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認知症患者の増加が世界規模で問題になっている状況を受けて、多くの国で認知症の予防や超初期段階で使う薬の開発がおこなわれています。 そこで、そうした研究を支援するための、とある研究を東京大学がおこなっています。 それは「J-TRC研究」という、臨床試験参加者を集めるシステム。認知機能に異常が出ていないものの認知症の予備軍とされる人を、ボランティアとして集うシステムです。 この研究の開始から3年を迎え、「認知症治療薬の開発の新たな段階を迎えている」と研究チームは述べています。 ”認知症予備軍”を見つけるシステム 東京大学の研究チームがJ-TRC研究の進捗を報告し、この研究がアルツハイマー型認知症の超早期治療に貢献することを伝えています。 J-TRC研究は、アルツハイマー型認知症の症状のない50〜85歳に登録してもらい、予防薬の臨床試験の参加者を集めることが目的です。 J-TRC研究に参加すると、定期的に認知機能の検査をおこないます。そうして、参加者一人ひとりのアルツハイマー型認知症のリスクをチェック。症状が出る前の超初期段階でもアルツハイマー型認知症の可能性を発見します。 これまでの認知症薬の開発は、主にすでに症状の出ている人が対象でした。症状がないと、認知症であると判断できなかったためです。しかし、症状が出ている段階では、すでに多くの脳の細胞が損傷しており、薬の効果がないという問題がありました。 そのため、症状が出る前の超初期段階で効果のある薬の開発が、世界中で進められています。 ただ、その薬の臨床試験の対象者を探すシステムがないのが課題でした。症状がない人の大半は病院で検査などを受けず、認知症リスクが発見されないためです。 そこでこのJ-TRC研究で、超初期段階の人を発見するシステムを構築。参加者の同意のうえで、臨床試験をおこなえるようになりました。 現在、J-TRC研究に登録しているのは7500人ほど。すでに複数の臨床試験に参加しているそうです。 認知症を薬で予防する時代へ 現在、認知症の研究は「進行を遅らせる」から「発症を予防する」に移ってきているようです。 特にアルツハイマー型認知症は、発症の20年ほど前から脳に原因物質が蓄積するとされているので、症状が出ていなくてもリスクを検査できるそうです。 その段階で利用できる薬が開発されれば、高齢になってもより長く元気に活動できるようになるかもしれません。 そういった薬はさまざまな開発研究がおこなわれているようなので、私たちが使えるようになるのを期待したいですね。
2022/02/07
認知症の検査ができる新たな検査装置「Vrain」が発売になりました。 これを開発したのは、量子科学技術研究開発機構とアトックス社。従来の検査装置よりも小型で安価なため、大規模病院だけでなくさまざまな医療機関で導入しやすいとしています。 世界最小サイズで小規模施設でも導入可 量子科学技術研究開発機構(量研)とアトックス社が共同で開発した「PET装置 Vrain」は、センサー部分をヘルメット型にすることで小型化と安価な価格を実現したそうです。 PET装置とは、「PET検査」という放射性物質を利用した検査に使われる検査装置のこと。PET検査では、検査薬を注射して検査装置のセンサーで撮影することで全身のがんや悪性リンパ腫などの発見をします。 従来のPET装置は、トンネルのようなセンサー部分に全身を通して検査をおこなっていました。そのため患者は寝台に横になる必要があり、検査装置が大型になってしまう問題がありました。 今回の装置は、センサー部分をヘルメット型に変更。頭部の撮影に特化しており、脳腫瘍やてんかんの検査を想定しているそうです。将来的には、初期のアルツハイマー型認知症の発見にも役立つとしています。 また、従来の装置よりもセンサー数を4分の1から5分の1に減らし、装置の小型化と低価格化に成功。加えて、寝台の代わりにイスに座って検査を受ける形に変えることで、より狭いスペースでも導入できるようになりました。 