老人ホームへの入居には審査があります。すんなり入居できればそれに越したことはありませんが、入居を希望していた老人ホームの審査に落ちてしまう事例も少なくありません。
老人ホームの入居審査に落ちてしまうのには理由があります。希望している老人ホームの入居条件を満たしていなかったり、入居希望者の状態に老人ホーム側が対応できなかったり、理由はさまざまです。
この記事では、老人ホームの入居審査に落ちた理由を解説します。また、入居審査に落ちてしまった場合にはどうしたらいいのか、入居審査に落ちないためにはどのようにすれば良いのかも解説しますので、あわせて参考にしてください。
老人ホームの入居審査に落ちてしまうのには理由があります。
主な理由として以下が挙げられます。
入居希望者側の理由
老人ホーム側の理由
それぞれ詳しく見てみましょう。
老人ホームに入居する際は、基本的に入居審査を受けます。入居審査とは、老人ホーム側が入居希望者に対して、「入居させられるか」を判断するための審査で、書類審査と本人面談が実施されます。
本人面談では、老人ホームの責任者などが入居希望者と実際に会い、健康状態や介護の状況などを確認します。
そもそも、入居を希望する老人ホームが定めた入居条件を満たしていない場合には、その老人ホームの入居審査は受かりません。
条件は、施設の種類や運営方針により異なりますが、一般的には要介護度や健康状態、年齢などが条件となります。
老人ホームでは入居条件に要介護度が定められている場合があります。要介護度とは、自立、要支援(1・2)、要介護(1~5)と段階的に介護の重さを表したものです。
例えば、自立した日常生活が可能な高齢者を対象とした施設では、介護度が高い人は入居できません。また、入居条件が要介護3以上とあれば、それ以下の人は入居できません。
老人ホームの入居条件に要介護度が定められている場合は、年齢も65歳以上と定められています。要介護認定は原則、65歳以上でないと申請できないからです。
一方、サービス付き高齢者向け住宅などの自立した人向けの施設は、原則60歳から入居可能な場合が多いです。
老人ホームの入居審査に落ちてしまう理由に、費用の支払い能力も挙げられます。老人ホーム側は入居審査で提出する年金収入などの資産状況を見て、入居希望者の支払い能力を判断します。
老人ホームの費用は、施設の設備やサービス、立地などにより大きく異なりますが、一般的には、月額10万円以上が必要となることが多いです。3ヵ月以上の支払いが滞った場合は退去勧告を受けることもあります。
老人ホーム側が「入居希望者の経済状況が不安定である」「長期間の入居費用を支払う能力が疑われる」と判断した場合は入居審査に落ちる可能性があります。
収入が年金のみの人でも入居できる老人ホームはあります。特に特別養護老人ホームのような公的施設は低価格で入居することができ、非常に人気の施設です。
また、昨今ではサービス付き高齢者向け住宅やグループホームなどの民間施設も低価格でサービスを提供しており、年金だけで生活していける可能性があります。
ただし受給しているのが国民年金のみ(=受給額が少ない)の場合は、老人ホームの選択肢が少なくなり、最悪のケースとして入居先がないということも考えられます。
生活保護受給者でも入居できる施設はあります。主に以下の5種類です。
しかし、生活保護受給者が入れる施設はとても少ないので、探すには注意が必要です。
出典:「有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅に関する実態調査研究事業報告書」(公益社団法人全国有料老人ホーム協会)
例えば、生活保護受給者の受け入れをしている住宅型有料老人ホームは全体の約3割、サービス付き高齢者向け住宅は約2割、介護付き有料老人ホームは約1割ほど。希望の施設があっても生活保護受給者を受け入れているとは限りません。
また、生活保護受給者が入居可能な施設でも、受け入れ人数を制限している場合もあります。生活保護受給者の定員が埋まっていれば入居できません。
「生活保護受給者を受け入れてくれる施設は少ない」「定員が制限されている」ということを考えて、希望の地域だけではなく広い地域の施設を検討しましょう。
保証人・身元引受人がいない場合には老人ホームの入居審査に落ちてしまう可能性があります。
