効果がありますか? 「自信を取り戻す」「不安や孤独感を和らげる」「脳の活性化」「コミュニケーションを深める」などが挙げられます。 その中でも最も期待されているのが脳の活性化です。認知症の症状は脳が活性化することで進行が緩やかになると考えられており、回想法は過去の記憶を思い出し、誰かに話すという行為で脳を刺激しています。 回想法をおこなう際に特別な準備などは必要ないので、積極的に取り入れていきたい療法です。 { "@context": 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2021/12/27

【医師監修】認知症の介護|気をつける4つのポイント、続けるための5つの心得

「家族が認知症かもしれない」「認知症になったとき介護はどうすればいいのだろう」。そんな不安や疑問を抱えている人は多いのではないでしょうか。 そこでこの記事では、認知症の人を介護する際に必要なポイントや心得を紹介します。 認知症の人への介護の原則 認知症の人が見ている世界と現実にギャップが生じないようにすることが大切です。 認知症の人に合わせて会話をすることが負担だったり、不本意に感じることもあるかもしれませんが、気持ちやペースを理解し寄り添った対応を心がけることは、自尊心を守り、安心感を与えることに繋がります。 こういった丁寧な対応は、結果的に介護をスムーズに進め、介護者の負担を少なくします。 介護をする際の3つの「ない」 認知症になると記憶障害だけでなく徘徊や暴言・暴力、不眠、不潔行動などさまざまな症状が現れるため、家族のサポートが必要となります。 しかし家族は、認知症の方が今までできていたことができなくなっていく様子に、気持ちや対応が追いつかない場合がほとんどです。そのためどうしていいのかわからず、認知症の方に対し「ついつい怒ってしまう」「遅いからと急かす」などの行動を取ってしまいます。 適切に対応するためには、以下の3点に注意することが必要です。 驚かせない 急がせない 自尊心を傷つけない このようなポイントを踏まえて対応することで、認知症の方の気持ちや行動は落ち着いてきます。また、認知症の方が今できることを把握し、その能力を活かせるように支援していくことも大切なことです。 認知症の人に気をつける4つのポイント 気持ちを理解する 信頼関係を築く ペースを合わせる 環境の変化は最小限に抑える 1.気持ちを理解する 認知症はすべてが同時にわからなくなるわけではありません。認知症の進行具合にもよりますが、自分がどこいるか、目の前のものが何なのかがわからなくなっても、わからないことへの恐怖や、今までできていたことができなくなったことの不安は、認知症を発症した本人が最も強く感じています。 そんな感情をもちながら介護を受けると、「家族の手を煩わせるのは申し訳ない」「自分は何の役にも立てない」というさらなる不安や恐怖に繋がり、BPSDを助長させることにもなります。 同じ状況ならどう感じるか、どんな気持ちになるか、認知症を発症した本人の気持ちに寄り添ってコミュニケーションをとってみましょう。 2.信頼関係を築く 普段接する時はもちろん、介護をする・される上で信頼関係を築くことは重要ですが、そう簡単に築けるものではありません。 特に家族の場合だと、失敗した時にそれまでと同じように叱責してしまうこともありますが、認知症を発症しても羞恥心やプライドは残っています。怒られたり無視されることでストレスが溜まり、BPSDが悪化することもあります。 失敗しても否定したり叱ったりせず、不安になるような話し方や行動は極力避けましょう。その上で、本人が心からくつろげる環境を整えたり、喜びや安心につながるコミュニケーションをとるなど、焦らずゆっくり信頼関係を築きましょう。 3.ペースを合わせる 認知症を発症すると、中核障害の影響でさまざまなことが出来なくなったり、動作が遅くなったりします。行動が遅いと「私がやった方が早い」と手を出してしまいがちですが、本人にも自尊心やプライドがあります。 自分でできることは自分でやってもらう、本人のやる気や動作に合わせて行動するなど、なるべく本人のペースに合わせましょう。 また、認知症の症状によっては出来事自体を忘れてしまうことがあります。そんな時は問いつめたり、無理に思いださせる必要はありません。深く追求せずに話を合わせるのも大切です。 4.環境の変化は最小限に抑える 認知症にとって環境の変化は、BPSDを悪化させる大きな要因です。 認知症を発症した方は環境の変化に非常に敏感なので、周囲に何らかの変化があると、それだけで大きなストレスを感じます。そして、ストレスや不安といったマイナスの感情は、BPSDを悪化させる原因のひとつです。 そのため、習慣や日課の変更、部屋の模様替えなどはできるだけ避けましょう。引っ越しや入居などでやむを得ず環境が変わる場合は、使い慣れた小物や家具を使って安心できる環境を整えてあげるのが大切です。 認知症介護を続けるための心得 認知症は完治することなく、長期戦のリスクも高い症状になります。認知症の人を介護することはとても負担が大きく、ストレスをためやすくなります。認知症介護にめぐり、痛ましい事件が起きることもあります。 認知症介護を続けるために、大切な心得について説明します。 自分も大切にする 溜め込まない 比較しない まわりにも頼る 「今」を大切に 自分も大切にする 愛する家族が認知症を発症することは、とてもショックなことです。家族が変わっていく姿を見ることは辛いですし、ストレスを感じてしまいます。 介護をするときに重要なのは、必要以上に頑張りすぎたりせずに、自分自身の健康や時間も大切にすることです。 溜め込まない 認知症の家族を介護する中で、不満や悲しみは生まれてきます。その気持ちをずっと自分だけでしまっておくと、いつか爆発してしまいます。 負の感情は溜め込まないことが一番です。時々は友人に愚痴をいったり、家族につらいと本音をこぼしたり、カラオケで発散させたり。気持ちを切り替えながらやっていきましょう。 比較しない 誰かと比べるというのは、どうしてもマイナスの感情を生み出しやすくなります。特に認知症は、人によって症状の重さや症状のあらわれ方は違います。ほかの認知症の人と比べてどうということは考えても仕方ありません。誰かと比較して、悲しい気分になるのはやめましょう。 まわりにも頼る 介護をしているときは大変すぎて、自分一人に抱えてしまいがちです。しかし、介護を一人でするのは不可能です。周りの人や外部のサービスを上手に利用して、まわりに頼りながらやっていきましょう。 「今」を大切に 介護は大変なので、どうしても介護に手いっぱいでまわりを見たり、今の時間を楽しむ余裕はなくなります。しかし介護は永遠に続くわけではありません。長い目で介護についてとらえて、なるべく「今」を大切に過ごしましょう。 家族介護で限界となる前に 認知症の介護は心身ともに負担がかかるため、介護する家族はストレスを多く抱え込む傾向があります。もし介護者が倒れてしまうと、その後の介護を継続することはできなくなり、他の家族にも混乱が生じます。 限界を感じたときは、介護うつや介護疲れになる前に地域包括支援センターや医療機関、居宅介護支援事業所などで専門家に相談するのが良いでしょう。また、介護者が一時的に介護から離れ休息を取る、「レスパイトケア」という考え方も重要です。 レスパイトケアは地域包括支援センターに相談することで、利用できます。認知症の介護は終りが見えないうえ、「家族のことだから」と頑張り過ぎてしまいます。 介護者自身が、人生を楽しむ時間と健康を維持できるよう、周囲からのサポートや公的なサービスは積極的に利用しましょう。 レスパイトケアとは レスパイトケアは、介護者が介護から一時的に開放され心身ともにリフレッシュさせる、“介護者のため”のケアのこと。同時に、介護される側も外出などをすることで一時的に介護者と離れることでリフレッシュできるなど、双方にとってメリットがあります。レスパイトケアは、介護者の負担を減らし、在宅介護を継続させるために必要なケアと言えるでしょう。 在宅での介護生活が困難な時は 認知症になっても住み慣れた環境で過ごさせてあげたいと家族が考える気持ちは理解できます。ただし、認知症の症状が進んでいくと、家族による在宅介護では対応ができなくなることもあります。その場合は専門の施設への入居も検討するようにしましょう。 認知症の人を受け入れている代表的な施設について説明します。 小規模多機能居宅介護 小規模多機能型居宅介護とは「通所」「訪問「宿泊」の3つの機能を有した介護施設のことです。比較的新しく登場した地域密着型サービスの一つで、どのようなケアも同じ事業所の同じスタッフが対応するので、新しい人が苦手な認知症の人に適しています。 実際に小規模多機能型居宅の利用者は8割程度が認知症の人と言われています。認知症の高齢者の受け皿として期待されていますが、小規模な事業所が多く、入居待ちの人が多いことが残念です。 グループホーム 認知症の高齢者のみを入居対象としているのがグループホームです。認知症の知識と経験があるスタッフが常駐しているのが特徴です。 入居者は少人数で「ユニット」という単位にわけられて、ユニットごとに配置されたスタッフが対応します。これも認知症の人が新しい人に不安を感じるために、なじみのスタッフでサポートできるよう工夫されたシステムです。 入居者にはそれぞれの役割や責任があたえられるので、それを満たすことによって入居者に達成感ややりがいを与えることができます。 グループホームは住民上のある市区町村の中でのみ選択可能です。また介護状況の進行に伴い、介護付き有料老人ホームへの転居を勧められるケースもあります。 介護付き有料老人ホーム 介護付き有料老人ホームは、24時間介護スタッフが常駐して、食事や入浴など身の回りのサポートを受けられる施設です。 民間企業が経営しているものが多く、金額や施設、サービス内容についてもさまざまです。 終身利用を原則としており、認知症や要介護5の人まで幅広く受け入れ可能。看取りのサービスまであるので、他の施設のように途中で転居しなければならないということもありません。 また、住宅型やサービス付き高齢者向け住宅でも最近は認知症の対応が可能としている施設が増えています。気になった施設があれば、問い合わせをして事前に受け入れについて確認しておきましょう。 認知症の介護に関するよくある質問 認知症の人を介護するとき気を付けることは何ですか? 認知症の人を介護する際に気を付けることは、「気持ちを理解する」「信頼関係を築く」「ペースを合わせる」「環境の変化は最小限に抑える」などが挙げられます。 家族が認知症になってしまった場合、今までできていたことができなくなっていく様子に、気持ちや対応が追いつかない場合がほとんどです。適切に対応していくためには「驚かせない」「急がせない」「自尊心を傷つけない」といったことも意識すると良いでしょう。 認知症介護を少し休みたい場合はどうすれば良いですか? 介護うつや介護疲れになる前に、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに相談したり、レスパイトケアを利用しましょう。レスパイトケアは、介護から一時的に開放され心身ともにリフレッシュさせる、介護者のためのケアのことです。 認知症介護を難しくなってきたらどうすれば良いですか? 認知症介護を難しくなってきたら、小規模多機能居宅介護やグループホームへの入居も検討しましょう。 小規模多機能型居宅介護は「通所」「訪問「宿泊」の3つの機能を有した施設のことです。一時的に宿泊などを利用することによって介護者の負担を減らし、在宅介護も継続することができます。 また、グループホームは認知症の人を入居対象とした施設で、認知症の知識と経験があるスタッフが常駐しています。入居者はそれぞれ役割や責任が与えられ共同生活を送ります。 { "@context": "https://schema.org", "@type": "FAQPage", "mainEntity": [{ "@type": "Question", "name": "認知症の人を介護するとき気を付けることは何ですか?", "acceptedAnswer": { "@type": "Answer", ...