ちなみにこの装置は、世界最小サイズだそうです。 そういった点を改良したことにより、これまで大型医療機関にしか導入されていなかったPET装置が、比較的に小規模な医療機関でも利用できるようになるとしています。 保険適用までは時間がかかる? 量研とアトックス社が開発した新型のPET装置によって、認知症の検査が変わるかもしれません。 今回の検査装置は、医療機関としても導入しやすく、患者の身体的負担を少なくする可能性があります。 例えば従来の検査装置では、寝台に30分ほど横になっている必要があります。腰痛を持っている人だと、もしかしたら腰が痛くて仰向けの体勢を保っていられないかもしれません。しかし、今回の装置はイスに座るので、従来型よりは腰の負担が少ないと考えられます。 ただ、検査費用が高額なことがネックです。 脳腫瘍やてんかんのPET検査は保険適用になっていますが、認知症はなっていません。そのため、従来の装置を使ったPET検査は30万円前後とかなり高額です。 もちろん、今回の検査装置は従来型より安価ですから、これよりも検査費用が安くなる可能性はあります。しかし、保険適用されるまでは、かなり大きな費用負担になることでしょう。 この検査装置で認知症検査ができるようになるまではもうしばらくかかりそうですが、多くの医療機関に広まると便利になりそうですね。
2022/02/04
世界的に増加傾向にある認知症人口。しかし、認知症にはわからないことも多いため、世界中でさまざまな研究がされています。 その中で、アメリカの心臓学会が発表したのは「高血圧が認知機能の低下の要因になる」という研究結果。高血圧によって、記憶力や注意力、集中力などのさまざまな機能が低下するそうです。 高血圧が脳の機能を低下させる 高血圧が認知機能を低下させる要因であるという研究結果を、アメリカの心臓学会が発表しました。 この研究は、研究開始時に平均60歳の約7000人を対象におこなったもの。血圧と認知機能テストを4年間にわたって調査しました。 その結果、血圧が高めで降圧剤を使用していない人は、認知機能の低下が加速しやすいことがわかりました。 加えて、高血圧な人はそうでない人に比べて、記憶力と全体的な認知能力が大きく低下していました。また、血圧が高い状態が短期間だとしても、認知機能の低下に影響するかもしれないとしています。 さらに、別の研究でも高血圧と脳機能の関連性が示されています。 とある研究では、中年期に高血圧だと認知機能障害になる可能性が5倍、アルツハイマー型認知症になる可能性が2倍という結果が出ています。 また別の研究では、心臓に血液を供給する冠動脈の流れが悪くなることでおこる「冠状動脈性心疾患」があると、認知症や認知機能障害となるリスクが40%上昇することがわかっています。 これらの研究から、心臓の健康が脳の健康に関係していることがわかります。 高血圧も認知症も健康的な生活習慣で防げる さまざまな研究で、血圧と認知症や認知機能についての関係性が示されています。 認知症の中には「脳血管性認知症」という、脳梗塞や脳出血が原因で起こるタイプもありますが、高血圧が影響するのはそのタイプだけではないようです。 言わずもがな、高血圧は生活習慣病のひとつ。そのため、健康的な食事や運動習慣を取り入れることで予防が可能です。 また、認知症も健康的な生活習慣で防げるとされています。さらに、糖尿病や高脂血症などの生活習慣病によって発症リスクが高まるそう。つまり、認知症も生活習慣病のひとつと言って良いのかもしれませんね。 今回の研究結果で、悪い生活習慣は心臓にも脳にも悪いことがわかったので、少しでも健康的な習慣を取り入れていきましょう。
2022/02/04
