施設の入居を検討しているときに「ケアハウス」や「有料老人ホーム」の名前を見かけるでしょう。
ケアハウスと有料老人ホームには、介護サービスの提供がない施設と介護サービスが付帯している施設があり、サービス面では共通点が多いです。しかし、料金や運営元が大きく異なります。
この記事では、ケアハウスと有料老人ホームの違いを解説します。費用や入居条件などさまざまな視点から解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
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ケアハウスと有料老人ホームの大きな違いのひとつに運営元が挙げられます。ケアハウスは社会福祉法人などが運営する公的施設で、有料老人ホームは民間企業が運営する民間施設です。
ケアハウスと有料老人ホームは、どちらにも施設から介護サービスの提供がない施設と、介護サービスが付帯している「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた施設があります。
※1 施設によって異なる
※2 外部の事業者との契約で利用可能
それぞれどういった施設なのか詳しく見てみましょう。
ケアハウスは、老人福祉法で定められた軽費老人ホームの一種です。
軽費老人ホームとは、自立した生活が困難になった身寄りがない60歳以上の高齢者が入居できる施設のことです。軽費老人ホームにはA型、B型、C型、都市型の4種類があり、そのうちC型をケアハウスと呼びます。
2008年より、軽費老人ホームはケアハウス(C型)の基準に統一されており(※)、今後A型、B型の施設が新しく建てられることはありません。
ケアハウス(C型)には「一般型」と「介護型」があり、その両方で食事サービスの提供があります。一般型ケアハウスは施設からの介護サービスの提供がなく、介護型ケアハウスは施設に介護サービスが付帯しています。
※参考:「軽費老人ホームの設備及び運営に関する基準について(平成20年5月30日老発0530第2号厚生労働省老健局長通知)(抄)」(厚生労働省)
有料老人ホームは主に民間企業が運営していることもあり、サービスの内容や料金は施設ごとに異なります。
また、入居条件も施設により異なります。自立している人から介護が必要な人まで幅広く受け入れている施設もあり、幅広い選択肢の中から自分に合った施設を選べます。
主な有料老人ホームには「住宅型有料老人ホーム」と「介護付き有料老人ホーム」があります。
住宅型有料老人ホームは、主に自立・要支援もしくは要介護度が低い高齢者向けの施設です。
住宅型有料老人ホームではスタッフによる食事や掃除などの生活支援、緊急時の対応といったサービスが受けられます。しかし、施設からの介護サービスの提供はありません。介護が必要な場合は外部の介護サービス事業者(訪問介護、デイサービスなど)と契約する必要があります。
住宅型有料老人ホームには、介護スタッフ、看護師など、設置すべき職種のスタッフは決まっていますが、人員基準は定められていません。介護スタッフの数が少なかったり、施設に居ない時間もあります。手厚い介護や医療ケアを希望している人は注意が必要です。
介護付き有料老人ホームとは、有料老人ホームのうち、都道府県または市町村から「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた施設です。生活支援や介護サービス、看護サービスが受けられ、それらのサービスには介護保険が適用されます。24時間介護スタッフが常駐し、介護や生活支援などは施設のスタッフにより提供されます。
また、看取りまで対応している施設も多数あり、「終の棲家(ついのすみか)」を選ぶうえでも選択肢のひとつとなります。
ケアハウスと有料老人ホームでは費用が大きく異なります。
それぞれ解説するので参考にしてください。
ケアハウス | ||
---|---|---|
介護型 | 一般型 | |
初期費用 | 数十~数百万円 | 数十万円 |
月額費用 | 約10~20万円 | 約6~17万円 |
ケアハウスに入居する際は、保証金や入居一時金を初期費用として支払います。また月ごとに居住費や管理費、食費などの月額利用料が必要です。
ケアハウスの「一般型」の初期費用は数十万円、月額利用料は約6〜17万円程度かかります。
ケアハウスの「介護型」は、初期費用が数十万円〜数百万円と一般型ケアハウスよりも高額となっていますが、一部には無料の施設もあります。月額利用料は、約10〜20万円程度と一般型ケアハウスと大きく差はありません。
