認知症の母の介護をしています。夜中もトイレの付き添いのために起きないといけなくて、常に寝不足のため身体が辛いですが、なんとかやれています。
でも、友人にこの話をしたところ、「もう在宅介護は無理だよ」と言われました。今の状態は在宅介護では限界なんでしょうか?
私がこれまで入居相談を受けてきた経験上、在宅介護が限界を迎えているケースにはいくつかのパターンがありますね。
次に具体的な状況をリストアップしてみましたが…。吉田さんに当てはまっているものはありますか?
一番はじめの「介護のために睡眠時間を減らす必要がある」は、当てはまっています。トイレ介助のために何度も夜中に起きないといけない状況なので…。
それに、認知症が進んでから、「勝手に家から出て迷子になるんじゃないか」と心配でよく眠れないんです。
それはかなりきつい状況ですね…。となると、寝不足で昼間のお仕事や家事に支障が出ていませんか?
出ています!常に眠いので仕事でミスも増えましたし、身体がいつも重くて毎日の家事をするのも大変で…。
やはりそうですよね…。となると、このままご自宅で介護するのは難しい段階かもしれません。
このままの状態で在宅介護を続けていると、限界を超えてしまって「介護離職」や「介護うつ」になる危険性があります。
「介護離職」?「介護うつ」?それはどんな状況ですか?
まず、介護離職とは介護をするために仕事を辞めることです。仕事を辞めて介護に集中しようとするわけですね。
私も母の介護をする時間が確保できないので、会社を辞めようと考えたことがあります。介護に集中できるなら良いんじゃないですか?
実は、離職した後の負担が必ずしも減るとは限らないんです。これを見てください。
出典:「分科会B:介護~仕事と介護の両立 社員や企業が地域社会とつながることの可能性~」(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)
えぇ!?介護に集中したからって、楽になるわけではないんですね!退職しなくてよかったです。
そうなんです。むしろ、生活が”介護一色”になってしまって休みがなくなり、「負担が増えた」と感じている人が多いんです。
それに、さらに精神的・肉体的に追い詰められると「介護うつ」になってしまう可能性もあります。
「介護うつ」って介護のせいでうつ病になってしまうということですか?
おっしゃる通りです。介護によってストレスが溜まってうつ病を発症してしまいます。睡眠障害や食欲不振、無気力感など心身ともに異常が出てしまうんです。
私はまだそこまでの状況にはなっていませんが、睡眠不足が続いているのでこのままだと介護うつになってしまうかもしれないです…。
介護うつになったら回復するには時間がかかります。そうなると、お母様の介護だけでなく、吉田さんの人生にも影響が出てしまうのでそうなる前に手を打ちましょう。
介護の限界を超えないように手を打つと言っても、どうしたら良いんでしょう?
何から始めたら良いのかわからないので、誰かに相談したいです…。
そうですよね。でしたら、身近にある相談先をお伝えしますね。次のようなところに相談すれば、介護についていろいろとわかると思いますよ。
もし、まだ介護サービスを利用していない場合は、役所の福祉の相談窓口がわかりやすい相談先だと思います。「介護の相談先」と考えると、どうしたら良いかわからなくなってしまうかもしれませんが、お住まいの地域の役所であればどこにあるのかはわかりますよね。
自治体によっては、「介護保険課」「高齢者福祉課」といった名前の窓口を設置しています。正確な名前がわからなければ、電話で問い合わせるか、とりあえず役所に行ってみて相談窓口を確認してみてください。
母は既に訪問介護を利用しています。介護サービスを利用している場合は、どこに相談したら良いですか?
ケアマネジャーさんですね。しばらく連絡を取っていなかったので、連絡してみようかな…。
あとは「地域包括支援センター」に相談してみるのもおすすめです。
地域包括支援センターは、ご高齢者の生活の総合相談窓口。保健師、社会福祉士、ケアマネジャーといった介護に詳しい専門家が相談に乗ってくれるので、総合的に相談したいときに良いと思います。
その次の民生委員さんって、地域の見守りとかをやってくれる人ですよね?介護の相談にも乗ってくれるんですか?
