親御さんのお金の管理は、多くの方が頭を悩ませています…。もし、お父様が認知症だった場合、早い段階で児玉さんがお父様のお金の管理をできるようにしておくことをおすすめします。
親御さんのお金をご家族が管理できるようにする方法には、成年後見制度、家族信託、銀行口座の代理人制度、保険の指定代理請求制度、日常生活自立支援事業などがあります。が、多くの方法でご本人の判断能力があるうちに手続きをしないといけないんです。
そのため、お父様の判断能力が衰える前に、対策を打っておくことが大切なんです。
実家で一人暮らしをしている父の金遣いが荒くて心配です。先日、実家に帰ったら大量の健康食品が置いてありました。でも父はそれを買ったことをよく覚えていないようで…。請求書があったので、父が購入したものなのは確かです。でもそれを覚えていないなんて、認知症になってしまったのかもしれません…。
加えて、1ヵ月に10万円近くも口座から引き出しており、不要なものを買ったりしていないか心配です。水光熱費などは口座引き落としにしているので、現金で引き出す必要はないんです。
このままでは、お金を浪費して年金や貯金を使い切ってしまうかもと思い、私が通帳を預かろうと思ったのですが、父は頑なに渡そうとしません。何か対策はありませんか?
児玉さんが言う通り、お父様は認知症になってしまった可能性がありますね…。認知症の親御さんがいる方の多くは、お金や財産の管理に頭を悩ませているんです。
対策としては、以下のような方法があります。
成年後見制度とは、判断能力が低下している人の財産などを後見人が管理できるようにする制度です。成年後見制度には、「任意後見制度」「法定後見制度」の2種類があります。
任意後見制度とは、判断能力が低下したときに備えてご本人が任意後見人を立てて、生活に関する手続きや財産管理などを任せるための契約をする制度。ご本人が後見人や契約内容を選べるのが特徴です。
ただ、認知症になって既に判断能力が低下しているとみなされると、任意後見制度による後見人の契約はできません。
つまり、任意後見制度を利用する場合は認知症になる前に契約を済ませておかないといけないんですね。
法定後見制度は、ご本人が認知症を発症した後でも契約が可能な制度です。また、判断能力が低下している状態で契約を結ぶこともあり、ご本人がおこなった法律行為を取り消すことも可能。不要なものを買ってしまった場合も、後見人がその売買を取り消せるんです。
ただ、柔軟な資産運用ができないというデメリットもあります。
家族信託は、財産の一部、もしくは全部を家族が管理できるようになるもの。親御さんの預貯金はお子さんであっても引き出しはできません。が、家族信託契約をして信託用の口座に親御さんのお金を移しておけば、お子さんも入出金が可能になります。
つまり、お父様の判断能力が低下することに備えて予め家族信託をしておけば、もしお父様が認知症になってしまっても児玉さんがお金の管理をできるようになります。
法定後見制度では、収入を得ているアパートやマンションなどの不動産があっても、改修費用のために後見人が財産を利用することは難しいです。一方で、家族信託は契約内容を柔軟に決められるので、ご家族がご本人の財産から改修費用を出すこともできるんです。
家族信託って名前を聞いたことはありましたが…。柔軟にお金の管理ができるんですね。考えてみても良いかな…。
ご本人が入院や介護施設に入居して銀行窓口やATMに足を運べなくなった場合に、ご家族が代わりに入出金できるようにするのが代理人制度です。
ただ、もしお父様が認知症になって銀行が口座を凍結してしまった場合は入出金はできなくなります。
えっ、じゃあ、父が認知症になって介護施設に入ったときに父の口座からお金を引き出せないということですか?