2021/12/27

【司法書士監修】成年後見制度の手続きの流れ|気になるメリット・デメリット

判断能力が落ちてしまった高齢者に代わって契約などを結ぶことができる成年後見制度というものがあります。 両親のため、そして自分のために、理解を深めたいと考えている方が増えてきているそうです。ここでは成年後見制度について詳しく紹介していきます。 成年後見制度とは? 成年後見制度とは認知症をはじめ知的障害や精神障害などの理由で物事を判断することが難しく、法律行為をおこなえない状態にある方に、後見人が代わって必要な契約を結んだり、財産を管理したりして本人の保護を図る制度です。 成年後見制度において支援をしてもらう人を「被後見人」、支援をする人を「成年後見人」と呼びます。 成年後見制度は2つに分けられる 成年後見制度には大きく分けると2つの制度があります。 法定後見制度 任意後見制度 法定後見制度は、すでに判断能力が不十分である場合に本人に代わって権利を守り、法的に支援する制度です。一方で任意後見制度は、将来、判断能力が不十分になってしまった場合に備えておくための制度のことを指します。 以下では、詳細を見ていきましょう。 法定後見制度 家庭裁判所へ申立てをすることで、家庭裁判所から成年後見人が選ばれます。 法定後見とは、本人の利益を考えながら本人に代わって契約を結ぶなどの法律行為をしたり、本人に代わって財産を管理したりするなどして、本人を支援、保護することを指します。 後見、保佐、補助の3区分 法定後見制度では、 判断能力の程度に応じて「後見」「保佐」「補助」の3つの区分が用意されています。 後見、保佐、補助の違いについては以下の通りです。 後見 対象となる方判断能力がいつも欠けている方申立てできる方本人、配偶者、四親等以内の親族、検察官、市町村長など後見人等に与えられる権限法律行為の代理権、取消権(※1)申立てにより与えられる権限- 保佐 対象となる方判断能力が著しく不十分な方申立てできる方本人、配偶者、四親等以内の親族、検察官、市町村長など後見人等に与えられる権限借金、相続の承認、家の新築や増改築など特定の事項(※2)についての同意権、取消権(※1)申立てにより与えられる権限・借金、相続の承認、家の新築や増改築など特定の事項(※2)以外の事項についての同意権、取消権・特定の法律行為についての代理権 補助 対象となる方判断能力が不十分な方申立てできる方本人、配偶者、四親等以内の親族、検察官、市町村長など後見人等に与えられる権限-申立てにより与えられる権限借金、相続の承認、家の新築や増改築など特定の事項(※2)の一部についての同意権、取消権(※1)・特定の法律行為についての代理権制度を受ける本人が失う資格、地位- ※1、日用品の購入など日常生活に関する行為は除く※2、民法13条1項にあげられる行為 任意後見制度 任意後見とは、将来、判断能力が低下してしまったときの備えとして、あらかじめ公正証書で任意後見契約を結んでおくことです。判断能力が不十分になった時にその契約をもとに任意後見人が本人を支援する制度です。 後見、保佐、補助の対象になる人は? 法定後見には3つの区分があるとお伝えしましたが、具体的にどういった人が対象になるのでしょうか。以下で詳しく説明していきます。 後見の対象となる人 後見の対象となる方は日常生活を自力で送ることが困難な状態、つまり判断能力が欠けている状態にある人を指します。 後見人には被後見人に代わって財産管理や法律行為をおこなう代理権と、被後見人がおこなった法律行為の取り消しをおこなう権利である取消権の権限が与えられます。 保佐の対象となる人 保佐の対象となる人は、日常の買い物はひとりでおこなうことができるなど、生活面での自立性はあるものの、借金や相続などの重要な財産行為をおこなう際には誰かの支援を受けなければ理解し、判断することができない人です。 なお保佐人には、重要な財産に関する行為について同意権と取消権の権限が与えられます。 重要な財産行為とは借金や相続などの他にも訴訟行為や新築、増改築等を指し、被保佐人がこれらの行為をおこなう場合には保佐人の同意が必要になり、被保佐人がこれらの財産行為を保佐人の同意なくおこなった場合には取り消すことが可能です。 また、このような保佐人の同意を必要とする法律行為は、財産に関すること以外でも家庭裁判所の審判により追加することができます。 加えて必要であれば特定の代理権を権限として追加することも可能です。 補助の対象となる人とは? 補助の対象となる人は保佐の対象となる人と同様に、日常の買い物などはひとりででき、自立性はあるものの、重要な財産行為については独力でおこなうことが不可能ではないが、適切におこなえない可能性があり、第三者の援助を受けた方が良いとされる人になります。 なお補助人には、家庭裁判所に申し立てることにより、民法13条1項記載の相続の承認や放棄、訴訟といった行為のうち、一部の行為について同意権と取消権が与えられます。 また保佐人同様に、補助人も家庭裁判所の審判により特定の法律行為をおこなう代理権を追加することが可能です。 成年後見制度を利用する原因と動機 続いて、成年後見制度を利用する方の動機やその原因についてご紹介していきます。 原因は認知症が約6割 成年後見制度の利用を申し立てる原因として一番多いとされているのは認知症で、全体の約61.4%を占めています。 また認知症の次に多い理由としては知的障害が約9.9%を占め、次いで統合失調症が約9.0%を占めています。 動機は預貯金の管理・解約が最も多い 成年後見制度を申し立てた主な動機は以下になります。 申し立ての理由として最も多いのは預貯金の管理や解約で、つぎに身上保護となっています。認知症などが原因で判断能力が低下してしまうと財産管理だけではなく日常生活にも支障をきたす場合が多いため成年後見制度が果たしている役割は大きいと言えます。 成年後見人の役割 では、後見人は実際にどのような役割を果たしているのでしょうか。順を追って見ていきましょう。 療養看護 療養看護と聞くと、後見人が看護をするのかと思うかもしれませんが、すでに説明した通り後見人には介護や看護などの事実行為をおこなう権利や義務はありません。 そのため、事実行為としての介入ではなく施設の契約や介護サービスの契約といった療養看護に関する法律行為をおこないます。 財産管理 財産管理には財布や通帳を預かるといった事実行為としての財産管理と、被後見人に代わって財産に関連する契約を結ぶなどの対外的な代理行為としての財産管理があります。 また、老人ホームなどの介護施設への入居を検討している被後見人のうち、持ち家を売却したい場合には家庭裁判所の許可が必要となり、場合によっては売却が認められないもありますので注意してください。 遺産分割協議などの相続にまつわる協議がおこなわれる場合には、後見人自身が相続人として含まれていると「利益が相反する関係にある場合」に該当するため、後見監督人が後見人の代わりに、成年被後見人を代理するか、特別代理人の選任を申し立てる必要があります。 後見等事務報告 後見人として選定されると、毎年1回は家庭裁判所に対して、被後見人の為におこなった事務内容について後見等事務報告としてまとめ、提出する必要があります。 成年後見制度自体が自力で生活をしたり、何かを判断したりすることが難しい方のために援助をおこなう制度なので、後見人がおこなった内容はとても厳格に管理されています。 報告書のフォーマットはあらかじめ決められており、裁判所のホームページからダウンロードすることが可能です。 成年後見人になれない人は 成年後見人になるために必要な資格などはありませんが、なるにあたっていくつか条件があります。 以下の欠格事由(成年後見人になることができない要件)に該当していない人であれば誰でも成年後見人になることができます。 未成年者破産者行方不明者被後見人に訴訟を起こした人とその配偶者過去に後見人を含む法定代理人を解任されたことがある人その他不正な行為をおこなうなど後見人に適さない経歴がある人 とはいえ、後見人を選定するのは家庭裁判所なので、希望していた人が選任されるとは限りません。また、希望した人が選任さなかったからといって申立を取り下げることはできないので注意するようにしましょう。 後見人等ではできないこと 先ほど後見人に選ばれた場合にできることをご紹介しましたが、後見人にできないことは一体何があるのでしょうか。以下で説明していきます。 身体に対する強制、一身専属的な事項 入院や施設入所、リハビリといった被後見人の身体に関することを強制する行為や、臓器移植の同意のような一身専属的な事項に関する行為が挙げられます。 あくまでも、後見人ができるのは法律行為にまつわることである、という点を覚えておきましょう。 身分行為 身分行為とは、婚姻の成立や離婚、養子縁組といった身分に関する法律の法律効果を発生させ、変更あるいは消滅をさせる法律行為のことを指します。 身分行為は財産行為のような高度な判断能力を必要としないことに加え、本人の意思が何よりも大切とされる行為のため、後見人などの代理人が身分行為をおこなうことは許されていません。 申立手続きの流れ ここからは実際に成年後見制度を利用するにあたって必要な手続きの流れをご説明していきます。 また、申立にかかる費用は1万円程度とされていますが、診断費用や鑑定費用を含めると2万弱〜18万円程度とかなり幅があります。 1.申立先、申立人の確認 成年後見制度の利用を検討している場合には、まず家庭裁判所で成年後見人を選任してもらうために申立をおこないます。 申立をする家庭裁判所については被後見人の住所地を管轄する家庭裁判所です。裁判所のホームページなどで管轄の裁判所を確認しておきましょう。 また、申立をおこなうことができる人としては被後見人本人または配偶者、4親等内の親族、市区町村長等に限定されていますので注意してください。 2.医師の診断書を取得 申立をおこなう際には、被後見人の介護状況や判断能力を見た上で後見・保佐・補助のどれに該当しているのかを判断する必要があるため、医師の診断書が必要になります。 診断書は必ずしも心療内科医や精神科医で作成してもらう必要はなく、かかりつけ医や内科医でも問題はありません。ただし、家庭裁判所が用意しているフォーマットの通りに作成しなければいけないので注意しましょう。 3.必要書類の収集 次に診断書以外の必要書類を用意しましょう。 具体的に必要な書類は以下の通りです。 申立書類一式 申立に必要とは具体的に以下のような書類を指します。 後見開始申立書申立事情説明書親族関係図財産目録収支状況報告書後見人等候補者事情説明書親族の同意書 なお、これらの書類は申立先の家庭裁判所によって書式に違いがあります。申立先の家庭裁判所の窓口、または申立先の家庭裁判所のホームページかで取得してください。 戸籍謄本 戸籍謄本は本籍地や家族関係について書かれており、その人の身分を証明する書類です。 本籍地のある各市区町村の担当窓口で受け取ることが可能で、被後見人と後見人候補者が同じ戸籍の場合には両者が記載されている戸籍謄本を1通取得すれば問題ありません。 住民票 住民票は住所地や同一世帯の家族について書かれており、住所や世帯を証明する書類です。 住所のある各市区町村の担当窓口で受け取ることが可能で、戸籍謄本の時と同様に被後見人と後見人が同一世帯の場合は両者が記載されている住民票を1通取得すれば問題ありません。 登記されていないことの証明書 登記されていないことの証明書とは、現在法定後見制度および任意後見制度を利用していないことを証明する書類です。 この証明書については法務局本局で取得できるので、詳しくはホームページでご確認ください。なお、支局や出張所では取得ができないので、そちらも注意しておきましょう。 4.書類の作成と準備する物 申立書類の主な作成手順は以下の通りです。 申立書類一式の作成本人に関する資料の準備収入印紙や郵便切手の準備 なお書類の名称や形式は各家庭裁判所によって異なるため、詳しくはホームページをご覧ください。 本人に関する資料とは 本人に関する書類とは主に精神障害者・療養・介護保険認定証などの健康状態がわかる資料、年金額決定通知書、確定申告書などの収入についてわかる資料、各種税金の納税通知書、国民健康保険料や介護保険料の決定通知書などの支出についてわかる資料の3つを指します。 状況に応じ必要な書類も 上記の健康状態に関する資料と収入および支出に関する資料はすべての人が用意しなくてはいけませんが、なかには状況に応じて用意しなくてはいけない資料もあります。 具体的には以下のようなものが挙げられます。 不動産についての資料預貯金についての資料生命保険についての資料負債についての資料遺産についての資料 5.面接日の予約 成年後見制度を利用するにあたり、申立人や後見人候補者の話を聞くために家庭裁判所で面接がおこなわれます。 面接は時期によってはスムーズに予約が取れない場合があるため、資料集めなどのスケジュールがある程度決まった段階であらかじめ予約をとっておくことをおすすめします。 なお、予約した面接日の1週間前には申立書類一式を家庭裁判所に提出する必要がありますので時間に余裕を持って予約を取りましょう。 6.家庭裁判所へ申立 面接日が決定したあとは家庭裁判所へ申立書類一式を提出します。裁判所へ直接提出することも可能ですし、郵送することも可能。どちらかの方法で書類を提出してください。 なお、申立書類一式が提出された時点で申立があったとみなされ、この申請を取り下げることはできなくなります。 そのため、望んでいた後見人が選任されなかったなどの理由でも取り下げることはできず、裁判所が指定した弁護士や司法書士が後見人になる可能性があることも理解しておきましょう。 7.審理開始 申立がおこなわれると、家庭裁判所で審理がはじまります。 ここでいう審理とは、申立書類の不備はないかといった確認に加え、「本人の心身状況や事情をみて成年後見制度が必要であるのか」「成年後見人にふさわしい人は誰か」といったことを判断することです。 必要に応じて、本人または親族との面談や医師による鑑定などもおこなわれます。また、時期によってはこれらの申立から審理を経て結果がでるまでに1〜3ヵ月程度かかります。 8.審判 審判とは裁判官が申立書類の内容や調査結果をもとに成年後見制度が必要であるかどうかを判断し決定することを指します。 必要であるとされた場合には後見開始の審判と、その人に最も適した人を後見人として選任がおこなわれます。 また、内容に不服がある場合には後見人のもとに審判書が届いてから2週間以内に不服申立てをしましょう。不服申立てがなければそのまま後見開始が確定します。 9.後見の登記 審判が確定し、後見人として選任されたあとは裁判所から東京法務局に登記の依頼がなされ、後見人の氏名や権限などが記載された後見登記がおこなわれます。 後見登記とは自分自身が後見人であることを証明するもので、裁判所の依頼から2週間程度で完了し、後見人に登記番号が通知されます。その登記番号をもとに法務局で登記事項証明書を取得しましょう。 登記事項証明書は、預貯金口座の解約といった後見人の業務をおこなう上で必要になります。 後見人を解任したい時は? 一度選任された後見人は特別な理由がない限り解任することはできませんが、以下のような場合には申立権者の請求、または職権により後見人等を解任することができます。 不正な行為 著しい不行跡 その他後見の任務に適しない事由 なお、後見人は解任できますが、成年後見制度を途中で終了させることはできず、後見人が解任されても新たな後見人が選任されます。 親族が後見人になる場合の注意点 以下では親しい間柄にある人が後見人になる場合の注意点をご紹介していきます。 本人のためにする業務であることを意識する たとえば息子が父親の後見人に選ばれた場合に、家族であるからといって父親の財産を自分自身のために使用すれば業務上横領となってしまいますので、あくまでも本人のためにする業務であることを念頭に置いておきましょう。 財産の贈与・貸与をしない 親しい人が後見人になると財産の贈与などを被後見人自身が進めてくる場合もありますが、後見人にそのような権限は認められていません。 本人が贈与や貸与を強く望んでいる場合には事前に家庭裁判所に相談しましょう。 後見人等就任前に、しっかり話し合う 後見人はあくまでも本人の利益を守るために財産管理などをおこなう立場です。後見人になったからといって財産を自由に使えるわけではありませんので、きちんと後見人の立場や業務内容などを確認し、話し合って立候補するようにしましょう。 第三者が後見人となる際の注意点 ここからは、第三者が後見人となる場合の注意点を紹介していきます。 本人の利益のために動く 後見人はあくまでも本人の利益のために動く存在です。将来の相続に備えて贈与をおこなうといった本人の財産を減らすような行為はできないので注意しましょう。 記録を見せてもらえないこともある 後見人には被後見人の財産目録や後見等に関する記録を親族に見せる義務はありません。そのため親族が閲覧を希望していても見せてもらえない可能性もあります。 なお、そのような場合には家庭裁判所で記録の閲覧・謄写を申請することで確認することができます。 後見人とコミュニケーションをとる 親族以外の第三者が後見人に選任された場合は、お互いに安心感を得るためにも、権限の不正防止をはかる意味でも積極的にコミュニケーションを取り、後見人と良好な関係を築いておきましょう。 成年後見制度のメリットとデメリット 最後に、成年後見制度のメリットとデメリットについて紹介していきます。 メリット 認知症を患っている人は悪徳業者からの不当な契約や詐欺に合いやすいだけではなく、家族が財産を使い込んでしまうというケースもあります。 また、介護施設や介護サービスなどの法的契約も判断能力が低下している被後見人が一人でおこなうのは難しいと言えます。 このような場合に成年後見制度を利用することで、後見人が被後見人の財産を守り、その都度必要になる一人でおこなうことが難しい法的な契約も代理でおこなってくれるため、安心して生活を送ることができます。 ▼介護施設への入居後の空き家問題について、詳しくはこちらの記事もご覧ください。※姉妹サイト「いい相続」の記事にジャンプします。 デメリット 成年後見制度を利用するにあたり必要な書類を集めて裁判所に申立てをおこなう必要があるので、煩雑な手続きに手間がかかる点はデメリットでしょう。 また、後見人は本人の利益のために行動しなくてはいけないため、柔軟な行動が取れなくなる可能性もあります。そのほか後見人には報酬が発生するためにある程度費用がかかる点などがデメリットとして挙げられます。 成年後見制度に関するよくある質問 成年後見制度とは何ですか? 成年後見制度とは認知症をはじめ知的障害や精神障害などの理由で物事を判断することが難しく、法律行為をおこなえない状態にある人の代わりに必要な契約を結んだり、財産を管理したりして本人の保護を図る制度です。 成年後見人には誰がなりますか? 成年後見人になる人は一般的に親族が望ましいとされており、配偶者や親、子が選任されます。 また、成年後見人になれない人については、未成年者、破産者、行方不明者などが挙げられます。家庭裁判所の決定で希望した人が選任されなくても申立を取り下げることはできないので注意しましょう。 成年後見制度を利用する原因は何ですか? 成年後見制度の利用を申し立てる原因として一番多いとされているのは、認知症で全体の約6割を占めています。 また動機として挙げられるのは、預貯金の管理や解約が最も多く、認知症により判断能力が落ちてしまうと財産管理が難しいので、成年後見制度でそのサポートをします。 { "@context": "https://schema.org", "@type": "FAQPage", "mainEntity": [{ "@type": "Question", "name": "成年後見制度とは何ですか?", "acceptedAnswer": { "@type": "Answer", ...

