二人暮らしの母親の介護が上手くいきません。仕事を辞めて介護に集中しないのは親不孝な息子でしょうか?

二人暮らしの母親の介護が上手くいきません。仕事を辞めて介護に集中しないのは親不孝な息子でしょうか?

更新日 2024/03/18
母を自宅で介護しています。認知症が進行して物忘れがひどくなり、家に1人でいさせるのも心配。でも、私は仕事をしているので昼間はどうしても母1人になってしまいます。母と二人暮らしなので、母の世話を頼める人もおらず…。

仕事を辞めて介護に集中できない私は親不孝でしょうか?

(大山さん・会社員・57歳)

そんなことはありませんよ!介護のために仕事を辞めてしまうのはおすすめできません。というのも、仕事を辞めても介護の負担が軽くなるわけではないから。むしろ経済的・精神的負担が大きくなる可能性があります。

まずは、介護サービスを活用しましょう。そうすれば、自分の時間を確保しやすくなって、体力的にも精神的にも負担が減ると思います。負担が減れば、仕事を続けながら介護もしやすくなります。

まずは、介護と仕事の両立ができる体制を整えていきましょう!

介護離職しても負担が軽くなるわけではない

同居する母が認知症になってしまい、介護をしています。最近は症状が進んで、1人で家に置いておくのも心配になってきて…。でも私は日中は仕事で家を空けますから、どうしても母を1人にしてしまいます。

だからといって、母と二人暮らしですし、近くに母の世話を頼める親戚もいなくて…。仕事はできるだけ続けたいと思っています。でも、母を放っておけるわけもなく…。

仕事を辞めて介護に集中できない私は、親不孝なんでしょうか?

そんなことありません!むしろ、お母様の介護をしながら仕事もしているのはすばらしいことだと思います。

ただ、お母様の認知症が進行していくにしたがって介護に必要な時間が増えて、仕事との両立ができなくなってくるかもしれません。

そうですよね…。早めに退職して、母の介護に専念した方が良いんでしょうか。

いえ、私は介護のために離職するのはおすすめしません。というのも、介護離職しても負担が減らず、逆に増えるという調査結果があるんです。

参考:「仕事と介護の両立に関する労働者アンケート調査」(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社)

仕事を辞めて経済的負担が増えるのはわかりますが、精神的負担も増えるんですね…。

そうなんです。おそらく、離職したことで”介護に集中しすぎてしまう”からだと考えられます。

どういうことですか?

仕事を辞めると、一気に外との社会的なつながりがなくなります。それまで、会社の同僚などと関わる時間が気分転換になっていたのに、その時間がなくなりますよね。お母様と二人きりの時間が増え、気分転換するタイミングが限りなく少なくなってしまうんです。

確かに、介護が始まってから友人と会うことがほとんどなくなりましたし、退職したら母以外の人と関わる時間はなくなるでしょうね。

介護のことを考える時間ばかりだと、追い詰められてしまう可能性もあります。在宅介護はかなり大変ですから、気分転換の時間を確保するためにも仕事は続けることをおすすめします。

介護サービスはどうやって利用する?

仕事を続けたくても今のままでは無理だと思います。今はまだ大丈夫ですが、今後、母の認知症が進行したらずっとつきっきりになるかもしれませんし…。

ちなみに、お母様は介護サービスを利用していますか?

いえ。介護サービスっていろんな手続きがあるんですよね?そのあたりがまったくわからず、利用したことはありません。

でしたら、まずは介護サービスを利用しましょう!

今、大山さんおひとりだけで介護しているのなら、介護サービスを利用するだけでもかなり負担が減ると思いますよ。

うーん。といっても、どうやって利用したら良いのか…。

でしたら、介護サービスを利用するまでの流れをお話ししますね!

介護サービスを利用するまでの流れ

介護サービスを利用するまでには、以下のような流れがあります。

  1. 要介護認定
  2. ケアプラン作成
  3. 介護サービス利用開始

まずは、お母様に要介護認定を受けていただく必要があります。要介護認定は、介護の必要な度合い「要介護度」を判定するもの。要介護度は、「要支援1~2」「要介護1~5」の7段階あり、数字が大きいほど介護の必要度合いが高いことを示しています。

要介護度が判定されたら、次はケアマネジャーさんにケアプランという介護サービス計画書を作成してもらいます。ケアプランには要介護度やお母様の状況に応じて、適切な介護サービスの種類や利用回数が盛り込まれています。

なるほど、母に合った計画を立ててもらえるんですね。

そして、ケアプランの計画に基づいて介護サービスの利用が始まるわけです。

うーん、介護サービスを利用するにしても、いろいろと手続きが必要なんですよね?仕事と介護をしていると、手続きをする時間もないんですよね…。こういう手続きって時間も手間もかかりそうですし。

そういう手続きをする時間を確保するために、「介護休業」という制度がありますから、ぜひ利用してください!

