新たな研究で、中高年になってから退職した人は働き続けた人に比べて、中強度の運動が週1回未満の状態を指す「身体不活動」や心臓病のリスクが減少する可能性が示されました。
今回の研究は京都大学大学院医学研究科の研究グループによっておこなわれ、その研究結果は「International Journal of Epidemiology」という学術誌に掲載されています。
世界的に高齢化社会が進展していることを受けて、日本を含む多くの国で年金が受給できる年齢を引き上げて、高齢になっても働くように求めています。
しかし、これまで定年退職が遅れることによる健康への影響を調査した研究の数は少なく、特に退職と心臓病リスクの関連性を明らかにした研究はほとんどありませんでした。
そこで研究グループは、世界35ヵ国に住む10万人以上の中高年のデータを用いて、退職と心臓病のリスクを調べることにしたのです。
今回、研究グループは、日本を含む35ヵ国に住む50~70歳の男女10万6927人を対象に調査を実施。およそ7年かけて追跡調査をおこなった結果、退職して働くのをやめた中高年の人は働き続けた人に比べて、心臓病のリスクが2.2%低いことが明らかになりました。
また、退職した人は働き続けた人よりも、中強度の運動が週1回未満の状態を指す「身体不活動」のリスクが3%低いことも判明。特に、教育を受けた期間が長い人は身体不活動のリスクに加えて、脳卒中や肥満のリスクも低いことがわかりました。
今回の結果を受けて、研究グループは「仕事を引退した人のほうが心臓病や身体不活動のリスクが低いことがわかった。この理由として、仕事を引退すると仕事のストレスから解放されたり、運動する時間を設ける余裕をつくれたりすることが考えられる」と指摘しています。
もちろん、早期に退職できるほど経済的な余裕はないという人も少なくありません。そういう人は、1駅分の距離を歩いたりエレベーターの代わりに階段を使ったりすると良いかもしれませんね。
参考:「Retirement and cardiovascular disease: a longitudinal study in 35 countries」(International Journal of Epidemiology)
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