2021/12/24

【医師監修】認知症の人のための介護施設|選び始めるタイミングと見学時のポイント

認知症の人が入居できる施設は、グループホームや有料老人ホーム、特別養護老人ホームなど複数の種類があります。 この記事ではそれぞれの特徴を説明するとともに、施設選びを始めるタイミングや選び方のポイントを解説します。 認知症の人の施設選びを開始するタイミングは? 認知症を発症しても介護が必要になるまでは時間がかかるため、いつから施設選びをはじめれば良いか迷う方も多いのではないでしょうか。 重症化してから焦らなくて済むよう、施設選びを開始する適切なタイミングを知っておきましょう。 検討は症状が軽度な状態から 認知症の症状が軽いうちに施設を探し始めれば、家族だけでなく本人の希望も反映できます。また、認知能力や生活能力が残っているうちに入居することで、施設になじみやすく、その後の生活の質の向上も期待できます。 施設探しには時間がかかる上、希望する施設にすぐ入れるとは限りません。認知症は日々進行していくため、症状が軽度のうちから施設選びを開始するのが大切です。 家族の心身の負担が軽いうちに 在宅での介護は、家族にとって肉体的にも精神的にもに大きな負担がかかります。症状が重くなるにつれて日々の介護に追われ、施設探しが後回しになってしまうことも。これにより、認知症が悪化してからあまり検討せずに介護施設を選ぶケースもよくあります。 家族の負担が軽いうちに施設選びをはじめれば、受け入れ条件やサービス内容をしっかり確認し、よりご本人に合った施設が選べます。 認知症の人が入居可能な施設 認知症の人が入居できる施設には、以下の4種類があります。 グループホーム(認知症対応型生活介護)有料老人ホームサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)特別養護老人ホーム 具体的な施設選びの前に、まずはそれぞれの特徴を知っておきましょう。 グループホーム(認知症対応型生活介護) グループホームは認知症の人を対象とする施設で、5~9人の少人数のグループ(ユニット)で日常生活を送るのが特徴です。入所条件は要支援2以上、原則65歳以上です。 少人数でアットホームな環境のもと、認知症ケアの専門スタッフにより残された能力を生かしながら必要な支援を受けられます。 一方、医療的なケアや万が一の体制については施設ごとに差があります。また、ある程度身の回りのことが自分でできる人が対象のため、介護度が高くなると退居を求められることもあります。 有料老人ホーム 有料老人ホームには、「介護付き有料老人ホーム」「住居型有料老人ホーム」「健康型有料老人ホーム」の3種類があります。 このうち介護付き有料老人ホームは介護を必要とする高齢者を対象とした施設で、入居条件は施設ごとに異なります。介護職員のほかにリハビリ専門職や看護師なども配置されるほか、スタッフが24時間常駐しており、認知症の方も安心して過ごせます。 施設ごとに設備の充実度やサービス内容に差が大きく、レクリエーションが充実した施設や食事に力を入れていることも。このため、費用も施設ごとに差があります。 サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) サービス付き高齢者向け住宅は、主に自立~軽介護度の高齢者を受け入れている賃貸住宅です。主に民間が運営しており、バリアフリー化により高齢者が暮らしやすく設計されています。日中は社会福祉士や介護福祉士などの資格を持つスタッフが常駐し、安否確認や生活相談をおこないます。 介護サービスを提供しているサービス付き高齢者向け住宅もあり、自由度の高い生活を希望する方の入居先として選択肢のひとつとなります。 特別養護老人ホーム 特別養護老人ホームは、要介護3以上の人を対象とした公的介護施設です。寝たきりの認知症患者など、介護度が高い人ほど優先的に入所できるのが特徴です。看取りをおこなう施設がほとんどで、終の棲家としても多くの方に選ばれています。 費用負担が少ないことから人気が高く、入居までには数ヵ月から数年かかることも。このため、特別養護老人ホームに入居を希望する場合は、早くからの対策が必要です。 施設を選ぶための準備 施設選びには入念な準備が欠かせません。入居先の施設でご本人らしく快適な生活を送れるよう、次の項目を参考に情報を集めましょう。 希望条件の整理 ケアマネジャーと相談 施設資料を請求 希望条件の整理 老人ホームを探すにあたり、まずは希望する条件を洗い出しましょう。特に大切なのは予算です。無理なく支払える価格帯を設定しましょう。また、面会に通う負担を軽くするため、家族の家からの距離や立地も重要な条件です。 本人と家族の希望が食い違うこともありますが、お互いの考えを尊重しながら譲歩すべきところは譲歩します。すべてを叶えるのは難しいので、施設選びをスムーズにするためにも希望に優先順位をつけておくと良いでしょう。 ケアマネジャーと相談 すでに自宅などで介護サービスを利用している場合は、担当ケアマネジャーに相談しましょう。 ケアマネジャーは介護現場のプロで、地域にある施設や介護保険サービスなど幅広く情報を提供してくれます。また、本人の認知症の状態を把握してくれているため、施設選びでも的確なアドバイスがもらえます。 施設資料を請求 介護施設の情報収集はインターネットが便利です。比較サイトを利用すると、希望する条件からおすすめの介護施設を探せます。施設への入居のしやすさは地域により差があるため、近隣地域も含めて探すと、より条件に合った施設が見つかることもあります。 また、紹介センターへの相談もおすすめです。紹介センターには豊富な情報を持つ専門相談員がおり、施設選びをサポートしてくれます。 希望の条件に合う施設を見つけたら、詳しい資料を取り寄せましょう。複数の施設の資料を集め、比較することも大切です。 施設見学は重要 実際の施設を見たり施設職員の話を聞くことで、パンフレットなどではわからない雰囲気なども感じ取れます。また、すでに入居している方の様子や職員の働く姿を見ることで、入居後のイメージがわきやすくなります。多くの施設では、検討段階での見学も積極的に受け入れています。候補の施設をいくつかピックアップしたら、気軽に見学を申し込んでみましょう。 認知症の人の施設見学のポイント 限られた時間の中で、ご本人や家族にとって最適な施設なのかを見極めるのは難しいもの。見学の際は次のポイントを意識しましょう。 本人も一緒に確認費用の確認本人らしい生活の継続が可能か認知症状の対応医療体制入居者の様子をチェック職員の様子をチェック退居された事例 本人も一緒に確認 入居施設を当事者抜きで決めるのは、本人の不満や家族の後悔につながることがあります。このため施設への入居を強く拒否していない限り、本人も一緒に見学しましょう。 本人が施設の環境や職員の対応を心地よく感じれば、入居の流れがスムーズになります。また、本人に対する職員の言葉かけや気配りを目にすることで、入居後の様子を想像しやすくなります。 費用の確認 施設への入居には入居時費用と月額費用がかかり、金額は施設ごとに異なります。見学時にはその内訳を確認しましょう。さらに、要介護度が上がったり入居が長期化しても無理なく支払い続けられるよう、資産や収支と照らし合わせて検討します。 選ぶ施設が公的施設か民間施設かにより、料金は大きく異なります。施設の種類によって介護保険の適用有無も異なり、費用負担に大きく影響します。 資金に余裕がない方やゆとりを持たせたい方は、特別養護老人ホームなどの公的施設を中心に選ぶと良いでしょう。また、入居時費用のかからない民間施設も増えつつあり、初期費用が少ない方や手元に資金を残しておきたい人におすすめです。 本人らしい生活の継続が可能か 認知症の人は環境の変化が苦手です。慣れ親しんだ自宅から施設に移る際は、戸惑ったり混乱する人がほとんどです。 変化の影響をできるだけ抑えるために、使い慣れた家具などが持ち込めたり、散歩や趣味などの習慣を続けられるか確認しましょう。また、居室で静かに過ごせるか、食事に満足できるか、好みのレクリエーションがあるかなど、本人の望む生活が送れるかも確かめます。 認知症状への対応 認知症は、引っ越しなどの生活環境の変化がストレスになり症状が悪化することがあります。これを「リロケーションダメージ」といいます。これにより、現状は物忘れなど記憶機能の低下にとどまっている方でも、暴言や暴力が発生したり、帰宅欲求により外出・徘徊することもあります。 このような事態に対する過去の事例や、施設がどのように対応するかを質問してみましょう。その答えに納得できる施設なら、いざというときも安心してまかせることができます。 医療体制の確認 糖尿病や腎機能障害など認知症以外にも持病がある場合は、施設内で必要な医療サービスを受けられるか確認しましょう。 また、認知症が進行すると胃ろうや褥瘡ケアなど医療の提供も必要になることも。このため、医師や看護師の配置や、提供可能な医療サービスなどは細かく確認しましょう。特に終の棲家としての施設を検討している場合には重要なポイントです。 入居者の様子をチェック 失礼にならない範囲で、ほかの入居者の様子を観察するのも大切です。 入居者同士で楽しそうに過ごしていたりリラックスしているようなら、快適に過ごせる施設といえるでしょう。一方で、服が汚れたままや長時間放置されている入居者がいたり、入居者同士の関わり合いが薄い場合は、施設の対応が良くない可能性があります。 入居者の様子で気になる点があれば、職員に聞いてみましょう。正当な理由があれば、納得のいく答えをもらえるはずです。 職員の様子をチェック 認知症の人は、周囲の人がいらだった表情を浮かべていたり慌ただしくしていると、その雰囲気を感じて不安や否定的な感情を持つことがあります。 一方で、職員が笑顔で丁寧に対応してくれれば、緊張がほぐれて安心して過ごすことができます。このため、設備だけでなく職員も重要な環境要因。表情や働きぶりも確認しましょう。 また、職員は業務が多く忙しいことが多いですが、話しかけてみましょう。認知症の正しいケア方法を理解し、経験を積んだ職員なら、手を止めて笑顔で対応してくれるはずです。 退居した事例 退居の事例には施設の方針やそれまでのケアが色濃く反映されるため、どのように退居された人が多いのか質問すると良いでしょう。 例えば、「施設で最後を迎える人が多いのか」「重症化により病院に転院する方が多いのか」「暴言や暴力などで対応が困難になり退居を求められる方はいるのか」など。守秘義務により詳細を教えてもらうことは難しいですが、可能な範囲で聞いてみましょう。 施設入居と在宅生活の大きな違い 施設への入居と在宅での介護では、本人にとっても家族にとっても大きな違いがあります。詳しく見ていきましょう。 ケアが24時間体制で安心できる 夜間も職員が常駐しており安心して過ごせるのは、在宅での介護にはない大きなメリットです。また、認知症介護のプロがいる施設を利用することで、認知症の進行を防ぐためのケアや生活サポートを24時間体制で受けられます。 例えば、日中は体操やレクリエーションなどで体や脳を動かします。運動機能や認知機能の維持に役立つだけでなく、夜間に睡眠を取りやすくなることで生活リズムが整い、認知症に良い影響を与えてくれます。 さらに、機能訓練や口腔ケアなどのさまざまなサポートも受けられるため、健康維持も期待できます。 人との交流が多い 人との会話や交流は心身に良い刺激を与え、認知症の進行を防ぐのに役立ちます。 施設では、日常生活やレクリエーションを通してほかの入居者や施設職員などの多くの人と交流できます。一方、在宅介護で多くの人との交流を持つには、デイサービスに通ったり積極的に近所の人と関わりを持つ必要があるため、介護者の負担が大きくなります。 自然と多くの人と楽しく交流できるのも、施設に入居するメリットのひとつです。 多様なイベント 在宅での介護は、日々の生活がどうしても単調になりがちです。一方、施設ではレクリエーションが日常的におこなわれるほか、誕生日会やクリスマス、ひな祭りなどのイベントが毎月のように開催されます。 こうしたレクリエーションやイベントは、楽しんで参加できるだけでなく脳に良い刺激を与えてくれます。また、レクリエーションは介護のプロが考えており、脳のトレーニングや運動機能の維持・向上など認知症の進行を抑えたり症状の緩和にもつながります。 個々に合わせたサービスの提供 施設では、入居者の健康状態や要介護度に合わせたさまざまなサービスが受けられます。また、認知症に関する多くの知識と経験を持った職員が配置されており、快適な環境で適切なケアを受けられます。 認知症の症状は、人それぞれ異なります。認知症介護に実績のある施設であれば、これまで蓄積してきたケア方法などをもとに一人ひとりに合わせたサービスの提供が可能です。 さらに、在宅介護では難しい“心と体の総合的なケア”も受けられるため、認知症の症状の改善も期待できます。 環境変化による混乱は少なからずある メリットの多い施設への入居ですが、環境変化がストレスとなり症状の悪化が見られることがあります。しかし、認知症が進行したと感じても、一時的な混乱が原因のため時間の経過とともに施設の生活に慣れて落ち着きを取り戻すことが多いです。 ただし、落ち着くまでには個人差が大きく、1ヵ月以内など短期間の方もいれば、なかなか落ち着かず長期にわたる方もいます。 また、施設での生活は自宅に比べると自由な行動が制限されるため、このストレスにより認知症が進行してしまうケースもあります。 認知症が進む要因は人により異なります。施設への入居により症状が進行する方もいれば緩和される方もいることは、心に留めておきましょう。 親の施設入居に抵抗を感じることも 親の施設入居に罪悪感を持つ方も少なくありません。しかし、施設への入居は家族の負担を減らせるだけでなく、本人にとってもメリットがあります。否定的な思いではなく、快適に過ごして欲しいというポジティブな気持ちで施設を選びましょう。 どうしても罪悪感を感じてしまうなら、主治医や担当ケアマネジャーに気持ちを打ち明けたり、入居予定の施設のケアマネジャーや生活指導員に相談するのも良いでしょう。 しかし、罪悪感の払拭に何より効果的なのは、本人と介護者がともに安心することです。入居後はなるべく面会に行き、安心させてあげましょう。また、施設で楽しく過ごしている本人の様子を見ることで、施設への信頼が増して「入居させて良かった」と思えるようになるはずです。 入居後に後悔しないよう、症状が軽いうちからより良い生活の実現に向けて、しっかり話し合っておくことも大切です。 ▼介護施設に入居した後について考えたい方は、こちらもご覧ください。※姉妹サイト「いい相続」の記事にジャンプします。 認知症の人の施設選びに関するよくある質問 認知症になった場合、いつ頃施設の検討をしたら良いですか? 施設の検討は、比較的症状が軽い時期から始めると、家族だけでなく本人の希望も反映できます。施設探しは時間がかかる上、希望する施設にすぐ入居できるとは限らないので、早めの情報収集、施設の見学をすると良いでしょう。 認知症の人が入居できる施設はどこですか? 主に「グループホーム」「有料老人ホーム」「特別養護老人ホーム」などが挙げられます。 特にグループホームは認知症特化型の施設で、少人数でアットホームな環境のもと、認知症ケアの専門スタッフにより必要な支援を受けられます。ただし、少人数の受け入れであるが故に、満室の傾向が強く、入居に関しては待機をしなくてはならないこともあります。 施設を選ぶためにはどんな準備が必要ですか? まずは希望条件を整理し、担当のケアマネジャーとどの施設であれば希望が叶えられるかを話し合いましょう。その上で該当箇所の施設資料を取り寄せ、資料ではわからないことを見学にて確認しましょう。 また見学の際には、入居する本人も連れて施設を訪問しましょう。本人が実際に施設の雰囲気、スタッフの対応を受けることで、家族も入居後のイメージを持つことができます。 { "@context": 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2021/12/24

