介護施設を探しているときに「ケアハウス」や「グループホーム」の名前を見かけるでしょう。
ケアハウスとグループホームは、施設の形態が違います。ケアハウスは主に自立した高齢者向けの施設で、グループホームは認知症の高齢者向けの施設です。
この記事では、ケアハウスとグループホームの違いを解説します。費用やメリット、デメリットなど、さまざまな視点から解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
Contents
「ケアハウス」と「グループホーム」は、そもそも施設の形態が違います。
ケアハウスには、比較的元気な方向けの「一般型」と、介護サービスが付帯している「介護型」があります。グループホームは認知症の症状がある高齢者向けの施設です。
ケアハウス(一般型) | ケアハウス(介護型) | グループホーム | |
---|---|---|---|
施設の特徴 | 介護の必要がなく一人で暮らせる方向け | 介護が必要な方向け | 認知症の方向け |
要介護度の受け入れ | 自立・軽度の要介護度 | 要介護度1以上 | 要支援2以上 |
認知症の受け入れ | ✕ | △(軽度) | ◯(※1) |
介護サービス | ✕(※2) | ◯ | ◯ |
医療ケア | ✕ | △ | ✕ |
そのほか | ・60歳以上 ・身寄りがない ・介護度が上がると退去の可能性あり |
・65歳以上 ・身寄りがない ・自立した生活が困難 |
・65歳以上 ・施設と同じ市区町村に住民票がある |
※1 医師から認知症の診断を受けている場合
※2 ※外部の事業者との契約で利用可能
それぞれどういった施設なのか見てみましょう。
ケアハウスは、老人福祉法で定められた軽費老人ホームの一種です。
軽費老人ホームとは、自立した生活が困難になった身寄りのない60歳以上の高齢者が入居できる施設のことです。軽費老人ホームにはA型、B型、C型、都市型の4種類があり、そのうちC型をケアハウスと呼びます。
2008年より、軽費老人ホームはケアハウス(C型)の基準に統一されており(※)、今後はA型、B型の施設が新しく建てられることはありません。
ケアハウス(C型)には「一般型」と「介護型」があり、その両方で食事サービスの提供があります。「一般型」は施設からの介護サービスの提供がなく、「介護型」は施設に介護サービスが付帯しています。
※参考:「軽費老人ホームの設備及び運営に関する基準について(平成20年5月30日老発0530第2号厚生労働省老健局長通知)(抄)」(厚生労働省)
グループホームとは、認知症高齢者のための介護施設です。グループホームでは、認知症の専門知識と技術を持った職員の援助を受けながら、要支援2以上の認知症高齢者が共同生活を送ります。
グループホームでは「ユニット」と呼ばれるグループごとに区切って共同生活を送ります。1ユニットにつき5人から9人、原則1施設につき原則2ユニとまでと制限されています。
少人数に制限する理由は、心穏やかに安定して過ごしやすい環境を整えるため。環境変化が少なく、同じグループメンバーで協力して共同生活することは、認知症の進行を防ぐことに繋がります。
認知症の方にとって新しく出会う人、新しく覚えることが難しいので、入居者やスタッフの入れ替わりが頻繁にある施設では認知症の高齢者は心が落ち着かず、ストレスを感じ生活しづらくなってしまいます。その結果、認知症症状を悪化させるだけでなく、共同生活を送る上でトラブルを起こすきっかけとなります。
慣れ親しんだ場所を離れて新しい生活をするのは認知症の方には特に心配が尽きないもの。その心配を軽減するため、より家庭にできるだけ近づけ、安心して暮らせるようにしています。
以前は、「ケアハウス」や「グループホーム」に名前が似ている、「ケアホーム」という施設がありました。ケアホームとは、障害者総合支援法で定められた障害福祉施設です。
ケアホームに入居できるのは、規定で定められた身体障害、知的障害、精神障害のいずれかの障害者程度区分がある方です。ですので、老人ホームなどの高齢者向けの施設ではありません。
ケアホームは、2014年に障害者グループホームに一元化(※)されました。
