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新たな研究で、高齢者がドラムを叩いているときの腕の角度で、認知症の進行度を測れる可能性が示されました。 この研究は東京大学先端科学技術研究センターの研究グループによっておこなわれ、研究結果は「Frontiers in Rehabilitation Sciences」という学術誌に掲載されています。 評価方法のバリエーションを増やすことが重要 認知症の人が残された能力を最大限発揮して日々を過ごしていくためには、できる限り早い段階で認知症を発見し、適切なケアをおこなっていくことが重要です。 簡易的に認知症かどうかを調べるために、現在、広くおこなわれている方法として、ペーパーテスト方式でおこなう認知機能検査が挙げられます。しかし、認知機能の低下が進んでいる人ほど検査の必要性が理解できず検査を拒否してしまう傾向があります。 また、対象者に視覚や聴覚に障害があると、正しい得点が得られないこともあります。 研究グループは、以上のような課題を解決するためには、評価方法のバリエーションを増やすことが重要だと指摘しました。 ドラムを叩く角度と認知機能に関連性あり そこで今回は、特別養護老人ホームに入居している16人の高齢者(平均年齢86歳)を対象に調査を実施。対象者の手首に、動きを感知するセンサーが搭載された腕時計型の装置を装着して、ドラム演奏中における腕の振りの速さの平均値と腕を上げる角度の平均値を調べました。 その結果、認知機能の低下が進んでいる人ほど、ドラムを叩く腕の角度が上がっていないことが判明。一方、認知症の重症度とドラムを叩く速さは関係がないことも明らかになりました。 以上の結果を受けて、研究グループは「ドラム演奏時の腕の角度が認知機能と関連していることがわかった。また、ドラム演奏に必要な動きは認知症がある人や力が衰えた人でもできるため、この手法が広く普及すれば、認知症の早期発見や重症化の抑制など、認知症治療において大きな貢献が期待できる」と述べました。 認知症を患っている人の中には、自分ができないことを認めたくなくて認知テストなどを受けないという人も少なくありません。しかし、今回のドラムを演奏してもらうという方法なら楽しんでできるため、自分から進んでやってくれるかもしれませんね。 参考:「ドラム演奏で簡単に認知症重症度をスクリーニング ―認知症があっても「できること」で機能評価―」(東京大学先端科学技術研究センター)
2023/06/02
お笑い芸人のにしおかすみこさんが、認知症になった母や家族と過ごす毎日を描いた『ポンコツ一家』が講談社ら書籍化されました。 『ポンコツ一家』は元々講談社が運営するwebサイト「FRaU」で連載されていたものです。 『ポンコツ一家』で描かれた母 ポンコツ一家の帯にはこう書かれています。 『家族紹介。母、80歳、認知症。姉、47歳、ダウン症。父、81歳、酔っ払い。ついでに私は元SMの一発屋の女芸人。45歳。独身、行き遅れ。全員ポンコツである。』 にしおかさんは「どんな状況や病気だってポンコツな人はいない」と前置きしながら、愛を込めて自分も含めた家族のことをポンコツと呼ぶことにしたとしています。 にしおかさんによると、一年ぶりに実家に帰ると、家はほこりやゴミで溢れていたそう。母を家の中で見つけるも、掃除をまったくしないくらい無気力になっていたと言います。 見かねたにしおかさんが掃除をしようとすると、「余計なことをするんじゃないよ!偉そうに、何様なんだよ」と激怒されたそうです。にしおかさんが言い返すと今度は「もう嫌だ!頭かち割って死んでやる」と言い放ったのです。 これを聞いたにしおかさんは、母の様子がおかしいことを感じ、一緒に住むことを決めたそうです。 母親を襲った認知症について 帯にもあるように、にしおかさんの母親は認知症になっていたのでした。 無気力になって掃除など身の回りのことをしなくなる、急に感情のコントロールができなくなって怒り出すなどは、認知症に典型的な症状です。 にしおかさんのように、認知症になった家族と同居してともに生活する人も少なくないでしょう。大変なことも多い中で、こういった体験記があると励まされそうですね。
2023/01/26