【医師監修】認知症治療の運動療法とは|リハビリのポイントや効果、注意点

運動療法とは 運動療法とは身体を動かして運動することで、病気や障がいの症状を緩和したり予防したりすることです。もともとは身体の怪我や不調に対して行うものでしたが、運動によって血液の流れを良くすることで、糖尿病や高血圧予防につなげられるといったさまざまな効果が認められています。 運動療法は認知症の非薬物療法のひとつであり、認知症の患者に対しても積極的に推進されています。体を動かすことによって運動機能や心肺機能の改善だけでなく、精神的にも落ち着きやすいという効果もあります。 運動療法の目的 運動療法を行う目的はどのようなものがあるのでしょうか。運動療法の目的を、以下の5つの点で説明します。 身体機能の維持・改善 日常生活動作の維持・改善 ストレス解消 病気の予防・改善 生活を整える 1.身体機能の維持・改善 運動療法の目的は第一に高齢者の身体機能の維持・改善です。 年をとってくると誰もが体力や筋力が衰えていきます。運動不足になると身体の柔軟性が失われて身体が硬くなり、血液やリンパ液、栄養が十分に身体に行き渡らずに、病気や怪我の原因になります。 身体を鍛えることは、単に筋力をつけるだけではなく、脳機能や心肺機能を維持することにもつながるのです。 2.日常生活動作の維持・改善 年をとって疲れやすくなったからとあまり動かないでいると、身体機能が失われて、それまで普通にできていた動作もできなくなってしまいます。立って歩く、起きあがるといった日常生活動作に不都合が生じると、行動範囲も狭くなりますし、そのまま寝たきりになる可能性もあります。 運動療法をしっかり取り入れることで、日常生活動作を維持・改善することは生きていくうえで非常に大切です。 3.ストレス解消 身体を動かすことはストレスの解消やリラクゼーション効果が期待されます。 特にウォーキングや体操、ダンスなどの有酸素運動はセロトニンと呼ばれるストレスを発散するホルモンが分泌されると言いわれているので、短い時間でも十分リフレッシュできます。晴れた日に屋外でストレッチしたり、緑の多い公園を散歩するだけでもリラックス効果が期待できます。 認知症の方でも運動療法を続けることによって、認知症の進行を遅らせたり認知症の症状がなくなったという例も報告されています。 4.病気の予防・改善 運動することで、血液中のブドウ糖が筋肉にとり込まれて利用されるので、血糖値が下がり、生活習慣病の予防・改善につながります。 もちろん運動療法によるダイエット効果も期待できるので、肥満や肥満によって引き起こされる脳梗塞や腎臓病の予防にもなります。 5.生活を整える 認知症になると症状の不安からひきこもったり、時間や場所の感覚が失われることで生活のリズムが乱れてしまいがちです。あまり動かずにひきこもっていると、食欲もなくなり昼夜逆転の生活をすることになり、認知症の進行も進んでしまいます。 毎日の生活に運動を時間を組み込むことで、認知症の方の生活リズムを整えるのも運動療法の大事な目的です。きちんと昼間に運動することで、夜はぐっすり眠れるという効果もあります。 運動療法のメリット 運動療法のメリットはどのようなことがあるのでしょうか。具体的に以下の3つのメリットについて説明します。 認知症の治療につながる 認知症でも継続しやすい 日常に取り入れやすい 認知症の治療になる 精神的なストレスを感じていると、おなかが痛くなったり呼吸が苦しくなります。反対に身体に不調があると、精神的にも不健康な状態になってしまいます。心と身体はつながっているというのはよく言われることです。 認知症は脳機能の障害ですが、認知症になることで精神的にもふさぎこんでしまったり、鬱状態を発生させることがあります。それがさらに認知症を進行させるという悪循環を引き起こします。 運動することでストレスを解放することは、精神的にも、認知症の予防にも良い効果があります。 認知症でも継続しやすい 認知症になると頭で記憶したことは忘れてしまいますが、身体を使って記憶したことは忘れないと言われています。毎日、続けているラジオ体操のやり方が急にわからなくなるということは、ほとんどありません。 認知症の予防に新しいことを始めるのはなかなか難しいですが、身体を使う運動であれば認知症の方でも継続しやすいでしょう。 日常に取り入れやすい 運動療法は特別な器具や場所を必要とせずに、どこでも気軽に始められるのもメリットです。 運動が苦手な方は、ストレッチや近所をウォーキングするだけでも十分です。その人にあったペースで続けられるので日常に取り入れることも難しくありません。 運動療法の種類 運動療法は誰でも、簡単に始められるリハビリのひとつです。具体的にはどのような運動が行われているのでしょうか。 有酸素運動 有酸素運動とは筋肉を収縮させるために酸素をたくさん取り入れて、糖質や脂肪を燃焼させる運動のことです。負荷は軽~中程度と比較的軽いものをなるべく長時間継続します。 代表的な有酸素運動にはエアロビクスや水泳、ジョギング、サイクリングなどがあります。 認知症の方への運動療法としては、その人が昔から得意とするものを優先させると良いでしょう。あまり運動をしてこなかった人の場合は、軽めのウォーキングや水中ウォーキングがおすすめです。 糖質や脂肪を消費するので、肥満や高血圧や高血糖の改善にもつながります。 無酸素運動(筋力トレーニング) 無酸素運動は、有酸素運動とは逆に酸素を使わずに筋肉を動かす運動のことです。有酸素運動よりも短時間に集中して負荷を多くかけて行います。 無酸素運動では、短い時間にたくさんのエネルギーを使うので、疲れやすく長時間の運動には向いていません。 代表的な無酸素運動は、短距離走やマシンを使った筋力トレーニングメニュー。認知症の方に必要な無酸素運動は筋力トレーニングです。脳と筋肉はつながっているので、筋肉を動かして脳に刺激をおくることで、認知機能の改善、維持につながります。 筋力トレーニングの中でも関節に負荷をかけずに筋肉を繰り返し動かすレジスタンス運動が高齢者にはおすすめです。レジスタンス運動はスクワットや腕立て伏せ・ダンベル体操が有効です。 レジスタンス運動は筋肉に負荷がかかるので、毎日行うよりも、2、3日に一回程度行うくらいがちょうど良いと言われています。無理のないように継続することが大切です。 ストレッチング ストレッチングとは、筋肉をやわらかくするための運動です。 一般的には「柔軟体操」や「ストレッチ」と言われるほうが多いかもしれません。意図的に筋や関節を伸ばす運動を行います。怪我の予防やクールダウンになるので、運動療法の最初と最後に行うことが多くなっています。 ストレッチングには、動的ストレッチングと静的ストレッチングの2種類があります。 関節を動かして筋肉を伸縮させるのが動的ストレッチングで、筋肉を伸ばした状態をキープして行うのが静的ストレッチングです。高齢者には負荷が少なめの静的ストレッチングがおすすめです。 運動療法のポイント 運動療法の効果を高めるために、知っておきたいポイントについてまとめました。 種類を決める まずはどんな運動をするか種類決定しましょう。誰でも簡単にはじめられる運動からスタートして、長く継続することを意識してください。 はじめはウォーキングが一般的です。慣れてきたら水泳やダンスなど負荷をあげたメニューに挑戦してください。 強さを決める 運動の強度があがると心拍数(脈拍数)は増えるので、運動中の脈拍数から今の運動強度がどれくらいか知ることができます。 最近ではスマートウォッチなどで脈拍や心拍数を簡単に知ることもできます。運動療法を長く適切に続けるためには、最大心拍数の40~70%程度の強度がちょうど良いと言われています。 もし測る手段がない時は運動強度の目安としては「少し息が弾む」くらいになるように調節してください。 継続時間を決める 運動をスタートした直後は、筋肉の中に蓄えられているエネルギーを利用します。始めて5分から10分くらい経過すると、筋肉に酸素やエネルギーを取り入れられるようになります。 蓄えられているエネルギーが消費されて脂肪が分解されるようになるには、少なくとも15分以上の運動が必要ということです。肥満の解消を目的としている場合は、最短でも30分は継続するようにしましょう。 運動療法の場合は1日240kcalのエネルギーを消費することを意識してください。240kcalはウォーキングでいうと3,000-6,000歩が目安です。 頻度を決める 週にどれくらい運動するかについてもあらかじめ設定しておきましょう。週1回だけの運動ではリフレッシュ程度の効果しかなく、筋力アップや身体機能の改善にはつながりません。 運動すると2日間くらいは効果が継続します。週に2~3回の頻度でも十分です。無理なく疲れが蓄積しない頻度にしましょう。 時間帯を決める 運動する時間帯は食事の1時間から1時間半後の時間帯が理想的です。食後に運動することで食べた分のエネルギーを消費することができるので、血糖値の上昇を防ぐことができます。 ただし糖尿病の治療などでインスリンや血糖降下剤を使用している方は、食後に運動することで低血糖を起こしてしまう危険があるので注意しましょう。また、空腹時の運動もなるべくしないように気を付けてください。 運動療法の注意点 心身機能の回復やリフレッシュなど運動療法は非常に多くの効果が期待できます。しかし運動療法をおこなうときの注意点もあります。注意点をまとめたので、確認しておきましょう。 事前に専門職からのアドバイスを 高齢者は何かしらの持病があることが多く、知らずに運動することで症状を悪化させたり怪我や重症化につながることもあります。 たとえば糖尿病の方の場合足の変形を起こしている場合があります。靴擦れや足のタコが原因で、最悪の場合、足を切断することにもなりかねません。 また、特別な持病がなくても高齢者は身体全体の筋力や持久力が弱ってきているので、無理な動きをすれば骨折や捻挫にもつながります。特に認知症の方は自分の身体感覚が鈍っているので、痛い場合でもうまくコミュニケーションできないケースもあります。 運動療法をはじめる前には、必ずかかりつけ医や看護師、理学療法士などの専門職の人にアドバイスを受けてから取り組むようにしましょう。 達成できる目標設定 運動療法は目標を設定して成功体験を感じてもらうことも重要です。 ただし、あまり達成が難しいチャレンジングな目標や達成がわかりにくい目標を設定することは逆効果になってしまいます。一方であまり簡単な目標を設定してしまうと、認知症の方は自分が馬鹿にされたと思って感情を損なう危険もあります。 失敗することもありつつ、80%くらいは成功するような目標設定が理想です。だいたい成功することで満足感を得られて、また次に挑戦しようという意欲がわいてきます。 また、自分で椅子に座れるようになるといったわかりやすい目標を設定しておくと、目標を達成したことで自分が成長した、「できた」という自信につながります。 運動に適した服装や靴 運動療法を行うときは、運動に適した服装や靴を準備することも大切です。 ウォーキングでも普通の靴で歩くのではなく、ウォーキング専用シューズで歩くことをおすすめします。高齢者の方のけが防止の意味もありますが、装備をかえることでリフレッシュになったり、運動をしているという自信にもつながります。 ウォーミングアップとクールダウン 運動をする前のウォーミングアップとクールダウンは省略せずに、しっかりと行うようにしましょう。 ウォーミングアップとクールダウンをしっかりしておかないと、筋肉痛や関節障害をおこしてしまうリスクがあります。また不整脈の予防にもつながります。 軽い運動からしっかりと水分補給 運動を始めるときは、いきなり強度の高い運動メニューからはじめたりせず、に軽い運動メニューからスタートすることが大切です。 軽めの運動からはじめ、調子が良さそうなら少しずつ強度をあげることも良いでしょう。ただし高齢者の方だということを忘れずに、80%程度の力でできるくらいに抑えるようにしましょう。 そして運動中にはこまめに水分補給を行うことも大切です。認知症の方は自分から水分補給をすることは難しいので、必ずタイミングを見て水分補給を促すように心がけてください。 運動を禁止するポイント 運動を継続して行うことは大切ですが、体調がすぐれなかったり風邪をひいているような時は無理に運動をすすめることは厳禁です。特に血糖コントロールが悪い時や最高血圧が180mmHgを超えるような時は運動を休んで安静にしましょう。 認知症の方とのコミュニケーション 認知症の方にはなるべくゆっくり、わかりやすい言葉、動作を心がけてコミュニケーションをとるようにしましょう。指示の内容が理解できなかったり、すぐ忘れてしまったこともあるでしょう。そのような時に責めるようなことを言われると、やろうという気持ちをそいでしまいます。 認知症の方が気持ちよく運動を楽しめるように励ましたり、優しい言葉をかけたりするように意識しましょう。 異変を感じたとき 運動中に下記のような症状が見られるようであれば、運動を中止して休ませてください。 いつもより動きが悪く疲れているようなとき身体のどこかをかばっているようなときふらついているとき胸が苦しそうなとき呼吸があらく、息が苦しそうなとき 運動療法に関するよくある質問 運動療法とは何ですか? 運動療法は身体を動かして運動することで、病気や障がいの症状を予防することを指し、認知症の非薬物療法のひとつでもあります。また、身体を動かすことにより運動機能などの改善だけでなく、精神的に落ち着きやすいという効果もあります。 運動療法にはどんな種類がありますか? 主に「有酸素運動」「無酸素運動」「ストレッチ」などが挙げられます。 有酸素運動は糖質や脂肪を燃焼させる運動を指し、エアロビクスや水泳、ジョギング、ウォーキングなどがあります。 無酸素運動は酸素を使わずに筋肉を動かす筋力トレーニングを指し、高齢者がおこなう場合、ラジオ体操やダンベル体操などがあります。 ストレッチには動的ストレッチングと静的ストレッチングの2種類があり、高齢者には筋肉を伸ばした状態をキープしておこなう静的ストレッチングが有効です。 運動はどれぐらいするのが良いですか? 週1回だけの運動では、リフレッシュ程度の効果しかなく身体機能の改善にはつながりません。 主に週2~3回以上の頻度で運動をすることが効果的と言われており、1回の運動時間は約20~60分が目安です。また注意点として、運動をしない日が2日以上続かないようにしましょう。 { "@context": "https://schema.org", "@type": "FAQPage", "mainEntity": [{ "@type": "Question", "name": "運動療法とは何ですか?", "acceptedAnswer": { "@type": "Answer", ...

