おそらく認知症によるものでしょう。認知症になると、抑うつ状態になったり、無気力状態である「アパシー」になることがあります。さらに、高齢になると人に接する機会が減って脳への刺激が減少する傾向があるのでそうしたことが原因かもしれません。
デイサービスを利用するなど、お母様が人とコミュニケーションを取る機会を増やしてみてはどうでしょうか?
認知症の母の介護をしています。最近、母の顔が怖いというか、能面のように無表情なんです。もともと明るい方ではありませんでしたが、少し前まではテレビを見てよく笑っていました。でも、この1ヵ月くらいはそれもないんです。
これは、認知症の進行によるものなんでしょうか?
おそらく、そうだと思います。認知症の症状は個人差が大きいですが、急に進行することもあるんですよ。
どうして無表情になってしまったんでしょう?もちろん、前から物忘れが激しいなどの認知症の症状はありましたが、今は私の言葉にも無反応なんです。私の話を理解できているのかもわからないし…。
認知症の人が、無表情・無反応になってしまう理由はいくつかあります。例えば、以下のようなことですね。
認知症の人に限らず、介護が必要になると、どうしても1日の流れが同じになってしまいます。起床、食事、排泄、入浴…と日常の中の出来事が単調になりますよね。そのため、脳への刺激が少なくなって、脳の機能が低下してしまうんです。
そうなんですね…。母も1人では出かけられないのでずっと家にいますし、毎日、同じことの繰り返しになっています。
やはり、そうなってしまいますよね。
そのうえ、認知症の行動・心理症状(BPSD)である抑うつ状態になることもあります。
「抑うつ状態」ってうつ病ということですか?
基本的な症状は同じですが、一般的には抑うつ状態の方がうつ病よりも軽い状態を指します。
認知症の人の場合、認知症によってこれまで当たり前にできていたことができなくなったり、できないことで周囲に迷惑をかけていると感じることで抑うつ状態になります。すると、物事に無関心になり、無表情になってしまうんですね。
うーん、抑うつ状態なのかはよくわからないですね…。その次の「アパシー」ってどんな状態ですか?
アパシーは抑うつ状態と似ているんですが、すべてのことに無関心な状態です。抑うつ状態が気持ちが暗くなって落ち込むのに対して、アパシーは落ち込むことはありません。気持ちが明るくも暗くもならないフラットな状態なんですね。
ただ抑うつ状態もアパシーも、意欲がなくなったり関心が薄くなる点は共通しています。
無気力(アパシー)とは、自分から何かをしたいという自発性や意欲が著しく低下した状態のこと。名前のとおり、無気力で何に対してもやる気が起きない状態を指します。
例えば、歯磨きや着替え、入浴など普段の生活で何気なくおこなっていることを面倒くさがるようになる、外出が減って家にこもりがちになる、といったケースとして現れます。
暴力や徘徊などの目に見える症状とは違って、介護をしていても変化に気づきにくいので、進行を見逃しやすいBPSDでもあります。
認知症が進行すると、多くの人が共通した特徴の表情になることがわかっています。近年ではこの共通点を利用して、表情だけで認知症をチェックする技術も研究されているほどです。
表情だけでわかるんですか!?それはどんな特徴ですか?
やはり個人差はありますが、主な特徴は以下のようなものです。
「表情が乏しくなる」「表情が暗い」など、いくつか当てはまっているものがありますね…。
この「目つきが変わる」というのは、具体的にはどういうことですか?
目に生気がなくなって、常に眠たそうな雰囲気になるんです。ただその一方で、目つきが険しくなって、常に怒っているような表情になる人もいます。
本当に個人差があるんですね。
それに、長期間にわたって笑ったりすることがなくなると、顔の筋肉が衰えて顔がたれることも。そのため、急に老けたように見える場合もあります。
えっ、そうなったらちょっとショックかも…。
母は今、まったくの無表情で無関心、という感じですが、これから少しでも表情を明るくすることはできるでしょうか?
そうですね、無表情だけでなく認知症の症状全体にも共通することですが、接し方を工夫することで、症状が改善することがあります。
そうなんですか!いったいどんなことをすれば良いんですか?
いろんな方法がありますが、主な認知症の人への対応方法をまとめました。
認知症の人は脳の処理能力が低下していますから、難しい言葉が理解しにくくなっています。そのため、簡単な言葉を選んで話しましょう。
同様に、話が早いと理解ができず、反応できないことがあります。ゆっくりと話しかけてみてください。
そうか、話が理解できないから反応できないということもあるわけですね。
おっしゃる通りです。加えて、言葉が聞き取れていないケースも。加齢とともに聴力が衰えていき、特に高音が聞き取りにくくなります。低く落ち着いた声の方がご高齢者に聞き取りやすくなりますよ。
それは知らなかったです!耳が遠くなっているのは感じていましたが、もしかしたら私の高い声は聞こえにくいのかも。
こうやってコミュニケーションを取りやすくすることに加えて、外部の人との交流する機会があると、脳には良い刺激になります。
今、お母様はデイサービスやショートステイは利用されていますか?
いえ、あまり人と話すのは得意な人ではなくて。高齢になってからそれが強くなったので、訪問介護しか使っていません。
やっぱり、デイサービスやショートステイで、他の人と交流した方が良いですよね?
そうですね、お母様が嫌がるのであれば、むしろストレスになってしまうのでやめた方が良いですが…。ただ、ご家族だけでなく、外部の人と関わることは脳への刺激になります。
認知症カフェや趣味の集まりなど、無理のない程度で交流の機会を作ってみてください。
うーん、母でも参加できそうなものに連れ出してみようと思います。
…あと、「昔の話を聴く」というのはどういうことですか?
これは、認知症の心理療法のひとつの「回想法」と呼ばれるものです。認知症の人に昔話や体験談を話してもらうんです。
認知症の人は、直近のことはすぐに忘れてしまいますが、昔のことはよく覚えています。昔の楽しかった思い出を語ってもらって、そのときの気持ちも思い出してもらうんですね。回想法を繰り返すことによって、自信が回復したりいきいきと暮らせるケースもたくさんありますよ。
へー!昔話ならすぐにできるし、やってみようかな。
はい、ぜひやってみてください。そのときに、昔の写真や思い出の品を用意すると昔を思い出すきっかけになって、話もはずみやすいですよ。
認知症になると、脳の機能低下によって昔と様子が大きく変わることが多々あります。でも、そうした症状を受け止めながら上手く認知症と付き合っていってくださいね。
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