台風や地震、大雨など毎年のように大きな自然災害が起こる日本。災害時にはさまざまなことが問題となりますが、その中でも「被災した高齢者の健康状態」についての研究結果が発表されました。
この研究は広島大学がおこなったもので、これによって「被災した高齢者は、認知症薬と漢方薬の処方数が増加している」ことがわかりました。
この結果を受けて、研究グループは「科学的根拠に基づく災害時を含めた認知症対策が求められる」と述べています。
広島大学がおこなったのは、2018年7月に起きた西日本豪雨災害で被災した高齢者の健康状態の変化についての研究です。
この研究は、この災害で被害が大きかった広島県・岡山県・愛媛県の診療情報を分析。災害前後の2年間で、65歳以上の人の認知症薬・漢方薬の処方数の変化を調査しています。
まず認知症薬については、災害前に認知症でなかった高齢者のうち、被災した人は被災しなかった人よりも「災害後に認知症薬を処方された割合が高い」ことがわかりました。
加えて、災害前から認知症薬を処方されていた人のうち、被災した人はそうでない人よりも薬の処方量が増加。自然災害が高齢者の認知機能を低下させることが判明しています。
また同時に広島大学は、漢方薬の処方についても調査しています。
漢方薬は副作用が西洋薬に比べて少ない点から、高齢者に好まれる傾向があります。そのため、自然災害で健康を損ねた高齢者が漢方薬を利用するのではないかという推測のもとづいて調査されました。
その結果、調査地域の3県に暮らす高齢者は被災の有無に関わらず、漢方薬の処方をされている人が増えていました。その中でも、被災者に処方された漢方薬で増加率が高かったのが「抑肝散」です。
抑肝散は、神経症や不眠などに効果があるとされ、興奮状態を落ち着かせる際に処方されるもの。特に認知症の周辺症状に処方されることが多いとのことです。
これらの研究結果を受けて「日本固有の災害対策や災害時の診療ガイドラインが策定されることが期待される」と研究チームは述べています。
世界中で高齢化が進んでおり、さらに地球の環境変化に伴って、自然災害も増加傾向にあります。そのため災害時の高齢者の健康被害についても、世界でさらに問題になっていくかもしれません。
日本はもともと自然災害が多く、加えて高齢化が最も進んでいる国。そのため、災害時の診療ガイドラインを作ることで、世界のモデルケースになることでしょう。
災害時、私たちは生活を維持するのが精一杯。ちょっとした気持ちやメンタルの変化に気が付かないこともあります。
だからこそ、災害対策のひとつとして国や自治体には早く手を打ってほしいですね。
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