老人ホームへ入居する際、住民票を移動するかどうか迷いますよね。特に銀行口座について、「銀行口座の住所を老人ホームの住所に変更すると、銀行口座が凍結されてしまうのでは」と不安を抱く人もいるでしょう。
実際には「施設の住所だから」という理由で、銀行側が銀行口座を凍結することはありません。
しかし、銀行側が「口座の名義人が認知症である」と判断した場合には、銀行口座を凍結されてしまう場合があります。口座の名義人が認知症かどうかは、銀行口座に登録する住所ではなく、口座の名義人である本人を見て判断します。
この記事では、銀行口座を老人ホームの住所に変更することについて解説します。また、住民票を施設の住所へ移した方が良いのか、住民票を移すメリット・デメリットも紹介しますので、あわせて参考にしてください。
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銀行口座の住所変更をしない場合、銀行の一部のサービスの利用を制限される可能性があります。例えば、銀行の手続きの際に本人確認が必要なときです。
ATMの引き出し限度額以上の金額を口座から出金したいときなど、本人確認が必要な場合があります。本人確認の書類と銀行口座に登録してある住所が異なる場合、住所変更手続きに時間がかかり、すぐには引き出せなくなります。
また、銀行のキャッシュカードなど「転送不要・転送不可」として送られる場合が多く、その場合は銀行口座に登録してある住所でしか受け取れません。転送不要・転送不可と記載された郵便物は、郵便局の転送サービスの対象外となるので注意が必要です。
住所を老人ホームに変更しても、銀行口座は凍結されません。
銀行口座を凍結されてしまう条件は主に以下です。
口座の名義人が「認知症である」と銀行側に判断されると、銀行口座が凍結されてしまうことがあります。そのため、「銀行口座の住所を介護施設の住所に変更したら、銀行口座が凍結されてしまう」と勘違いされることがあります。
住所が介護施設だからという理由で、銀行側が「口座の名義人が認知症」と判断することはありません。では、どのような場合に口座の名義人が認知症と判断されるのでしょうか。見てみましょう。
銀行側に口座の名義人が認知症であると判断された場合は、銀行口座を凍結される場合があります。なぜなら、口座の名義人が認知症により判断力や記憶力が低下している状態での金融取引は、特殊詐欺などのトラブルに巻き込まれる可能性があるからです。
口座の名義人が認知症かどうか、銀行側が判断する基準は主に以下です。
銀行口座の凍結は、銀行側が「判断力が明らかに低下している」と判断した時点で実施されることが多いです。また、親族などから「口座の名義人が認知症である」と連絡があった場合にも口座は凍結されます。
銀行口座が凍結されてしまうと、口座からの引き出し、振り込み、新規の取引などが制限されます。銀行口座の凍結は、成年後見人が選任されるなどの法的手続きが完了するまで続きます。
認知症の症状が軽いうちに家族や関係者が気づき適切な法的手続きをおこなえば、口座凍結のリスクを減らせます。認知症の症状が目立ち始めたら早めに対策しましょう。
成年後見人とは、認知症をはじめ知的障害や精神障害などの理由で物事を判断することが難しく、法律行為をおこなえない状態にある人に代わって必要な契約を結んだり、財産を管理したりする人のこと。成年後見人は家庭裁判所へ申し立てをすることで、家庭裁判所から選ばれます。
老人ホームへ入居する場合、基本的には住民票を移す義務はありません。
ただ、老人ホームが「地域密着型サービス」である場合、老人ホームがある市区町村に住民票がないと入居できません。入居したい老人ホームが地域密着型サービスの場合は、事前に老人ホームがある地域に住民票の移動が必要です。
地域密着型サービスに該当する老人ホームには、以下のようなものがあります。
有料老人ホームと特別養護老人ホームは、地域密着型サービスの施設とそうでないものがあります。
地域密着型サービスではない施設がほとんどですが、中には地域密着型サービスとして運営されている施設もあるので、事前に確認しておきましょう。
老人ホームの住所へ住民票を移すと以下のようなメリットがあります。
詳しく見てみましょう。
