厚生労働省は毎月、「介護給付費等実態統計」というデータをまとめて公表しています。それによると、2022年4月度における訪問介護事業所の数が過去最大となる3万4372事業所になっています。
10年前の2013年が3万272から見ると、実に4000も増えていることに。2017年に一旦ピークを迎え、それ以来、減少傾向にあったのですが、2020年を境にしてまた増加傾向に。こうした動きの背景には一体、どのようなことがあるのでしょうか?
バッググラウンドとしてまず挙げられるのは、やはりニーズの増加にほかなりません。
2021年時点の高齢化率は29.1%で、当然ですが下がる気配も理由もありません。これからも高くなる一方でしょう。当然、介護サービスへのニーズも高まる一方であり、それを見込んで訪問介護事業所を新規に開設する事業者が後を絶たないのです。
また昨今では、障がい福祉サービスと併せて事業展開をおこなえば一定の収益を得られるような報酬体系が法律で定められており、そのことも訪問介護事業所の増大を後押しするしていると考えられています。
また一方で、サービス付き高齢者向け住宅の増設という背景もあります。
2022年7月時点でのサ高住の登録状況を見てみると、施設数8112、戸数27万6563という数字はそれぞれ過去最大。ニーズの高まりにあわせて、という理由もありますが、サ高住の新設には国から補助金が出ることも、その一因と考えられます。
参考:「サービス付き高齢者向け住宅の登録状況」(サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム)
サ高住は、「介護施設」ではなくあくまで「住まい」であり、サ高住に住みながらにして介護サービスを受けようと思ったら、入居者は訪問介護事業所と別途、契約を結ぶ必要があります。
そのため、サ高住が増えれば訪問介護事業所も増える、という方程式が成り立つのです。
そのまた一方で、東京商工リサーチの調べによると、訪問介護事業の倒産件数は、2022年の上半期(1~6月)で22件。全体数53件の中ではもっとも多く(通所・短期入所介護が17件、有料老人ホームが8件)、競争が激化しているという側面もあります。
出典:「「介護事業倒産」減少から一転、コロナ禍の利用者減とコスト増で大幅増 倒産が本格化の兆し」(東京商工リサーチ)
訪問介護事業が倒産する主な原因は人員不足とも言われており、人材確保は事業者にとって喫緊の課題と言われています。そもそも介護事業所では高待遇を期待できるところは多くなく、そのために、人員が待遇の良い事業所に転職する…という事例も多いようです。
この傾向はしばらく続くと見られています。ということは…利用者サイドとしては、利用する訪問介護事業所の経営状況もある程度は把握しておかないと、「継続して利用したかったのに、突然、倒産してしまった」「次の訪問介護事業所を選ばないと」といった事態にもなりかねません。
とはいえ、いち利用者が事業所の経営状況まで把握するのは難しいものがあるでしょう。不安が強かったり気になったりする方は、ケアマネジャーさんに相談するなど周囲から情報収集したりした方が良さそうです。
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