「認知症だから」という理由で、デイサービスの利用を断られることはまずありません。というのも、「正当な理由なしに利用を断ってはいけない」と決められているからです。
ただ、認知症の影響で、ほかのご利用者や職員さんに暴力を振るったり、暴言を吐くなどの行動があれば。断られてしまうかもしれません。加えて、認知症に関係なくデイサービスの定員をオーバーしてしまう場合なども断られることがあります。
認知症の父をデイサービスに通わせようと思っています。が、同じように認知症のお母さんを介護している知人から、お母さんがデイサービスの利用を断られたと聞きました。
認知症であることを理由に、デイサービスの利用を断られることってあるんでしょうか?
うーん、「認知症だから」という理由だけで断られることは基本的にはないですね。というのも「正当な理由なくサービスの提供を拒んではならない」と厚生労働省が定めているからです。
どのような理由でデイサービスに断られたかご存知ですか?
そこまではちゃんと聞きませんでした。デイサービスを断られたと聞いてショックだったので…。
ちなみに、「正当な理由なくサービスの提供を拒んではならない」ということは、正当な理由があれば断れるということですよね?どんな理由で断られてしまうんでしょうか?
厚生労働省が正当な理由について、大まかな指標が示されています。断られてしまう理由について、お伝えしますね。
厚生労働省は、デイサービスの利用を断る正当な理由として、以下の3点を挙げています。
引用元:厚生労働省 老健局「介護保険最新情報 Vol.920 令和3年2月8日」
- 当該事業所の現員からは利用申込に応じられない場合
- 利用申込者の居住地が当該事業所の通常の事業の実施地域外である場合
- その他利用申込者に対し自ら適切な介護サービスを提供することが困難な場合
認知症とは関係のないものもありますが、さまざまな理由を把握していただきたいので、順番にお話ししていきますね。
「当該事業所の現員からは利用申込に応じられない場合」とわかりにくい表現をしていますが、つまりは「定員オーバー」の場合のことです。
ちなみに「現員」とは、「現在の人員」のこと。要するに「現在の人員からこれ以上増えたら対応できないと考えられる場合」は利用を断っても良い、ということですね。
うーん、安全のことを考えたら、定員オーバーならしょうがないですね。
「利用申込者の居住地が当該事業所の通常の事業の実施地域外である場合」というのも、ややこしい表現をしていますが、「サービス対象地域外の人は断っても良い」ということです。
デイサービスでは、送迎の都合などでご利用者の居住地域を限定しています。そのため、その送迎エリアから外れているご利用者の利用を断るのは、正当な理由に当てはまります。
デイサービスは、利用者の家を順番に回って送迎してくれるんでしたっけ。それなら住んでいる地域を限定しているのはしょうがないことですよね。
認知症の症状が理由で利用を断られた場合、この「その他利用申込者に対し自ら適切な介護サービスを提供することが困難な場合」が当てはまるかもしれません。
どういうことですか?
「その他利用申込者に対し自ら適切な介護サービスを提供することが困難な場合」とは、簡単に言えば「その利用者に合った介護サービスを提供できない場合」ということですね。
例えば、認知症の症状にデイサービス側が対応できないとき。認知症の影響で、帰宅願望が強くなってしまったり、不安感が強くて徘徊してしまったり…。
利用開始する前に大まかな認知症の症状の聞き取りがあるので、その際にデイサービス側で対応できないと判断すると利用を断られることがあります。
なるほど…。父も落ち着かないときは家のなかをうろうろすることがあります。となると、断られてしまうんでしょうか?