緊急時に限って言えば、銀行が特例として認めてくれる場合があります。ただし、認知症などの診断書、介護施設の請求書、家族関係がわかる戸籍といった証明が必要です。
しかし、この措置はあくまで一時的なもの。継続的にお金の引き出しが必要な場合は、成年後見制度などの利用が必要です。
入院などでお金が必要になった場合、保険会社に保険金を請求しますよね。でも、ご本人が認知症などで手続きができなくなる可能性も。そこで事前に代理人登録をしておけば、ご家族が代わりに保険金や給付金の請求ができるようになります。
認知症になると、保険の請求手続きなどをするのも難しくなります。そのため、将来に備えて指定代理請求制度を活用するのも良いかもしれません。
日常生活自立支援事業って初めて聞きました。
なじみのない言葉ですよね。日常生活自立支援事業は、地域の社会福祉協議会が提供しているサービスで、判断能力が低下した人の生活を支援します。
依頼できる内容は、お金の管理も含めて多岐にわたります。例えば、以下のようなことを依頼できますよ。
へー!いろんなことが頼めるんですね。
利用したい場合は、お父様がお住まいの地域の社会福祉協議会に連絡してくださいね。
もし、父の状況がもっと悪くなって、認知症になってしまったらどうなってしまうんでしょうか?そうなる前に私が父のお金の管理をできるようになっていれば良いとは思うんですが…。
認知症によるお金のトラブルは意外と多いです。例えば、以下のようなものがあります。
認知症によって気持ちの抑えが効かなくなることで、不要なものにお金を使ってしまう可能性もあります。私たちだったら「今月はお金を使いすぎているから買うのを止めよう」「欲しいと思ったけど、本当に必要?」と考えて購入を思いとどまる場合でも、気持ちの抑えが効かないので、「欲しい」と思うままにお金を使ってしまうんです。
なかには、支給されてすぐに年金を使い切ってしまったり、貯金を使い込んでしまうケースもあるんです。
それはとても困ります!私も経済的な支援をいつでもできるわけではありませんし、父には無駄遣いせずにいてもらわないと…。
それに、今後、介護が必要になったらお金がかかるだろうし…。
高齢者を狙った詐欺は、ニュースでよく報道されていますよね。父も詐欺にあうんじゃないかと心配で…。
おっしゃる通り、詐欺にあうご高齢者は少なくありません。しかも、詐欺とは言えなくても、ご高齢者に商品を半ば無理やり購入させる悪徳な業者もいます。
判断能力が低下してくると詐欺や悪徳業者を見抜けず、その被害に遭いやすいんです。
認知症でなくても年を取ると判断能力が衰えてきますし、その前に私がお金を管理して、対策をとっておくことが大切ですね。
認知症の方の典型的な症状のひとつに、ものを盗られたと思い込む「物盗られ妄想」というものがあります。なかでもお金や通帳を盗まれたと思い込むケースがとても多いんです。
これは、認知症によって物忘れが増えて財布や通帳をしまった場所を忘れてしまった結果、誰かに盗まれたと思い込むことによるもの。ご家族が良かれと思って財布や通帳を預かった結果、それを盗まれたと勘違いしてしまうパターンもあります。
父の財布や通帳を預かればお金のトラブルはなくなると思いましたが…。そういうわけではないんですね。
お父様の財布や通帳を預かる場合は、お父様が納得したうえで預かりましょう。
ただ、もしお父様が認知症になったら、納得のうえで財布や通帳を預けたとしてもそのことを忘れてしまう可能性も。その場合は、少額のお金を入れた財布をお父様に渡しておき、通帳は預かっている旨はメモなどを貼っておくと良いでしょう。
介護施設に入ったり入院した際に、認知症によってご本人がお金を下ろせないと費用の立て替えが増える可能性があります。
銀行では基本的には本人以外の出金はできませんから、お父様が認知症になってしまって預金が引き出せないとなると、ご家族が支払うことになってしまいます。
本人が認知症になると、口座を凍結される危険性があるんですもんね。そうなると、私が費用を支払わないといけないのか…。
ちなみに、介護費用ってどれくらいかかるものなんでしょうか?
生命保険文化センターの調査によると、介護ベッド購入費などの一時的な費用は平均74万円、月々の費用は平均8万3000円もかかっているそうです。また、同じ調査によると、平均的な介護期間は5年1ヵ月。つまり、全体で580万円近くもかかるんです。
もちろん、このお金は基本的には親御さんの貯蓄や年金から捻出するもの。お父様が認知症になったり、介護が必要になってお金が引き出せなくなる前に、ご家族がお金の管理をできるように手配をしておくことをおすすめします。
参考:「介護報酬の算定構造」(厚生労働省)
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