保証人・身元引受人とは、施設利用料の連帯保証、緊急時の連絡、ケアプランの了承、治療方針の判断、入院・死亡などの対応を任される人のこと。入居者が施設のルールを守れない場合や、費用の支払いが滞った場合などにも対応を求められます。
一般的には家族が引き受けますが、家族がいない場合は成年後見人を立てるか、保証人代行サービスを利用する方法もあります。
老人ホームの入居審査に落ちてしまった理由として、入居希望者にとって必要な医療行為に老人ホーム側が対応できないことが挙げられます。
老人ホームは、施設によって対応できる医療行為が違います。例えば、インスリン注射やたん吸引、人工呼吸器や在宅酸素の管理などは医療行為のため、原則として看護師または医師がおこないます。そのため、看護師または医師が居ない施設では、入居希望者に必要な医療行為を提供できないので、入居審査に落ちてしまう可能性が高いです。
高齢者によくある主な病気と、その病気に必要な医療行為の例は以下です。
病名・病状名 | 医療行為 |
---|---|
糖尿病 | インスリン注射 |
脳梗塞、パーキンソン病、気管支喘息など | 喀痰(かくたん)吸引 |
呼吸不全(肺炎など) | 人工呼吸器 |
慢性呼吸不全、慢性心不全 | 在宅酸素 |
腎臓病 | 人工透析 |
嚥下・摂食障害、誤嚥性肺炎 | 経管栄養(胃ろう、腸ろう、経鼻経管栄養) |
腸閉塞、潰瘍性大腸炎など | ストーマ(人工肛門・人工膀胱) |
寝たきり | 床ずれ・褥瘡(じょくそう)への処置 |
老人ホームの入居審査に落ちてしまう理由には、認知症の有無や度合いも挙げられます。
施設によって対応している介護度が異なるように、認知症の受け入れについても施設によりさまざまです。重度の認知症では受け入れてもらえない施設もあるので、入居希望者に認知症の症状がある場合は注意が必要です。
認知症の症状が重い場合には、認知症介護に特化しているグループホームを候補に入れてみましょう。
もし、老人ホームの入居審査に落ちてしまっても、そこで終わりにせず、次の機会に活かすことが大切です。
老人ホームの入居審査に落ちてしまった場合、以下のことをしてみましょう。
それぞれ詳しく見てみましょう。
もし老人ホームから「入居審査に落ちた」と連絡を受けたら、落ちた理由を確認しましょう。理由を聞いても「老人ホームの基準を満たしていない」という答えしか返ってこない場合は、きちんと具体的な理由を説明してもらいましょう。
落ちてしまった理由がわかれば、次の老人ホーム探しに役立てることができます。また、その理由が改善できるものであれば、再度、同じ老人ホームに受け入れの判断をしてもらうことも可能です。
例えば、夜間にもインスリン注射が必要な入居希望者が、「夜間には看護師が居ないので対応できない」という理由で入居審査に落ちてしまった場合。
看護師がいる日中のみにインスリン注射をするなど回数を調整したり、注射から飲み薬に変更するなど、入居を希望する老人ホームが対応できるように工夫するのもひとつです。対応可能な治療方法に切り替える場合には、主治医とよくし、無理のない範囲でおこないましょう。
医療行為が必要な人が、希望の施設に入居するためにおこなった例を以下のページで取り上げています。ぜひ見てみてください。
希望していた老人ホームの入居審査に落ちてしまったら、落ちた理由をもとに受け入れ可能なほかの老人ホームを改めて探しましょう。ある老人ホームで受け入れを断られても、別の老人ホームでは対応してもらえることもあります。
「常時医療行為が必要」「認知症の症状がある」などの不安要素がある人は、あらかじめ複数の老人ホームを同時に申し込んでおくのもおすすめです。
入居審査に落ちた理由にどうしても納得できない場合、その老人ホームの施設長や担当のケアマネジャーに相談してみましょう。
老人ホームの責任者である施設長に相談すれば、事実確認をしたうえで正式な回答をもらえる場合があります。
また、老人ホームに落ちた理由が「作成されたケアプランに対応できない」などであれば、ケアマネジャーに相談しましょう。ケアプランを見直すことで受け入れてもらえる可能性もあります。
老人ホームの入居審査には「本人面談」があります。もし、「老人ホームの入居審査に落ちた理由に心当たりがない」「落ちた理由をいろいろ改善してみたけど、まだ不安」という人は、本人面談の目的を理解し、対策を考えましょう。