2021/12/24

【医師監修】認知症の在宅介護|続けるための5つの心得と介護疲れの軽減方法

在宅での認知症介護は家族の負担が大きく、先の見通しもつかずに心労がたまってしまいます。この記事では、認知症介護をしていくための心得や心の負担を軽減させる方法を紹介します。 認知症介護を続けるための5つの心得 認知症介護を続けるための5つの心得は以下の通りです。 自分も大切にする 溜め込まない 比較しない まわりにも頼る 「今」を大切に それでは詳しく説明していきましょう。 自分も大切にする 愛する家族が認知症を発症することは、とてもショックなことです。家族が変わっていく姿を見ることは辛いですし、ストレスを感じてしまいます。 介護をするときに重要なのは、必要以上に頑張りすぎたりせずに、自分自身の健康や時間も大切にすることです。 溜め込まない 認知症の家族を介護する中で、不満や悲しみは生まれてきます。その気持ちをずっと自分だけでしまっておくと、いつか爆発してしまいます。 負の感情は溜め込まないことが一番です。時々は友人に愚痴をいったり、家族につらいと本音をこぼしたり、カラオケで発散させたり。気持ちを切り替えながらやっていきましょう。 比較しない 誰かと比べるというのは、どうしてもマイナスの感情を生み出しやすくなります。特に認知症は、人によって症状の重さや症状のあらわれ方は違います。ほかの認知症の人と比べてどうということは考えても仕方ありません。誰かと比較して、悲しい気分になるのはやめましょう。 まわりにも頼る 介護をしているときは大変すぎて、自分一人に抱えてしまいがちです。しかし、介護を一人でするのは不可能です。周りの人や外部のサービスを上手に利用して、まわりに頼りながらやっていきましょう。 「今」を大切に 介護は大変なので、どうしても介護に手いっぱいでまわりを見たり、今の時間を楽しむ余裕はなくなります。しかし介護は永遠に続くわけではありません。長い目で介護についてとらえて、なるべく「今」を大切に過ごしましょう。 認知症介護で家族が辿る心理状態 認知症の高齢者を介護する家族が辿る、心理状態について説明します。ご自分の心理状態がどれに当てはまるのか、客観的に確認しましょう。 第1ステップ:驚愕・否定 第2ステップ:混乱・怒り 第3ステップ:諦め・適応 第4ステップ:受容 第1ステップ:驚愕・否定 まず始めに「なぜまた食事を食べようとするの?」「うちの親に限って認知症なわけがない」など、身内が認知症を発症して、どうしたらいいのか驚き戸惑う段階です。介護経験者に相談したり、インターネットで情報収集する方もいます。 病院に行き医師から認知症と診断されても、なかなか受け入れられないご家族も少なくありません。 症状が出ても「気のせいだ」と認知症である事実を否定してしまうこともあります。そして、徐々に否定できないほど認知症の症状が進んでいくと第2ステップに移行します。 第2ステップ:混乱・怒り 「自分にもこんな状況がふりかかるとは…。どうすれば良いのかわからない」「お母さんが別人のようだ」と、介護する方が毎日慣れない介護を混乱していき、次第に認知症の方へ怒りが湧き出るようになります。 この段階で大事なのは、孤独にならないこと。自分だけが頑張ればいいと思わず、社会的なサポートを検討し介護経験者や市の相談窓口へ相談すると良いでしょう。そうすることにより、次の第3ステップに移行します。 第3ステップ:諦め・適応 第3ステップは、介護する方が「自分は認知症の方を介護している」ということを冷静に割り切れるようになる段階です。 認知症の方と共生していくことを心に決め、出世や転勤など諦める人もいるでしょう。中には故郷に戻ったり、離婚する人もいるかもしれません。 「仕事をセーブしていなければ昇進していたかもしれない」と歯がゆく思いつつも、認知症になった大切な身内を「最後まで介護していこう」と心に決めます。そして毎日の状況に適応しつつ、次の段階に移行していきます。 第4ステップ:受容 介護している自分自身、認知症の身内、認知症全般を受け入れその価値を認める段階です。 社会と繋がりながら、認知症の方と二人三脚で生活していくことは一筋縄ではいきません。とはいえ認知症介護中に出会った人々やケアマネージャー、身に付けた知識は一生の財産となり、自分が将来、認知症を発症した時に大いに役立つことでしょう。 先行きの見えない中での認知症介護をする状況を受容し、認知症と共生しつつ明るい未来を進もうとする前向きな姿勢は、これから認知症の介護をする方達にとっての良き道しるべになります。 在宅での認知症介護で気になる症状への対応 認知症の症状特有の暴言や徘徊など、介護する方の対応にもコツがあります。それでは詳しく紹介していきます。 暴言・暴力への対応 認知症になると必ず暴言や暴力が起きるわけではありません。同じ認知症でも暴力的にならない人もたくさんいます。 暴言や暴力が起きる原因には、主に以下のようなものがあります。 物理的な距離を置く 感情的な距離を置く 力で対抗しない 注意をそらす ケアマネジャーや医師に相談する 徘徊への対応 徘徊とはいえ、認知症の方にとっては、健康であった頃の「外出」と気持ちは変わりません。そのため、無理に徘徊を止めることは難しいと考えておきましょう。 しかし、徘徊のリスクや危険を低減させる対策をとることはできます。下記のような対応も参考にしてみてください。 理由を聞く 責めない 気をそらす 自由に動いてもらう 被害妄想への対応 被害妄想への対応として望ましいのは以下の5つです。 否定しないで聞く 話に共感する 周囲に相談する 距離をとる 自尊心を取り戻してもらう 介護拒否への対応 要介護者に介護拒否をされた場合、介護する人はどのように接していく必要があるのか。ポイントは3つです。 無理強いせず本人の意思を尊重する 具体的な声かけをする タイミングを見計らう 介護疲れの軽減方法 介護している方が頑張りすぎると倒れてしまうことがあります。介護疲れの軽減方法を紹介するので、参考にしてみてください。 高齢者支援サービスを利用する 介護保険サービスの利用 在宅介護における、介護保険内のサービスは以下の通りです。 デイサービス(通所介護)通所リハビリ訪問介護訪問リハビリ小規模多機能訪問看護夜間対応型訪問介護ショートステイ短期入所療養介護居宅療養管理指導訪問入浴介護タクシー福祉用具のレンタル 訪問介護はホームヘルパーが自宅などに訪問して日常生活の介助などをおこない、訪問入浴は専用の浴槽を持参し自宅でスタッフが入浴介助をおこないます。 デイサービスは日帰りで介護施設などで要介護者が食事や入浴、レクリエーションなどを受けるサービスのことで、ショートステイは介護施設などに短期間宿泊するサービスをさします。 必要な介護サービスは、ケアマネジャーに介護保険の支給限度額内で組んでもらうと良いでしょう。事前に自力でやる範囲や、介護のプロに任せる範囲を決めておくとスムーズです。 介護保険外サービスの利用 同居家族がいる場合、掃除や洗濯といった生活援助は介護保険サービスでは利用できない場合があります。そのため、介護保険外サービスを利用することにより、介護保険サービスでは提供できない援助を補うことができます。 料金も事業所によってさまざまで、全額自己負担となる場合もあるのでご注意ください。 サービス内容としては、家事などの生活援助(同居家族あり)やリハビリ目的ではない散歩の付き添い、お墓参りの付き添い、契約書記入や金銭の管理、車の洗車、布団干し、草むしり、雪降ろしなどが当てはまります。 利用したい場合は、地域包括支援センターなどにご相談ください。 行政サービスの利用 お住まいの行政サービスを利用しましょう。各市町村によって高齢者支援サービスの内容も異なりますが「紙おむつ助成」などは月額の一部を助成されるため、経済的負担が減ります。 その他、地域相談センターの認知症相談窓口や認知症の方の自立した生活をサポートする専門職チーム、かかりつけ医療機関との連携、行方不明時のSOSメールの配信利用、行方不明時のGPS端末機の助成などがあります。 詳しくは自治体のホームページや地域包括センターなどに問い合わせてみてください。 介護スキルを身に付けるのもひとつの手 介護をする方が介護スキルを身に付けることでストレスを軽減したり、介護からくる腰痛の予防にも繋がります。最近は無料動画もたくさんあるので検索してみると良いでしょう。排せつの介助やオムツ交換のコツなど身に付けておけば、介護を受ける方も安心です。お住まいの市区町村でも介護教室などが開校されている場合があります。詳しくは自治体までお問い合せください。 優しく、気持ちの良い認知症介護をするために 認知症の方の介護の際も、双方ともに穏やかに過ごしたいもの。具体的にはどのように接していけば良いのでしょうか? 何事にも“ゆっくり”を心がける 介護士や看護師の方が認知症の方にゆっくり話しかけているのを見たことはありませんか? 認知症の方は脳の働きや速度が低下していくため、介護する方が普通のペースで介助や話しかけをするだけでも、急かされているように感じてしまうことがあります。そして認知症の方もそれに応えようと過度に頑張ってしまい、疲労困憊になってしまうことも。 そのため、介護する方は「何事にもゆっくり」を心がけてみてください。一般の方には遅いかなと思う程度が穏やかに介助できるコツになります。 感情を合わせる 認知症の方が落ち込んだり、怒り出したりしたら、介護する方もその感情にまず共感してあげましょう。「辛かったね」「ここが不愉快だったのかな」と優しさや穏やかさを持って接してみてください。そうすることで認知症の方もつられて気持ちが落ち着いてくることがあります。 コミュニケーションや感情を汲み取り感じることが難しくなってきた認知症の方にとって、感情や表情を合わせることは大切なポイント。ぜひお試しください。 具体的な声かけをする 認知症の方の介助をする際、具体的な声かけを実践してみてください。「シートベルトをしたほうが安全だから締めるね」とシートベルトを実際に見せてから締めたり、歯磨きや入浴セット、着替え、外出時の持ち物など、同じ場所・同じ物をセットしておけば視覚的にもわかりやすいです。 歯磨きなど拒んだら「明日は歯科検診、口の中をすっきりさせよう」など所作の目的を伝えると、認知症の方も納得してくれることがあります。 認知症の方は、脳の機能低下認識低下があるだけでなく、注意力や集中力にも欠けているため、思わぬ事故やケガにご注意ください。 自分も役に立つ存在であることを感じてもらう どんな人でも「役に立つ存在でありたい」「大切にされたい」という承認欲求があり、認知症の方にも承認欲求はあると言われています。 認知症の方は理由のない不安感や劣等感にさいなまれることがありますが、介護する方や周りの人に「ありがとう」と感謝されることで心が満たされることがあります。 お孫さんとお話していたら「世話をしてくれてありがとう」など、小さなことから感謝の言葉をかけてみてください。 外部との関わりを持つ 認知症が進んでいくと挨拶やちょっとした会話でさえも難しくなってくることがあり、外出や外部との関わりが減ってくることも。社会とのつながりを保つことは、脳にも良い刺激になり、周りの人も認知症の方と交流する良い機会になるでしょう。 認知症の方の体調がや天気が良ければ、散歩や近くまでの買い物してみましょう。外出のために化粧をしてみたりおしゃれな服をコーディネイトしてみると、認知症の方も表情がパッと明るくなることもあります。 認知症の在宅介護に関するよくある質問 認知症の在宅介護はいつ施設入居に切り替えるべきですか? 在宅介護から施設入居に切り替える時期は要介護度3以上の認定が目安です。在宅介護は身体的にも精神的にも厳しく家族に負担がかかりがちです。要介護3以上の認定が出る前から施設入居について検討し、情報収集することをおすすめします。 認知症の介護はいつまで続きますか? 認知症の介護は平均して約6~7年であると言われています。 ただし、認知症の種類、年齢、症状によって差があります。中には10年以上介護をしたというケースもあるので、介護をする際は長期戦を想定し、介護保険サービスや老人ホームについての情報も集めておくと良いでしょう。 介護疲れを軽減するにはどうすれば良いですか? 介護保険サービスや状況によって介護保険外サービスを利用することをおすすめします。介護保険サービスでは必要に応じて身体介助や生活支援を受けることができ、費用に関しても自己負担額の1割で利用することができます。 また、介護保険外サービスでは介護保険サービスで提供できない部分を補うことができ、サービスの幅も広いです。ただし、費用に関しては全額自己負担となるので注意が必要です。 { "@context": "https://schema.org", "@type": "FAQPage", "mainEntity": [{ "@type": "Question", "name": "認知症の在宅介護はいつ施設入居に切り替えるべきですか?", "acceptedAnswer": { "@type": "Answer", ...

