サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)への入居を検討するにあたり、入居後に起きるかもしれないトラブルについて心配される方もいると思います。入居後に困らないようにするためには、問題点をよく理解し、事前に防いだり、対処法を用意しておくことが重要です。
この記事では、サービス付き高齢者向け住宅に入居した際のよくある問題点と対処法を解説していきます。ぜひ参考にしてください。
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サービス付き高齢者向け住宅とは、基本的に介護を必要性とせず自立している高齢者のための住まい。バリアフリーの設備が整っており、安否確認、生活相談などのサービスを提供しています。
また、サービス付き高齢者向け住宅には「一般型」と「介護型」の2種類あります。「一般型」は、安否確認や、生活相談などの生活面でのサービスの提供のみで、基本は一般的な賃貸住宅と同じように生活ができる、自由度の高い施設です。介護が必要になった場合は、訪問介護など外部のサービスと契約をすることで必要な分だけのサービスを受けられます。
「介護型」は、特定施設入居者生活介護の指定を受けており、介護サービスも提供します。
現在では、サービス付き高齢者向け住宅の約9割が「一般型」のため、この記事では「一般型」の問題点・解決策について解説していきます。
サービス付き高齢者向け住宅の問題点を「サービス面」「金銭面」「生活面」の3つの視点から解説します。
サービス付き高齢者向け住宅の「サービス」とは、安否確認や、生活相談など「生活面でのサービス」のことを指します。サービス付き高齢者向け住宅には「介護のサービス」提供はありません。
サービス付き高齢者向け住宅で「介護サービス」の提供がないことによって、どんな問題点があるのでしょうか。まずは、「サービス面」の問題点を2点見ていきましょう。
サービス付き高齢者向け住宅の「一般型」は、基本的に介護の必要がない自立している高齢者のための住まいのため、介護サービスの提供はありません。
法律によりバリアフリー設計となってはいるものの、介護の設備はなく、施設のスタッフが直接、介護サービスを提供することはありません。また、介護や看護の資格を持っているスタッフが必ず常駐しているとは限りません。
サービス付き高齢者向け住宅に入居中の方が介護サービスを受けたい場合は、外部の介護業者と契約し、介護サービスを受けることになります。
実際に国土交通省のアンケート調査結果では、「職員の数が少ない」「サービスと提供する職員のレベルが低い(経験不足など)」など、入居者に対してのケアが足りないという声があります。
長く入居している間に介護度が上がる可能性や、認知症が始まる可能性もあります。そういった場合にサポートが受けられず、困るという問題点があります。
参考:「サ高住の供給状況等に係るデータ」(国土交通省調査)
介護の必要がない自立している高齢者も多くいますが、実際のサービス付き高齢者向け住宅には、介護度の高い方や認知症の方も入居している現実があります。
2020年に発表されている国土交通省の懇談会資料によると、サービス付き高齢者向け住宅に入居している方の3割強が要介護3以上です。また、認知症を持つ入居者も増えています。
サービス付き高齢者向け住宅には、介護や認知症に対応できる体制が整っていない施設が多くあります。そのため、要介護度の高い方や認知症の方と共同生活するうえで、トラブルが起きる可能性が高くなります。
出典:「情報提供サービス付き高齢者向け住宅の現状等」(国土交通省)
では、どうして「サービス付き高齢者向け住宅は自立している高齢者向けの施設」とうたっているにもかかわらず、要介護度の高い方や認知症の方が入居している実情があるのでしょうか。
それには、サービス付き高齢者向け住宅の入居者の高齢化が考えられます。2020年の国土交通省の懇談会資料によると、サービス付き高齢者向け住宅の入居者の年齢層は、85歳以上が5割強と一番多く、75歳〜84歳が3割、全体の9割弱が75歳以上という結果が出ています。
加えて、入居時は元気であっても、長く暮らし、年齢を重ねるとともに要介護度が高くなることもあるでしょう。
また、空室を埋めたい運営管理者の希望により、利益を優先して要介護度の高い方や認知症の方を受け入れてしまっている施設も一部にはあるようです。
出典:「情報提供サービス付き高齢者向け住宅の現状等」(国土交通省)
施設を利用するにあたって、金銭面の悩みは必ずついてくるもの。サービス付き高齢者向け住宅にはどういった「金銭面」の問題点があるのでしょうか。
3点解説しますので、参考にしてください。