ケアハウスの月額利用料に「サービス提供費」が含まれています。サービス提供費とは、事務費など、ケアハウスで提供されるサービスに対してかかる費用のことです。
サービス提供費は入居者の収入によって自治体から補助が受けられます。施設ごとに決められた本来の費用から、入居者の自己負担(費用徴収額)を引いた残りの金額を、自治体からの補助金により賄われます。
サービス提供費の費用徴収額は前年の収入によって決まります。前年の収入費150円以下から始まり、約10万円上がるごとに費用徴収額も上がっていきます。前年の収入費が310万1円以上では費用徴収額は全額負担です。
サービス費用徴収額(月額)はこちらのページで確認できます。
「ケアハウスは費用が安い」というイメージですが、前年の収入によって費用が変わってしまうので注意が必要です。
有料老人ホーム | ||
---|---|---|
介護付き | 住宅型 | |
初期費用 | 0~数千万円 | 0~数千万円 |
月額利用料 | 約15~35万円 | 約15~30万円 |
有料老人ホームの費用は、入居時にかかる「初期費用」となる入居一時金が必要です。入居一時金は賃料の前払いにあたります。入居後に毎月償却され、償却が終わる前に退去した場合には未償却分が返金されます。
初期費用の平均は40万円程度ですが、立地や設備などにより決められるため、施設ごとに大きな差があります。豪華な設備や充実した医療体制を備えた施設では数千万円以上かかることも。一方で、入居時費用が0円の有料老人ホームもあり、その場合は家賃の前払いをしないことになるため月額利用料が高くなります。
初期費用とは別に、月額利用料も必要です。月額利用料の内訳は、家賃や水道光熱費、管理費といった住居費用や、食費などの費用です。
有料老人ホームは施設ごとにサービスや配置人員も異なるため、月額利用料にも大きな開きがあります。15万円程度に抑えられる施設がある一方で、豪華な食事や手厚い医療体制などを提供する施設では35万円程度かかることもあります。
介護付き有料老人ホームでは介護にかかる費用は月額利用料に含まれますが、住宅型有料老人ホームでは介護サービスを外部の事業者と契約するため、別途で介護サービス費がかかります。
外部の介護サービスを利用する場合の介護サービス費は、支給上限額の範囲内であれば、要支援・要介護の認定状況によって1〜3割を負担することになります。
ケアハウスと有料老人ホームでは入居条件も少し異なります。ケアハウスは、家族による支援が受けられない人や身寄りのない人向け。有料老人ホームは、施設によって入居条件が大きく異なります。
それぞれ詳しく見てみましょう。
ケアハウスの「一般型」は、自立した暮らしに不安があり、家族による支援が受けられない人、または身寄りがない60歳以上の高齢者であることを入居条件としています。
夫婦で入居する場合には、夫か妻のどちらかが60歳を超えている必要があります。
一方、「介護型」は、自立した暮らしに不安があり、要介護1以上、原則65歳以上の高齢者であることを条件としています。一般型ケアハウスと比べて条件は厳しくなっていますが、入居後に介護度が上がっても退去を求められることはありません。
施設の多くが入居条件として60歳もしくは65歳以上という年齢制限を設けていますが、施設と入居希望者の状況によっては60歳未満でも入居できる場合もあります。また、要介護度や認知症に関する基準も施設ごとに異なります。
介護付き有料老人ホームも施設によって受け入れの条件が大きく異なります。自立している人を受け入れている施設もあれば、要介護1以上の人のみを受け入れている施設もあります。
要支援や健康な人も入居が可能な施設では、ご夫婦のうち一方は介護を必要とし、もう一方は自立している、というケースでも一緒に入居できます。
介護付き有料老人ホームは介護のサポートが手厚いので、入居後に介護が必要になっても住み続けられます。そのため、健康なうちに自分の気に入った施設に入居しておくことも可能です。
要介護1以上のみ入居できる施設では、介護度が重度の人でも生活しやすい設備が整っており、緊急時も即時に対応してもらえます。
一般的に認知症の人でも入居できますが、認知症のケアの詳細については施設によって異なるため、事前に確認しておきましょう。
「一般型ケアハウス」と「住宅型有料老人ホーム」、「介護型ケアハウス」と「介護付き有料老人ホーム」はそれぞれ介護サービス体制が似ています。
「一般型ケアハウス」と「住宅型有料老人ホーム」、「介護型ケアハウス」と「介護付き有料老人ホーム」の2つに分けて、施設のサービス内容について違いを見てみましょう。