高齢化や認知症患者の増加に伴い、認知症の予防が注目されています。 そのなかで「健康脳測定会」という脳の定期健診を通して、認知症の早期発見に力を入れているのがアグリマス社。同社とAIやビッグデータ事業に実績のあるKCCSモバイルエンジニアリング社が、認知症の早期発見システムの開発について業務提携しました。 ICT化によって「健康脳測定会」をさらに発展させたシステムを開発するとのことです。 気軽に脳の健康診断を アグリマス社が提供している「健康脳測定会」とは、脳の健康診断サービスのこと。半年に1度の頻度で測定をすることで、長期的な脳の状態を把握できます。 この測定は「身体機能」「認知機能」「生活機能」といった内容です。生活意欲、記憶力、空間認識力、歩行速度などのさまざまな項目をテストすることで、脳の健康状態を簡易的にチェックできるそうです。 また、その結果は「健康脳レポート」としてまとめられます。各項目の点数や、全体的な脳の状態を確認できます。 今回の業務提携は、これまでの「健康脳測定会」のノウハウやデータを発展させたシステムを開発するのを目的としています。 この測定の結果をオンライン上で確認できるようにすることで、遠方の家族も簡単に閲覧できるようになります。さらに、測定会で集めた膨大なデータを活用して、認知症の超早期発見や、一人ひとりに合わせた認知症予防メニューの提案も進めたいとしています。 今後は、自治体が運営する集いの場所や、健康サロンなどでの活用を目指しているそうです。 早期発見に貢献するサービス 高齢化が進む日本の課題のひとつである認知症。脳トレをしたり食事に気を使ったりして、発症予防に取り組むことも大切です。そしてそれと並行して、早く認知症を発見することも重要になっています。 今回のシステムは、デイサービスや地域の集いの場など、比較的自立度の高い高齢者が集まる施設に導入することを目指しています。 そういった施設であれば「まだ元気だけど、脳の健診だったらしてみようかな」と感じる高齢者が多く集まることが予想されます。すでに介護が必要になっている人ではなく、元気な高齢者が脳健診を受けることで、認知症の早期発見ができるというわけですね。 ただ、このシステムを利用するのに月額費用がかかるところがネックかもしれません。毎日チェックするものではないので、「月謝制ならやらない」という人も出てくるのではないでしょうか。 とはいえ、早い時期に認知症が発見できれば症状の進行予防ができるので、価値のあるシステムと言えますね。
2022/02/02
現在、認知症には進行を遅らせる薬はありますが、根本的な治療薬はまだ開発されていません。そのため、早い時期からの予防が大切とされています。 そういった状況をふまえて、東北大学からはじまった企業のコグスマートが、認知症リスクを把握する人工知能(AI)システムを販売しました。これは、従来の脳ドックにプラスして、現在の脳の健康状態や認知症リスクを確認できるシステムです。 今後、国内の医療機関の1000施設に加えて、海外の施設への拡大を目指すそうです。 MRI画像をAIが解析 東北大学の加齢医学研究所からスタートしたコグスマートは、脳機能に関するヘルスケアソフトを開発している会社です。 同社が開発したのは、「BrainSuite(ブレーンスイート)」というAIシステム。脳ドックで撮影したMR画像をAIが解析することで、今の脳の健康状態や認知症リスクを確認できます。 解析は、認知機能テストとMRI検査の2つの情報をもとにおこなわれます。その結果、今の脳の健康状態を教えてくれます。 また、健康状態が悪い場合は機能向上のため、健康な場合は状態維持のためのアドバイスを提供。結果レポートで、食事や運動などの脳に良い活動について助言をもらえるのです。 このシステムの目的は、若いうちから脳の健康状態を知っておくこと。認知症かどうかのチェックではなく、身体と同じように脳の健康診断をするということですね。 ちなみに同社によると、脳の衰えは認知機能の低下よりも先に、脳の記憶を司る「海馬」の体積に変化が出るそうです。そこで、このシステムではMRI画像をAIが分析し、医師の目視ではわからないほどの小さな変化を見つけて診断結果として提示します。 加えて、同年代の人の海馬の体積と比較。ランキング付けすることで、同年代と比べて体積が小さくなっているのかを客観的に判断します。 