本人面談は、老人ホーム側が入居者に対して適切なケアやサービスを提供するために重要な行程です。普段生活している環境や、老人ホームに対する要望などは人によって異なるため、それぞれのニーズに合わせるには入居前の面談が大切なのです。
また、老人ホーム側は本人面談で把握した情報から、入居条件と入居希望者の状態を判断します。
本人面談は、入居希望者だけでなく家族や看護師、ケアマネジャーの同席が可能です。
本人面談では、老人ホーム側が入居希望者に対していくつかの質問をします。また、入居希望者からも老人ホーム側に質問することもできます。
主に以下のような質問があります。
老人ホーム側が特に重視する確認事項は以下です。
それぞれ詳しく見てみましょう
本人面談では入居希望者の身体状態を確認されます。
身体状態の確認とは具体的には、握力の強さ、足が上げられる範囲、入れ歯の有無などです。入居希望者の身体状態を確認することで、どのような状態であるのかを、より明確に把握することができます。
また本人面談では記憶力についての質問もされます。例えば、今日の日付や誕生日などです。
そのほかにも入居希望者に看護師が付き添っている場合は、リハビリ内容や血圧、血液検査の結果などを確認されることもあります。
本人面談では、入居後の生活について質問をされます。趣味になりそうなものを確認したり、入居後にしたいことを知るためです。
多くの老人ホームでは、さまざまなイベントやレクリエーションを実施しています。レクリエーションとは、施設の入居者が楽しみながら気分転換や機能訓練をおこなう活動のことです。茶道、書道、体操、体を動かすゲーム、歌を歌ったりと、その内容は施設によってさまざまです。
老人ホーム側が本人面談で入居希望者の趣味や好きなことを確認することによって、入居希望者が入居後にイベントやレクリエーションに参加しやすいように配慮できます。
本人面談は老人ホーム側の情報収集が目的ですが、入居希望者や家族からの質問にも対応しています。気になることや聞いておきたいことがあれば、本人面談の際に質問しましょう。
例えば、個室に持ち込んで良いものや、共有スペースにはどのような設備があるのかなど確認するのがおすすめです。
老人ホーム側に入居希望者の状態をきちんと把握してもらうことが、適切なサービスの提供へと繋がります。お互いに不明な点を解消しながら、心を開いて会話することを心がけましょう。
希望していた老人ホームの入居審査に落ちてしまい、新たに老人ホームを探す場合、以下の相談窓口を利用してみましょう。
それぞれ詳しく見てみましょう。
地域の相談窓口には、主に以下のものがあります。
市町村の役所には、地域包括支援センターをはじめ、高齢者向けの相談窓口が複数設置されているところも多くあります。
老人ホームの入居審査に落ちたことについて、地域の相談窓口に相談してみましょう。入居希望者の状態に対応可能な老人ホームや、老人ホームに受かりやすい手段など、教えてくれるかもしれません。
老人ホームを探す場合には、介護施設の紹介サイトを利用するのも良い方法です。紹介サイトでは、さまざまな施設の情報が提供されているので、入居希望者の状態に合った施設を探すことが可能です。
また、紹介サイトの相談員に相談すると、いくつかの希望に合った施設を紹介してくれることもあります。自分一人で施設を探すよりも、入居希望者に合った施設を効率的に見つけられます。
老人ホームの入居審査に落ちた理由として、「要介護度や年齢などの入居条件を満たしていない」「必要な医療行為に対応できない」「認知症に対応できない」「費用の支払いに問題がある」「保証人・身元引受人が居ない」などが考えられます。
老人ホームに入居するための入居審査では、書類審査と本人面談が実施されます。本人面談では、施設の責任者などが入居希望者と実際に会い、健康状態や介護の状況などを確認します。
もし、老人ホームの入居審査に落ちてしまったら、まずは老人ホームに落ちた理由を確認しましょう。落ちた理由を改善できるならば、再度老人ホームに受け入れの判断をしてもらうことも可能です。また、落ちた理由をもとに、受け入れ可能なほかの老人ホームも改めて探しましょう。
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