介護離職で介護うつに!?会社を辞める前に両立支援制度を使い倒せ

介護離職で介護うつに!?会社を辞める前に両立支援制度を使い倒せ

更新日 2023/10/27

高齢化が進むなか、介護を理由に仕事を辞める「介護離職」が増加傾向にあります。そこで厚生労働省は、介護離職防止のための新しい支援策について、10月12日の審議会で議論を開始しました。

介護と仕事の両立ができないために離職する「介護離職」。実は、介護離職をすると介護者の負担が減るどころか増えることが調査でわかっています。

現在の「育児・介護休業法」では、介護休業や短時間勤務などの支援制度の設置が企業に義務付けられています。しかし、職場の理解が進んでおらず、利用率は低いのが実情なのです。

「介護をしながら仕事をするのが当たり前」の社会になるのは目前です。自分の家族が介護が必要になったときに、「職場の理解が得られない」という状況にならないために、今から介護と仕事の両立について理解しておきましょう。

介護離職防止に新制度か

10月12日、厚生労働省は介護離職を防ぐための新しい支援制度について、議論を開始しました。

介護離職とは、介護を理由に仕事を退職すること。介護を必要とする人の家族が、仕事と在宅介護の両立が難しくなり、本業を退職してしまうのが主なパターンです。

そうした介護離職を防ぐために、「育児・介護休業法」の改正を厚生労働省が審議会で協議。参加した有識者からは、「介護休業の取得は上司の理解が必要なので、中間管理職向けの研修が必要」といった意見が出ました。

厚生労働省は、介護離職を防ぐための支援制度について議論を続け、来年の通常国会に改正案の提出を目指しています。

介護離職者数、再び増加傾向に

総務省の「就業構造基本調査」によると、介護離職をする人は増加傾向にあります。

参考:「令和4年就業構造基本調査 結果の要約」(総務省)

2007年に、14.5万人だった介護離職者数は、2021年で10.1万人、2017年で9.9万人と減少したものの、昨年の調査では10.6万人に増加しているのです。

介護離職者数が増えたのは、2007年以降、介護サービスの認知度が上がって利用する人が増えたものの、ここ数年でそもそも家族に介護が必要になる人が増加したことが理由と考えられます。

さらに、新型コロナウイルスの拡大で在宅介護サービス事業所の休業が相次いだことで介護サービスが利用できず、「介護を続けるには仕事を辞めるしかない」と追い込まれてしまった人が増えたことも原因と言えるでしょう。

実は介護離職をしても楽にならない

「介護と仕事の両立は、体力的にも精神的にも厳しい」そう考えて、多くの人は退職を決意します。

しかし、介護離職しても介護者の負担が減らないことが調査でわかっています。

参考:「仕事と介護の両立に関する労働者アンケート調査」(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社)

調査結果によると、介護離職をすると、離職をする前よりも精神面と経済面の負担が増加。こうした結果になったのは、介護離職によって生活が”介護一色”になってしまうことが考えられます。

特に精神面の負担については、それまでは職場の同僚などと関わる時間がありますが、離職するとそうした社会的なつながりが大きく減ることが負担増加の要因でしょう。退職しなければ、職場である意味”気分転換”ができたはずが、介護離職してしまうと、そうした気分転換の場を確保するのが一気に難しくなるためです。

ずっと介護のことを考えて気持ちを張り詰め続けた結果、介護が原因のうつ病「介護うつ」になってしまうかもしれません。

また当然ながら、離職すると収入が減少するため、経済面の負担も大きくなります。

こうしたことから、介護離職をしても必ず負担が減るとは言えません。そのため、介護休業などの支援制度を使いながら仕事を続けることを、政府としても推奨しているのです。

介護休業・支援制度の利用拡大を

働きながら介護をする人の支援のひとつに、「介護休業」があります。介護休業は、労働者の家族が介護が必要となったときに、介護と仕事の両立できる体制を整えるために、仕事を休める制度です。

しかし、この制度の利用率は低いのが実情。総務省の2022年の調査によると、介護休業や介護休暇などを利用した人は、11.5%にとどまっています。

このような結果になってしまったのは、職場の支援制度への理解不足が原因と考えられます。

参考:「平成24(2012)年度仕事と介護の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書」(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社)

この調査によると、介護と両立するための調整が難しい職場だったために離職せざるを得なかったということがわかります。

逆に言えば、支援制度についての理解があり、仕事の調整ができる職場であれば離職をしなくて済んだ、ということが言えます。

では、介護をしながら働く人への支援制度にはどんなものがあるのでしょうか。

介護と仕事の両立支援制度

「育児・介護休業法」では、次の6つの介護と仕事を両立するための支援制度が定められています。

  • 介護休業
  • 介護休暇
  • 短時間勤務などの措置
  • 所定外労働の制限
  • 時間外労働の制限
  • 深夜業の制限

なかでも介護休業はまとまった休業を取れるため、ぜひ利用したい制度。介護休業は、介護が必要な家族1人につき合計93日、最大3回に分けて取得できます。

パートやアルバイトなど、雇用期間の定めがあっても介護休業は取得可能。契約期間などの条件があるため、パート・アルバイトで介護休業を利用したい場合は、厚生労働省のホームページで詳細を確認しておきましょう。

また、以下の4つについては、いずれか1つ以上の制度を設置することが企業に義務付けられています。

  • 短時間勤務制度
  • フレックスタイム制度
  • 時差出勤制度
  • 介護費用の助成措置

「家族の介護が始まりそう」と感じたら、こうした制度も活用できるか、会社に確認をしましょう。

介護と仕事の両立が進むには、支援制度の理解と認知度の向上が急務。職場全体での理解も必要であるため、政府によるさらなる啓蒙活動に加えて、企業内でのPRも重要です。

高齢化が進む日本において、「働きながら介護をするのが当たり前」という時代はそう遠いものではありません。一人ひとりが介護と仕事の両立に理解を示すことで、介護する人もしていない人も働きやすい職場になるのではないでしょうか。

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