グループホームには、「認知症グループホーム」と「障害者グループホーム」があります。認知症の高齢者向けの施設が、認知症グループホーム。年齢を問わず障害を持った方が入る施設が、障害者グループホームです。ケアホームと一元化されたのは、障害者グループホームです。
一元化により、現在、ケアホームはグループホームに名前が変わっています。しかし、一部ではケアホームの名前のまま運営している施設もあり、ケアホームとグループホーム、両方の名前が混在しています。
※参考:「ケアホームとグループホームの一元化等について」(厚生労働省)
ケアハウスとグループホームでは、入居条件も違います。
ケアハウス(一般型) | ケアハウス(介護型) | グループホーム | |
---|---|---|---|
要介護度の受け入れ | 自立・軽度の要介護度 | 要介護度1以上 | 要支援2以上 |
認知症の受け入れ | ✕ | △(軽度) | ◯(※) |
そのほか | ・60歳以上 ・身寄りがない ・介護度が上がると退去の可能性あり |
・65歳以上 ・身寄りがない ・自立した生活が困難 |
・65歳以上 ・施設と同じ市区町村に住民票がある |
※医師から認知症の診断を受けている場合
それぞれ詳しく見てみましょう。
ケアハウスの「一般型」は自立した暮らしに不安があり、家族による支援が受けられない方や身寄りのない60歳以上の高齢者であることが条件です。
夫婦で入居する場合には、夫か妻のどちらかが60歳を超えている必要があります。
一方、「介護型」は自立した暮らしに不安があり、要介護1以上、原則65歳以上の高齢者であることを条件としています。「一般型」と比べて条件は厳しくなっていますが、入居後に介護度が上がっても退去を求められることはありません。
グループホームに入居できるのは医師から「認知症」と診断を受けている方で、一定の条件にあてはまる方に限ります。
一定の条件とは以下です。
グループホームは地域密着型サービスのため、利用できるのは施設と同じ地域に住む方に限られます。地域密着型サービスとは、高齢者が要介護状態となっても住み慣れた地域での生活が続けられることを目的としている介護サービスです。
ケアハウスとグループホームでは費用やその仕組みも違います。
それぞれ解説するので参考にしてください。
ケアハウスに入居する際は、保証金や入居一時金を初期費用として支払います。また月ごとに居住費や管理費、食費などが必要です。
一般型 | 介護型 | |
---|---|---|
初期費用 | 数十万円 | 数十万~数百万円 |
月額費用 | 約6~17万円 | 約10~20万円 |
「一般型」の初期費用は数十万円、月額費用は約6〜17万円程度かかります。
「介護型」は初期費用が数十万円〜数百万円と一般型よりも高額となっていますが、一部には無料の施設もあります。月額費用は約10〜20万円程度と一般型と大きく差はありません。
グループホームへの入居には、初期費用と月額費用が必要です。
項目 | 費用目安 | |
---|---|---|
初期費用 | 前払い金 | 約0円~100万円 |
月額費用 | 賃料 | 約5~7万円 |
管理費 | 約1~1万5000円 | |
食費 | 約4~6万円 | |
水道光熱費 | 約5000~1万円 | |
介護サービス費 | 約5000~2万5000円 | |
その他 | 約0~4万円 | |
サービス加算 | 施設による |
グループホームは、民間企業、社会福祉法人、医療法人、NPO法人とさまざまな団体がグループホームを運営していることから、施設ごとに費用やサービスに差があります。
初期費用が0円の施設もあれば数百万円程度の施設もあり、幅広いです。また、月額費用は施設の立地やサービス内容によっても異なり、おおむね15~30万円程度です。
ケアハウスとグループホームで受けられるサービスも違います。
それぞれの施設のサービス内容について違いを見てみましょう。
一般型ケアハウスでは、施設の職員から食事の提供や掃除、洗濯などの生活支援サービスが受けられます。職員による見守りもあるため、緊急時の心配も少なく、安心して過ごせるでしょう。
またレクリエーションも盛んにおこなわれているため、趣味を楽しんだり、入居者同士で交流することもできます。