受診した人は、自分の脳の健康状態がどうなっているかが一目でわかるようになっています。 気軽に本格的な脳健診を 「認知症なんて、まだまだ先の話」と、思っている人も多いかもしれません。しかし、認知症のひとつであるアルツハイマー型認知症の原因物質は、発症の20年前から脳に溜まり始めるとされています。 この検査が、認知症を予測できるのかは明かされていませんが、認知症の根本治療法が確立していない以上、早めの予防をしておいた方が無難です。その予防のきっかけになりそうなのが、今回のシステムですね。 この検査は30代から受けられるそうですが、そんなに若いうちから検査を受けたいと思う人が多くいるのかは少し疑問ではあります。しかし中高年になると、漠然と自分の認知機能の変化を感じている人はいるのではないでしょうか。 そのため、「認知症テストはまだ早い」と思っている人でも、もう少し気軽な”脳の健診”で、自分の脳の状態を知っておくのは良いかもしれませんね。
2022/01/31
昨年2月、八王子市で実証実験を開始した認知症予防アプリの「脳にいいアプリ」。今月20日から、アプリ内で貯めたポイントをPayPayで利用できるようになったそうです。 このアプリでは、歩いたり、食事を記録するなど、認知症予防につながる活動をすると「健康ポイント」が溜まります。そのポイントをPayPayボーナスに変換することで、対応するさまざまなお店で利用できるようになります。 毎日の活動がPayPayに 昨年2月から八王子市と連携している「脳にいいアプリ」とは、ベスプラが提供する脳の健康維持・増進アプリです。 このアプリは、科学的に認知症予防に良いとされている「運動」「食事」「脳刺激」「ストレス緩和」「社会参加」の5つの要素を組み込み、手軽に認知症予防をできる内容になっています。 例えば、運動には「ウォーキングチャレンジ」が組み込まれ、仮想の散歩コースに挑戦。東海道五十三次コースや四国お遍路コースなどが設定されており、歩数に合わせてアプリ内のコースが進んでいきます。 また、脳の健康に良いとされる食品をその日に食べたのか、アプリに記録ができます。食べた品目をタップするだけの簡単な操作で、手軽に食事管理ができるようになっています。 このような認知症予防の活動をすることで、アプリ内で健康ポイントが貯まります。そのポイントは、八王子市内の協力店や地域のイベントで利用が可能。さらに今回、PayPayボーナスに変換できるようになったので、コンビニなどの幅広い店舗で利用が可能になりました。 シニアがほしい機能が詰めこまれている 「脳にいいアプリ」には、さまざまな機能が搭載されています。例えば、間違い探しなどの脳トレ、薬の飲み忘れ防止機能、自分の認知機能を確認できるテストなど、まだまだ元気に活動したい高齢者が求めている機能が詰め込まれています。 それだけに、「どれだけ高齢者が使いこなせるのか」という点が気になるところですが、それぞれの画面をシンプルにして、使いやすくする工夫はされているようです。 運動や脳トレなど、認知症予防のために気をつけている人は多いのではないでしょうか。それらを1つのアプリで完結できるのは、便利で継続がしやすいですね。 そういった活動がポイントとして買い物に使えるのは、認知症予防を継続する意欲にもつながるのではないでしょうか。
2022/01/25
認知症の予防について、新たな研究結果が発表されました。それは「ビフィズス菌MCC1274」という乳酸菌が、アルツハイマー型認知症の発症を抑制して記憶障害を予防するというものです。 現状では、軽度の認知障害を疑われる人やマウス実験の段階のため、研究グループは「今後はアルツハイマー型認知症の発症後の治療効果についても調査したい」としています。 脳内のアミロイドβ量が低下 名古屋市立大学は、森永乳業などとの共同研究で「ビフィズス菌MCC1274がアルツハイマー型認知症の症状を抑制することがわかった」と発表しました。 アルツハイマー型認知症は、アミロイドβ(ベータ)という特殊なタンパク質が脳内で異常な塊を作ってしまい、神経細胞を損傷させることが原因とされています。