グループホームでは複数の高齢者が共同生活をおくるため、クラスターの発生に不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、グループホームでクラスターが発生する原因や感染者が出たときの対応、感染予防について解説。グループホームに面会に行く際の注意点についても紹介します。
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ウイルスや細菌による感染症は、主に接触感染・飛沫感染・空気感染によって広まります。
グループホームは認知症の高齢者が5~9人のグループで家事などを分担しながら生活します。居室は基本的に個室ですが、食堂や洗面所などの施設は共用のため、入居者同士の接触が多く、クラスターが発生しやすい環境です。
また、入居者は職員のサポートを受けながら生活を送るため、接触を避けることはできません。このため、入居者・職員のどちらかが感染すると、もう一方に感染させてしまう恐れが高くなります。
さらに、グループホームは認知症に特化した施設のため、認知機能が低下した入居者も多く、感染対策の徹底が難しいというのも原因のひとつです。
集団感染が発生しやすい感染症には、新型コロナウイルス、ノロウイルス、インフルエンザ、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)などがあります。空気が乾燥する冬場は原因となるウイルスや細菌が飛散しやすいため、感染が広がりやすいです。
特にMRSAは、免疫力が低下した高齢者は感染しやすく抗生物質が効きにくいので、注意が必要です。
グループホーム内で感染者が発生したときは、感染を広めないための対応が必要です。具体的にどのようなことがおこなわれるのか見ていきましょう。
入居者や職員に感染者が出たら、まずは施設管理者に伝えられます。施設管理者は協力医療機関に相談するとともに、施設内での情報共有や保健所等への報告をおこないます。さらに必要な場合は保健所の指示に従い、感染経路や濃厚接触者の特定に協力します。
なお、入居者が感染した場合は、その家族にも状況が伝えられます。
感染を広げないため、感染者の居室や感染者が触れた場所を使い捨ての手袋・エプロン・不織布マスクを着用したうえで清掃・消毒します。使用する薬剤は住宅用洗剤や消毒用エタノール、次亜塩素酸ナトリウム液で、使う場所や細菌・ウィルスの種類などにより使い分けます。
特にノロウイルスのようなアルコールの効かないウイルスに対しては、次亜塩素酸ナトリウム液を使用します。スプレーでの噴霧は吸い込むと危険なうえに確実な殺菌が難しいため、次亜塩素酸ナトリウム液で消毒したあと水拭きし、乾燥させるという手順で消毒・清掃します。
入居者が感染した場合は入院が基本ですが、症状や周囲の感染状況によっては施設内で療養する場合もあります。また、濃厚接触者は居室に隔離し、ゾーニングをしてほかの入居者と接触しないようにします。
ゾーニングとは、感染者と非感染者が接触を防ぐために、感染者や濃厚接触者、感染疑いの人がいる汚染エリア(レッドゾーン)と、感染していない人のいる清潔エリア(グリーンゾーン)に区分けすることをいいます。床や壁などにテープを貼って色分けするとともに、レッドゾーン内で働く職員は防護服を着用するなど、施設内で感染を広めないための対策をおこないます。
なお、職員は感染したら出勤しないのはもちろん、濃厚接触者となった場合も原則として自宅待機します。
ここからは、グループホームでおこなわれる感染者や濃厚接触者への対応について詳しく見ていきましょう。
通常、グループホームでは入居者が集まって食事をしますが、感染または感染が疑われる場合はそれぞれの居室内で食事します。まず食事の前は、感染の有無を問わずしっかり手洗いをします。
食器は使い捨てのものを使用するか、使用後に感染していない人のものと分けたうえで高温洗浄ができる自動食洗器で洗います。まな板などの調理器具やふきんも、洗剤で洗ったあと熱湯または次亜塩素酸ナトリウム液で消毒します。
居室内にトイレがない場合、感染または感染の疑いのある入居者とほかの人とで使用するトイレを分けます。また、便座やドアノブなどは定期的に消毒します。
施設のレイアウト上、レッドゾーン内にトイレがない場合は、ポータブルトイレで対応します。使用後のポータブルトイレは洗浄し、次亜塩素酸ナトリウム液で消毒します。
おむつ交換時は使い捨て手袋、サージカルマスク、使い捨て袖付きエプロンを着用し、使用済みおむつは感染防止対策をとったうえで処分します。
グループホームの浴室は共用のため、原則蒸しタオルなどで体を拭く清拭で対応します。使用したタオルなどは、熱水洗浄(80℃10分)して乾燥するか、次亜塩素酸ナトリウム液に漬けてから洗濯・乾燥します。
可能な限り、感染または感染の疑いのある入居者とほかの人の分を分けて洗濯します。熱水洗浄(80℃10分)して乾燥するか、白物は次亜塩素酸ナトリウム液や塩素系漂白剤、色物は酸素系漂白剤を使って殺菌洗浄します。
感染症が発生したときだけでなく、普段からの感染予防対策が大切です。どのような感染予防対策がおこなわれているかも知っておきましょう。
多くのグループホームでは感染症を持ち込んだり拡大するのを防ぐため、入居者やスタッフはもちろん、面会に来た家族や納入業者など、施設に出入りするすべての人に対してうがいや手洗いをするよう徹底しています。
新型コロナウイルスが流行したことで、感染症予防に対する換気の重要性が改めて見直されました。しかし、高齢者にとって急な温度変化は体調不良を引き起こす危険性もあります。このため換気は入居者の意見を聞いたり、体調を観察しながらおこないます。
加湿器により湿度を一定に保つことで、空気感染や飛沫感染のリスクを下げます。ただし、タンク内にレジオネラ菌が繁殖し、室内に噴霧されたことによる感染死亡例もあります。このため定期的に加湿器を清掃し、清潔に使用することも大切です。
インフルエンザなどへの感染を防ぐため、定期的に予防接種をおこないます。現在では、新型コロナウイルスの予防接種も進んでいます。
グループホーム内には、ドアノブやエレベーターのボタン、手すり、照明のスイッチなど、複数の人が接触する場所が数多くあります。このような場所では、1日に数回アルコール消毒をおこないます。
発熱や嘔吐、下痢、咳、頭痛、発疹など入居者の体調に異変を感じた場合は、申し送り時に次の時間帯のスタッフに報告するなど情報を共有します。
グループホームで生活する親や友人に面会へ行く際は、次の点に注意しましょう。
新型コロナウイルスの流行により、オンライン面会が可能なグループホームも増えています。
パソコンやタブレットなどの通信機器とWi-Fiが使える環境を用意する必要はありますが、遠方に住んでいても気軽に面会できたり、対面での面会制限がかかっている場合でもオンラインなら面会できるなどのメリットもあります。対面での面会と使い分け、うまく活用していきましょう。
入居者や職員に感染症への感染が発覚した際に、「職員間の情報共有」「施設内の消毒・清掃」が徹底しておこなわれます。
また、食事介助や排泄介助といった介助の場面でも、可能な限り感染者と非感染者を分けて対応、リネンや洗濯物も分けて洗濯する、といった対応がおこなわれています。
施設から面会を拒否されない限り、自主的に面会を控える必要はありません。ただし、マスクの着用はもちろん、面会前の消毒を徹底したり予防接種を受けた上で面会に行くなどの配慮は必要です。
昨今ではオンライン面会を導入する施設も増えているので、そういったツールを活用するのもひとつの手ではあります。
新型コロナウイルスの流行により、一昔前と比べて、より徹底して予防されています。入居者・職員のうがいや手洗いはもちろん、湿度調整や施設内の換気、予防接種など、ほとんどの施設では感染症のクラスターに対する意識が高まっています。
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