認知症の症状がある人の介護は大変です。「そろそろ施設への入居を検討しよう」と思っても、認知症の症状があると、入居を断られてしまうのではと心配もあるでしょう。
比較的、安価で入れる公的施設のひとつである「ケアハウス」には、認知症の人も入居できます。しかし、すべてのケアハウスに入れるわけではありません。
ケアハウスには「介護型」と「一般型」の2種類があり、認知症の人を受け入れているのは介護型ケアハウスです。また、認知症の症状が軽度でなければ、介護型ケアハウスへは入居できません。
こちらの記事では、「認知症でもケアハウスに入居できるのか」を解説します。また、認知症の人を受け入れているほかの施設や、認知症の人が入る施設を選ぶ際の注意点も解説しますので、あわせて参考にしてください。
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認知症の人でもケアハウスに入居できます。しかし、すべてのケアハウスに入居できるわけではありません。
そもそもケアハウスとは、老人福祉法で定められた軽費老人ホームの一種です。
軽費老人ホームとは、自立した生活が困難になった身寄りがない60歳以上の高齢者が入居できる施設のこと。軽費老人ホームにはA型、B型、C型、都市型の4種類があり、そのうちC型をケアハウスと呼びます。
また、ケアハウス(C型)には「一般型」と「介護型」があり、一般型ケアハウスは施設からの介護サービスの提供がなく、介護型ケアハウスでは施設から介護サービスの提供があります。
認知症の人が入居できるのは介護型ケアハウスです。一般型ケアハウスは自立した高齢者向けの施設であるため、認知症の人は入居できません。
介護型ケアハウスとはどんな施設なのか見てみましょう。
介護型ケアハウスは、社会福祉法人などが運営する公的施設です。入居条件は原則65歳以上、要介護1以上の身寄りのない高齢者です。軽度であれば認知症の症状があっても入居できます。
介護型ケアハウスでは、提供や掃除、洗濯などの生活支援サービスが受けられます。それに加えて排泄や入浴の介助、機能訓練といった介護サービスも施設のスタッフから受けられます。
介護型ケアハウスは介護サービスが充実しており、認知症ケアや看取りに対応した施設もあります。施設の入居後に介護度が上がっても、引き続き同じ施設で暮らせるので安心です。
介護型ケアハウスの初期費用は、数十~数百万円 。月額利用料は、10~20万円です。
ケアハウスに入居する際は、保証金や入居一時金を初期費用として支払います。また月ごとに居住費や管理費、食費などの月額利用料が必要です。
ケアハウスの月額利用料に「サービス提供費」が含まれています。サービス提供費とは、事務費など、ケアハウスで提供されるサービスに対してかかる費用のことです。
入居者の収入によって自治体からサービス提供費の補助が受けられます。施設ごとに決められた本来の費用から、入居者の自己負担(費用徴収額)を引いた残りの金額が、自治体からの補助金により賄われます。
サービス提供費の費用徴収額は前年の収入によって決まります。前年の収入150円以下から始まり、約10万円上がるごとに費用徴収額も上がっていきます。前年の収入が310万1円以上では費用徴収額は全額負担です。
サービス費用徴収額(月額)はこちらのページで確認できます。
「ケアハウスは費用が安い」というイメージですが、前年の収入によって費用が変わってしまうので注意が必要です。
認知症の人が入れる施設はほかにもあります。主に以下の施設です。
それぞれ詳しく見てみましょう。
グループホームとは、認知症高齢者のための介護施設です。グループホームでは、認知症の専門知識と技術を持ったスタッフの援助を受けながら、要支援2以上の認知症高齢者が共同生活を送ります。
グループホームでは、「ユニット」と言われる少人数のグループで生活し、入居者はそれぞれ家事などの役割を分担をします。調理や食事の支度、掃除や洗濯など入居者の能力に合った家事をすることで認知症の症状の進行を防ぎ、能力をできるだけ維持するのです。
グループホームの初期費用は、約10~20万円。月額利用料は、約15~30万円です。
