実家で一人暮らしをしている母が認知症が悪化したせいか、お金の無駄遣いが増えてきました。先日はよくわからない健康食品を定期購入していたので母に聞いてみたら「もしかしたら買ったのかも」とあいまいな返事で…。
すぐにその健康食品は解約し、私が母の通帳とキャッシュカードを預かってお金を管理することに。私が生活費などは立て替え、あとで母の口座からお金を引き出しています。が、銀行に母が認知症と知られたら口座を凍結されると聞きました。このまま母の通帳とキャッシュカードを預かっていても良いのでしょうか?
お母様の通帳とキャッシュカードを預かっているだけなら問題はないと思いますが、お母様の口座からお金を引き出している場合、以下のようなリスクがあります。
えっ!?母の口座からお金を引き出すと罪に問われることがあるんですか?
あくまでお母様のお金を私的に利用していた場合です。基本的に口座のお金はご本人でないと出金できないとされていますが、生活費や医療費など、ご本人が使うためにご家族が引き出すのはOKとされる場合が多いです。
もちろん、お母様のためではなく、ご家族が自分の生活費や交際費などに使ってしまう場合は窃盗罪や横領罪に問われる可能性があります。
「罪に問われる」と聞いてドキドキしました。もちろん母の生活費に使っているので、問題なさそうですね。
注意していただきたいのが、ご親族間でのトラブルです。岡部さんがお金を管理していることをご親族が承知していない場合、のちにトラブルにつながる可能性があるんです。
どういうことですか?
将来的にお母様が亡くなった場合、相続が発生しますよね。その際に、当然ですがお母様の口座の貯蓄も相続対象となります。岡部さんが管理している期間に使用用途がはっきりしない出金があると、ごきょうだいなどの相続人とトラブルが起こる可能性があります。
また、岡部さんがお母様のお金を使い込んでいると思い込んだご親族が、銀行にお母様が認知症であることを知らせると口座が凍結される可能性もあります。
そんなことがあるんですね!一応、きょうだいには私が母のお金を管理していることは伝えてあります。トラブルを避けるために、使ったお金をはっきりさせておくことが大切そうですね。
やっぱり、口座が凍結されるリスクはあるんですね
おっしゃるとおりです。口座名義人の意思能力が低下していると判断した場合、その人の財産を守るために銀行が口座を凍結することがあります。凍結されると、出金や定期預金の解約・契約、キャッシュカードの再発行など、さまざまなことができなくなります。
銀行が意思能力が低下していると判断している基準は次の通りです。銀行によって異なることもありますが、概ね以下のポイントと考えて良いでしょう。
うーん、たぶんまだ母は大丈夫だと思います。この3つのことができなくなったら、すぐに口座が凍結してしまう、ということですね。
いえ、ご本人が窓口で手続きする必要がある場合や、ご家族からお母様が認知症と申告がなければ銀行側は判断しようがありません。
ただ、だからといって対策をしておかないといざというときに口座が凍結されてしまって困る可能性がありますから要注意です。
もし、母の口座が凍結してしまったらどうしたら良いんでしょう?母の生活費すべてを支払えるほどお金に余裕がなくて…。
万が一、お母様の銀行口座が凍結されてしまったら、現状は法定後見制度を利用して解除するしか方法はありません。
法定後見制度とは成年後見制度のひとつで、認知症などで判断能力が低下した人の代わりにご本人の財産を管理する後見人を立てるもの。ご家族が後見人となることもできますが、家庭裁判所がふさわしくないと判断すれば弁護士などの専門家が後見人になることもあります。
家族が後見人になれないこともあるんですね!
はい。弁護士を成年後見人とする場合は、毎月報酬が発生します。総資産額にもよりますが、月2~5万円かかるとされています。
お金がかかるのかぁ。それは嫌ですね。銀行口座を凍結されないように対策しておいた方が良さそう…。
認知症の母の銀行口座が凍結されないようにするには、どうしたら良いんでしょう?
お母様の銀行口座の凍結を防ぐためには、以下のような対策が考えられます。
銀行には口座名義人ご本人が手続きができなくなった場合に備えて、ご家族などが代理で入出金ができるようになる「代理人指名サービス」があります。
代理人指名サービスとは、ご本人の意思能力が低下したときに代わりに銀行手続きができるように代理人を登録できるものです。
そんなサービスがあるんですね!
ただ、代理人指名サービスはご本人が既に意思能力が低下している場合には利用できません。どういった状態だと意思能力が低下していると判断するのかは銀行によって異なるので一概には言えないのですが…。
代理人指名サービスでご家族を登録しておけば、入出金や通帳の再発行などもご家族ができるようになります。
任意後見制度は、ご本人が判断能力があるうちに信頼できるご家族と財産管理などをしてもらえるように契約を結んでおく制度です。これも法定後見制度と同じく、成年後見制度のひとつです。
法定後見制度と異なるのは、法定後見制度が認知症などで既に認知機能が低下した方の後見人を立てる制度であるのに対して、任意後見制度はごご本人の認知機能が低下する前に後見人を立てておく点です。
法定後見制度ではご本人の判断能力が低下している状態のため、ご本人が後見人を選ぶことは難しいです。ですが、判断能力が低下する前の任意後見制度であればご本人が信頼できる人を後見人として選べるんです。
つまり、法定後見制度では家族以外の弁護士さんが後見人になる可能性があるけど、任意後見制度であれば家族が後見人になれるということですね。
それに、後見人の権限をご本人が決めることも可能です。法定後見制度では基本的には後見人の権限は法律で定められています。一方で、任意後見制度ではご本人の希望で後見人に依頼することを決められます。例えば、財産管理や介護施設の入居などの契約といったことです。
ご本人の希望に合わせて後見人の権限を変えられるのが、任意後見制度の使いやすいところですね。ただ、次にお話しする家族信託制度よりも手続きが煩雑なのが難点です。
家族信託制度とは、ご本人が元気なうちにご家族に財産管理を任せる契約ができる制度です。家族信託をすると信託用の口座を新しく開設し、その口座にご本人のお金を移動させます。
この制度を利用すれば、信託用の口座をご家族名義で作るので、ご本人が認知症によって判断能力が低下した場合でも口座凍結されることはありません。家族信託制度では介護施設の入居などの生活に関わる契約をおこなえませんが、お金の管理の点では柔軟な対応ができるのがメリットです。
なるほど。母の口座凍結を防ぐにはいくつか選択肢があるんですね。どれも一長一短ありそうなのでよく検討してみます。
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