老人ホームをすぐに退去したら、入居金はどうなりますか?もし、すぐに退去してしまったらお金だけ取られるのではと、入居をためらっています。

老人ホームをすぐに退去したら、入居金はどうなりますか?もし、すぐに退去してしまったらお金だけ取られるのではと、入居をためらっています。

更新日 2024/03/14
先日、有料老人ホームの見学に行って良かったのでそこに母を入居させようと考えています。ただ、入居金が高額なので、偏屈なところのある母が施設になじめずに「退去したい」と言い出したら…と心配しています。

老人ホームに入居後、すぐに退去してしまった場合の入居金はどうなるのでしょうか?

(水野さん・主婦・63歳)

入居金は、支払ったら全額が戻ってこないものではないので安心してください。契約後90日以内であれば、「クーリングオフ」という制度があるため利用分の費用を差し引いた金額が返還されます。

また、入居金を設定している施設の多くが、「償却期間」を設けています。そのため、90日を超えた場合でも、償却期間内であれば償却金額を差し引いた分が返金となりますよ。

老人ホームのクーリングオフ制度って?

母の施設入居を検討しており、先日、老人ホームの見学に行きました。そこの施設に入居しようと考えているのですが、入居金が1000万円と高額なところなので、万が一、すぐに退去してしまったら入居金は返還されないのでしょうか?

母は偏屈なところがあって。入居しても施設になじめずにすぐに「退去したい」と言いかねないので心配で…。

老人ホームの入居金は気になるところですよね。でも、もし入居してすぐに退去してしまっても契約後90日以内であれば、家賃などの利用分を差し引いた金額が返ってくる「クーリングオフ制度」があるのでご安心ください!

クーリングオフって聞いたことがあります。契約後、一定期間内であれば解約できる制度ですよね?

それが老人ホームにもあるんですか?

そうなんです!厳密には「短期解約特例制度」という制度で、訪問販売などの解約ができるクーリングオフ制度と形式が似ているので、「クーリングオフ」と呼ばれています。

でも、「施設になじめないから」というような、こちらの都合で退去した場合は、クーリングオフは適用されないんですよね?

そんなことはありませんよ!どんな理由での退去でもクーリングオフは適用されます。

例えば、以下のような理由の退去でも、クーリングオフの対象になるんです。

  • 施設になじめない
  • 急遽、入院することになった
  • 雰囲気が悪かった
  • 希望するサービスが受けられない
  • 入居者とそりが合わない
  • 逝去

「雰囲気が悪かった」という理由でも返金してもらえるんですね!それはちょっと安心しました。

もちろん、退去せずに長く暮らせるのが一番なのですが、こういった制度が設けられていると、安心できますよね。

老人ホームの入居金についても把握しておこう

クーリングオフについて考えるときには、合わせて老人ホームの入居金についても知っておく必要があります。

入居金については、先日の見学の際にも説明を受けました。でも、ややこしくてよく理解できなくて…。

そうなんですよね…。ちょっとわかりにくいので、改めてお伝えしますね。

入居金とは、基本的には前払い家賃です。一般的な賃貸住宅では毎月支払っている家賃を、入居時にまとめて支払っている、というわけですね。家賃を支払わない分、毎月の費用は抑えられるんです。

あぁ!なるほど。先に家賃を先に支払っているので、月々の費用は安く済むんですね。

おっしゃる通りです。また、この入居金は家賃の前払いなので、一定期間中は月々の賃料に充てられます。このように、少しずつ費用を使っていくことを「償却」と言います。

さらに、入居時にも一定の割合で償却金が発生する場合があります。これを「初期償却」と呼びます。それを差し引いた額を予め設定されている「償却期間」の中で少しずつ償却していくわけですね。

うーん。見学のときにも説明してもらいましたが、そこがよくわからないんですよね…。

では、次の図をご覧ください。「入居金600万円、初期償却30%、償却期間60ヵ月」のときの、返還金をグラフで表したものです。

このケースでは、入居時に初期償却として180万円が償却されます。そのため、残りの420万円を償却期間の60ヵ月で均等に償却。要するに、毎月7万円が賃料として充てられるんです。

なので、ちょうど1年後に退去する場合は、初期償却と12ヵ月分の償却額を差し引いた336万円が返金されるのです。

なるほど。契約して5年以内であれば、入居金の返還があるんですね!

その通りです。そして先ほどお伝えしたように、90日以内であればほとんどの入居金が帰ってきます。つまり、初期償却分を失わずに退去できるというわけです。

老人ホームの解約時のトラブル例

これまでお話ししてきたように、クーリングオフ制度があるおかげで入居から90日以内であれば、日割家賃などの利用分を差し引いた金額が返還されます。

この制度は、かつて老人ホームの解約時のお金に関するトラブルが多発したために設けられたものなんです。

お金のトラブルですか?

というのも、クーリングオフ制度ができる以前は、入居期間がたった1週間でも初期償却分が差し引かれていました。

例えば、入居金が2000万円で初期償却が30%の施設の場合、1週間入居しただけでも600万円の初期償却が発生。返還金が1400万円になってしまっていたんです。

1週間で600万円!?それはトラブルになりますね。

そうですよね…。クーリングオフが適用されれば、家賃分が月30万円の施設だったら約4分の1の7.5万円程度のマイナスで済みます。つまり、1992万円も返還されるんです。

1400万円と1992万円の違いとなると大きいですよね。

クーリングオフがあるかないかで、返還額がそんなに変わるんですね!クーリングオフ制度があってよかった。

水野さんのおっしゃる通りですね。老人ホームに入居することは、誰もが少なからず不安を持っているものです。それに「うまく施設となじめずに、すぐに退去したらどうしよう」と心配するのは自然なことだと思います。

たくさんある心配事の中のひとつでも解消できると、より安心して老人ホームで生活できますよね。

  • クーリングオフは、契約後90日以内であれば入居金が返金される制度
  • 家賃などの利用した分の金額を差し引いた金額が返還される

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