グループホームの費用には、入居時に必要な初期費用と、毎月発生する月額利用料があります。グループホームの初期費用は施設によりさまざまで、0円の施設から100万円程度の施設もあります。また、月額利用料も施設の立地やサービス内容によって異なります。
ケアハウスや特養などの公的施設と比べると費用は上がります。しかし、認知症ケアに特化している施設であるため、認知症の症状が重い人も安心して入居できます。
介護付き有料老人ホームとは、有料老人ホームのうち、都道府県または市町村から「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた施設です。生活支援や介護サービス、看護サービスが受けられ、それらのサービスには介護保険が適用されます。24時間介護スタッフが常駐し、介護や生活支援などは施設のスタッフにより提供されます。
介護付き有料老人ホームは入居条件も施設により異なります。自立している人から介護が必要な人まで幅広く受け入れている施設もあり、軽度であれば認知症の症状があっても入居できます。
介護付き有料老人ホームの初期費用は、約0~数千万円。月額利用料は、約15~35万円です。
有料老人ホームの費用は、入居時にかかる「初期費用」となる入居一時金が必要です。この入居一時金は賃料の前払いにあたります。入居後に毎月償却され、償却が終わる前に退去した場合には未償却分が返金されます。
また、入居時費用が0円の有料老人ホームもあり、その場合は家賃の前払いをしないことになるため月額利用料が高くなります。
サービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)とは、基本的に介護を必要としない自立している高齢者が住まう施設。バリアフリーの設備が整っており、安否確認、生活相談などのサービスを提供しています。
また、サ高住には「一般型」と「介護型」の2種類があります。
一般型サ高住は、安否確認や生活相談など、生活面でのサービスの提供のみで、基本は一般的な賃貸住宅と同じように生活ができる、自由度の高い施設です。介護型サ高住は、介護型ケアハウスや介護付き有料老人ホームと同じく、生活面でのサービスに加え、介護サービスも提供します。
認知症の人でも入居できるのは、介護型サ高住です。しかし介護型サ高住は数が少なく、サ高住の全体の約3割ほど(※)しかないため、注意が必要です。
(※)参考:「サービス付き高齢者向け住宅に関する現状」(国土交通省)
認知症の人でも入れる介護型サ高住の初期費用は数十~数百万円。月額利用料は約11~28万円です。
介護型サ高住では、一定の家賃やサービス費を「入居一時金」として契約時に前払いします。契約時に費用の多くを支払うため、毎月、支払う金額を低く抑えられます。
また、入居一時金には返還金制度が設けられているため、利用されなかった部分の費用は返還されます。
特別養護老人ホームとは、在宅での生活が困難な高齢者に対し介護を提供する施設で、略して「特養(以下、特養)」とも呼ばれています。要介護3以上の人が入居できる施設で、軽度であれば認知症の症状があっても入居できます。
特養では、入浴や排泄・食事といった介護のほか、日常生活の介助・機能訓練・健康管理・療養上のお世話などが受けられます。
また、終身での利用ができるため、「終の棲家(ついのすみか)」として選ぶ人の多い施設です。
ただし、特養は費用の安さゆえに人気が高く、地域によっては入居まで数年待ちが必要な場合もあります。
特養はケアハウスと同じ公的施設であるため、比較的安価で入居できます。特養では、初期費用や入所一時金が不要であるため、入居者の経済的負担が少ない点が魅力のひとつです。入居時に支払うのは介護サービス費、生活費など月々に発生する月額利用料のみです。
特養の月額利用料は居室の賃料、食費、介護保険の負担額によって決まります。特養には居室タイプが4種類あります。それぞれの居室の月額利用料は以下です。
初期費用 | 月額利用料 | |
---|---|---|
従来型個室 | 0円 | 約10~11万円 |
多床室 | 約9~10万円 | |
ユニット型個室 | 約12~13万円 | |
ユニット型個室的多床室 | 約11~12万円 |