2021/12/23

【医師監修】認知症を知ろう|症状や原因、種類などの全知識をわかりやすく解説

家族が認知症かもしれないと思ったとき、介護をする上でどのようなことに気をつければいいのでしょうか。 そこでこの記事では、認知症の種類、診断や検査、症状、予防法をもとに介護を続けるコツについても解説していくので、認知症対策として大切な、早期発見、そして予防に気をつけてください。 認知症の種類~三大認知症とは~ 病気や障がいが原因で脳の認知機能の働きが悪くなり、日常生活に支障をきたす症状を認知症といいます。今までできていたことが急に難しくなるので、日常生活全般に影響がでてしまいます。 認知症には以下の3つの種類があり、それぞれに原因や特徴、症状の出方が異なります。 アルツハイマー型認知症 レビー小体型認知症 脳血管性認知症 それでは、それぞれの特徴について見ていきましょう。 アルツハイマー型認知症 認知症の中でも約半数はアルツハイマー型認知症といわれています。アルツハイマー型認知症とは、脳神経が変性することによって脳全体が萎縮し、脳機能が停止してしまう症状です。 初期は物事を思い出せなくなる記憶障害がおき、その後は計画が立てられない、気候に合った服が選べないといった実行機能障害、季節、場所などの認識ができない見当識障害などが目立ってきます。症状には個人差があります。 レビー小体型認知症 アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症に次いで多い認知症です。レビー小体というたんぱく質が大脳皮質にたまり、脳神経細胞が破壊されることで認知症症状が現れます。 初期は認知機能は保たれ記憶力や見当識、理解力の低下はほとんど見られません。代わりに便秘や嗅覚異常、レム睡眠行動障害があらわれることが多いといわれています。 中期には手足が震えるといったパーキンソン症状が見られ歩行困難になり、徐々に記憶力、見当識、理解力の障害がおこります。 脳血管性認知症 アルツハイマー型認知症に次いで日本人に多い認知症が脳血管性認知症で、認知症全体の約20%となっています。脳血管性認知症は、くも膜下出血や脳梗塞といった脳の病気にともなって脳細胞が死滅し、発症します。 記憶障害などの典型的な症状もありますが、脳血管性認知症の場合は心身のコントロールができなくなって、コミュニケーションに支障をきたすこともあります。 ダメージを受けた脳の領域によって症状が異なるので、記憶力が健在でも身体的な障がいを実感しやすい場合、抑うつ状態になりやすい傾向があります。 認知症の原因 脳の病気や機能の低下が原因で認知症を発症します。その原因となる疾患は、アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症、脳血管性認知症の3つが約90%を占めています。中でも患者数70%と最も多いと言われているアルツハイマー型認知症は、脳神経の変性で起こります。 レビー小体型認知症は、神経細胞にできたたんぱく質が大脳皮質や脳幹に増えすぎたことが原因と言われています。脳血管性認知症は脳血管障害によって起こります。 またアルツハイマー型認知症と脳血管性認知症を併発していることもあります。このように認知症の原因はさまざまです。 認知症の症状 認知症の症状は中核症状と行動・心理症状(BPSD)の2つに分けられます。それぞれの症状について詳しく見ていきます。 中核症状 中核症状とは、認知症の典型的な症状のことです。あったことそのものを忘れてしまう記憶障害や物事を順序立てて考えられなくなる実行機能障害や、時間や場所がわからなくなる見当識障害などもあります。 これらは、認知症になるとほとんどの人に現れる中核症状です。中核症状は薬により進行を遅らせることはできますが、止めることはできません。 行動・心理症状~BPSD~ 行動・心理症状(※BPSD)は中核症状がおこることにより生じる二次的な行動・心理的症状です。 自尊心の低下、心理的な不安や精神的な混乱が増大し、引き起こされる徘徊や暴言、暴力行為といったものです。症状には個人差はありますが、次第に家族や周囲の人とのコミュニケーションなども難しくなります。※BPSDはBehavioral and Psychological Symptoms of Dementiaの略。 認知症の予防 認知症予防策を早い段階から意識して生活に取り入れていくことで、認知症になった後、その進行を緩やかにすることができます。 アルツハイマー型認知症は、糖尿病や脳血管障害など生活習慣病との関連が強いとも言われています。脳血管障害や動脈硬化のリスクを下げるために低塩分、低糖質の食事を取り入れましょう。多くの食材をバランスよく適切な量を食べることが大切です。 バランスのとれた食生活と併せて運動も必要。健康な体を維持するためには適度な運動をすることで、筋肉量の低下を予防し、関節の可動域を保つことが可能です。運動をして身体を動かすことは脳にも良い刺激をもたらします。 早期発見が重要 認知症は早期発見、早期対応が重要です。認知症のように日常生活が困難になるほどではないけれど、記憶力が低下し、正常か認知症か判断が難しい状態のことを軽度認知障害といいます。 軽度認知障害を患った約半数の方は5年以内に認知症と診断されるといわれています。この期間に早期対応することで症状の進行を遅らせることもできます。 認知症の初期症状である記憶障害を単なるもの忘れとして見過ごさず、異変を感じたタイミングで専門医を受診しましょう。他の病気と同様、放置しておくことは非常にリスクがあります。 早い段階からさまざまな治療をうけておくことで、たとえ認知症でも、症状を抑えて日常生活を送ることも可能です。 認知症の診断 認知症かどうかの診断は「面談」「身体検査」「認知症検査」という3つの検査を経た上で総合的におこなわれます。それぞれの検査内容と流れを見ていきましょう。 問診 本人と家族に対して医師の面談があり、これまでの経過や病歴、現在の状態などについてヒアリングがおこなわれます。正確に伝えるために、あらかじめ内容を整理したメモなどを準備して詳しく伝えましょう。 身体検査 身体検査では、血圧検査、血液検査、レントゲンなど一般的な健康診断に加え、手足の痺れ、震えの有無、歩行状態などについて調べます。認知症だけではなく、他の病気の有無や身体の状態についても確認します。 認知症検査 認知症検査は「脳画像検査」と「神経心理学検査」の2種類があります。脳画像検査はCTやMRIで脳を撮影して、脳梗塞、脳出血の有無や脳委縮の程度を検査します。 脳血流のチェックやレビー小体型認知症診断のための検査をおこなうケースもあります。神経心理検査は脳の働きをチェックする検査です。絵を見て絵の内容を答えるものや、記憶の確認、単純な計算問題などです。 神経心理検査には「長谷川式簡易知能評価スケール」や「ミニメンタルステート検査」、「時計描画テスト」といったものがあります。 認知症の治療法 認知症を完全に治療する方法は現在見つかっていませんが、治療により進行を遅らせることもできます。それぞれの治療法について説明します。 薬物療法 薬を使って認知症の症状を緩和するのが薬物療法です。中核症状の進行を遅らせるための抗認知症薬と、行動・心理症状(BPSD)の軽減のための抗うつ薬や睡眠薬によるものの2つに分けられます。 認知症の症状によって処方される薬もさまざまなので、薬については認知症専門医などに必ず相談しましょう。 非薬物療法 認知症の治療では、薬に頼らない非薬物治療も大切です。認知症には、精神的に安定しストレスなく穏やかな時間を送ることが良いとされています。 昔から好きだった音楽を聴いたり、日常生活の中で料理や掃除といった身の回りのことをすることも大切な治療のひとつです。また、ゲームなどで脳へ刺激を与えたり昔からの趣味に集中することで自分らしく過ごすことが精神の安定につながります。 認知症のリハビリ 認知症の症状のリハビリテーションにはどのようなものがあるのでしょうか。それぞれの内容、目的について説明します。 作業療法 日常生活でずっと継続してきた家事や仕事といった作業を続けることを作業療法といいます。 日常生活は多種多様な作業に満ち溢れています。買い物をしたり、散歩に行くこともそのひとつです。基本的な日常生活を送る能力や、社会の中でその人らしい役割をこなす能力を維持することが目的です。 認知症患者にとって新しい物事はストレスを伴います。新しいリハビリをするのではなく、その人が自然にやってきた作業を通して懐かしい気持ちを取り戻し、安定した精神を取り戻すことにつながります。 運動療法 運動療法は身体の一部または全部を動かすタイプのリハビリテーションです。適度な運動は脳の活性化、血流改善に繋がります。 運動療法はウォーキングや水泳といった有酸素運動から、「立つ」「歩く」「階段をあがる」といった基本動作の練習も含まれます。運動を通して関節機能の改善、筋力の増強、可動域の改善、転倒予防などを目的としています。 身体を無理に動かして身体を痛めたり転倒しては逆効果になってしまいますので、運動療法は理学療法士の指導のもと安全に配慮しておこないます。 音楽療法 音楽をリハビリテーションに取り入れたのが音楽療法です。一人でゆっくりただ音楽を聴くだけでもよいですし、家族や友人と一緒にカラオケで思いきり自分の好きな音楽を歌って楽しめばますます盛り上がった時間になるでしょう。 タンバリンやカスタネットなどの楽器を使ったりすることもさらに効果的です。正しく演奏したり歌うことよりも楽しむことが大切です。 音楽には、脳を刺激を与えたり、ストレスを軽減するといった良い効果があります。その人なりのやり方で音楽を楽しむことが大切です。 回想法 認知症のリハビリテーションのひとつに回想法もあります。一人でも複数でもおこなうことができます。昔の思い出を話し合ったりすることによって、脳を活性化させる方法です。 認知症になると直近の出来事を記憶することは困難になりますが、昔の記憶は保持されています。自分のそれまでの半生を思い返すことによって、満足感や幸福感を感じることもあります。 周囲に大切なのは本人の話を否定せずに受け入れて共感する姿勢です。回想法は認知症にとって、自尊心を取り戻し、不安を和らげる効果的なアプローチ方法と言えるでしょう。 認知症によって起きる行動や言動 認知症の行動・心理症状(BPSD)は認知症の中核症状が元になり行動と言動に現れるもので個人差があります。それぞれの症状について詳しくみていきましょう。 暴力・暴言 認知症の初期の段階から感情をコントロールするのが難しくなっていきます。このため納得できないことがあったり尊厳が傷つけられたと感じると、暴力や暴言となってあらわれることがあります。少し時間を置くなどして落ち着いてから話を聞くようにしましょう。 徘徊 徘徊は事故や事件に巻き込まれる恐れがあるため、介護者にとって特に心配な症状です。場所の見当識障害が進むにつれて現れるようになり、外出先で道に迷うほか、見慣れているはずの自宅や施設などを知らない場所と感じて外に出てしまう場合もあります。 被害妄想 認知症の初期症状からよく見られる症状のひとつです。認知症が進行すると、いつどこに何をしまい込んだかを忘れます。自分が置き忘れた自覚すっぽり抜けているため、「盗まれた」と家族や介護者など身近な人に疑いの目を向けるようになります。 介護拒否 介護拒否の理由はさまざまで、本人には介護を拒否する理由があります。認知症の人が介護を嫌がっている場合は、本人の意思を尊重し、介護を嫌がる理由を探りながら適切に介護できるようにしましょう。 無理強いすることによって、ますます嫌な印象を植え付けたり、症状を悪化させることにもつながります。 認知症の介護を続けるための心得 認知症の介護はストレスもリスクも高い状況が長く続きます。介護者のストレスを軽くするコツを知っておきましょう。 1.自分も大切にする 愛する家族が認知症を発症することは、とてもショックなことです。家族が変わっていく姿を見ることは辛いですし、ストレスを感じてしまいます。介護をするときに重要なのは、必要以上に頑張りすぎないことです。まずは自分自身の健康に配慮するなど自分に優しくすることが大切です。 2.溜め込まない 介護は長期戦です。認知症の家族を介護する中で、不満や悲しみは生まれてきます。その気持ちを溜め込まず、時に家族につらいと本音をこぼしたり、友人に愚痴や弱音を吐いて一緒にカラオケで発散させたり。気持ちを切り替えながらやっていきましょう。介護サービスを上手く活用し負の感情は溜め込まないことが介護をする上で何よりも大切です。 3.比較しない 認知症の症状について誰かと比べてもあまり意味はありません。認知症は、個人差があり、症状の重さや症状のあらわれ方は全く異なります。誰かと比較して、悲しい気分になるのはやめましょう。 4.まわりにも頼る 介護をしているときは大変すぎて、自分一人に抱えて社会からも孤立してしまいがちです。しかし、介護を一人でするのは不可能です。周りの人や外部の介護サービスを上手に利用して、まわりに頼りながらやっていきましょう。 認知症サポーターとは 認知症サポーターとは特別な資格や技術は必要ありません。90分の養成講座を受講するだけで、誰でも認知症サポーターになれるのです。認知症に関する正しい知識と理解を持ち、地域の認知症の人やそのご家族に対して、自分のできる範囲で手助けや支援をしたいと行動するだけです。高齢化の進む日本では、認知症の人は右肩上がりで増え続けているため、これからの社会においては、多くの人や地域による認知症支援が必要不可欠です。現在では約1300万人以上の方が認知症サポーターとして活動に参加しています。 5.「今」を大切に 介護に終わりは見えません。目の前の介護が大変だとどうしても今の時間を楽しむ余裕はなくなります。しかし介護はいつか終わりを迎えます。長い目で介護についてとらえて、なるべく「今」を大切に家族や本人が幸せでいられる時間を過ごしましょう。 在宅での認知症介護のコツ 認知症の本人にも家族にも、在宅介護をできるだけ負担なく気負わずおこなうためのコツがあります。 何事にもゆっくりを心がける 認知症になると脳の判断力が低下するため、全てが慌ただしく感じられます。 今までどおり家族が話しかけて、それを理解しようと認知症の本人が努力をしつづけると心身ともに疲れ切ってしまいます。結果として、なおさら混乱を招き理解が遅くなりお互いにコミュニケーションが負担となります。介護をする際、声がけも動作も「何事にもゆっくりを心がける」ことが大切です。 具体的な声かけをする 認知症の本人が機能低下しているのは聴覚や視覚ではなく脳です。判断能力、注意力、集中力が低下しているため、具体的な声掛けを心がけましょう。「はい」「いいえ」で答えられる声かけから始めてみるのもひとつの方法です。 周りが静かな環境で、聞き取りやすくゆっくりと話しかけましょう。言葉遣いはいつも通りで問題ありません。相手が何かを言おうとしたときは言葉を発するまでゆっくり待ちましょう。 外部との関わりを持つ 認知症の症状が進んでくるとコミュニケーションが難しくなってきます。地域との交流でおこなわれる挨拶や世間話や顔なじみと会話するなど、日常の風景を体感することも認知症の本人にとっては貴重な時間です。 自宅でリラックスする時間も大切ですが、外出して自宅とは違う時間を過ごすことも本人と介護者が社会から孤立しないための大切な機会です。 認知症の介護に関するよくある質問 認知症とは何ですか? 認知症とは、病気や障がいが原因で脳の認知機能の働きが悪くなり、日常生活に支障をきたす症状を指します。 具体的な症状として、あったことそのものを忘れてしまう記憶障害や物事を順序立てて考えられなくなる実行機能障害や、時間や場所がわからなくなる見当識障害などが挙げられます。また、徘徊や被害妄想、暴言、暴力行為といったものも症状として現れることがあります。 認知症にはどんな種類がありますか? 認知症には「アルツハイマー型認知症」「レビー小体型認知症」「脳血管性認知症」の3つの種類があります。 患者数70%と最も多いと言われているアルツハイマー型認知症は、脳神経の変性で起こります。またレビー小体型認知症は、神経細胞にできたたんぱく質が大脳皮質や脳幹に増えすぎたことが原因と言われています。脳血管性認知症は脳血管障害によって起こります。 認知症は治りますか? 認知症を完全に治療する方法は現在見つかっていません。ただし、「薬物療法」「非薬物療法」により進行を遅らせることはできます。 薬物療法はその名の通り、抗認知症薬などの薬を使用する療法です。また徘徊や被害妄想、暴言、暴力行為といった行動・心理症状(BPSD)の軽減のために抗うつ薬や睡眠薬を使用することもあります。 一方、非薬物療法は、薬に頼らず安定した生活を送ってもらうことを目的としている療法です。例えば、昔から好きだった音楽を聴いたり、ゲームなどで脳への刺激を与えたりと手段はさまざまです。 { "@context": "https://schema.org", "@type": "FAQPage", "mainEntity": [{ "@type": "Question", "name": "認知症とは何ですか?", "acceptedAnswer": { ...