一般型ケアハウスと住宅型有料老人ホームでは、どちらも以下のような生活支援サービスが提供されています。
一般型ケアハウスと住宅型有料老人ホームでは、施設からの介護サービスの提供はありません。介護が必要になった場合は「訪問介護」や「デイサービス」など外部の介護事業者と契約し、外部事業者から介護サービスを受けます。状況に応じてサービスを組み合わせたり、施設に入居する前から利用していた介護サービスを継続することもできます。
しかし、外部サービスを利用することになるため、24時間体制の介護サービスが受けられない場合があることを認識しておきましょう。
サービス面に共通点の多い一般型ケアハウスと住宅型有料老人ホームですが、一部異なる部分もあります。一般型ケアハウスのほとんどは、要介護3以上になると退去を求められる点です。住宅型有料老人ホームは施設により対応がさまざまで、終身で利用できる施設もそうでない施設もあります。
介護型ケアハウスと介護付き有料老人ホームも、一般型ケアハウス・住宅型有料老人ホームと同様に以下の生活支援サービスが受けられます。
介護型ケアハウスと介護付き有料老人ホームでは、生活支援サービスに加え、排泄や入浴の介助、機能訓練といった介護サービスも施設のスタッフから受けられます。
また、介護型ケアハウスと介護付き有料老人ホームには、認知症ケアや看取り介護に対応した施設もあります。施設の入居後に介護度が上がっても、引き続き施設で暮らせるので安心です。
介護型ケアハウスと介護付き有料老人ホームでは、介護サービスの面など共通点が多いですが、異なる部分もあります。それは医療面です。介護付き有料老人ホームには看護師もしくは准看護師の配置が義務づけられているため、ケアハウスに比べて医療面のサポートが充実しています。施設によっては24時間医療ケアを受けられるところもあります。
ケアハウスに向いている人は、「一人暮らしにやや不安を感じ始めた人」や「施設にかかる費用を抑えたい人」です。
ケアハウスは自治体から助成を受けており、施設の費用が安く設定されています。また、利用者の所得に応じて費用が変動するため、低所得の人も無理のない料金で入居できます。
ケアハウスは費用が比較的抑えられる分、人気があります。そのため入居待ちの人が多く、入居するまでに1ヵ月~1年間待つ場合があります。
ケアハウスへ入居を検討している人は、早めに手続きをおこないましょう。複数の施設へ申し込んだり、有料老人ホームへの入居も検討しておくのがおすすめです。
有料老人ホームに向いている人は「施設に入居後の生活にこだわりのある人」や「医療ケアや介護サービスを重視する人」です。
有料老人ホームは個性がさまざまなので、ジムのようなトレーニング用の部屋やカラオケが併設されていたり、園芸、囲碁、将棋、麻雀などのレクリエーションが充実していることもあります。レクリエーションやイベントを楽しみながら、自由な生活を送れるでしょう。
また、手厚い介護サービスと医療ケアを受けられる施設もあるので、自身の身体状況や希望に合わせた施設を見つけることができます。
しかし、公的施設に比べると若干費用が多くかかってしまう傾向にあるので、入居を検討する際には費用の見通しをしておくのが大切です。
ケアハウスと有料老人ホームの費用はどちらも初期費用と月額利用料が必要です。ケアハウスの「一般型」の初期費用は数十万円、月額利用料は約6〜17万円程度かかります。ケアハウスの「介護型」は初期費用が数十万円〜数百万円、月額利用料は約10~20万円程度です。介護付き有料老人ホームと住宅型有料老人ホームは、初期費用が0~数千万円と施設によりさまざまです。月額利用料は住宅型有料老人ホームが約15~30万円、介護付き有料老人ホームが約15~35万円です。
ケアハウスの「一般型」は、自立した暮らしに不安があり、家族による支援が受けられない人、または身寄りがない60歳以上の高齢者であることを入居条件としています。ケアハウスの「介護型」は自立した暮らしに不安があり、家族による支援が受けられない人で、要介護1以上、原則65歳以上の高齢者が入居条件です。有料老人ホームは、施設の多くが入居条件として60歳もしくは65歳以上という年齢制限を設けていますが、要介護度に関する基準は施設ごとに異なり、自立している人から介護度の高い人まで入居できる施設があります。
ケアハウスに向いている人は、「一人暮らしにやや不安を感じ始めた人」や「施設にかかる費用を抑えたい人」です。有料老人ホームに向いている人は「施設に入居後の生活にこだわりのある人」や「医療ケアや介護サービスを重視する人」です。
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