一般型ケアハウスは、60歳以上で、自立した生活に不安のある方が入居対象者です。そのため、施設からの介護サービスの提供はありません。介護が必要になった場合は外部の介護事業者と契約し、外部事業者から介護サービスを受けます。要介護3度以上になると退去を求められる場合もあります。
介護型ケアハウスも、「一般型」と同様に食事の提供や掃除、洗濯などの生活支援サービスが受けられます。それに加えて排泄や入浴の介助、機能訓練といった介護サービスも施設の職員から受けられます。
ケアハウスの介護型は介護サービスが充実しており、認知症ケアや看取りに対応した施設もあります。施設の入居後に介護度が上がっても、引き続き施設で暮らせるので安心です。
グループホームでは、「ユニット」と言われる少人数のグループで生活し、入居者はそれぞれ家事などの役割を分担をします。調理や食事の支度、掃除や洗濯など入居者の能力に合った家事をすることで認知症の症状の進行を防ぎ、能力をできるだけ維持するのです。
グループホームには医師、看護師の配置義務はありません。そのため、グループホームの入居条件として「身体症状が安定し、集団生活を送ることに支障のない方」と定義している施設が多くあります。持病があるなど医療のサポートが必要な場合は、医療ケアを受けられる施設を選ぶことが必要です。
ケアハウスのメリットは主に以下が挙げられます。
それぞれ解説するので見てみましょう。
ケアハウスは安い費用で入居できることが大きな特徴です。一般型、介護型どちらのタイプも、月額費用約6〜20万円程度で収まります。ケアハウスは月額費用を抑えたい方におすすめの高齢者施設と言えるでしょう。
収入が低い方は月額費用のうち事務費が軽減されるため、月々の支払いがさらに少なくなります。
ケアハウスでは、原則として個室が与えられます。相部屋が多い特別養護老人ホームなどと比べ、ケアハウスは一定のプライバシーが確保できると言えます。
また、個室であることで共同生活に不慣れな方でもストレスなく施設での生活を始められます。生活の自由度が高いため、自宅にいるかのように過ごせるでしょう。
ケアハウスに設けられた共用スペースでは、さまざまなレクリエーションが実施されています。レクリエーションの内容は施設によって異なりますが、囲碁や将棋、体操、クイズ、カラオケなどがおこなわれています。
レクリエーションは、認知機能の向上や運動不足の解消に役立つとともに、生活にメリハリをつけられます。参加は強制でなく、気分や体調に合わせて参加・不参加を決められます。
ケアハウスの介護型は、充実した介護体制があるため施設職員による介護サービスを受けられます。介護度が上がっても、入居し続けることが可能です。
一般型では介護サービスの提供がないため、要介護3以上になると退去を求められ、新しい施設を探す必要があります。しかし、介護型には認知症ケアや看取りに対応した施設もあり、終の棲家として過ごせるでしょう。
ケアハウスのデメリットは、施設の費用が安価のため入居待ちが長いことが挙げられます。
ケアハウスは月額費用が約10〜20万円程度と格安で入居できます。有料老人ホームなどの施設と比べ、費用が抑えられるため、非常に人気のある高齢者施設です。
希望者が集中しているため、申し込みをしても入居待ちをする可能性が高いです。短くても1ヵ月、長くなると1年以上の待機期間があることも少なくありません。
入居が必要になった場合は、複数のケアハウスに申し込みをするのがおすすめです。ケアハウスだけでなく、比較的費用が安い民間のサービス付き高齢者向け住宅も視野に入れるのも良いでしょう。
グループホームのメリットは主に以下が挙げられます。
それぞれ解説するので見てみましょう。
グループホームでは、入居者同士が支え合って共同生活を送ることで、認知症の進行を緩やかにできます。
グループホームの入居者は、職員のサポートを受けながら、できる限り自分の力で掃除や調理などの家事をおこないます。このような日々の生活が、大きなリハビリ効果をもたらして、認知症の症状を緩和し、進行を遅らせる可能性を高めます。
また、自立した生活を送ることが入居者の自信につながり、心穏やかな毎日を過ごせます。
グループホームの最大のメリットは、専門的な知識と豊かな経験を持った介護職員が24時間常駐していることです。