2021/12/23

【医師監修】認知症の周辺症状・BPSDとは|主な症状と対応方法、治療法

認知症の症状のひとつである行動・心理症状(BPSD)。この行動・心理症状(BPSD)とは具体的にはどのような症状なのでしょうか。またこの行動・心理症状(BPSD)のそれぞれの対応策や注意するべきポイントについて解説します。 行動・心理症状(BPSD)とは 「行動・心理症状(BPSD)」とは、認知症において“周辺症状”と呼ばれる症状を指します。そもそも認知症には、「中核症状」と「行動・心理症状(BPSD)」の2種類の症状があります。 「中核症状」は脳の障害によって引き起こされる直接的な症状で、過去に体験した出来事を忘れる“記憶障害”や、日付や人物がわからなくなる“見当識障害”などが当てはまります。 一方で「行動・心理症状(BPSD)」(以下、BPSD)は、中核障害と本人の身体や心理的状態、環境などが相互作用して引き起こされる二時的な症状のことです。うつ状態や妄想がひどくなる“精神症状”と、「怒りっぽくなる」「徘徊する」などの“行動症状”の大きく2つがあります。 症状は個人差がある BPSDは、中核障害と身体要因・心理要因・環境要因が相互作用することで発生するので、症状には個人差があります。 同じ中核障害であっても、本人がどれだけ動けるか、心理的にどのような状態か、どんな環境で暮らしているかで症状が大きく変わってくるのです。 また、介護者の心的・身体的疲労につながりやすいのもBPSDの大きな特徴。「怒りっぽくなって暴言を浴びせられる」「徘徊する度に外に探し回る」「トイレの失敗の後処理」など、介護者への負担が大きくなる傾向にあります。 介護者への負担が大きくなればなるほど、適切なケアが難しくなり、BPSDがさらに悪化するという悪循環につながることもあります。 逆を言えば、BPSDが現れたときに「なぜこの症状が出ているのか?」と症状の状態と原因を理解した上で、適切なケアをおこなうことができれば、症状を緩和させることが期待できるのです。 行動・心理症状(BPSD)と対応方法 BPSDでは、主に以下のような症状があらわれます。 暴言・暴力 介護拒否・服薬拒否 徘徊 妄想 抑うつ・不安 無気力(アパシー) 性的異常行動 幻覚 帰宅願望 夜間せん妄 不潔行為(弄便) トイレの失敗(失禁) 食事をとらない 食べ物ではないものを食べる(異食) 以下でそれぞれの原因を探るとともに、実際に症状としてあらわれた際の対応に関して見ていきましょう。 暴言・暴力 感情のコントロールを司る脳の前頭葉がダメージを受けたり萎縮することで、感情の自制が難しくなります。その結果、些細なことで興奮する・怒りっぽくなる、家族や介護者に対して暴言を吐く、暴力を振るう、というBPSDにつながります。 暴言・暴力といったマイナスの言動は、中核障害に対する不安や恐れなどの気持ちが強くなったときや、自分の尊厳を傷つけられたと感じたときに、症状がより強く出る傾向にあります。 暴言・暴力の対応方法 怒っている時や暴言が止まらなくなった時は、本人が落ち着くまで、介護者が話をじっくりと話を聞いてあげましょう。介護者も感情的になってしまうと事態が悪化してしまいます。「自分の話を聞いてくれている」と本人が感じることができれば、感情が収まることもあります。また、何に対して怒っているのかを理解できれば、暴言や暴力に致る前に感情的になるのを防げるかもしれません。ただし、暴言に耐えられなくなったり、暴力を振るわれそうになったら、一旦距離をおきましょう。介護者自身の心身の安全を確保しつつ、時間をおくことで、本人が落ち着いて話しやすくなることもあります。また、暴言や暴力は薬物療法によって症状が沈静化することケースも。症状があまりにひどい場合は、主治医や専門医に相談してみましょう。 介護拒否・服薬拒否 認知症に介護はつきものですが、本人が介護を拒んだり(介護拒否)、薬を飲むのを嫌がる(服薬拒否)のは珍しいことではありません。 介護されなければいけない情けなさや申し訳なさ、自分の好みやタイミングとは違った方法の介護への不満、体の不調をうまく伝えられないもどかしさなど、心理的な要因が大きく影響しています。 拒否している状態で強引に介護してしまうと、介護が不快なものとして記憶されてしまい、さらなる介護拒否につながることもあります。 介護拒否・服薬拒否の対応方法 まずはなぜ拒否しているのかを探ってみましょう。例えば、着替えや入浴を拒否するのは裸を見られるのが恥ずかしいからかも。また、食事や服薬を嫌がるのは、必要性を理解できていないのかもしれません。原因がわかったら、心理的負担を和らげる声掛けをしたり、本人の好きな方法やタイミングで介護をおこなうなど、やり方を変えてみましょう。本人が介護に前向きになれる環境を整えることで、介護がスムーズにおこなえます。 徘徊 徘徊は事故や事件に巻き込まれる恐れがあるため、介護者にとって特に心配な症状です。 場所の見当識障害が進むにつれて徘徊症状が現れるようになり、外出先で道に迷うほか、見慣れているはずの自宅や施設などを知らない場所と感じて外に出てしまう場合もあります。 また、引っ越しなどによる環境変化のストレスや、今いる場所に安心感を抱けないなども徘徊の原因になります。 徘徊の対応方法 徊の予防には、落ち着ける環境づくりが大切です。本人が暮らしていた部屋で介護をおこなう、引っ越しした場合には慣れ親しんだ家具や小物を充実させるなどして、本人が安心できる環境を整えてあげましょう。また、万が一徘徊が起こった場合に備えて、服や靴、杖など身に付けるものに連絡先と氏名を記名しておくのも重要。徘徊が定期的にある場合は、ベットから立ち上がったり、規定範囲から出た際に通知してくれる徘徊センサーを利用する方法もあります。 妄想 妄想とは、現実にはあり得ないようなことをほかの人が訂正できないほどに思い込む症状で、認知症初期からしばしばみられます。これらの妄想は、認知症による不安や焦りが要因となるようです。 代表的な症状に、周囲の人にものやお金を盗まれたと主張する「もの盗られ妄想」や、いじめられたと主張する「被害妄想」、配偶者が浮気しているといった「嫉妬妄想」などがあります。 妄想の対応方法 妄想的なBPSDが起こった際は、本人の話にできるだけ耳を傾けましょう。特に被害的な妄想は中核障害による不安や焦りといった心理的要因によって引き起こされることが多いので、話を聞いてくれる人がいるというだけで、不安が和らぐことがあります。しかし、妄想内容や程度によっては介護者への負担が大きくなるケースもあります。介護者が冷静に対処するのが難しくない場合は、デイサービス・ショートステイなどの介護保険サービスや施設入居など、本人と介護者にとって良い環境に変えていきましょう。 抑うつ・不安 中核症状によって出来ないことが増えたり、介護中に自尊心を傷つけられたと感じるなど、日常生活での出来事が原因で、気分が落ち込む、不安感が強くなる、抑うつ状態に陥るといったBPSDが起こることがあります。 抑うつ状態というと、一般的には悲観的な気持ちになるイメージが強いですが、認知症の抑うつ状態ではあらゆることに“無関心”な状態になる傾向が強いです。 抑うつ・不安の対応方法 認知症における抑うつや不安は、心理的な背景が強く影響しています。そのため、ストレスの原因を見つけて軽減することが重要です。本人が不安に感じていることに寄り添うことはもちろん、普段生活している場所を居心地良くするなど、安心できる環境を整えるのも方法のひとつ。また、認知症における抑うつ状態は無関心の傾向があるので、話しかけても反応が薄いことがあります。感情表現が難しくなっている状態なので、「認知症の症状の1つなんだ」と理解して、介護者が割り切ることも大切です。 無気力(アパシー) 無気力(アパシー)とは、自分から何かをしたいという自発性や意欲が著しく低下した状態のこと。名前のとおり、無気力で何に対してもやる気が起きない状態を指します。 例えば、歯磨きや着替え、入浴など普段の生活で何気なくおこなっていることを面倒くさがるようになる、外出が減って家にこもりがちになる、といったケースとして現れます。 暴力や徘徊などの目に見える症状とは違って、介護をしていても変化に気づきにくいので、進行を見逃しやすいBPSDでもあります。 無気力(アパシー)の対応方法 無気力(アパシー)が見られる時は、規則正しい生活で普段から“〜したい”という意欲を刺激すると同時に、定期的に外出する機会を設けて気分転換を図りましょう。また、無気力(アパシー)は認知症治療薬による投薬効果が認められています。ただし、人や状態によっては副作用が強く出る恐れもあるので、必ず主治医か専門医に相談しましょう。 性的異常行動 認知症のBPSDのひとつに、「卑猥なことを口にする」「他人に身体を触る」「性的行為を要求する」などの性的異常行動があります。 性的異常行動は、身体的な欲求が原因ではなく、認知症による不安感を拭うためであったり、必要とされたい・愛されたいといった心理的な欲求が原因と考えられます。 性的異常行動の対応方法 性的異常行動は介護者にとって心理的負担の大きいBPSDです。性的異常行動が起こると、反射的に強く反応したり、本人を否定してしまいそうになりますが、ほかのことに気を向けさせるなど、なるべく冷静に対処しましょう。また、普段から手を握ったり、軽いスキンシップを取るのも有効な方法。精神的安心感が得られることで、性的異常行動に繋がりにくくなります。 幻覚 BPSDにおける幻覚とは、実際には存在しないものをまるで存在するかのように感じる症状のこと。本人は現実と感じるので、周囲からの理解が得にくい症状です。 ひと口に幻覚と言っても、見えないもが見える“幻視”、聞こえないものが聞こえる“幻聴”、体に虫がついている・不調がないのに体が痛いと感じる“体感幻覚”など、さまざまな種類があります。 中でも幻視はレビー小体型認知症、幻聴はアルツハイマー型認知症に多くみられます。 幻覚の対応方法 幻覚の症状があらわれたときは、否定しないことが大切。幻視や幻聴とはいっても、本人にとっては現実で起きていることと変わりありません。「そんなものいないよ」と否定されると、不安感が強くなったり、孤独感を感じて、症状がさらに悪化する恐れがあります。例えば、「虫がいる」という幻覚には虫を追い払う動作をするなど、幻覚内容に対処する姿勢を見せると安心しやすくなります。その上で、本人の好きなものの話題に変えるなど、気分転換の機会をつくると症状が出にくくなります。 帰宅願望 帰宅願望とは、特定の土地や家に帰りたいと強く主張すること、また実際に帰ろうとする行動をとるBPSDです。 現状の環境に慣れていない、居心地が悪い、自分の役割がないなど、不安な状態から離れたいという心理的ストレスが原因で、住み慣れた家や家族のもとに帰りたいという願望につながります。 帰宅願望自体は、至って普通の願望です。しかし帰宅願望が強くなると、“徘徊”や夕方に多く発症する“夕暮れ症候群”など、介護者への負担が大きくなることがあります。 帰宅願望の対応方法 帰宅願望は現状に対する不安・不満が症状として表出していることが多いので、本人の話に耳を傾け、なぜ帰宅したいのかを探ってみましょう。その上で、本人が安心してくつろげる環境を整えるのが大切です。知症初期であれば、現状をじっくりと説明することで本人が納得してくれることもあります。反対に認知症が進行が進むといくら説明しても理解を得るのが難しいので、リラックスできるような声掛けをしたり、趣味や役割を充実させて何もない時間を減らす環境を作ってみましょう。 夜間せん妄 せん妄とは、妄想、興奮、幻覚、失見当識、(現在の日付や時間、自分がどこにいるかなどの状況を把握できていない状態)など、意識障害を起こしている状態のこと。せん妄が夕方から夜間にかけて起こることを“夜間せん妄”と呼びます。 夜間せん妄の対応方法 せん妄自体はいつでも起こりうる症状ですが、夜間に発症しやすいのには理由があります。夜間は周辺が暗くなり自分が置かれている状況や環境を把握することが難しくなって、その時感じた不安や恐怖が、せん妄につながりやすくなるのです。夜間せん妄が起こった時は、部屋や廊下を明るくする、介護者がそばで手をさする、じっくりと話を聞くなど、本人が安心できる環境を整えてあげましょう。過度な興奮や幻覚が起こっている際には、本人の言っていることを否定しないことが大切。ほかのことに注意を向けさせるか、落ち着くまで様子を見ましょう。 不潔行為(弄便) 便器の中に手を入れたり、トイレ以外の場所で失禁してしまうのは“不潔行為”と呼ばれるBPSD。その中でも、自分の排泄物を手で触ったり、衣服や壁にすりつけてしまう弄便は、介護者への負担が大きい症状です。 弄便の多くは、排泄物をしたことによる違和感やオムツの不快感が原因と考えられています。 オムツが不快だから中の排泄物を取りのぞこうとして手に便がついてしまう、手についた便をどうしたら良いかわからなくて服や壁にすりつける。本人にその気はなくても結果として弄便になってしまうことが多いようです。 不潔行為(弄便)の対応方法 排泄による不快感を減らすことで、不潔行為を防ぐことができます。早めの声掛けでトイレに誘導する、オムツに排泄した場合はすぐに新しいオムツに取りかえるなど、不快に感じる時間を減らしてあげましょう。万が一の弄便したときのために、壁や床を防水シートや汚れてもいいタオルで保護しておけば、介護者の負担も減ります。また、不潔行為を叱ったり起こるのは禁物。本人は不潔であるという自覚がなく、怒られたことへの怒りや不安だけが残ってしまい、排泄を隠そうとさらなら不潔行為につながることがあります。 トイレの失敗(失禁) 認知症が進行すると、トイレの場所がわからなくなったり、尿意や便意自体を認識できずに、トイレ以外の場所で失禁や排泄してしまうことがあります。 また、トイレの失敗は介護者にとって精神的・肉体的に負担の大きい症状です。そのため、介護者が思わず本人にきつく当たってしまうこともありますが、自尊心を傷つけられたことで汚れた下着を隠すなど、違ったトラブルに発展することもあります。 トイレの失敗(失禁)の対応方法 トイレの失敗を見つけた時は、叱ったり責めたり怒らないことが重要。本人の自尊心を傷つけずに普通に接することで、トイレへの不安感や恐怖心を残さないようにします。万が一の弄便したときのために、壁や床を防水シートや汚れてもいいタオルで保護しておけば、介護者の負担も減ります。その上で、トイレの失敗の原因を探りましょう。トイレの場所がわからない場合は動線を分かりやすくする、トイレに行くのが億劫になっている場合はポータブルトイレを設置するなど、本人に合ったトイレ対策が有効です。 食べ物ではない物を食べる(異食) 食べ物ではないものを食べようとする“異食”は、認知症でよく見られるBPSDです。中核障害によって食べ物とそうでない食べ物の区別がつきにくくなったり、脳機能の低下で満腹度が得にくくなると異食がさらに進行します。 異食の対応方法 異食を防ぐために、食べ物だと勘違いしそうなものや小さなものは本人のまわりに置かないようにしましょう。食事は決まった場所や食器でとるなど、食事の時間とそれ以外の時間にメリハリをつけることで、異食を防ぐこともできます。空腹感を感じやすくなっている場合には、食事やおやつを小分けにするのもポイント。万が一異食をしてしまった場合は、介護者が取りだそうとするのではなく、「こっちの方がおいしそうですよ」など、なるべく自分から吐きだせるのが大切。介護者が口の中に無理矢理手を入れると、暴れたり指ごと噛まれる可能性もあります。 食事をとらない 認知症の人が食事をとらないのにはいくつかの原因が考えられます。 まず1つ目は、食べ物を食べ物と認識できていない場合です。認知機能が低下して目の前にあるものが何かわからなくなる“失認”の影響で、食べ物を前にしても食べ物と認識することができません。 2つ目は、食べ方がわからない場合。認知機能が低下して、箸の使い方がわからない、どこから食べていいかわからないなどは、“失行”症状の影響です。 3つ目は嚥下機能の低下や、歯の痛みなど身体的トラブルがある場合。食べ物を飲みこむのが難しくなったり、入れ歯の違和感や歯の痛みなど、食事そのものに対する拒否感が原因です。 ほかにも、落ち着いて食事ができない環境や、意欲が著しく低下する“無気力(アパシー)”の影響など、認知症の進行度や環境によって、原因は異なります。 食事をとらないときの対応方法 食事をとらないというひとつの行動をとってみても、その原因はさまざまです。なぜ食事をとらないかの原因を探って、その原因を解決できる対策をとりましょう。例えば、失認や失行が原因なら「おいしいごはんですね」や「私が食べるのを真似て食べてみましょうね」と声を掛けたり、食事以外が気になっている場合はテレビの音量や明るさを調整するなど、食事に集中できる環境を整えてあげましょう。 行動・心理症状(BPSD)の治療 現在の医学では、認知症を完治することは不可能です。認知症の治療は病気の進行を遅らせて、少しでも症状をやわらげることを目的としています。 認知症の治療は薬を使っておこなう薬物療法と、薬を使わない非薬物療法があります。それぞれの内容を見ていきましょう。 薬物療法 BPSDの処方薬は睡眠導入剤や向精神薬、抗不安薬といった精神を安定させるものが中心です。ただし、これらの薬は副作用があったり、その人に適合しないと症状を悪化させてしまうケースもあるので注意が必要です。 非薬物療法 非薬物療法は薬を使わずにおこなわれる認知症の治療法です。 その人が好きだった音楽を聞かせたり(音楽療法)、昔の思い出話を話したりすることで脳を活性化させたり(回想法)。脳にほど良い刺激を与え続けることで認知症の進行を遅らせることができます。 身体を動かすことも、脳に良い刺激を与えることがわかっています。適度な距離の散歩や体操、ストレッチも非薬物療法のひとつです。 認知症ケアで意識する4つのこと 気持ちを理解する 信頼関係を築く ペースを合わせる 環境の変化は最小限に抑える 1.気持ちを理解する 認知症はすべてが同時にわからなくなるわけではありません。認知症の進行具合にもよりますが、自分がどこいるか、目の前のものが何なのかがわからなくなっても、わからないことへの恐怖や、今までできていたことができなくなったことの不安は、認知症を発症した本人が最も強く感じています。 そんな感情を持ちながら介護を受けると、「家族の手を煩わせるのは申し訳ない」「自分は何の役にも立てない」というさらなる不安や恐怖につながり、BPSDを助長させることになります。 同じ状況ならどう感じるか、どんな気持ちになるか、認知症を発症した本人の気持ちに寄り添ってコミュニケーションをとってみましょう。 2.信頼関係を築く 普段接するときはもちろん、介護をする・される上で信頼関係を築くことは重要ですが、そう簡単に築けるものではありません。 特に家族の場合だと、失敗したときにそれまでと同じように叱責してしまうこともありますが、認知症を発症しても羞恥心やプライドは残っています。怒られたり無視されることでストレスが溜まり、BPSDが悪化することもあります。 失敗しても否定したり叱ったりせず、不安になるような話し方や行動は極力避けましょう。その上で、本人が心からくつろげる環境を整えたり、喜びや安心につながるコミュニケーションをとるなど、焦らずゆっくり信頼関係を築きましょう。 3.ペースを合わせる 認知症を発症すると、中核障害の影響でさまざまなことが出来なくなったり、動作が遅くなったりします。行動が遅いと「私がやった方が早い」と手を出してしまいがちですが、本人にも自尊心やプライドがあります。 自分でできることは自分でやってもらう、本人のやる気や動作に合わせて行動するなど、なるべく本人のペースに合わせましょう。 また、認知症の症状によっては出来事自体を忘れてしまうことがあります。そんなときは問い詰めたり、無理に思いださせる必要はありません。深く追求せずに話を合わせるのも大切です。 4.環境の変化は最小限に抑える 認知症にとって環境の変化は、BPSDを悪化させる大きな要因です。 認知症を発症した方は環境の変化に非常に敏感なので、周囲に何らかの変化があると、それだけで大きなストレスを感じます。そして、ストレスや不安といったマイナスの感情は、BPSDを悪化させる原因のひとつです。 そのため、習慣や日課の変更、部屋の模様替えなどはできるだけ避けましょう。引っ越しや入居などでやむを得ず環境が変わる場合は、使い慣れた小物や家具を使って安心できる環境を整えてあげるのが大切です。 認知症介護を続けるために 認知症は完治することがなく、長期戦のリスクも高い症状。同時に介護者にとっては、非常に負担が大きく、ストレスがたまりやすい症状でもあります。認知症介護にめぐり、痛ましい事件が起きるのも珍しくありません。 介護される側・する側どちらにとっても良い介護を続けるために、5つの心得を大切にしてくださいね。 自分も大切にする 愛する家族が認知症を発症することは、とてもショックなことです。家族が変わっていく姿を見ることは辛いですし、ストレスを感じてしまいます。 介護をするときに重要なのは、必要以上に頑張りすぎたりせずに、自分自身の健康や時間も大切にすることです。 溜め込まない 認知症の家族を介護する中で、不満や悲しみは生まれてきます。その気持ちをずっと自分だけでしまっておくと、いつか爆発してしまいます。 負の感情は溜め込まないことが一番です。時々は友人に愚痴をいったり、家族につらいと本音をこぼしたり、カラオケで発散させたり。気持ちを切り替えながらやっていきましょう。 比較しない 誰かと比べるというのは、どうしてもマイナスの感情を生み出しやすくなります。特に認知症は、人によって症状の重さや症状のあらわれ方は違います。ほかの認知症の人と比べてどうということは考えても仕方ありません。誰かと比較して、悲しい気分になるのはやめましょう。 まわりにも頼る 介護をしているときは大変すぎて、自分一人に抱えてしまいがちです。しかし、介護を一人でするのは不可能です。周りの人や外部のサービスを上手に利用して、まわりに頼りながらやっていきましょう。 「今」を大切に 介護は大変なので、どうしても介護に手いっぱいでまわりを見たり、今の時間を楽しむ余裕はなくなります。しかし介護は永遠に続くわけではありません。長い目で介護についてとらえて、なるべく「今」を大切に過ごしましょう。 認知症の周辺症状に関するよくある質問 認知症の周辺症状とは何ですか? 認知症の周辺症状は行動・心理症状(BPSD)とも呼ばれます。主にうつ状態や妄想が酷くなる精神症状と、怒りっぽくなる、徘徊するなどの行動症状が挙げられます。 認知症の周辺症状はいつ頃出ますか? 抑うつや不安感などは比較的初期に症状が見られ、暴言・暴力や徘徊などは中期に見られる傾向にあります。また後期には、異食や無気力などが目立ち始めます。 認知症の人はみんな同じような周辺症状が出ますか? 周辺症状は、中核障害と身体要因・心理要因・環境要因が相互作用することで発生するので、症状には個人差があります。症状に関しては、本人がどれだけ動けるか、心理的にどのような状態か、どんな環境で暮らしているかで大きく変わってきます。 { "@context": "https://schema.org", "@type": "FAQPage", "mainEntity": [{ "@type": "Question", "name": "認知症の周辺症状とは何ですか?", "acceptedAnswer": { "@type": "Answer", ...