いえいえ、施設によってはさまざまな認知症の症状を持つ方を受け入れていることもあります。どういった状態であれば利用できるのかは、そのデイサービスごとに異なりますね。
ただ、ほかのご利用者や職員さんへの暴力や暴言がある方の場合、かなり高い確率で利用を断られてしまうでしょう。
そうなんですね!父は暴力を振るったり暴言を吐く人ではないですが…。
そういえば、知人のお母さんは暴言を吐くことがよくあるそうです。気持ちが高ぶっていると手が出ることもあると言っていました。
もしかしたら、暴力や暴言を理由にデイサービスの利用を断られたのかもしれませんね。やはり、デイサービスとしてもほかのご利用者や職員に危害を与える可能性のある方を受け入れるわけにはいきませんから。
認知症の方が症状を理由にデイサービスの利用を断られる場合、介護サービスの利用よりも治療を優先した方が良いケースが多いんです。
それってどういうことですか?
介護のプロであるデイサービスから利用を断られたということは、認知症の症状が介護職員では手に負えない状態である可能性が高いということです。
つまり、介護で認知症ケアをするのではなく、医療で認知症治療をするほど状況が深刻ということ。通院や入院による治療を優先した方が良い段階とも言えます。
なるほど…。認知症がひどい状態ならまずは治療を、ということですね。
ちなみに、認知症の治療ってどんなことをするんですか?
認知症の治療方法には、以下のようなものがあります。
薬物療法とは、その名の通り、薬を使った治療方法のことです。
実は、認知症を完治させる薬はまだ存在しません。そのため、認知症治療に使われているのは症状を抑える薬です。認知症の症状を一時的に抑えたり緩和したりすることを目的としています。
認知症の薬は父も使っています。
ちなみに、認知症治療に使われている薬にはいくつかの種類があります。現在、認知症の薬は以下の4種類です。
作業療法って何ですか?
運動療法は、身体を動かすことで認知症の症状を抑える治療法です。例えば、体操や関節の動きを良くするストレッチやリハビリ、筋力トレーニングもおこないます。
「生活機能回復訓練」?耳慣れない言葉です。
日常の中でおこなう動作をリハビリすることで、認知機能の低下を抑制することが目的の治療法です。
認知機能が衰えてくると、歯磨きやトイレでのズボンの上げ下げ、髪をとかす、といった何気ない動作ができなくなることがあります。そうなると、日常的に介助が必要になりますよね。
そこで生活機能回復訓練を通して日常動作のトレーニングをして、自分で身の回りのことができるようになることを目的としています。
回想法は、認知症の方の記憶の特徴を生かした治療法。認知症の人は「最近の出来事を忘れやすい」一方で、「昔の記憶は忘れにくい」という特徴があります。
そこで、その方の子どもの頃の写真や、思い出の品、当時流行した音楽などを使って昔のことを思い出してもらい、思い出を語ってもらうんです。
そうすることで脳が活性化して、認知症の症状が緩和できるそうです。
へー、そんな治療法があるんですね。おもしろそう!
もし、一般的なデイサービスの利用を断られてしまっても、「認知症デイサービス」であれば受け入れてもらえるかもしれません。
「認知症デイサービス」?
名前の通り、認知症の方のためのデイサービスです。食事や入浴、機能訓練、レクリエーションなどをおこなうのは、一般的なデイサービスと共通。ですが、加えて認知症の方に合った作業療法や運動などもおこないます。
さらに、認知症デイサービスの定員は最大12名。認知症の方は、人が多い環境や慣れない人とのコミュニケーションが苦手な傾向があるので、それに配慮して利用者数を制限しているのです。
なるほど。認知症の人に配慮したサービスや体制が整っているんですね。
そうなんです。それに、もちろん認知症の方が利用しているサービスですから、職員も認知症ケアの経験が豊富な人ばかり。なかには認知症ケアに関する資格を取得している職員もいるので、安心して通えるのが魅力です。
それはうれしいですね!認知症デイサービス、利用しようかな。
デイサービスと一口に言っても、認知症デイサービスのように認知症ケアに特化していたり、身体機能を回復するリハビリに注力していたりと、さまざまな特徴があります。
お父様に合ったデイサービスを見つけてくださいね。
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