そのため、アミロイドβが脳内に溜まらないように対策するのが認知症予防には効果的とされており、世界中でさまざまな研究がおこなわれています。 今回の研究では、アルツハイマー型認知症を発症させたマウスにビフィズス菌MCC1274を経口摂取させて、記憶力や脳内のアミロイドβの状況を調べました。 その結果、このビフィズス菌を摂取したマウスは、記憶障害が予防され、脳内で新しい記憶を司る「海馬」という部位のアミロイドβ量が低下していました。一方で、思考や感情に関係するとされている「大脳皮質」では、アミロイドβの量の低下はなかったそうです。 研究グループは、脳内の一部で原因物質のアミロイドβの量が低下したため、記憶障害が予防されたと考えています。 今回の研究結果を受けて、研究グループは「アルツハイマー病発症後の治療効果について、さらに検討したい」と述べています。すでに、ヒトに対する臨床試験でも同様の結果が出ていますが、今回の研究ではそのメカニズムを解明した結果になりました。 乳酸菌の意外な効果 身近な食品にも使われているビフィズス菌が、アルツハイマー型認知症の予防になるとはちょっと驚きですね。 もしかしたら、将来”アルツハイマー型認知症を予防する健康食品”が、店頭に並ぶ日がくるかもしれません。 昨今、ヨーグルトやドリンクなどで、特定の健康効果を認められている商品も増えていますよね。それと同じように、食品で手軽に認知症を予防できるようになるかもしれません。
2022/01/24
「笑ってボケ米(まい)」と題して、長崎県佐世保市の米穀加工企業が”ボケ予防祈願米”を発売しました。この商品は、認知症予防に効果があると言われている「マインド食」「腸活」「笑い」を組み合わせた食品です。 販売元は「食品であり薬事的効能を示すものではありません。 笑いを摂ってください」としているので、あくまで「手軽に体に良い栄養素が摂れるもの」と考えたほうが良さそうですね。 笑いと健康食品のコラボ 認知症にはさまざまな予防策がありますが、佐世保市の有限会社マインドバンクが注目したのは、「マインド食」「腸活」「笑い」の3点です。 マインド食とは、魚や野菜、オリーブオイルなどを多く摂る「地中海式食事法」と、低脂質で高ミネラルな食事の「DASH食」を組み合わせたもの。こういった食事によって、脳血管性認知症の原因となる脳梗塞や脳出血のリスクを抑えられます。 また「腸内環境が認知症発症に関係がある」という研究結果もあります。腸内環境を整える腸活をすることで、認知症リスクを下げられることも示唆されています。 加えて、笑いと認知症についても研究がおこなわれているそう。よく笑っている人とそうでない人を比べると、笑っていない人の方が認知機能が低下しやすいという研究結果があります。 こういった「マインド食」「腸活」「笑い」の3つの要素を組み合わせたのが、「笑ってボケ米(まい)」。食べ方は、「お米1合あたり大さじ1杯を混ぜて炊くだけ」と簡単なのもうれしいですね。 自分の認知症予防の必要性を感じて開発 もともと同社は、特許製法を使って食材粉末をコーティングしたお米を販売している企業。今回の商品も、その技術を生かしてお米に健康食材の粉末をコーティングしたものになっています。 開発者によると「自身が高齢になって、認知症予防の必要性を感じた」という切実な理由から、この商品の開発に至ったそうです。 認知症予防には、健康的な生活習慣が大切と言います。お米で「ちょっとひと笑い」して、認知症対策するのも良いかもしれないですね。
2022/01/21