嗅覚測定を受けたことのある人はいるでしょうか? 匂いの検査はとても重要で、嗅覚の異常で認知症などさまざまな病気の兆候が分かると言われています。しかし現在、嗅覚の検査はあまり身近なものではありませんよね。今日は、将来的に嗅覚の検査を簡単におこなえるようになるかもしれない、そんな話題をお伝えします。 簡単に匂いを測定できる装置 ソニーは今月5日、人間の嗅覚を簡単に測定できる「におい掲示装置」を開発したと発表。来年の春から企業や研究者向けに売り出します。開発目的としては、手軽な嗅覚測定から認知症などにつながる兆候も早期に察知できる装置にすることを目指すとしています。 装置の仕組み 使い方は、装置にある穴に鼻を近づけて使用します。匂いのもととなる臭素(しゅうそ)を手軽に制御できる仕組みを搭載し、40種類の匂いを出すことができるそうです。 さらに装置の中は密閉されているので、強い匂いであっても外に漏らさず封じ込めます。香りの強さも調節でき、使った後は中の残った匂いをすぐ除去することが可能です。 ソニーによると、認知症やパーキンソン病の場合、発症する前から嗅覚の機能が低下する傾向があり、嗅覚を正しく測定できれば、脳の知能低下が早く発見できる可能性があるとのことです。 従来の検査の状況 嗅覚の検査は現在もおこなわれていますが、複数の臭素を準備をするのに手間がかかる、匂い漏れを防ぐために、別のスペースや装置が必要といった理由で視力検査等に比べると 一般的ではないのが現状です。 現状と今後について 当面は医療機器ではなく、研究用途として売り出される予定で推定価格は230万円前後です。今後、5分から10分で8段階ほどで測定できるようにする方針で、視力や聴力などと同様に健康診断などで一般的に取り入れられるようにしたいとしています。 色々なところで使えるようになるかも? 嗅覚異常が認知症のサインだということは、あまり知られていませんが、これからひとつの常識になるかもしれないですね。 また、今回の「におい提示装置」についてソニーの新規ビジネス・技術開発本部の櫨本修副本部長は、「将来はエンタメ領域での新体験創出も目指したい」と話しているので、検査以外の展開にも期待したいと思います。
2022/10/14
1994年に「国際アルツハイマー病協会」が世界保健機関(WHO)と共同で毎年9月21日を「世界アルツハイマーデー」と制定しました。この日を中心に認知症の啓蒙活動をおこなっています。また、毎年9月を「世界アルツハイマー月間」と定め、さまざまな取り組みに力を入れています。 日本でも、公益社団法人「認知症の人と家族の会」がポスターやリーフレットを作成し、認知症への理解を呼びかける活動をおこなっています。 各庁舎にシンボルが浮かび上がる 厚生労働省と認知症施策推進の関係省庁では、庁舎の窓ガラスに認知症サポーターのシンボルである「オレンジリング」が浮かび上がりました。これは「オレンジリングドレスアップ」という取り組みの一環です。 オレンジリングとは、認知症について正しく理解し認知症の人や家族をあたたかく見守る支援者である「認知症サポーター」の目印。オレンジ色のリングは認知症の理解者のシンボルなのです。 厚生労働省では、9月20日~22日までオレンジリングドレスアップがおこなわれ、撮影会も実施されました。 私たちにできることは? 世界アルツハイマーデー・月間は、認知症に関わるすべての人のものです。この機会を利用し、認知症の理解を深め正しい知識を学んでみてください。 また、介護家族と本人への支援を考え、認知症になっても安心して暮らせる社会づくりに参加する…。難しいようですが、個々に認知症への考え方や意識を変えるだけで認知症の人にとっての環境はだいぶ変わってくるのではないでしょうか? 世界アルツハイマーデーのイベントや講演会に参加する、ポスターに目を止めたり、リーフレットを読んでみる…できることは、まだまだありそうですね。 きっかけは世界アルツハイマーデー・月間から、そうして小規模なボランティアや地域の活動に参加するなど、小さなことから認知症の方が安心して暮らせる社会に関心を持つ人が増えたら良いですね。
2022/09/29
毎年9月21日は、国際アルツハイマー病協会と世界保健機関(WHO)が共同で「世界アルツハイマーデー」と制定しています。9月を「世界アルツハイマー月間」と定め、世界中で様々な取り組みがおこなわれます。 今回は、世界アルツハイマー月間に合わせて日本各地でおこなわれているライトアップのイベントを紹介します。 奈良県奈良市から 奈良市役所本庁舎では、18日からオレンジ色のライトアップが実施。この取り組みは、公益社団法人「認知症の人と家族の会」県支部によるものです。 点灯は、22日までの午後6時〜9時。21日午後7時からは、動画投稿サイト「ユーチューブ」で全国各地のライトアップの様子がライブ配信されました。 長野県伊那市から 伊那市高遠町では、高遠ダムがオレンジ色にライトアップされ、温かみのある光が周囲を照らし出しました。 高遠ダムのライトアップは昨年から実施され、3つのゲートそれぞれにオレンジ色のライトを当てて演出。点灯は午後6時半〜同10時にかけておこなわれました。 高遠ダム管理所の担当者は、「認知症を正しく知って理解を深めてもらうことで、偏見なく誰もが仲良く暮らせることにつながってほしい」と思いを寄せています。 