まずはお父様にショートステイに行きたくない理由を聞いてみましょう。もしかしたら、知らない場所に行ったり知らない人に出会うのが不安なのかもしれません。また、家と違って自由に過ごせないことや手持ち無沙汰になってしまうのが嫌なのかもしれません。
そうした理由を聞いた後、ショートステイを利用してもらわないと困る理由を率直に伝えたり、ケアマネジャーやかかりつけ医などの第三者から説得してもらってみてはどうでしょうか?
実家で父と二人暮らしをしている母が、来週、検査入院をすることになりました。父は認知症が進んで一人では生活できない状態なのでショートステイを利用してもらおうと思ったのですが、嫌がって利用をOKしてくれません。
いつもデイサービスには楽しそうに通っているのに…。どうしてショートステイは嫌がるんでしょうか?
そうですね…。お父様の思いを聞いてみないと何とも言えませんが、以下のような理由かもしれません。
もしかしたらお父様は介護をされていることに対して引け目を感じていて、邪魔者扱いされていると考えてしまっているのかもしれません。
邪魔者扱い…。そういえば、「俺は家にいない方が良いんだろ」とひねくれたことを言っていました。
確かに、母が入院している間、私の家に連れてくれば良いんでしょうけど、私は義理の両親と同居しているので、そういうわけにもいかなくて…。
そうだったんですね。そういう事情もご存知でしょうから、もしかしたら菅野さんのお宅に行けない寂しさも感じているのかもしれませんね。
ショートステイが嫌なのではなく、知らない所で生活するのに不安を感じている可能性もあります。ご高齢になると新しい環境に慣れること自体が大きなストレスになる傾向があります。そのため、例え短い期間でも見知らぬ場所に宿泊するのが怖くてショートステイを嫌がっているのかもしれません。
ちなみに、内閣府の調査で「自宅で介護を受けたい理由」をまとめたものがあります。この結果も、「住み慣れた自宅で生活を続けたいから」という回答が圧倒的。多くの人が知らない場所で生活するのに不安を感じていることがわかりますね。
ご家族から介護を受けるのは良くても、見知らぬ介護職員さんから介護を受けるのには抵抗を感じる人もいます。
えぇ?私や母より介護のプロの手を借りた方が安心だと思うのですが…。
おっしゃるとおりだと思います。ただ、見知らぬ他人の手を借りることに「みっともない」と感じる人もいるんですね。
お父様はデイサービスを利用しているとのことですから、介護職員のサポートを受けることに慣れているかもしれません。ですが、泊まりとなると不安を感じるのかもしれませんね。
ショートステイでは食事や入浴などの時間がある程度、決められています。自分の好きなタイミングで生活できる自宅と違って、他の利用者さんにも気を使わないといけません。そういう点でショートステイに窮屈なイメージがあるのかもしれません。
それにショートステイでは身の回りのことを職員さんがやってくれます。手持ち無沙汰になって、時間が空いてしまうのが嫌だと考えているのかもしれませんね。
では、どうしたら父はショートステイを利用してくれるんでしょうか?
まずは、お父様がショートステイを嫌がる理由を率直に聞いてみましょう。
先ほど挙げた理由以外の理由で嫌がっているのかもしれませんから。お父様が嫌がる理由をはっきりさせて、その不安点を解消していくようにしていきましょう。
確かに。今まで「行きたくない」としか言わないので、どうして父が頑なにショートステイに行きたがらないのかわかりません。きちんと聞いてみないとですね…。
それに、すでにされているかもしれませんが、ショートステイを利用する理由を素直に伝えることも大切です。
お母様の身体のことや菅野さんの家庭の事情もふまえて、「私が困るからショートステイに行ってほしい」とお願いしてみるのも良いかもしれません。
私が困るからショートステイに行ってほしい、と言うんですか?
はい。実際、それは事実ですし、お父様が一人で生活するのを心配している気持ちが伝われば、ショートステイに行ってくれるかもしれません。お父様のプライドを傷つけないような言い方で伝えてくださいね。
確かに…。今まで「お父さんは一人じゃ何もできないでしょ」と言ってしまっていたのが良くなかったのかもしれません。
お父様の心情によっては、これだけでは説得が難しいかもしれません。そういうときは、以下のような方法も試してみてください。
ショートステイとひとくちに言っても、実際のサービスや雰囲気は異なります。レクリエーションに力を入れている施設もあればそうでない施設もありますし、お父様に合いそうなショートステイを選びましょう。
もちろん、他の利用者さんや職員さんの雰囲気も大切。できれば事前にショートステイの施設を見学しておくのがおすすめです。
例えば、「他の利用者と馴染めなかったらどうしよう」「やることがない」という理由でショートステイを嫌がっている場合、ショートステイ側に相談することで解決できることがあります。
例えば、座席を気の合いそうな利用者の近くにしてもらったり、ショートステイの中での役割を持てるように対応してくれることも。ご高齢者がショートステイを嫌がることは珍しいことではないので、気軽に相談してみてください。
珍しいことではないんですね。父をお願いする立場なのに、父が嫌がっていて申し訳なかったんです。施設に相談してみようかな。
どうしても首を縦に振ってくれない場合は、ケアマネジャーさんやかかりつけ医からショートステイを利用するように言ってもらいましょう。
ご家族などの身近な人の言葉は耳を貸さなくても、専門家や第三者の言うことだったら素直に聞き入れてくれることがあります。身近な専門家である、ケアマネジャーさんや医師を頼ってみてください。
いろいろと対策を教えてもらいましたが、それでも父がショートステイに行ってくれるのか心配です。やっぱり、無理矢理にでも連れて行くしかないんじゃないかな…。
それはおすすめしません。というのも、ショートステイの利用はおそらく今回だけではないはず。お母様の体調のことを考えて、定期的な利用をおすすめします。
となると、今回、無理矢理ショートステイに連れて行って悪い印象を与えてしまうと、今後が大変です。理想はお父様が納得したうえでショートステイを利用すること。強い口調で無理に説得することもなるべくやめてくださいね。
本当は、ショートステイを使わずに私の家で父の面倒をみるか、私が実家に帰れれば良いんですけど…。父がショートステイを嫌がる様子を見ていると、どうしても「私が介護しないといけないのかな」と思ってしまって。
もちろん、菅野さんにお父様を介護する余裕があるのであればその方が良いとは思います。ただ、お話を聞く限り、それは難しいのではないでしょうか?菅野さんが無理をして倒れてしまっては元も子もありませんよ。
ショートステイは、一時的に介護ができないときに利用するだけではなく、介護をする人の「介護休み」という意味合いでも利用されるサービスです。在宅介護は負担が大きくなりがちですから、お母様や菅野さんの体調にも気をつけながら介護をしてくださいね。
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