認知症向けのグループホームでは、認知症の知識と経験豊富な職員が、入居者それぞれの症状にあったケアやサービス、生活のフォローや精神的なサポートもおこないます。また、サポートの内容は症状や進行具合によって見直されるので、入居者や家族はいつでも安心して過ごせます。
グループホームの入居者にとって最もうれしいメリットは、住み慣れた地域で過ごせることでしょう。
認知症では、大きな環境の変化によるストレスや不安を感じることが、症状に影響を及ぼす場合があります。よって、地域密着型のサービスのひとつであるグループホームに入居することで、住み慣れた地域で暮らせるという安心感を得られます。
グループホームは、1ユニット5~9名の限られた人数の入居者と介護スタッフの中で、落ち着いた生活ができます。
グループホームは入居者の入れ替わりが少ないため、環境や人の変化に対応しにくい認知症の方であっても、混乱が少なくて済みます。さらに、いつも同じ顔なじみのメンバーであればコミュニケーションも取りやすく、入居者同士で支え合えるような関係性も築けるでしょう。
また、定員の少ないグループホームでは、他の施設よりも介護職員と家族の対話が多く取れることも利点のひとつです。入居者の状況がわかりやすく、家族の意見や要望も伝わりやすくなります。
グループホームのデメリットは主に以下の2点が挙げられます。
それぞれ解説するので見てみましょう。
グループホームの大きなデメリットのひとつとして、医療面でのケアが難しい点が挙げられます。
グループホームでは、看護師といった医療職員の人員配置の義務はありません。
グループホームでも退院後のケアや看取りの時期といった一時的なものであれば、訪問看護などと連携することは可能です。ただし、経管栄養や点滴、人工呼吸器の管理など頻繁な医療行為が必要になった場合は、グループホームでの対応は厳しいです。
グループホームでは、共同生活が難しくなると退去しなければならない可能性があります。
自立歩行が難しくなるなど、身体機能が低下してグループホームなの共同生活が維持できない場合は、他の施設への転居を勧められるケースがあります。ただし、施設によっては看取りまで対応しているところもあるので、あらかじめ施設の方針を確認しておきましょう。
また、暴言や暴力行為によって、本人やほかの入居者を傷つけてしまうことが継続した場合にも、施設側が十分な対策をおこなった後に、退去や精神科への一時的な転院が検討されることもあります。
ケアハウスとグループホームでは施設の特徴が違います。ケアハウスは、自立した生活に不安のある身寄りがない60歳以上の高齢者が入居できる施設です。ケアハウスには「一般型」と「介護型」があり、一般型は施設からの介護サービスの提供がなく、介護型は施設に介護サービスが付帯しています。グループホームとは、認知症高齢者のための介護施設です。グループホームでは、認知症の専門知識と技術を持った職員の援助を受けながら生活ができます。
ケアハウスの「一般型」は自立した生活に不安があり、家族による支援が受けられない方や身寄りがない60歳以上の高齢者であることを条件としています。「介護型」はさらに、要介護1以上、原則65歳以上の高齢者であることを条件としています。グループホームに入居できるのは65歳以上の方で、医師から「認知症」と診断を受けている必要があります。また、要支援2~要介護5の介護認定を受けている、住民票がグループホームと同じ市区町村にある、施設での共同生活に支障がない、などの条件があります。
ケアハウスの「一般型」では、施設の職員から食事の提供や掃除、洗濯などの生活支援サービスを受けられます。しかし、施設からの介護サービスの提供はありません。一方、ケアハウスの介護型は介護サービスが充実しています。施設の入居後に介護度が上がっても、引き続き、施設で暮らせるので安心です。グループホームは認知症ケアに特化しています。「ユニット」と言われる少人数のグループで生活し、調理や食事の支度、掃除や洗濯など入居者の能力に合った家事をすることで認知症の症状の進行を防ぎ、能力をできるだけ維持します。
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