2021/12/22

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介護付き有料老人ホームとは│提供されるサービス・費用・入居条件などを解説

介護付き有料老人ホームは、介護スタッフが24時間常駐している介護施設。介護サービスや身の回りの世話を受けられます。 この記事では、介護付き有料老人ホームの種類及び入居のための条件や必要な費用、サービス内容などを詳しく説明しています。 https://youtu.be/oK_me_rA0MY 介護付き有料老人ホームの特徴 介護付き有料老人ホームとは、有料老人ホームのうち、都道府県または市町村から「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた施設です。24時間介護スタッフが常駐し、介護や生活支援などは施設の職員により提供されます。 主に民間企業が運営しているため、サービスの内容や料金は施設ごとに異なります。また、入居基準も施設により異なり、自立している方から介護が必要な方まで幅広く受け入れている施設も。選択肢が幅広いため、自分に合った施設を選ぶことができます。 看取りまで対応している施設も多数あり、「終の棲家(ついのすみか)」を選ぶうえでも選択肢のひとつとなります。 全体の概要をまとめるとこのようになります。 費用相場 入居時費用 0~数千万円 月額利用料 15~30万円 入居条件 要介護度 自立~要介護5※1 認知症 対応可 看取り 対応可 入居のしやすさ ◯ ※施設の種類によって異なります。 特定施設入居者生活介護とは 特定施設入居者生活介護は、厚生労働省の定めた基準を満たす施設で受けられる介護保険サービスです。ケアマネジャーが作成したケアプランに基づき提供される食事や入浴・排泄など介助のほか、生活支援、機能回復のためのリハビリなどもおこなわれます。指定を受けてこのサービスを提供する施設は、一般的に「特定施設」の略称で呼ばれています。 介護付き有料老人ホームの種類と入居基準 介護付き有料老人ホームには「介護専用型」「混合型」「健康型」の3種類があり、それぞれ入居条件が異なります。 介護度 ...

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グループホームとは|入居条件や費用、入居時に気をつけたいポイントを解説

認知症の方の介護は大変です。「そろそろ施設への入居を検討しよう」と思っても、認知症の症状があると、入居を断られてしまうのではと心配もあるでしょう。 グループホームは認知症高齢者のための介護施設です。住み慣れた地域で暮らし続けられる地域密着型サービスであり、正式な名称を「認知症対応型共同生活介護」といいます。 こちらの記事では、グループホームについて解説します。また、グループホームで受けられるサービスや費用、施設選びのポイントも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。 https://youtu.be/EofVO7MRRDM この記事を読めばこれがわかる! グループホームの詳細がわかる! グループホームを選ぶ際のポイントがわかる! グループホームへ入居する際の注意点がわかる! グループホームとは グループホームとは、認知症高齢者のための介護施設です。専門知識と技術をもったスタッフの援助を受けて、要支援以上の認知症高齢者が少人数で共同生活をおくります。 「ユニット」といわれる少人数のグループで生活し、入居者はそれぞれ家事などの役割分担をします。 調理や食事の支度、掃除や洗濯など入居者の能力に合った家事をして自分らしく共同生活を過ごすところが、ほかの介護施設や老人ホームとは異なるポイントです。 グループホームの目的は、認知症高齢者が安定した生活を現実化させること。そのために、ほかの利用者やスタッフと協力して生活に必要な家事を行うことで認知症症状の進行を防ぎ、できるだけ能力を維持するのです。 グループホームは少人数「ユニット」で生活 グループホームでは「ユニット」と呼ばれるグループごとに区切って共同生活を送るのが決まり。1ユニットにつき5人から9人、原則1施設につき原則2ユニットまでと制限されています。 少人数に制限する理由は、心穏やかに安定して過ごしやすい環境を整えるため。環境変化が少なく、同じグループメンバーで協力して共同生活することは、認知症の進行を防ぐことに繋がります。 認知症の方にとって新しく出会う人、新しく覚えることが難しいので、入居者やスタッフの入れ替わりが頻繁にある施設では認知症の高齢者は心が落ち着かず、ストレスを感じ生活しづらくなってしまいます。その結果、認知症症状を悪化させるだけでなく、共同生活を送る上でトラブルを起こすきっかけとなります。 慣れ親しんだ場所を離れて新しい生活をするのは認知症の方には特に心配が尽きないもの。その心配を軽減するため、より家庭にできるだけ近づけ、安心して暮らせるようにしています。 グループホームの入居条件 グループホームに入居できるのは医師から「認知症」と診断を受けている方で、一定の条件にあてはまる方に限ります。 原則65歳以上でかつ要支援2以上の認定を受けている方 医師から認知症の診断を受けている方 心身とも集団生活を送ることに支障のない方 グループホームと同一の市町村に住民票がある方 「心身とも集団生活を送ることに支障のない」という判断基準は施設によって異なります。入居を希望している施設がある場合には、施設のスタッフに相談しましょう。 また、生活保護を受けていてもグループホームに入ることは基本的には可能です。しかし、「生活保護法の指定を受けている施設に限られる」などの条件があるので、実際の入居に関しては、行政の生活支援担当窓口やケースワーカーに相談してみましょう。 グループホームから退去を迫られることもある!? グループホームを追い出される、つまり「強制退去」となることは可能性としてゼロではありません。一般的に、施設側は入居者がグループホームでの生活を続けられるように最大限の努力をします。それでも難しい場合は、本人やその家族へ退去を勧告します。「暴言や暴力などの迷惑行為が著しい場合」「継続的に医療が必要になった場合」「自傷行為が頻発する場合」etc。共同生活が難しくなった場合には追い出されてしまうこともあるのです グループホームで受けられるサービス グループホームで受けられるサービスは主に以下です。 生活支援 認知症ケア 医療体制 看取り それぞれ詳しく見てみましょう。 生活支援 グループホームでは以下の生活面でのサービスを受けられます。 食事提供 :◎ 生活相談 :◎ 食事介助 :◎ 排泄介助 :◎ 入浴介助 :◎ 掃除・洗濯:◯ リハビリ :△ レクリエーション:◎ 認知症を発症すると何もできなくなってしまうわけではなく、日常生活を送るだけなら問題がないことも多いです。 グループホームには認知症ケア専門スタッフが常駐しています。認知症進行を遅らせる目的で、入居者が専門スタッフの支援を受けながら入居者の能力(残存能力)に合った家事を役割分担して自分たち自身でおこないます。 食事の準備として買い出しから調理、配膳、後片付けまで、そして洗濯をして干すといった作業や掃除も、スタッフの介助を受けながら日常生活を送ります。 グループホームでは、入居者の能力(残存能力)に合った家事を役割分担して自分たち自身でおこなうことになります。 例えば、食事の準備として買い出しから調理、配膳、後片付けまで。また、そして洗濯をして、干すまで…など。そのために必要な支援を、認知症ケアに長けた専門スタッフから受けられるのが、グループホームの大きな特徴です。 グループホームは日中の時間帯は要介護入居者3人に対して1人以上のスタッフを配置する「3:1」基準が設けられています。施設規模によっては、付き添いやリハビリなどの個別対応が難しいので、入居を検討する際は施設に確認しましょう。 認知症ケア 施設内レクリエーションやリハビリのほかに、地域の方との交流を図るための活動の一環として地域のお祭りに参加や協力をしたり、地域の人と一緒に公園掃除などの活動を行う施設も増えてきました。 グループホームとして積み上げてきた認知症ケアの経験という強みを活かし、地域に向けた情報発信などのさまざまな活動が広がっています。 地域の方と交流する「認知症サロン」などを開催して施設外に居場所を作ったり、啓発活動として認知症サポーター養成講座を開いたりするなど、地域の人々との交流に重きを置くところが増えています。 顔の見える関係づくりをすることで地域の人に認知症について理解を深めてもらったり、在宅介護の認知症高齢者への相談支援につなげたり。 こうした活動は認知症ケアの拠点であるグループホームの社会的な価値の向上や、人とのつながりを通じて入所者の暮らしを豊かにする効果が期待できます。 医療体制 グループホームの入居条件として「身体症状が安定し集団生活を送ることに支障のない方」と定義しているように、施設に認知症高齢者専門スタッフは常駐していますが、看護師が常駐していたり、医療体制が整っているところはまだまだ少ないです。 しかし近年、高齢化が進む社会の中で、グループホームの入居者の状況も変わってきています。 現在は看護師の配置が義務付けられていないので、医療ケアが必要な人は入居が厳しい可能性があります。訪問看護ステーションと密に連携したり、提携した医療機関が施設が増えたりもしているので、医療体制について気になることがあれば、施設に直接問い合わせてみましょう。 看取り 超高齢社会でグループホームの入所者も高齢化が進み、「看取りサービス」の需要が増えてきました。 すべてのグループホームで看取りサービス対応しているわけではないので、体制が整っていないグループホームの多くは、医療ケアが必要な場合、提携医療施設や介護施設へ移ってもらう方針を採っています。 介護・医療体制の充実度は施設によってさまざまです。介護保険法の改正が2009年に行われ、看取りサービスに対応できるグループホームには「看取り介護加算」として介護サービスの追加料金を受け取れるようになりました。 看取りサービスに対応しているグループホームは昨今の状況を受け増加傾向にあります。パンフレットに「看取り介護加算」の金額が表記されているかがひとつの手がかりになります。 グループホームの設備 グループホームは一見、普通の民家のようで、家庭に近い雰囲気が特徴ですが、立地にも施設基準が設けられています。 施設内設備としては、ユニットごとに食堂、キッチン、共同リビング、トイレ、洗面設備、浴室、スプリンクラーなどの消防設備など入居者に必要な設備があり、異なるユニットとの共有は認められていません。 入居者の方がリラックスして生活できるように、一居室あたりの最低面積基準も設けられています。このようにグループホーム設立にあたっては一定の基準をクリアする必要があります。 立地 病院や入居型施設の敷地外に位置している利用者の家族や地域住民と交流ができる場所にある 定員 定員は5人以上9人以下1つの事業所に2つの共同生活住居を設けることもできる(ユニットは2つまで) 居室 1居室の定員は原則1人面積は収納設備等を除いて7.43㎡(約4.5帖)以上 共有設備 居室に近接して相互交流ができるリビングや食堂などの設備を設けること台所、トイレ、洗面、浴室は9名を上限とする生活単位(ユニット)毎に区分して配置 グループホームの費用 グループホーム入居を検討する際に必要なのが初期費用と月額費用です。 ここからは、グループホームの入居に必要な費用と、「初期費用」「月額費用」それぞれの内容について詳しく解説していきます。 ...

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【動画でわかる】有料老人ホームとは?費用やサービス内容、特養との違いは

介護施設を探している中で「老人ホームにはいろいろな種類があるんだ。何が違うんだろう?」と疑問を感じることがあるかもしれません。 そこで今回は、名前に「老人ホーム」とつく施設の中でも、「有料老人ホーム」を中心に紹介。よく似ている「特別養護老人ホーム」との違いも見ていきます。 「老人ホームの種類が多すぎて訳がわからない」と思ったら、ぜひ参考にしてみてくださいね。 https://youtu.be/eMgjSeJPT8c 有料老人ホームの種類 有料老人ホームには、以下の3種類があります。 介護付き有料老人ホーム 住宅型有料老人ホーム 健康型有料老人ホーム この3種類の違いを以下にまとめています。 種類 介護付き有料老人ホーム ...

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