認知症の予防に関する、新たな研究が発表されました。アメリカの大学の研究データをもとに、カナダなどの研究チームが分析したところによると、運動習慣のある高齢者はそうでない人と比べて、脳の健康に必要なタンパク質のレベルが高いことがわかりました。 この結果は、すでに認知症の兆候が脳に出ている人に関しても同様で、運動によって認知機能の低下を遅らせることができるとしています。 400名以上の高齢者の脳を調査 この研究は、既存の高齢者研究プロジェクトのデータを分析したもの。もともとのプロジェクトでは、70~80代の400名以上の高齢者を対象とし、年に1回の身体検査や死後の脳の調査などがおこなわれていました。 今回の研究では、改めて対象者の脳を調べて、認知症の兆候やシナプスの情報伝達を高めるタンパク質のレベルを確認しました。このシナプスとは、神経細胞と神経細胞をつなぐ接合部のこと。脳内ではシナプスを介して情報の伝達がおこなわれています。 この研究の結果、運動量の多い高齢者の方が、タンパク質のレベルが高いことがわかりました。脳に認知症の兆候がある人でも、同じ傾向があったそうです。 健康な習慣が健康な脳をつくる? 今回の研究は、運動と脳の健康の関連を示してはいますが、運動すれば絶対に認知症にならないというわけではありません。しかし、この研究の他に「中高年期の運動習慣が認知機能の低下を抑える」としている研究はあるので、運動は脳の健康に一定の効果があるのかもしれませんね。 また、さまざまな研究で認知症リスクを高める要因が示されています。例えば、高血圧、糖尿病などの生活習慣病や、喫煙や過度なアルコールも認知症になるリスクが上がるそう。運動に加えて食事なども同時に見直せば、認知症になるリスクをさらに下げられるかもしれません。 「散歩の時間を増やす」「階段を使ってみる」など、ちょっとしたことならすぐにできますし、今からでも対策をしておきたいですね。
2022/01/21
歩く速度を測定することで、効率的にフレイルを予測できるという研究結果が発表されました。 フレイルとは「加齢によって心身が衰えた状態」のことで、要介護状態になる前段階とされています。これまでは、フレイルの判断には詳細な調査が必要でした。しかし、今回の研究結果を踏まえて「歩行速度の測定をすることが、簡易的なフレイル診断になるかもしれない」と研究グループは述べています。 さらに、フレイルになると認知症のリスクが上昇する可能性も示されました。フレイルの高齢者は、そうでない高齢者よりも認知症リスクが2.5倍以上も高い結果になったそうです。 歩行速度でフレイルを発見? ブラジルとイギリスの大学の共同研究グループが、歩行速度を測定してフレイルを簡易的に判断できると発表しました。 これまでフレイルの診断には「歩行速度の低下」「倦怠感」「体重減少」といった指標を使っていました。しかし、それには詳細な調査や測定器が必要で、複雑なものでした。 研究グループによると、歩行速度を測るだけで簡単に診断ができるので、フレイルの早期発見につながるとのこと。日常生活に支障が出てから治療するのでは手遅れになることもあるので、簡易的に調べられるのは助かりますね。 さらに研究グループは、フレイルの高齢者は認知症のリスクが高くなることも伝えています。フレイルのレベルが高い人はレベルが低い人に比べて、認知症のリスクが2.5倍以上も高いという結果になったそうです。 遺伝的に認知症になりやすい要因もあるそうですが、フレイルであることがそれ以上に認知症リスクを高めるとのこと。心身が弱っていることが、要介護状態を招くだけでなく認知症のリスクも上げるのですね。 自分や家族の身体状況の目安に フレイルは要介護状態の一歩手前の状況とされています。”要介護予備軍”と言ってもいいかもしれません。 その症状は「なんとなく気持ちが落ち込む」「外出がおっくうになった」など、あいまいなものが多いです。そういった理由もあり、診断するには詳細な検査が必要でした。 対して今回の研究では、「歩行速度を測ることでフレイルを簡単に診断できる」とわかりました。簡単に測定できますし、自分でも気を付けることができますね。 自分や家族の歩くスピードが遅くなったと感じたら、病院で相談してみるのも良いかもしれません。
2022/01/20
介護施設への入居について、地域に特化した専門相談員が電話・WEB・対面などさまざまな方法でアドバイス。東証プライム上場の鎌倉新書の100%子会社である株式会社エイジプラスが運営する信頼のサービスです。