ベッドから椅子の移乗など、利用者を抱えて介助する場面の多い介護現場。そのため、多くの介護職員が腰痛を抱えながら仕事をしています。
そんな状況を変えるため、滋賀県では「抱え上げない介護」を広める取り組みをおこなっています。具体的には、県内の2施設を「抱え上げない介護推進事業所」として推奨し、実際の介助方法を実演。取り組み内容をアピールしています。
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滋賀県が推進している「抱え上げない介護」とは、移乗時に福祉用具を活用することで職員の身体負担を減らす取り組みです。
今月24日には、推奨を受けている2施設が会見をおこない、介助を実演しました。
例えば、ベッドから車いすに移乗するときには「スライディングボード」という滑りやすい素材の板を使用。車いすとベッドの間の架け橋となるように乗せ、その上にお尻を滑らせて車いすに移動します。
これを使うと、職員が身体を抱えて利用者のお尻を持ち上げる必要がありません。また、お尻を滑らせるだけで良いので、立ち上がりが難しい人でも自分の力を使って車いすに移動ができます。
もうひとつ実演したのは、「スライディングシート」を使った介助です。車いす上でお尻が前にずれたときに、お尻の下にシートを当てることで簡単に位置を直せます。
従来の介助では、利用者の後から胸部を抱えてひっぱりあげていました。職員の腰の負担が大きいのはもちろん、介助される人も胸が圧迫されるので苦しさを感じます。また、体格が良い利用者の場合は、それでは位置が直せないこともありました。
このように、介護器具を利用することで、職員と利用者の双方の負担を軽減できます。また、ある程度足に力が入る人であれば、「職員と一緒に」車いすへ移動ができるので、利用者の精神的な負担も減るそうです。
このような、福祉用具を使うことで抱え上げない介護が普及すれば、介護現場の長年の課題である人材の確保が一歩前進するかもしれません。
一方で、課題も多くあります。例えば、スライディングボードを利用するには、可動式ひじ掛けの車いすである必要があり、ひじ掛けを上げてボードを設置します。しかし、経済的に余裕のない利用者や介護施設では、ひじ掛けが動かない最も安い車いすを使用しています。
そうなると、そもそも福祉用具を使えないのです。抱え上げない介護をするために、車いすを買い替えるのは現実的ではないですよね。
つまり、介護職員の身体的負担が問題視されている一方で、抱え上げない介護を実践する下地ができていないとも言えます。
このようにすべての介護現場で適用できるわけではありませんが、抱え上げない介護が当たり前になると少しは介護の「きつい」というイメージが変わるかもしれませんね。
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