さまざまな性格の人が入居しているので、トラブルが起こってしまうことはあります。ご入居者同士の相性によるものや認知症が原因のものなど、どうしても避けられないケースもありますので、ある程度は仕方がないと割り切りつつ、何かあった際は冷静に対応していきましょう。
「入居したけど、他の入居者と関係が悪くなって退去した」という話を聞いたのですが、老人ホームでは人間関係のトラブルは起こりやすいのでしょうか?
うーん、そうですね…。頻繁に起こる、とは一概には言えませんが、いろんなバックグラウンドを持った人が集まって生活しているわけですから、人間関係のトラブルが起こりやすいとは言えます。
やっぱり、そうなんですね。今、父の老人ホームを探しているんですが、父はとてもおとなしい性格なので、偏屈な人や気の強い人がいると肩身の狭い思いをしてしまうんじゃないか、と心配なんです。
そうだったんですね。老人ホームで起こるトラブルには、いくつかケースがあります。例えば、林さんがおっしゃるような、入居者さん同士の相性によるものもそのひとつです。
具体的には、気の合わない入居者さんに対して悪口を言ったりいじわるをしたり…ときには喧嘩に発展してしまうことも。また、入居者さん同士の恋愛感情のもつれによるトラブルも起こることがあります。
恋愛ですか!?
意外かもしれませんが、やはり、ご高齢者でも男女が同じ空間で生活している以上、恋愛感情を持つことはあるんです。
お2人の関係が良好であれば良いのですが、一方的に強すぎる好意を持っていたりすると、「他の異性と話しているだけでいじわるされた」といったトラブルや、ストーカーのようになってしまう事例もあるようです。
老人ホームでそんなことが起こるんですね…。
あとは、認知症の症状が原因のトラブルもあります。
例えば、「認知症の人が自分の部屋がわからなくなって、他の人の部屋に入ってしまう」「”物を盗られた”という妄想をしてしまう」「認知症の人が大声で騒ぐので、他の入居者さんがストレスに感じる」といったことです。
認知症の症状ならしょうがないことですが、それでも「しょうがない」では割り切れないところですね…。
おっしゃる通りです。また、ご高齢者は耳が遠いことが多いので、騒音トラブルも起こりやすいですね。テレビの音や電話の声が大きすぎて、近くの居室の人から苦情が来たり…。
ああ、それは父もやってしまうかもしれないです。最近、テレビの音が大きくなってきているので。
共同生活なので、やはりお互いに配慮し合う姿勢が大切ですよね。
ちなみに、ご入居者同士以外では、施設スタッフとのトラブルもあります。「無視をする」「いじわるをする」「乱暴な対応をする」といった苦情を聞くことがあります。
えっ、スタッフさんがそんなことをするんですか?
これは、思い込みやすれ違いといったコミュニケーションが足りていないことが原因になっていることも多いです。
「無視をしたのではなく、忙しくて対応ができなかっただけ」ということもあります。もちろん、忙しくても入居者さんを不安にさせるような対応をしないようにするのは当然のことなんですが、人手が足りなくてそれが徹底できないときがあるのも事実です。
スタッフさんは、本当に忙しいですもんね…。
老人ホームは、他の入居者さんやスタッフさんと関わりながら生活していく場所ですから、ある程度のトラブルは仕方ないと割り切って冷静に対応してください。その方が、お父様やご家族にとっても穏やかに暮らしていけると思いますよ。
実際にトラブルが起きてしまったら、どのように対応したら良いでしょうか?
まず、ご家族が対応できることは、入居しているご本人の話をよく聞くことです。
特に施設に入居してすぐの頃は、まったく異なる環境で過ごしているわけですから、寂しさや不安を感じていることがあります。寂しさや不安から「トラブルが起きている」と言うこともあるので、気持ちをよく聞いて寄り添ってあげることで、問題が解決することもありますよ。
なるほど。話をしっかり聞いてあげるだけでも解決することがあるんですね。
あと、これはお父様には関係のないことかもしれませんが、入居するのがトラブルを起こしやすい性格の人の場合、事前に施設に伝えておくことが重要です。
「伝えると入居を拒否されるかも」と思うご家族もいるようなのですが、入居してからトラブルの種が明らかになると、問題が大きくなって強制退去になることもあるんです。
あぁ、怒りっぽい人とか、頑固な人はトラブルを起こしやすそうですもんね。
そうなんです。ただ、ご家族だけで対応できることには限りがあるので、トラブルが大きくなりそうだったら施設に相談してください。ご入居者同士のトラブルだったら、「食事の席を離す」「居室を変更する」といった対応をしてくれることがあります。
万が一、施設に相談しても対応が悪いときには苦情の相談窓口に相談しましょう。
「相談窓口」ですか?
はい。施設を運営している法人や市町村などで介護に関わる苦情相談窓口が設置されていることが多くあります。施設に直接言っても対応してもらえないときや、第三者の窓口に相談したい、というときに利用してみてください。
契約の際にもらえる重要事項説明書に、苦情相談窓口の連絡先が記載されていますので、何かあったときにはこちらに連絡してみてください。
そこまで大事になるようなトラブルが起きないことを祈りますが…頭には入れておきます。
それでも解決できないときは、施設の転居をするのもひとつの手です。
ただ、ご高齢者は環境の変化に対応する力が低下しているので、老人ホームを変えることが大きな負担になることもあります。そのため、施設の住み替えは最終手段として考えてくださいね。
先にトラブルが起こったときの対応方法についてお伝えしましたが、トラブルが起こりにくい施設の特徴についてもお話しておきますね。
はい、ぜひ教えてください。
まずは、施設のトラブル対応力の高さです。集団生活なので、トラブル自体は起こってしまうものです。なので、トラブルが小さなうちに対処して大事にさせないような対応力がある施設を見つけましょう。
トラブル対応力が高いかどうかは、どうやって見分ければ良いんですか?
見学時に、施設の担当者に事例を聞いてみましょう。どんなトラブルがあって、どのように対処したのかを詳しく説明できるのかをチェックしてください。もし、話をはぐらかす場合はトラブルへの対応力が低い可能性があります。
なるほど、実際に起きたトラブルにどう対応したのかを聞いてみるんですね。
あとは、体験入居で入居者さんとスタッフさんの関係性をチェックするのも良いでしょう。スタッフさんが普段からちゃんと見守りをしているか、入居者さんとのコミュニケーションが取れているのかも大事な確認ポイントです。
施設の生活を体験するだけじゃなく、いろいろと見なきゃいけないところがあるんですね。
トラブルへの対応は、施設の対応力が大切とはいえ施設に任せきりではなくご家族の協力が不可欠です。何かあった際にスムーズに連携が取れるように、施設と信頼関係を築いていってくださいね。
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