昔はお風呂が大好きだったのに、認知症のせいか母親が入浴を嫌がるようになってしまいました。最近は月に1~2回しかお風呂に入りません。そのため、髪の毛のフケがすごいし、においもすることがあって…。
お風呂に入るように何度言っても耳を貸しません。どうにかお風呂に入らせる方法はないものでしょうか?
それは衛生面で心配ですね…。
お母様にお風呂に入っていただく方法を探す前に、どうしてお風呂を嫌がるのかを考えてみましょう。原因が分かれば、対応方法もわかるかもしれません。
確かにそうですね。どうして母はお風呂を嫌がるのでしょうか?
お母様の状況を見ないとはっきりとしたことはわかりませんが、一般的に認知症の方がお風呂を嫌がる理由には以下のようなものがあります。もしかしたら、この中にお母様がお風呂を嫌がる理由に当てはまるものがあるかもしれません。
認知症の影響で、入浴する必要性がわからなくなることがあります。
どういうことでしょうか?何週間もお風呂に入らなければ、頭がかゆくなったり、においがしたりするものだと思いますが…。
それが、認知症になるとお風呂に入っていると思い込んでしまうことがよくあるんです。お風呂に入っているから体は汚れていないし、入浴しなくて良いと思ってしまうんですね。
なので、頭がかゆくてもお風呂に入っていないことと結びつかないんですよね。それに、年を重ねると嗅覚がにぶることが多いので、ご自分のにおいに気がついていないのかもしれません。
お風呂に入っていると思い込んでるんだ…。それじゃあ、確かに「お風呂に入っていないから入って」と言っても耳を貸さないですよね。
認知症の症状のひとつに、「実行機能障害」「失行」というものがあります。これらの症状のせいで、入浴の仕方がわからなくなっている可能性があります。
入浴の仕方がわからなくなることなんてあるんですか?
そうなんです。例えば、実行機能障害とは、物事を順序立てて作業できなくなること。入浴の「1枚ずつ服を脱ぐ」「シャンプーで頭を洗って、シャワーで流す」といった作業もできなくなってしまうんです。
また、失行はそれまでできていたことができなくなること。具体的には、体を洗うために何をしたら良いのかがわからなくなってしまったりするんです。
認知症になると、今まで当たり前にできていたのに急にできなくなってしまうことがあるんですね…。
誰しもお風呂に入るのがめんどくさい、と感じることはありますよね。特にご高齢になると、体力も落ちてくるので疲れて入浴がめんどくさく感じることが増えているのかもしれません。
お風呂で転んだり顔に水がかかるなど、嫌な経験を以前にしていると、悪いイメージだけが残ってしまって、入浴を嫌がることがあります。
でも、認知症になると物忘れが増えますよね?母もちょっと前のことでもすぐに忘れてしまいますし、嫌な経験をしていても忘れてしまうんじゃないですか?
確かに、嫌なことがあってもその出来事自体の記憶は忘れてしまうかもしれません。ただ、認知症の方は、出来事の記憶は忘れてしまってもそのときの感情の記憶は忘れにくいと言われています。
なので、お風呂で嫌なことや恐怖を感じる出来事があると、嫌な感情だけが残っている可能性も。つまり、「なんだかわからないけど、嫌な感じがするからお風呂に入りたくない」と感じているのかもしれません。
「裸になるのが恥ずかしい」って、お風呂では裸になるのが当たり前じゃないですか?
そうですね。でも、認知症の影響でお風呂がどういうところなのかわからなくなっていたらどうでしょうか?なんで裸になるのかわからず、服を脱ぐのを嫌がるのも自然なことですよね。
確かに…。「なんで服を脱がないといけないんだ」と不安になるかもしれません。
また、ご家族が入浴介助をする場合、家族は服を来ているのに自分だけ服を脱ぐのにも違和感があるのかもしれません。また、ご家族としては服を脱ぐのを手伝おうとしているだけなのに、「わけもわからず服を脱がされる!」と混乱してしまう可能性も考えられますよね。
認知症の方の場合、入浴介助が必要なことがわからず、家族に手を出してもらいたくないのでお風呂を嫌がるケースがあります。
「介助なんていらないのに、家族が手伝おうとしてくる」と、自尊心を傷つけられてしまうんですね。
あぁ、母にもそういうところがあるかもしれません。私が「手伝うよ」と言ったら、「手伝いなんていらない!」と怒鳴って、自分の部屋に閉じこもってしまったことがあります。
あれは見栄を張っていただけではなくて、本当に自分が手伝いが必要なことをわかっていなかったんですね。
好きなテレビ番組を見ていたり、眠いときにお風呂に入る気持ちにはなかなかならないですよね。それは認知症の方も同じで、声をかけたタイミングが入浴したい気持ちになっていないときだったのかもしれません。
また、お母様がお一人で入浴できていたときには、気が向いたタイミングやいつものルーティンでお風呂に入っていたのに、介助が必要になるとご家族の都合に合わせることが多くなるでしょう。
となると、お風呂に入る意欲が低くなり、お風呂を嫌がる原因にもなります。
言われてみれば、私の手が空いたときに「お風呂に入ろう」と声をかけていたような気がします…。
お風呂を嫌がる理由には、いろんなものがあるんですね…。いくつか思い当たることがありました。
お母様に当てはまりそうなものがあって良かったです。
お母様にお風呂に入ってもらうために、特に気をつけていただきたいのが声掛けです。すんなり入浴してもらえたり激しく拒否されたり、認知症の方は声掛けひとつで大きく反応が変わるんです。
どんな声掛けをすれば良いんですか?
例えば、次のような声かけが効果的かもしれません。
お風呂を嫌がる理由によって適切な声掛けは異なりますし、前に効果的だった声掛けで今回もすんなり入浴してくれるとは限りません。いろいろと試してみてください。
ここで、「しばらくお風呂に入ってないから入ろう」「汚れているからきれいにしよう」といった声掛けはNGです。お風呂に入っていると思い込んでいる場合、「汚れていない!」と反発されてしまうことがあるからです。
それ、よくあります!
「何日もお風呂入ってないだから、汚いよ」と言ったら「汚くない!」と怒鳴られてしまいました。良くない声掛けだったんですね…。
ご家族としては、清潔にしてほしいからそう言ってしまいがちですよね。
他にも、水を怖がっている様子でしたら、足湯から始めてみるのも良いかもしれません。無理に全身を洗おうとせず、「足湯だけ」「体を濡れタオルで拭くだけ」としていくうちに、気持ちが良くなってお風呂に入りたくなるケースもあるんです。
ものすごく汚れているわけでなければ、完璧を目指さないのも長く介護を続けていくコツですよ。
ご家族の負担を減らすために、介護サービスを活用してお母様にお風呂に入ってもらうのもひとつの方法です。
介護サービスっていろいろありますよね。どのサービスなら、お風呂の手伝いをしてもらえるんですか?
以下の介護サービスで入浴サービスを受けられます。もちろん、必要に応じて入浴介助もしてもらえますよ。
なかでも、デイサービスは入浴をするために利用している方も多いですね。デイサービスは、介護施設に通って利用するもので、入浴、食事、レクリエーションなどのサービスを受けられます。
体操をしたり体を動かす機会もあるので、運動不足の解消にもなると思いますよ。
母は家に閉じこもりきりなので、デイサービスを利用して、外出する機会を作るのも良いかもしれないですね。
入浴介助は介助のなかでも体力を使うものなので、介護サービスを活用してプロに頼ると、在宅介護の負担がだいぶ軽くなると思いますよ。
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