そうなんです。地域で暮らす支援を必要としている人のサポートをしているのが民生委員さん。介護の相談をすれば、適切な行政サービスや専門機関につないでくれるんです。
また、最後の「介護をする家族の会」にはいろんな団体があります。例えば「認知症家族の会」という認知症の方本人と、介護をする家族の団体もあるんです。悩みを打ち明けるだけでも気持ちが楽になると思いますので、近くで開催している集まりに参加してみるのも良いかもしれませんね。
ここまでに、在宅介護の限界を判断するポイントや介護の相談窓口についてお話ししました。ここからは、ご自宅での介護の限界を超えないように対策できることをお伝えしたいと思います。
介護の限界を超えないための対策って何ができるでしょうか?
まずは介護サービスを利用することです。
お母様は既に介護サービスを使っていらっしゃると思いますが、介護の限界を迎えないための介護サービスの使い方についてお話ししますね。
介護には「レスパイトケア」という考え方があります。
レスパイトケアですか?聞いたことがないです。
レスパイトケアとは、介護をする人が介護を休憩するために介護サービスなどを利用すること。つまり、「介護をされる人のためのケア」というよりも「介護をする人のためのケア」と言えますね。
具体的には、以下のサービスがレスパイトケアとして活用されています。
今、デイサービスを週2回利用しています。デイサービスもレスパイトケアになるんだ。
そうなんです。デイサービスは、朝から夕方にかけて介護施設に預かってもらうサービスですよね。なので、ご家族はデイサービスの時間を自分の時間にしたり、家事を片付けたりする時間にあてられるわけです。
訪問介護の場合は、訪問介護を使うことでヘルパーさんにお願いした分の介護や家事の時間を別のことに使えますよね。
つまり、どちらも介護サービスを使うことで短時間のレスパイトができるわけです。
でも、私は平日の日中は仕事をしていますし、デイサービスや訪問介護はあまりレスパイトという感じがしません。
そうですよね…。でしたら、ショートステイを使ってみるのはどうでしょうか?
ショートステイは、1日から介護施設に宿泊できるサービス。施設に空きがあれば最大30日連続で利用できます。訪問介護やデイサービスは数時間だけの短い間ですが、ショートステイでしたらまとめて数日のレスパイトも可能です。
ご高齢者をショートステイに預けて旅行に行く、といった使い方をしているご家庭もありますよ。
えっ、旅行に行くために母を人様に預けるんですか?そんなことして良いのかな…。
もちろんです!レスパイトケアは”ご家族のための介護サービス”。ご家族がリフレッシュするために利用しても良いんです。
それに、今は仕事と介護に疲れて今後の生活についてじっくり考える余裕がないかもしれません。なので、レスパイトケアをしてお母様のことだけでなくて吉田さんご自身の将来について考えてみてください。
介護の負担がさらに大きくなったら、老人ホームなどの介護施設に入居することも検討してみてください。
老人ホームかぁ…。まだまだ先の話だと思っていました。
もちろん、今の状況でも介護が継続できそうであれば、お母様はご自宅で過ごした方が良いと思います。でも、実際は介護と仕事の両立は難しいものです。
それに、介護施設は入居しようと思っても、1日や2日で入居できるものではありません。居室に空きがあってすぐに入れる状態でも、書類作成や面談などが必要なので、1ヵ月近くかかることもあるんです。
「入りたい」と言ってすぐに入れるものではないんですね…。
それに、特別養護老人ホームなどの人気の施設の場合、常に満室なので1年以上待たされることも…。
なので、在宅介護の限界を迎えてから施設探しを始めるのではなく、多少余裕のある状態から施設探しを始めてくださいね。
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