介護休業は、介護をしている人が介護と仕事を両立する体制を整えるための制度。合計93日の休みを最大3回に分けて取れます。もちろん、大山さんご自身でお母様を介護する時間に充てられますが、長く介護と仕事を両立していくために、介護認定の手続きやケアマネジャーさんとの打ち合わせの時間として活用するのをおすすめします。

「介護休業」と言うから、私が母の介護をするための休みと思ったら、どちらかというと介護の体制を整えるためのものなんですね…。会社に確認してみます。

介護サービスの種類

そもそも、介護サービスにどんなものがあるのかよくわかっていません。どんなサービスを受けられるんでしょうか?

介護サービスは大きく分けて「在宅介護サービス」と「施設介護サービス」があり、主な介護サービスには、以下のようなものがあります。

いろんなサービスがあるんですね!

そうなんです。お話を聞く限りだと、訪問介護とデイサービスを利用するのが良いかもしれませんね。

訪問介護は、自宅に訪問ヘルパーさんがやって来て、お母様の介助や家事などを代行してくれるサービス。お母様が1人になってしまう時間帯に訪問介護を見守り代わりに利用するのはどうでしょうか。

また、デイサービスは介護施設に通って介護サービスを受けるもの。デイサービスに行っている間の、食事、入浴、排泄介助などはすべて施設に任せられますし、レクリエーションやリハビリなどもしてもらえるので、大山さんも安心してお仕事ができるんじゃないでしょうか。

デイサービス、良いですね。入浴の手伝いも大変なので、施設で入れてくれるのは助かります。

介護疲れをためずに介護をするには?

母の介護の時間を増やすためと、時間に余裕を持つために退職しようと思っていたんです。でも、例え介護サービスを使うとしても退職しないとなると、時間的にも体力的にも余裕がなくなりそうだな…。

在宅介護って大変ですよね。介護は長期戦ですから、どうしても疲れが溜まってきてしまうと思います。そういうときに、なるべく介護疲れを溜めずに介護を続ける方法をいくつかご紹介しますね。

  • 介護について話を聞いてもらう
  • 少しでも自分の時間を持つ
  • ストレス発散に運動を取り入れてみる
  • 介護施設への入居検討をする

介護について話を聞いてもらう

介護をしていると、どうしても精神面の負担も大きくなりがちです。そういうときは、介護について誰かに話を聞いてもらいましょう。

他のご家族やご親戚でも良いですし、話しにくいときは介護経験のあるご友人でも良いと思います。

うーん。他に家族も身近な親戚もいないですし、介護の話ができる友人もいないですね…。

でしたら、「家族の会」に参加するのはどうでしょうか?家族の会は、認知症の人やご高齢者を介護しているご家族が作る団体。全国各地で家族が集まり、介護の相談や勉強会をする集会を開いています。

「オレンジカフェ」「認知症カフェ」という名前で、認知症ご本人やその家族の集まりも全国でおこなわれています。そちらに参加するのも良いかもしれません。

どちらの集まりに参加しても、介護の愚痴を誰かに聞いてもらうだけでも気持ちが楽になると思いますので、ぜひ参加してみてくださいね。

少しでも自分の時間を持つ

介護と仕事で多忙に過ごしていると、時間に追われて自分の時間って持てないですよね。それでも、ぼーっとする時間や趣味の時間を少しでも確保することが大切です。自分の時間を定期的に持つことで気分転換になって、介護にも集中できるようになると思います。

そんなこと言っても、忙しくて自分の時間なんて持てないですよ。働きながら介護しているんですから。

そうですよね…。自分の時間を作るためにも、介護サービスをどんどん活用してください。

例えば、定期的にショートステイを活用するのがおすすめ。ショートステイは、1日から介護施設に宿泊できるサービスで、最大30日連続で利用できます。

宿泊している間の食事や入浴、排泄などの介助はすべて施設に任せられます。数日まとめてショートステイを利用すれば、安心してリフレッシュできると思いますよ。

え、リフレッシュですか?そんなことのために介護サービスを利用して良いんですか?

もちろんです!

介護をしている大山さんが倒れてしまっては元も子もありません。息抜きを忘れないでくださいね。

介護施設への入居検討をする

介護施設への入居もぜひ検討してください。

介護は必ずしもご家族でしないといけないものではありません。在宅介護は負担が大きく、仕事をしながら続けるのはかなり難しいですから、介護施設への入居も視野に入れてみてください。

先ほどお話ししたように、主な介護施設には以下のようなものがあります。

  • 特別養護老人ホーム
  • 介護老人保健施設
  • 有料老人ホーム
  • サービス付き高齢者向け住宅
  • グループホーム

介護は、完璧にしなくても良いんです。ご家族だけでするものでもありません。介護のプロの力を積極的に活用して、「楽な介護」をしてくださいね。

  • 介護離職で負担が大きくなることも。介護サービスを利用しながら仕事を続けよう
  • 介護サービスを利用するために、まず要介護認定を受けよう
  • 誰かに介護の話を聞いてもらったり、少しでも自分の時間を確保しよう

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