愛知県豊橋市には、いくら待ってもバスの来ないバス停があります。
これは認知症カフェの一角に作られたバス停で、帰宅願望のある認知症の人が本物のバス停でバスに乗って行ってしまうことを防ぐもの。「家に帰りたい」という認知症の高齢者がこのバス停で落ち着くまで過ごせるようにと作られました。
豊橋市にある「アンキカフェ」は、認知症の人やその家族、子育て世代など幅広い地域の人が集う「3世代交流カフェ」です。
カフェの名前の「アンキ」とは三河弁で「安心」「ほっとする」という意味があるのだそう。その名の通り、仕事体験をする「子ども店長」がいたり、認知症のセミナーを開催したりと地域住民が”ほっとする”集いの場となっています。
このカフェの一角にあるのが「バスの来ないバス停」。「ぽかぽかの森」と書かれたバス停には時刻表も貼ってあり本物のバス停のようですが、バスは来ません。
なぜかというと、これは認知症の人のためのバス停だから。認知症の人がバスに乗ろうとしたときに「一旦このバス停で待ってみましょう」と促して、落ち着くまで過ごせるようにと作られたものなのです。
認知症の人がバスに乗ろうとするときは「家に帰りたい」などの目的があるそう。しかし、1人で本物のバスに乗ってしまうと行方不明になることもあります。
そこでこのバス停でしばらく待つことで、自分が何をしたかったのかを忘れてしまい、またおだやかな気持ちでカフェで過ごせるとのことです。
ちなみにこのバス停の看板は、かつて地元の鉄道会社で使われていた本物のバス停。鉄道会社が譲渡してくれたおかげで、このバス停が実現できたそうです。
認知症の症状のひとつに「帰宅願望」があります。「自宅に帰りたい」「故郷に帰りたい」などを訴えることです。
これ自体は悪いことではありませんが、1人で帰宅させるのは危険だったり、その家がすでに取り壊されていて帰れないということもあります。
しかし帰れないことを説明しても、認知症の人がなかなか理解できないことも。それどころか、帰ることで頭がいっぱいになって気持ちが余計に不安定になるケースもあります。
そうしたときに、この「バスの来ないバス停」のような一旦落ち着ける場所があると良いですよね。
こうした対応を「嘘のバス停でごまかすなんて」と思う人もいるかもしれません。しかしこの方法は、認知症の人の気持ちを尊重しつつ身の安全も守れるとても良い解決策ではないでしょうか。
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