栃木県足利市から 足利市では、福居町のトチセン(旧足利織物)赤レンガ捺染(なっせん)工場、サラン工場、史跡足利学校、足利織姫(おりひめ)神社の3ヵ所でオレンジ色のライトアップがおこなわれました。 活動に取り組む「RUN伴(とも)+足利・佐野実行委員会」が中心となり、2020年からライトアップをおこなっています。 同会の代表、柳義則(やなぎよしのり)さん(45)は「ライトアップを見て、誰にでも起こり得る認知症について少しでも考えてほしい」と話しています。 ライトアップは日没から。足利学校は午後9時まで、トチセンと織姫神社は午前0時までおこなわれました。 各地のライトアップイベントを通して、認知症への理解が一段と深まることが期待されますね。
2022/09/28
全国有料老人ホーム協会が敬老の日に向けて毎年公募している有老協・シルバー川柳の入選作品が発表されました。今年で22回を数える今回は、14639句が寄せられました。 有老協・シルバー川柳とは、 同協会が2001年から公募を開始しました。題材としては高齢者の日常や高齢化社会に関するものであれば一切制限を設けず、応募資格も一切ないためシニア層以外の幅広い年代から川柳が集まります。ちなみに、今回の応募者の最年少は9歳、最年長は107歳でした。 男女比率と傾向 応募者の男女比は男性が63.3%、女性36.3%と昨年に比べ、男性が多い結果となったそうです。題材の傾向として、コロナ関連や定番の「物忘れ」などのワードが目立ちながらも野球で活躍する大谷翔平選手の「二刀流」や「マイクロチップ」など、ニュースやエンタメなどで印象的なワードや時事ネタを盛り込んだ句も見受けられました。 「入選作一部抜粋」 実は俺点滴、湿布の二刀流 誤送金待てど暮せど来ぬわが家 犬猫にマイクロチップ次は俺お年玉持続可能か聞くな孫戒名にキラキラネーム欲しい父名所よりトイレはどこだバスツアー冬の日の一番風呂は命がけ入れ歯どこ冷蔵庫です冷えてます弟でひとり薄毛の変異株黙食と思っていたら寝てた祖父 銭湯で全裸の祖父がマスクつけ このように共感でき、思わず笑ってしまうようなバラエティー豊かな句が多くありました。 川柳の魅力 川柳は、生活の中で何気なく感じているものを切り取って短い文字にまとめ共有できるもの。それを色々な人が見ることで「そうそうあるよね」と共感したり、「自分と同じような悩みを持っている人がいるな」と安心する、または「こんな事もあるのか」と新しい発見があったり、短い文字数の中でたくさんのことを読み取れることが魅力ですよね。 来年はどんな川柳が見られるのか楽しみですね。
2022/09/15
大切な家族が認知症になってしまったとき、一番悲しいのは自分たちとの思い出を忘れていくことではないでしょうか。 楽しかった思い出、悲しみや苦しみを共に乗り越えた思い出、さらには日常生活に必要な記憶も消えていく…。こちらの気持ちまで沈んでしまいそうになりますよね。 そんなとき、気持ちを前向きにしてくれる何かがあれば、と思う方は多いことでしょう。今回は心の休息のお供にできる素敵な絵本を紹介します。 イギリス発、あたたかい家族愛の物語 小学館から、絵本「わすれないでね ずっと だいすき」が発売されました。この本は編集者の実体験に基づく、イギリス発のおばあちゃんと孫の愛の物語です。 私たちにとって一番大切なことを教えてくれる、気持ちが前向きになる一冊となっています。 編集者の切なく優しい願い 「わすれないでね ずっと だいすき」はイギリスの翻訳絵本です。「同じ悲しみのなかにいる人たちの力になることを願って」と、父親が認知症になり思い悩んでいた編集者の発案で生まれました。 孫のことを忘れてしまったおばあちゃんと「ぼく」のやり取りには、認知症の人への寄り添い方のヒントが隠されています。 日本語訳版の監修は、約15万部のヒット作「認知症世界の歩き方」(ライツ社)の著者である筧裕介氏(慶應義塾大学院特任教授・認知症未来共創ハブ運営委員)です。 筧氏は「認知症のある方ご本人と周囲の方との、自然で素敵な関係性が描かれた、魅力的な絵本です。お子さんと両親、祖父母など三世帯で共に読むことをお勧めします。」とコメントしています。 おばあちゃん、おじいちゃんのことが大好きなご家族はもちろん、高齢の方との向き合い方に悩んでいる方、お子さんに認知症のことを知ってもらいたい親御さんにぜひ手に取ってもらいたい、深くあたたかい本です。 9月のアルツハイマー月間、そして敬老の日に家族でこの絵本を読んで、優しい気持ちに包まれてみるのもいいかもしれませんね。
2022/09/12
介護施設への入居について、地域に特化した専門相談員が電話・WEB・対面などさまざまな方法でアドバイス。東証プライム上場の鎌倉新書の100%子会社である株式会社エイジプラスが運営する信頼のサービスです。