居室タイプについては下記ページで説明しているので、そちらも参考にしてください。
認知症の人が無事に介護施設に入居できたとしても、長く生活しているうちに認知症の症状が重度になる可能性があります。その認知症の症状によっては退去を求められる可能性もあります。
ほかの入居者と共同生活を送るうえで、迷惑行為があった場合に退去を求められるのです。
例えば、ほかの入居者への迷惑行為とは、以下が挙げられます。
施設側が入居者の迷惑行為に対して対応をおこなっても改善しない場合は、退去を求められる可能性があります。
実際に入居を検討している施設が見つかったときには、認知症による症状が原因で退去を命じられたケースが実際にあるのかを事前に確認しておきましょう。どういったケースで退去を求められたのかがわかれば、万が一、退去勧告を受けてしまった場合の準備をしておけます。
認知症の人が入居する施設を選ぶ際に、以下のポイントを意識しましょう。
それぞれ詳しく見てみましょう。
入居する施設を本人以外の家族だけで決めてしまうと、本人の不満や家族の後悔につながることがあります。本人が施設への入居を強く拒否していない限り、本人と一緒に施設を選び、事前見学へも一緒に行きましょう。
本人が施設の環境や職員の対応を心地良く感じれば、入居がスムーズになります。また、本人に対するスタッフの言葉かけや気配りを目にすることで、入居後の様子を想像しやすくなります。
認知症の人は環境の変化が苦手です。慣れ親しんだ自宅から施設に移る際は、戸惑ったり混乱する人がほとんどです。
変化の影響をできるだけ抑えるために、今までの生活に近い環境で居られるかを確認しましょう。また、本人の望む生活が送れるかどうかも大切です。
例えば、確認するポイントは以下です。
認知症の人を受け入れている施設でも、施設によって認知症のケアの内容はさまざまです。入居する前には施設側の認知症への対応内容を確認することが重要です。
施設側の対応内容について確認をおすすめするポイントは以下の5点です。
施設側の対応内容について確認するポイントの中でも、特に重要なものを解説します。見てみましょう。
入居を検討している施設で、「どういった認知症の症状に対応してもらえるのか」を事前に確認しておくと安心です。
認知症といっても、種類や重度など症状はさまざま。認知症の症状によっては、入居を検討している施設に受け入れ体制が整っておらず、入居を断られるケースがあります。
入居を検討している施設でどういった認知症の症状に対応してもらえるのかを確認する際に、同時に「どんな認知症の症状を持った人を実際に受け入れたか」も確認しましょう。
認知症にはいくつかの種類や程度があるため、施設が「認知症でも入居を受け入れている」というだけでは、認知症の入居者へどんな対応をおこなったかわかりません。
入居を検討している施設で、認知症の本人の症状と同じ症状の方を受け入れた実績があれば、より安心して生活できるでしょう。
施設への入居には入居時費用と月額費用がかかり、金額は施設ごとに異なります。入居を検討している施設へ事前見学をする際には、その内訳を確認しましょう。
入居を検討している施設に必要な費用がわかったら、要介護度が上がったり入居が長期化しても無理なく支払い続けられるよう、資産や収支と照らし合わせて検討します。
入居する施設が公的施設か民間施設かにより、料金は大きく異なります。施設の種類によって介護保険の適用有無も異なり、費用負担に大きく影響します。
認知症の人でもケアハウスに入居できます。ケアハウスには「一般型」と「介護型」があり、認知症の人が入居できるのは介護型ケアハウスです。一般型ケアハウスは自立した高齢者向けの施設であるため、認知症の人は入居できません。
認知症の人が入れる施設はケアハウス以外にもあります。主には、「特別養護老人ホーム」「グループホーム」「介護付き有料老人ホーム」「サービス付き高齢者向け住宅」です。
認知症の人が入居する施設を選ぶ際には、「本人も施設を一緒に選ぶ」「入居後に本人らしい生活ができる施設かどうか」「施設側の認知症への対応」「施設の費用」などのポイントを意識しましょう。
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