入居している老人ホームへ住民票を移すと、入居している本人宛の郵送物が施設に届くようになります。基本的に、役所などからの郵便物は住民票の住所に送られてきます。住民票を移しておけば重要な書類が、直接、入居している老人ホームに届くので、見逃しがなく安心です。
家族が近くに住んでいて間を置かずに届けに行けるのであれば良いですが、家族が遠くに住んでいたり、会いに行く時間が確保できない場合は、住民票を移して郵便物を入居先の老人ホームで直接受け取れるようにした方が、お互いの負担が少なくなるでしょう。
老人ホームがある地域によっては、介護保険料が安くなる場合があります。
介護保険料は住んでいる市区町村によって料金設定が異なります。そのため、入居先の老人ホームがある地域の介護保険料や国民健康保険料が、以前住んでいたところよりも安くなる場合があるのです。
また、老人ホームに住民票を移すことで単独世帯となるので、それまで収入のある家族と同居していた場合、入居者本人の所得金額によっては介護保険料の負担が軽減されたり、毎月の介護サービスの負担上限額が下がることがあります。
老人ホームの住所へ住民票を移す場合のデメリットは、主に以下があります。
詳しく見てみましょう。
住民票を老人ホームの住所に変更すると、これまで自宅に届いていた入居者宛の郵送物が施設に届くようになります。
入居者ごとにポストが用意されている施設であればプライバシーが守られますが、郵便物が施設の受付などに届く場合、郵便物が入居者本人や家族より先に施設のスタッフの目につきます。
管理してもらって安心という見方もありますが、「どこからの郵送物が届いているのか、施設のスタッフに知られたくない」と思う人もいるでしょう。
プライバシーが気になる郵便物は主に以下が考えられます。
老人ホームでは個人情報の取り扱いは厳重に管理されているため、郵便物が悪用されることはありません。しかし、プライベートな郵便物を見られるのが気になる場合は、郵便物の取り扱い方、郵便物を目にする可能性のあるスタッフなどを確認しておきましょう。
入居者に届いた個人宛の郵便物を老人ホームのスタッフが開封することは、原則としてありません。もし中身を見た形跡があった場合は、老人ホームで信頼できるスタッフに相談してみましょう。
老人ホームがある地域によっては、介護保険料が高くなる場合があります。介護保険料は住んでいる地域によって異なります。そのため、転居先の市区町村によっては、今までより高くなってしまうこともありえます。
また、それまで収入のある家族と同居していた場合、世帯が分かれることにより、国民健康保険の負担が増えたり扶養控除から外れてしまうこともあります。
老人ホームへの入居にともない住民票を移したいけれど、入居先の老人ホームがある市区町村では転居前よりも介護保険料が高くなってしまうという場合には、「住所地特例制度」を利用しましょう。
住所地特例制度とは、転居した後も、継続して転居前の市区町村が保険者となる制度です。この制度は、施設がある市区町村の介護費用による財政負担が、重くなることを防ぐ目的で制定されました。
利用するためにはいくつかの条件があります。対象者や対象施設は以下のとおりです。
銀行口座の住所変更をしない場合、銀行の一部のサービスの利用を制限される可能性があります。また、銀行のキャッシュカードなど、「転送不要」として送られた郵便物は、銀行口座に登録してある住所でしか受け取れません。
銀行口座の住所を老人ホームの住所に変更しても、銀行口座は凍結されません。銀行口座を凍結されてしまう条件は「銀行からの借り入れがあり、債務整理の対象になる場合」「口座が不正に開設された・口座が犯罪に使用された疑いがある場合」「口座の名義人が死亡した場合」「口座の名義人が認知症であると判断された場合」です。口座の名義人が「認知症である」と銀行側に判断されると、銀行口座が凍結されてしまうことがありますが、銀行口座の住所を介護施設の住所に変更しただけでは、銀行側は「口座の名義人が認知症」と判断しません。
老人ホームへ入居する場合、基本的には住民票を移す義務はありません。ただ、老人ホームが「地域密着型サービス」である場合、老人ホームがある市区町村に住民票がないと入居できません。入居したい老人ホームが地域密着型サービスの場合は、事前に住民票の移動が必要です。
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