例えば、排泄のタイミングを把握して、トイレの声掛けをしてみましょう。「食事の前」「寝る前」など、トイレに行くタイミングで「トイレに行っておこうよ」と声をかけるだけでも、粗相の回数が減るかもしれません。
ただ、トイレはとてもデリケートな話題ですから、声掛けやトイレの介助を嫌がる可能性が十分あります。そのため、嫌がられたら無理をせずに見守ることも大切ですよ。
最近、高齢の母がトイレに間に合わないことが増えたようで、母がトイレを使うと、床が尿で濡れているんです。
尿で汚れた床を掃除するのも嫌ですし、何より臭いがこもるようになってしまって…。床だけでなく、ズボンも濡らしているようで、服も臭うんです。
母が粗相しないような対策ってありますか?
尿で汚れると臭いますから、本当に大変ですよね。粗相を予防するには、以下のような方法があります。
まずやっていただきたいのが、トイレの声掛けです。お母様の毎日の排泄のタイミングを把握して、タイミングに合わせて少し早めに声をかけるんです。
なるほど…。例えば、どんな風に声掛けをすれば良いんですか?
「ご飯の前にトイレに行っておいたら?」「出かけるからトイレに行っておこうよ。私も後で行くから」など、気軽な言い方がおすすめです。
「トイレに行っておかないと、また漏らしちゃうよ」といった、自尊心を傷つけるような言い方は控えてくださいね。
ズボンや下着などを着脱しやすいものに変えるのもおすすめです。高齢になると、指先の動きが鈍くなってズボンや下着の脱ぎ着が難しくなることが多いです。
そのため、チャックとホックやボタンのズボンの場合はウエストがゴムのものを、締めつけの強いガードルのような下着の場合は普通の布パンツに変えましょう。
お母様のお部屋にポータブルトイレを置くのはどうでしょうか?
ポータブルトイレって何ですか?
ポータブルトイレは、任意の場所に設置できる簡易トイレです。歩行が不安定などの理由でトイレまで行くのに時間がかかる方におすすめです。
特に、夜にトイレに行く場合、足元が暗かったり、寝ぼけて歩行がより不安定になることが多いので、夜間に使うために設置している方も多いですよ。
オムツですか?まだ母には早い気がします。オムツ交換するのも大変そうだし…。
実は、パンツタイプの紙おむつがあるんです。普通の布パンツを使うのと同じ感覚で使用できます。
また、尿漏れ用のパッドよりも大きな尿とりパッドも売られています。毎回、紙パンツを取り替えるのは経済的な負担が大きいので、中にパッドを入れている人が多いですね。
1~2回分の尿なら吸収できますから、トイレを汚してしまう心配がかなり減ると思いますよ。
へー!そんな便利な物があるんですね。買ってみようかな。でも、母は「オムツ」と言うととても嫌がって使わない気がします…。
はじめは紙パンツを使うのに抵抗があると思います。
そういうときは、普段使っている布パンツの中に尿とりパッドを入れて使うのも手。これなら紙パンツを使うよりも抵抗が少ないと思います。
おむつ外しについては、以下のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。
スムーズに排泄ができるように、トイレの中の環境を整えることも大切です。
もし、トイレのマットを尿で濡らしてしまうのであれば、防水タイプに変えるのも良いでしょう。
それは良いですね!トイレマットに防水タイプがあるなんて知りませんでした。
それと、足元に物を置かないようにするのも、スムーズにトイレに座れるようになるポイント。トイレットペーパーのストックや掃除用具を室内に置いておくことが多いと思いますが、それが歩行の妨げになっている可能性があります。
なので、足元に物を置かないようにしましょう。
今回、紹介した方法も含めて、トイレの室内の環境を整える方法がいくつかあるので、以下を参考にしてみてくださいね。
母がトイレに間に合わないことが増えたので、そろそろ私が介助した方が良いのかな、と思っているのですが、北野室長はどう思いますか?
うーん、そうですね。おひとりでトイレに行けるようにさまざまな工夫をした結果、それでもトイレに間に合わないようだったら、福井さんがお手伝いしても良いかもしれないですね。
ただ、トイレの問題はかなりデリケート。うまく進めないと介助を拒否される可能性が高いです。
そうか…そうですよね。
トイレの介助をされることが「恥ずかしい」「情けない」と感じる方は多いです。特に排泄中は見られたくないと思っている方がほとんどでしょう。
ですので、まずはトイレの声掛けから始めてみてくださいね。
もし、トイレ介助を母に嫌がられたらどうしたら良いですか?
無理に介助をしようとしないことが大切です。介助に入れそうなところだけをお手伝いしてみてください。
例えば、部屋からトイレまでの移動が大変そうであれば、手を引いたりして歩行の介助だけをします。無理にトイレ介助をしようとすると、「トイレ」という言葉だけで嫌がるようになってしまう可能性もあるので、慎重に進めると良いでしょう。
トイレの介助の前に、歩きの介助をするんですね。
トイレの中での介助ができるのであれば、ズボンや下着を下ろして排泄している間はトイレの外で扉を閉めて待つ、という対応が良いでしょう。
まどろっこしいように思いますが、完全にトイレ介助を拒否されてしまうと、今後の介助が大変になってしまいます。段階を踏んで進めていきましょう。
ご高齢者に対しては、トイレに間に合わなかったときの対応も重要です。
汚れた床を掃除したり、濡れた服を洗濯するだけではないんですか?
それも大切なのですが、粗相をしてしまったご家族への対応も大切です。
トイレに間に合わなかったときは、粗相したことを責めるのは避けてください。毎回、「また間に合わなかったの?」といった、責める言葉を掛けたり嫌な顔をしてしまうと、粗相をしないように摂取する水分量を減らしてしまうことがあります。
摂取する水分量が減ると、脱水症状になるリスクが高まります。トイレのことを気にして体調を崩しては元も子もありませんから、お母様が粗相をしても落ち着いて片付けをするように気をつけてみてください。
については、以下のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。
そもそも、どうして母は粗相をしてしまうようになったのでしょうか?ここ最近まで、そんなことはなかったのですが…。
お母様が粗相をするようになったのは、つい最近のことなんですね。
もしかしたら、以下のような理由でトイレに間に合わないようになってしまったのかもしれません。
年齢を重ねることで、誰しも身体機能が衰えてきます。例えば、以前よりも歩くのに時間がかかるようになって、トイレに行くまでの間で我慢の限界が来てしまうのかもしれません。
また、尿を溜めておく膀胱の機能が衰えたり尿道周辺の筋力が低下することで、気づかぬうちに尿もれをしていることもあるでしょう。
言われてみれば、このところ母の歩き方がぎこちないかもしれません。トイレに行く道中も壁を伝ってなんとか歩いているような感じですし…。
これまで尿もれの話はなかったのですが、私に言わないだけで尿もれがあったのかもしれません。
お母様には当てはまらないかもしれませんが、場所がわからなくなって、トイレにたどり着けないために粗相をしてしまうことも。こうしたケースは、認知症の方に多いですね。
認知症ですか…。まだ認知症のような様子はないと思います。うちの母の場合は「トイレの場所が分からない」は当てはまらなさそうですね。
トイレの問題はとてもデリケートな問題ですから、その方の粗相の原因を突き止めて適切な対応をしていきましょう。けして無理にトイレ介助をしようとはしないでくださいね。
介護施設への入居について、地域に特化した専門相談員が電話・WEB・対面などさまざまな方法でアドバイス。東証プライム上場の鎌倉新書の100%子会社である株式会社エイジプラスが運営する信頼のサービスです。