サービス付き高齢者向け住宅は、一般的な賃貸住宅よりも費用が高い傾向があります。その理由は、バリアフリー設計のためコストがかかり、家賃自体が高くなってしまうことと、安否確認や、生活相談などのサービスを提供していることです。
さらに、サービス付き高齢者向け住宅は、家賃に加えて「食費」「光熱費」「生活サービス費」など、一般的な賃貸住宅にはないサービスの費用がかかります。
しかし、有料老人ホームなどの施設と比べると、費用を抑えられる場合があります。サービス付き高齢者向け住宅は、初期費用が有料老人ホームより安い場合が多いからです。また、サービス付き高齢者向け住宅は介護サービスを提供していないため、介護費用はかかりません。
一般的な賃貸住宅よりは費用がかかるとはいえ、スタッフが見守ってくれることを考えると、安心な住まいと言えます。
サービス付き高齢者向け住宅は、介護サービスを提供していないので、介護が必要になった場合には訪問介護などの外部のサービス業者と契約する必要があります。つまり、家賃などの施設自体にかかる費用に加えて、介護の費用がかかるのです。
介護サービスが必要ない方、あるいは必要だとしても少ない方は安く済みますが、多くのサービスが必要な方は費用がかさんでいきます。ただし、訪問介護などの介護サービスについては、ほとんどの場合で介護保険が適用されます。
もし、サービス付き高齢者向け住宅に入居してから介護が必要になった際には、施設の生活相談を利用したり、ケアマネジャーに相談してみましょう。
サービス付き高齢者向け住宅に入居中、介護サービスを受けたい場合は、外部の介護事業者を利用することになります。数ある介護事業者の中で、どの事業者を利用するかは入居者が自由に選べます。入居前から利用していた介護サービスを、入居後にそのまま利用することも可能です。
サービス付き高齢者向け住宅では、介護施設を併設している場合もあります。ただ、ごく一部では、その併設した介護施設のみの利用を強要される「囲い込み」が発生しているので注意が必要です。
本来、サービス付き高齢者向け住宅では、介護事業者やサービス内容、ケアマネジャーなど、自由に選択できます。しかし、強制的に利用する介護事業者を指定される悪質な行為が「囲い込み」です。
さらに悪質になると、必要のない介護まで受けるように促され、過剰な介護費用を加算させようとする場合もあります。
併設している施設を利用すること自体には、施設同士が密な連携を取れるという利点もあるため、併設施設をおすすめされることもあるでしょう。その際に、入居者の意見をきちんと聞いて、最終的に好きな施設を選べるかどうかが重要です。
サービス付き高齢者向け住宅に入居した後、普段の生活はどういったものになるのでしょうか。ここでは、「生活面」の問題点はどんなものがあるのか、2点解説します。
「自由な生活が送れる」のが魅力のサービス付き高齢者向け住宅ですが、施設によってはその自由が制限されることもあります。なぜなら、自分の欲しい設備が自室ではなく、共有スペースにある場合があるからです。
昨今では、自室にトイレがあるのは一般的ですが、それでも浴室やキッチンまで設置されているサービス付き高齢者向け住宅は多くありません。そうした施設の場合、好きな時間にお風呂に入れなかったり、ちょっとした料理を気軽にできないでしょう。
時間を気にせずゆっくりお風呂に入りたいなら浴室が自室にある施設、入居後も自炊をしたければキッチンが自室にある施設を選ぶ必要があります。
入居後に「思ったより自由じゃなかった…」とならないよう、入居後の生活をしっかりイメージし、自分の希望に合った施設を選ぶのが大切です。
サービス付き高齢者向け住宅の多くは食事を提供していますが、その食事が口に合わないこともあるかもしれません。
サービス付き高齢者向け住宅協会(サ住協)の実施したアンケートでは、「実際入居してみて期待外れの点」に「食事」が一番多く挙げられています。
例えば、調理師が栄養バランスを考え、毎日手作りする施設もありますが、人件費や材料費を抑えるために、電子レンジや湯煎で温めただけのレトルト食品を提供する施設もあります。特にレトルトなどの食事は、普段食べ慣れておらず口に合わない人もいるでしょう。
入居前に事前見学や体験入居をした際には、施設の食事を一緒に摂れます。事前見学や体験入居を積極的に利用して、食事が自分の口に合うか試してみましょう。
参考:「サービス付き高齢者向け住宅に関するアンケート調査の結果のご報告」(サ住協)
サービス付き高齢者向け住宅に入居した際の問題点を見てみましたが、その多くは、入居前のチェックで回避できます。そのために、事前見学や体験入居を利用しましょう。
事前にスタッフとどれだけ打ち合わせをしていても、実際に見てみないとわからないことはたくさんあります。事前見学や体験入居では、実際の生活リズムやスタッフの対応などを肌で感じられるので、入居後の生活のイメージを作りやすいです。
また、見学する施設が少ないと十分に比較ができず、誤った判断をしてしまう可能性があります。反対に見学する場所が多すぎても、時間がかかってしまい大変です。最低でも2ヵ所はまわり、余裕があれば3〜4ヵ所見学すると良いでしょう。
事前見学や体験入居といっても、ただ過ごすだけではせっかくの訪問がもったいないです。
注意するポイントはたくさんあります。以下のチェックポイントリストを参考にしてください。
アクセス
周囲の環境
入居スペース
共有スペース
浴室
設備メンテナンス、清掃
スタッフ
入居者
食事
サービス付き高齢者向け住宅に入居する前に、事前見学や体験入居を利用して、確認したいポイントを紹介しました。事前見学や体験入居では、普段の生活を快適に過ごせるかをイメージできます。
普段の生活のイメージの他に、「もしも」のときに備える施設であるかどうかのチェックも大切です。
ここでは事前見学や体験入居でのチェックのほかに、「もしも」のときに備える、入居前に確認したいポイントを紹介します。
スタッフ体制について
※1 15~20世帯につき1人以上、要介護者・認知症高齢者の場合は、10人につき相談員が2人以上
緊急時について
施設について
入居前に念入りにチェックしていたとしても、身体状況の変化などによって「入居前の想定と違った…」ということもありえます。入居したサービス付き高齢者向け住宅に住み続ける中で、問題が解決できれば良いですが、状況によっては「転居」が解決につながる場合もあります。
そのため、入居後に転居を考えた際に困らないために、施設をいくつか候補に挙げておくと安心できます。
しかし、どういった場合に転居を考えるのでしょうか。「介護が必要になった場合」と「想像していた生活環境と違った場合」の2つのパターンにおいて、転居先の選択肢となる施設を見てみましょう。
サービス付き高齢者向け住宅に長く暮らしていくうちに、介護が必要になったり、認知症を発症する可能性は大いにあり得ます。
しかし、サービス付き高齢者向け住宅は介護や認知症のケア体制がないので、満足のいくサポートが受けられないことも。外部の介護サービスを使えば生活ができる場合は心配ありませんが、手厚いサポートが必要な場合には、希望に合ったケアを提供している介護施設への転居を考える必要があります。
介護が必要になってから探すと時間がかかってしまうため、入居前に介護が必要になったときの転居先の候補も、一緒に見つけておくことがおすすめです。
サービス付き高齢者向け住宅に入居してみたら、想像していた生活スタイルと異なることもあり得ます。
「入居時には自炊するつもりだったけれど、全然料理しなかった」「トイレが共有でも良いと思っていたけれど、やっぱり自室に欲しい」など、生活していくなかでの施設面の希望の変化もあります。
また、「食事がどうしても口に合わない」「スタッフや他の入居者と気が合わず馴染めない」など、困りごとも出てくるかもしれません。
長く住む場所ですから、嫌なことはなるべく少ないに越したことはありません。どうしても住み続けられないと思ったら、他のサービス付き高齢者向け住宅や別の形態の施設など、転居を視野に入れられるよう、事前に候補を用意しておくといいでしょう。
サ高住の問題点は、大きく分けて3つ挙げられます。1つ目は「サービス面」。サ高住には介護サービスがないため、「自身に介護が必要になったときに困る」「介護が必要になった場合に、外部のサービスを利用しなければいけない」などの問題点があります。2つ目は「金銭面」。「一般の賃貸住宅よりは費用がかかる」「介護サービス費の費用が、サ高住の費用と別途でかかる」などの問題点があります。3つ目は「生活面」。「浴室、キッチンなどが共有スペースになっており自分の自由に使えない」「食事が合わない場合もある」などの問題点があります。
サ高住に入居する前にスタッフの人数体制、緊急時の対応などを確認しておくことをおすすめします。また、施設までのアクセス、周辺の環境、施設自体の使い勝手、設備などもチェックしておきましょう。サ高住に入居後の生活をよくイメージし、そのイメージと大きな差異がないことが大切です。
ほとんどの施設は、事前見学や体験入居ができます。サ高住に入居した際に「思っていた雰囲気と違う」とならないために、実際に自分の目で確認できる事前見学や体験入居を利用しましょう。施設の広さや周囲の環境だけでなく、職員と入居者の空気感、普段はどう過ごしているのかも肌で感じることができます。また、その際に施設の食事を摂ることをおすすめします。入居後に食事が口に合わないという不満を抱えている方が多いからです。
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